鹿沼市議会の委員会の傍聴人の定員が3人で「会議を原則として全て公開する」と言えるのか(陳情審査)

2018-09-27

●委員会の傍聴に関する陳情書が提出された

2018年6月22日14:30から鹿沼市議会の議会運営委員会が鹿沼市庁の常任委員会室で開催されましたが、傍聴人の定員を5人とする各派幹事会申合せ事項があるため、一般市民は3人しか傍聴できず、3人が傍聴を拒否された(陳述後に委員会室から退席を命じられたが傍聴を希望していた陳情人を含めれば4人になる)ことは、過去記事鹿沼市議会の議会運営委員会を傍聴できなかったに書いたとおりです。

そこで、鹿沼市民から8月15日に「特別委員会及び議会運営委員会の傍聴人の定員に関する陳情」が議長に提出されました。

その要旨及び理由は、次のとおりです。

【要旨】
特別委員会及び議会運営委員会においては、傍聴人に定員を設けず、会場の収容能力の範囲内で傍聴を許可する扱いとすることを求める。

【理由】
現在、鹿沼市議会は、常任委員会、特別委員会及び議会運営委員会の傍聴人の数を、会場にどれだけ空席があろうとも、一律に5人とし、うち2人を報道関係者枠としているため、一般の傍聴人は3人に制限されます。
その根拠は、1997年2月25日決定の「各派幹事会申合せ」です。
しかし、鹿沼市議会基本条例には、「透明性を確保」(第2条第1号)、「市民に開かれた議会」(同号)、「市民参加の機会を確保」(同条第2号)、「会議の原則公開」(同条第5号)、「本会議、常任委員会その他の会議を原則として全て公開する」(第6条第2項)と規定されており、これらの規定は、できるだけ多くの市民に議会の会議を傍聴してもらうことを前提としていると解されます。

また、鹿沼市議会委員会条例第16条には、「委員会は、議員のほか、委員長の許可を得た者が傍聴することができる。」と規定されており、傍聴人に定員を定めておらず、その数は、出席者数、会場の収容能力等を勘案し、臨機応変に委員長の裁量で決する趣旨と解釈できます。
したがって、執行部から多数出席する常任委員会はともかくとして、執行部からの出席者がほぼ皆無の特別委員会及び議会運営委員会においてまで一律に一般の傍聴人を3人に制限することは、原則として全ての会議を公開したと言えず、鹿沼市議会基本条例及び鹿沼市議会委員会条例の上記規定に違反すると考えます。

言い換えれば、1997年決定の「申合せ」が鹿沼市議会委員会条例及び2011年制定の鹿沼市議会基本条例の趣旨を骨抜きにしていると考えます。
鹿沼市議会基本条例の定める「会議の原則公開」とは、会場のスペースの許す限り傍聴を許可するという趣旨だと考えます。
ついては、【要旨】記載のとおり傍聴の扱いを改善されるよう求めます。


●1997年2月25日決定の「各派幹事会申合せ」とは

1997年2月25日決定の「各派幹事会申合せ」とは、次のとおりです。

(委員会の傍聴)
・鹿沼市議会委員会条例第16条(傍聴の取扱)第1項の委員長の許可制は改正せず、各委員会とも5名の範囲で傍聴を認めることとする。うち2名は記者に充て、委員会会場に先着した者をもって締め切る。


●陳情が審査された

2018年9月14日10時から鹿沼市議会の議会運営委員会が開催されました。本件陳情を審査するためです。

出席者は次のとおりでした。
o 委員長 鰕原 一男(自民党クラブ)
o 副委員長 鈴木 敏雄(公明党)
o 委員 加藤美智子(無所属市民クラブ)、市田 登(親悠会)、舘野裕昭(経世会)、津久井健吉(自民党クラブ)、小島 実(経世会)、船生哲夫(無所属市民クラブ)

ほかに大島久幸議長が出席していました。

横尾武男委員は欠席でした。
4人の議員が傍聴に来ていました。阿部秀実(日本共産党)、大貫毅(民主クラブ)、大貫武男(無所属市民クラブ)、佐藤誠(無会派)の4氏でした。

他に議会事務局職員4人と傍聴人1人がいました。

●結論は不採択だった

鰕原委員長は、趣旨採択でまとめようとしましたが、舘野委員が採決を求めたため、挙手採決の結果、本件陳情は、次のとおり、4:3で不採択となりました。

不採択:加藤、小島、舘野、船生
趣旨採択:市田、鈴木(敏)、津久井

●横尾委員が出席していたら結論は変わっていたかもしれない

欠席していた横尾委員が不採択の意見なら結論は変わりませんが、もし、趣旨採択の意見だったら、4:4の同数になります。

その場合、「委員長の決するところによる」(鹿沼市議会委員会条例第14条第1項)ことになると思います。そして、鰕原委員長は、趣旨採択という意見ですから、結論は趣旨採択になっていたかもしれません。

結果的に横尾委員は、キャスティングボートを握っていたことになります。

●問題解決の方法がなっていない

議事録が未作成ですので議論の詳細は不明ですが、傍聴人の話からは、通常の問題解決の方法がとられていなかったと思われます。

本件陳情の採否を判断するためには、少なくとも、次のような事項を議論する必要があったと思います。

日本は法治国家ということになっており、委員会の会議においては、傍聴人を3人まで(記者が傍聴しなければ5人まで)しか認めないという21年前に各派幹事会で決めたルールが上位の法規と抵触するのではないか、という問題提起がされているのに、そのルールやそれに関連する法律、条例、法理論、判例についての解釈を巡る議論は一切なされないまま、議員の直感的な思いつきみたいな意見で採決されています。

通常の問題解決の方法ではないと思います。

鹿沼市議会に問題を筋道を立てて解決する能力があるのか疑問です。

●議会は説明責任を果たすべきだ

陳情の趣旨は委員会の会議の傍聴人をもっと増やすべきだ、というものですから、議会がこれを不採択とするからには、一般市民の傍聴はなぜ3人しか許可すべきでないのかが分かるように説明すべきです。

加藤美智子委員は、今は新庁舎ができる前段階なので、今、傍聴のルールを変えると紛らわしい、という趣旨の意見を述べていたようですが、私には意味が分かりません。

庁舎建替えと本件陳情とどういう関係があるというのでしょうか。

敢えてその意図を忖度すれば、今、傍聴のルールを変えても、新庁舎が完成すると委員会室の広さが違ってくるので、再度、傍聴のルールを変更する必要が出てくる、ルールが2年で変更されると市民が混乱する、ということでしょうか。

そういうことだとすれば、ルールを2年で改定して何が悪いのでしょうか。新庁舎完成という状況の変化に応じて2年後にルールを変えるのは当たり前ではないでしょうか。

7年前に議会基本条例が制定されたのに、21年前に密室協議で決めた傍聴のルールを見直さないことが問題であることを加藤委員はなぜ理解できないのでしょうか。

加藤委員が委員長だったら、4人目以降に来た一般市民の傍聴を拒否するときに、「2年後に庁舎が新築されるので、あなたを傍聴させません」と言うのでしょうか。それで市民が納得すると思うのでしょうか。なぜ2年も待たなければならないのでしょうか。2年のうちに死亡する市民や転出する市民もいるんですよ。そういう市民は、傍聴の権利を行使できなくてよいのですか。

加藤委員は、傍聴を拒否された市民の立場に立てないという点において、議員としての資質に問題があると思います。

そういえば、加藤委員は、かぬま魅力向上特別委員会の委員でもあり、同委員会の3月14日の会議においても、正当な理由もなく3人の傍聴人を委員会室から追い出す秘密会の決議に賛成していましたから、市民の立場で考える議員ではないと思います。

「議会は、市民に対して積極的に情報を発信し、情報の共有化を推進するとともに、説明責任を十分に果たさなければならない。」(議会基本条例第6条第1項)と自ら決めたのですから、委員会における一般市民の傍聴は3人までというルールを変えない理由を市民に分かるように説明すべきです。

●加藤、小島、舘野、船生の各氏は議会基本条例の改定案を提出するのが筋だ

加藤、小島、舘野、船生の4人は、委員会の会議の傍聴の在り方は、現在のままでいいと言っています。(議員の顔を浮かばないという人は、議員紹介をご覧ください。)

そうであれば、その4人は、議会基本条例から「市民に開かれた議会を目指す」(第2条第1号)、「市民参加の機会を確保する」(第2条第2号)、「議会の会議の原則公開及び情報の提供を行う」(第2条第5号)、「本会議、常任委員会その他の会議を原則として全て公開する」(第6条第2項)という文言の削除を内容とする条例の改定案を議会に提出するのが筋です。

市民が議会基本条例を素直に読めば、傍聴の自由が保障されたと理解するのが普通です。

ところが上記4氏は、条例の趣旨はそうではないと言うのですから、市民が誤解しないように、議会基本条例の文言を改定する必要があるはずです。

条例にはすばらしいことが書いてあるが、実際には、傍聴は形だけしか許可しない、という議会運営では、法の形骸化が起きます。

法規には書いてあるが守らなくていいのだ、という考え方を議会が率先垂範するようでは、法治国家は崩壊します。

●議員に特権意識があるのではないか

6月22日に、委員会室に席がたくさん空いているにもかかわらず傍聴を拒否された市民は、「二度と傍聴になんか来るものか」と思ったと思います。

この恨みを議員は理解できないのでしょうか。

加藤美智子、小島実、舘野裕昭、船生哲夫の各氏は、これからも一般市民の傍聴人は3人で構わないと言っているわけですが、それでよく平然としていられるなと思います。

傍聴希望者を空いている席に座らせる、なぜたったそれだけのことができないのか、私には分かりません。

議員は強い特権意識を持っているから、としか思えません。

●傍聴していた議員はどう考えたか

鹿沼市議会議員のほとんどが加藤美智子、小島実、舘野裕昭、船生哲夫の各氏のような意見を持っているのかと言えば、そうではないようです。

上記のとおり、傍聴に来ていた議員は、阿部秀実(日本共産党)、大貫毅(民主クラブ)、大貫武男(無所属市民クラブ)、佐藤誠(無会派)の4氏でした。

阿部議員、大貫毅議員及び佐藤議員は採択の意見だったようです。

●横尾委員はなぜ欠席したのか

上記のとおり、横尾委員は本件陳情の採否についてキャスティングボートを握っていたわけですが、ではなぜ9月14日の議会運営委員会の10時からの会議を欠席したのでしょうか。

私がその理由を議会事務局に電話で聞いてみると、頑健そうに見える横尾氏ですが、「体調不良」とのことでした。横尾委員は、体調不良を理由にしばしば議会を欠席するような虚弱体質の方なのでしょうか。

しかも、本人からその連絡があったのではなく、議会事務局から本人側に電話をかけたら、そういう答えがあった、ということのようです。

しかし、市民が14日の13:15ごろ横尾氏宅に電話をかけると、電話に出た人が「議員は田んぼに行っている」と答えたそうです。

14:20ごろ、横尾委員は田んぼにはおらず、作業小屋にいたようです。

「田んぼに行っている」が本当だとすれば、「体調不良」がどの程度のものだったのか、はなはだ疑問です。議会運営委員会を欠席するほどの重い症状だったのでしょうか。

単に「体調不良」では分かりません。具体的にどこがどのように不具合だったのか説明してほしいものです。

横尾委員にとって議会運営委員会は重要なものだったはずです。9月25日の本会議において、横尾委員は同委員会の委員長に選任されたのですから、本件陳情の審査のあった14日までにはその内定を得ていたと考えられます。

次期委員長となるという認識があったにもかかわらず、軽度の体調不良で議会運営委員会の会議を欠席したのは、委員会の傍聴に関する陳情の審査なんて、どうせ大した問題ではない、自分が議論するほどの重要なテーマではない、と考えたからではないか、と勘ぐるのはうがちすぎでしょうか。

●横尾委員の欠席は無断だった

上記のとおり、横尾委員は無断で議会運営委員会の会議を欠席しました。

市民が議会事務局に電話を入れて、次の事実が分かりました。

2018年9月14日
9:58 議会事務局職員が横尾委員へ電話
体調不良で欠席する旨を横尾委員が職員に伝える
10:26 職員が鰕原委員長に横尾委員の欠席理由を伝える。

委員会の会議を欠席又は遅参する場合ついて、鹿沼市議会会議規則第90条第1項に次のように書かれています。

(欠席又は遅参の届出)
第90条 委員は、事故のため出席できないとき又は遅参するときは、その理由を付け、当日の開議時刻までに委員長に届け出なければならない。

したがって、横尾委員は、会議規則の規定に違反したことになります。議会事務局職員は、「事前に届け出ない場合もあります。」と、横尾委員をしきりにかばいます。救急車で病院に運ばれるような、緊急事態と言えるような場合には、事前連絡ができないのは当然のことですが、「体調不良」はそれに当たらないでしょう。

横尾委員は、なぜ会議規則違反を犯したのでしょうか。

体調不良で議会運営委員会の会議を欠席したいなら、その旨、事務局に電話すれば済む話ではないでしょうか。

それとも、横尾委員は、会議規則第90条第1項の規定を知らなかったのでしょうか。

しかし、議員歴4期を誇る横尾氏が、議会の会議を欠席する際の手続を定める会議規則第90条第1項を知らなかったとは思えません。

(文責:事務局)
フロントページへ>その他の話題へ>このページのTopへ