鹿沼市長への抗議文

2004年11月24日
鹿沼市長 阿 部 和 夫 様

ダム反対鹿沼市民協議会
会長 広 田 義 一

東大芦川ダム計画中止に伴う代替案への鹿沼市の対応に対する抗議
 

栃木県が示す東大芦川ダム計画中止に伴う代替案に対する鹿沼市の対応に次のとおり抗議する。

 

1.秘密主義に抗議する……10月26日に当協議会の小竹森正次副会長が市水資源対策室に電話をして「ダム推進13団体の名称を教えてほしい」と質問したが、職員は「教えるわけにはいかない」と答えた。正面から正攻法で質問しても、市民は水問題に関する必要な情報を得られない状況にある。

阿部市長は、「情報公開を一層徹底」することや「開かれた市政」を公約として当選した。市長がともに歩み、その意向を尊重してきた団体の名を明かせないということは、「密室行政」そのものであり、民主主義の否定であり、公約違反でもある。

市長は、秘密主義を即刻改め、特に水問題に関する情報を市民に積極的に提供して、公明正大に水政策を進めるべきである。

2.ご都合主義に抗議する……市長がその意向を尊重してきたダム推進13団体とは、下記の団体である。「鹿沼市内でダム建設を推進してきた地元の13団体」とも報道されてきたが、粟野町商工会、西方商工会、粟野町土地改良区連絡協議会、小倉堰土地改良区は、鹿沼市内の団体ではないし、東大芦川ダム建設推進運動をしてきたわけでもない。

粟野町、西方町も東大芦川ダムに関係するというのなら、鹿沼市長は、両町長とも協議した上で代替案に対応するのが筋である。阿部市長は、2003年8月7日夜の自民党県議との会談で、ダム反対派住民が集めた署名に鹿沼市民でない者の署名が多く含まれていたことを批判しながら、ダム推進という自分の主張を補強するときには市外の団体の意向を利用するのは矛盾であり、ご都合主義である。

3.ダム推進13団体を市民の総意のように扱うことに抗議する……南摩ダム補償交渉委員会と西沢地区活性化対策委員会も大芦川流域の団体ではなく、これらを推進団体に加えることは、「東大芦川ダムは南摩ダムの補完ダムではない」としてきた従来の市の説明と矛盾する。

また、南摩ダム補償交渉委員会、西沢地区活性化対策委員会及び東大芦地区大芦川取水対策協議会は、主に市からの補助金で運営されており、市に逆らえない団体であるから、こうした団体の意向を民意とみなすことはできない。このような自立性のない団体の意向を隠れみのとして市がダム問題に対処することは許されない。

東大芦川ダムは、鹿沼市の治水と利水が目的だったはずであり、地域振興事業でもなければ、森林保護事業でもない。したがって、住みよい西大芦を創る会、東大芦地区地域整備協議会、鹿沼商工会議所や鹿沼市森林組合は、ダムによる自然破壊を阻止する立場から東大芦川ダム計画に反対する権利はあっても、ダム推進を求める立場にない。

要するに、ほとんどの団体は、東大芦川ダムの代替案に関する当事者能力を欠く。このような団体の意向を鹿沼市民全体の民意であるかのように扱うことは、許されない。大芦川は、ダム推進13団体のものではないのである。

4.地域振興策に固執することに抗議する……東大芦川ダムの建前上の目的は、鹿沼市の治水と利水であり、地域振興ではなかったのであるから、ダム計画中止の代替案として地域振興策を掲げるのはそもそも間違っている。

ダムサイト付近がどうせダム湖に沈むからという理由で地域整備がなおざりにされてきた事実もない。多くの鹿沼市民は、水辺公園の建設など望んでいないと思われる。基幹林道日光線の整備もダムとは無関係に実施の是非を検討すべきである。

市長は、ダム計画中止問題について、二言目には「市民が不利益を被らないように」と言うが、こうまで地域振興策にこだわると、「建設業界が不利益を被らないように」が阿部市長の本音ではないかと思われる。ダム中止に絡めて、できるだけ多くの“公共工事”を市内に創出してほしいという建設業界の意向を市長が代弁しているとしか思えないのである。

5.表流水確保の方針に抗議する……県の示す利水代替案である「鹿沼市の代替水源は思川開発で確保している県の水道用水を振り替え、市が御幣岩橋上流から取水する。」という案に鹿沼市が合意していることは、二重の意味で欺まんである。

そもそも鹿沼市は、水道水源として表流水を必要としていない。水需要が減少しているのだから、どうしても新規水源が必要なら南押原地区の新規地下水源を確保すれば足りる。

また、取水地点が南摩ダムの下流ではなく、大芦川であるということは、上流にダムがなくても水道水源を取水できたということである。鹿沼市がどうしても表流水を必要とするのなら、最初から、東大芦川ダムなしに大芦川からの取水を国が認めればよかったのである。

ダムなどの水源開発施設を建設しなければ新規取水を認めないとする国の方針が欺まんだったことが明らかになった。いずれにせよ鹿沼市は、必要のない表流水を買ってはならないのである。

以上

南摩ダム・東大芦川ダムに関する推進団体
( )は、代表者
1 鹿沼商工会議所(中津宰)
2 上都賀農業協同組合(渋江正雄)
3 鹿沼市森林組合(福田弘之)
4 鹿沼市土地改良事業協議会(大出巌)
5 東大芦地区地域整備協議会
6 南摩ダム補償交渉委員会(駒場久遠)
7 西沢地区活性化対策委員会(斉藤篤)
8 住みよい西大芦を創る会(石原真一)
9 粟野町商工会
10 西方商工会
11 粟野町土地改良連絡協議会
12 小倉堰土地改良区
13 東大芦地区大芦川取水対策協議会(福田三男)