水道計画に市民参加はなかった

2008-04-22

●阿部市長の公約を振り返る

阿部和夫鹿沼市長は、どのような公約を掲げていたのかを振り返ってみます。2000年の選挙では、次のような公約を掲げていました。



●市長候補者アンケートにどう回答したか

2000年5月に「鹿沼の清流を未来に手渡す会」などが実施した市長立候補予定者アンケートに阿部氏は、同年5月12日に次のように答えていました。

「思川開発事業と東大芦川ダムに賛成か」には「計画が生まれて35有余年経っても未だ反対論があり着工はなされていない。鹿沼市内に造られる問題なのに南摩・大芦地区の人達だけが悩んでいる。その様な事をふまえ住民意識を確認し、慎重な検討をすべきと思う。」でした。

「栃木県の県債残高は年度末には9000億円に達し、不要不急のダム建設に回すカネなどない、と言われています。栃木県財政は危機的状況にあると思いますか。」には「思わない。」でした。

「大芦川上流部は鹿沼市民が誇りとする名勝で、絶滅危惧種クマタカが生息するほど豊かな生態系を残し、県内外の人々に愛されています。鹿沼市内で最も美しい場所を東大芦川ダムで水没させることは、市民の誇りと楽しみを失わせ、子孫に対しても恥ずべきことと思いませんか。」には「環境問題の取り組み方によっては子孫に汚点を残す形になることもあるので、真剣に取り組むべきと思う。」でした。

「大芦川の洪水被害に悩まされている市民は現在、何人くらいいるとお考えですか。」には「皆無と思う。」でした。

「水需要を決定する最も大きな要因は人口です。2025年の鹿沼市の人口を何人と推計されますか。」には「12万人」でした。

●阿部市長は公約を守ったのか

アンケートの最後の質問は、合併を前提としていません。旧鹿沼市の人口が2025年に12万人になる見込みはありません。人口を正しく見通せなければ、やたらとハコものを造るのは当然なのかもしれません。

県債残高が9000億円でも危機的とは思わないという感覚は、庶民とはかけ離れています。

阿部氏は、人口は増え続けると予測し、巨額の借金も気にならないのですから、どういう市政になるかは想像がつきましたが、福田武市長(当時)がダム推進だったために、私たちは、ダム事業について「慎重な検討をすべきと思う」と答える阿部氏を応援せざるを得ませんでした。また、環境問題については、「真剣に取り組むべきと思う」と言うので一縷の望みを託したのでした。ところが、2001年4月21日には、二つのダムの促進宣言ですから、環境問題に「真剣に取り組む」は口だけでした。環境問題に「真剣に取り組む」結果が、ダム促進という結論になるはずがないからです。

●水道計画変更は「市民とともにつくる市政」だったのか

ダム問題、水道問題については、「住民合意」も「市民とともにつくる市政」もなかったように思います。

水道計画を変更するには、厚生労働大臣の認可を得ることが必要ですが、その前に議会の同意を得ておくことが必要です。

2007年2月には、「鹿沼市水道事業変更認可申請書(第5次拡張変更)」の原案が業者から納品されていました。市長は、同年12月議会に変更計画への同意を求める議案を提出しました。議案は、変更計画そのものについてではなく、鹿沼市水道事業の設置に関する条例の一部改正案でした。改正点は、「給水人口」と「1日最大給水量」だけでした。条例には、水源の種類は書かれていません。

市民は、水道計画が変更されることを知らされていませんでした。2007年12月議会に条例改正案が提案される前には、水道計画の変更について「広報かぬま」に掲載されたことはありませんし、パブリックコメントが募集されたこともありません。そもそも水道計画を策定する場合には、審議会を設置して、市民参加の上で議論すべきではないでしょうか。

条例改正後も水道計画が変更されることについて、「広報かぬま」に掲載されていません。変更認可申請書をいつ厚生労働大臣に提出したのかも分かりません。水道計画って市民にとって極めて重要な計画だと思いますが、市民参加どころか市民周知もされないまま進められてきたと言えると思います。

阿部和夫市長の後援会のホームページを見ると 「2000年6月21日の市長就任以来、市民の声に常に耳を傾け 、『 市民とともにつくる市政 』、『 開かれた市政 』を政治信条に」と書いてありますが、ダム行政、水道行政に関する限り、そのような政治信条が守られたとは到底思えません。(ホームページで元号を使わないところは高く評価すべきですね。)

●議会で十分に検討したのか

水道計画の変更について、市民は蚊帳の外に置かれました。

では、議会はどのような検討をしたのでしょうか。全員協議会と建設水道常任委員会(2007-12-11開催)で執行部が配布した資料は、次のとおりです。
全員協議会資料(PDFファイル48KB)
建設水道常任委員会資料(PDFファイル24KB)

資料は多ければいいというものではありませんが、"A4ペラ1"の資料で問題点が分かるのでしょうか。これだけで、1日最大給水量が過大推計なのは、給水人口が過大で、負荷率が過小であるというカラクリを見抜けるはずがありません。料金値上げの問題にも触れていません。

執行部も問題ですが、こんな資料を見てオーケーを出す議会にも問題ありです。

常任委員会での質疑は次のとおりです。議会事務局が作成した記録です。
建設水道常任委員会記録(PDFファイル220KB)

「給水人口」(大越正啓委員から)と「クリプトスポリジウム」(鈴木貢から)について質問が出ただけです。料金値上げについての質問も出ていません。

委員会では、挙手多数で可決されてしまいました。おそらく反対したのは、大越委員だけでしょう。総事業費187億円という巨大プロジェクトなのに、こうもあっさり決めてしまっていいのでしょうか。

建設水道常任委員会の構成は、大貫武男(委員長)、関口正一(副委員長)、大越正啓、筧則男、赤坂日出男、阿見英博、鈴木貢の各議員です。

市長は、公約に違反し、市民とともに水道計画をつくろうとしないし、議会もチェック機能を果たさない。こうして「大型事業は住民合意を基本と」しないで進められていく。それが鹿沼市の現状です。

水道計画については、芳田利雄議員が本会議で質問していますが、その検討は別ページでやる予定です。

(文責:事務局)
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