●政策を選択した理由を言えない鹿沼市長
ダム反対鹿沼市民協議会は、2001年9月3日付けで鹿沼市長あてに公開質問状を出しました。同年10月4日付けで市長から回答がありました。
公開質問の中に「33.市の主張したいことが「河川水の方が地下水より安全だ」ということだとすれば、科学的・学術的根拠を挙げてください。」という項目があります。
回答は、「鹿沼市の水需要を考慮し、表流水と地下水2系統の水を利用することで、安全で安定した「命の水」を市民に提供していくべきと考えています。」というものでした。
質問は表流水の方が安全である根拠を問うものであるのに、回答は「表流水を利用する」という結論を言っているだけで、回答になっていません。理由を聞いているのに結論を繰り返すというのは、議会質問でもよく見られる答え方であり、もちろんごまかしの一種です。
市民に「命の水」を供給する立場にある市長が、「地下水100%の水源」と「表流水と地下水の2系統の水源(ブレンドした水)」とどちらが安全かについて、2系統の水源の方が安全であると言いながら、その理由を言えないのです。市長は、政策を選択した理由が言えないのです。
●「2系統の水を利用する」とは表流水(河川水)をブレンドするということ
鹿沼市上水道の水源は、100%地下水です。1日平均給水量は、2004年度実績で26,753m3です。鹿沼市の表流水の取水計画は、水道事業第5次拡張計画によれば給水量ベースで16,200m3/日です。したがって、「表流水と地下水2系統の水を利用する」ということは、1日平均給水量の約6割を地下水から表流水に転換してしまおうということを意味します。今、使っている水道水源の6割の地下水のくみ上げをやめて、同じ量の表流水をブレンドするということです。
鹿沼市長が「安全」を理由に表流水のブレンドという政策を選択するなら、表流水の方が地下水よりも安全であるということを証明する必要があります。(地下水に表流水をブレンドすれば味がまずくなることは間違いありません。それでも安全性が増すなら我慢すべきでしょう。)
ところが、現実を見れば、表流水の方が地下水よりも危険であるという証拠が出てきます。
●毎日起きている水質汚濁事故
2006年10月18日付け下野新聞によれば、「水質汚濁事故は関東1都7県で昨年度、322件を数え、本年度も9月末時点で197件と前年度の同時期(181件)を上回って」います。
「水質汚濁事故」とは、京浜河川事務所のサイトには、「大量の魚が川で死んでいたり、川に油が浮いていたり、川の色が変であったりなどの状況のことを水質事故といいます。これらの水質事故により、水道用水の河川からの取水ができなくなるなど、大きな被害をもたらすことがあります。」と書かれていますから、地下水汚染を含まない概念だと思われます。
最近の水質汚濁事故の発生件数は、次のとおりです。
2000年 201件
2001年 222件
2002年 345件
2005年 322件
表流水は、汚染にさらされた危険な水源ということにならないでしょうか。それに引き換え、地下水の汚染事故は表流水の汚染件数ほどは多くなかったのではないでしょうか。
100%地下水の鹿沼市の水道水源に6割もの川の水をブレンドすることは、かえって水道の安全性を低下させることになると思います。