水道データを知らせない鹿沼市

2009-05-28,2009-06-01追記,2009-06-02追記,2009-06-12追記,2009-06-15追記

●南摩ダム関係市町に水道データを尋ねた

思川開発事業に参画している栃木県内の市町は、鹿沼市、小山市、栃木市、下野市、壬生町、西方町、野木町、藤岡町、岩舟町、大平町の10団体です。

5月25日にこれらの自治体に2008年度における上水道事業の1日平均給水量、1日最大給水量、給水人口をメールで尋ねました。

27日までに六つの自治体から回答をいただいています。

●鹿沼市と小山市等の差

27日に鹿沼市水道部職員から連絡がありました。6月24日に水道事業についての決算監査があるので、それが終わるまで待ってほしいというのです。それまで待たせる理由を聞くと、決算監査の資料について決裁を経ていないからだそうです。しかし、私は作成中の資料を情報提供してくれと言っているのではありません。1日平均給水量、1日最大給水量、給水人口を知りたいと言っているのです。

これらのデータは、客観的な数値であり、決裁するような性質のものではありません。だから決裁していないとか、監査が終わっていないというのは、今、情報を提供できない理由にならない、情報公開請求をされればどうせ公開しなければならい情報だと言ったのですが、返事はありませんでした。

市長が代わっても、情報を市民と共有するという意識が職員にはないのでしょうか。それとも、決算監査が終わるまで市民に情報を与えるなというのは市長の命令だったのでしょうか。

佐藤信市長は、選挙前のテレビ討論会で市民が主役だとか、大事なことは市民が決めるとか言っていました。市長が市民参加を言うなら、行政情報は市民とリアルタイムで共有される必要があります。国の外交文書などについては、相当の時間が経過しなければ公開できない情報というものも想定できますが、自治体においてはそんな情報は普通はないはずです。ましてや水需要に関する情報をリアルタイムで公開してはまずい理由など全くないはずです。行政と市民が情報を知る時期にタイムラグがあっては、「市民と市との信頼関係を深め」(鹿沼市情報公開条例第1条)ることはできないでしょう。

水道事業の決算監査は、どこの自治体でも5月中には終わっていないでしょう。それでも小山市も栃木市も情報提供しています。野木町、藤岡町、岩舟町、大平町も情報提供しています。しかも、非市民に対して情報提供しています。ところが鹿沼市は、決算監査が終わっていないことを理由に市民に対してさえ情報提供しません。この差は一体どこから来るのでしょうか。鹿沼市の職員の意識は、他の自治体の職員よりも相当遅れていると言えるのではないでしょうか。

●市民排除の水道行政

鹿沼市は、2007年度に市民に諮ることなく勝手に水道計画を変更しています。水道料金を二度値上げするという内容も含まれています。市民に重大な影響を及ぼす計画なのに、「広報かぬま」に一切掲載しません。それだけでも不届きなのに、その上、水道データの開示時期の引き延ばしも図っているわけです。

鹿沼市が市民を排除した水道行政をやりたがる理由は何なのでしょうか。

●総務課長にメールで抗議した(2009-06-01追記)

2009年5月28日に鹿沼市総務課長あてにメールで次のように抗議しました。

総務課長様

25日に水道部に2008年度の
1日平均給水量
1日最大給水量
給水人口
を教えてほしいとメールしたところ、27日に連絡があり、6月24日の決算監査が終わるまで待ってほしいとの話がありました。

この方針は総務課の指示なのでしょうか。
それとも市長の指示なのでしょうか。

情報を市民と共有するという意識が職員に欠けていると思いませんか。
お答えください。
直ちに情報提供してくれなければ、情報公開請求と慰謝料請求訴訟を提起することになりますので、よろしくお願いします。

同日、総務課長から連絡があり、総務課の指示はなかった、水道部はデータを出すだろうとの話がありました。鹿沼市情報公開条例には、次のような規定があります。

(情報の提供)
第23条 実施機関は、この条例に基づく情報の公開を行うほか、市政に関する情報を市民に積極的に提供するよう努めるものとする。

情報公開条例の趣旨を理解していない職員が現に存在するのですから、総務課は、同条例の趣旨のPRに努めてほしいと思います。

●水道部がデータを送信してきた(2009-06-01追記)

29日に鹿沼市水道部は、メールで次のデータを送付してきました。
1日平均給水量 26,672m3/日
1日最大給水量 30,007m3/日
給水人口 77,635人

いずれの数値も去年より増えています。水需要が本当に増えたかどうかは、有収水量を見てから判断したいと思います。

●西方町だけが情報提供を拒否(2009-06-01追記)

西方町も26日に、「現在、決算を取り纏めているところであり、取り纏めが終了した段階で、ご回答したい」と、鹿沼市同様の回答をしていました。

西方町と鹿沼市は同レベルということでしょうか。鹿沼市も結局データを出してきましたので、思川開発事業に参画している栃木県内の自治体でデータの提供を拒んでいるのは西方町だけという状況になりました。

水道データを出すと決算に支障が出るなら、ほかの自治体だって出さないはずです。決算事務が情報提供を拒否する理由にならないことは明白です。

5月31日、西方町にもメールで再考を促しました。

鹿沼市も西方町も、水が足りないからダム事業に参画するというのなら、情報の出し渋りをしないで、正々堂々とリアルタイムで公表すべきだと思います。

●西方町が水道データを出してきた(2009-06-02追記)

上記のように西方町に水道データを提供してくれるように催促したところ、6月2日にメールが届いていました。

2008年度の西方町のデータは、次のとおりです。
1日平均給水量 2853.5m3
1日最大給水量 3637m3
給水人口 6716人

西方町の給水人口は、2003年度の6,985人をピークに減少傾向にあり、2008年度はピークから269人も落ち込んでいることになります。2008年12月の国の推計によれば、西方町の人口は、2035年には5,924人になります。今後水余りが進んでいくはずです。

したがって、今後、現有の地下水源が枯渇する見込みでもない限り、思川開発事業計画に参画する必要がないことは明らかです。

●鹿沼市の水道データが広報に載っていた(2009-06-12追記)

6月10日号「広報かぬま」を見て驚きました。p2とp3に「平成20年度下半期財政状況」という記事(鹿沼市のホームページの「広報かぬま」のページからPDFファイルで検索できます。)が載っています。

p3には、「給水人口 77,635人」「一日最大配水量 30,007m3」と書かれています。

上記のとおり、私は、5月25日に鹿沼市に2008年度における上水道事業の1日平均給水量、1日最大給水量、給水人口をメールで尋ねました。これに対し、27日に鹿沼市水道部職員から連絡があり、6月24日に水道事業についての決算監査があるので、それが終わるまで待ってほしいと言われました。

しかし、1日最大給水量と給水人口については、6月10日号の「広報かぬま」に掲載されたということは、おそらく5月17日前後に設定されていたであろう「広報かぬま」の原稿締切日までに、水道部は広報原稿を広報広聴係に提出していたはずです。

ということは、水道部は、5月17日前後までには、1日最大給水量と給水人口については、6月10日号の「広報かぬま」で公表することについて決裁をとっていたことになります。したがって、私がデータの提供を求めた5月25日には、水道部は、公表の意図を持っていたということです。

それにもかかわらず、私が5月25日にデータの提供を求めると、水道部職員は、6月24日以降まで待ってほしいと言ったのです。6月10日号の広報に掲載する予定のデータを同月24日以降まで提供したくないと水道部職員は言ったのです。

私は当初、鹿沼市水道部の秘密主義に憤り、訴えてやるとまで言いましたが、水道部は、私から情報の提供を求められた時点では、既に広報で公表する意思を固めていたのですから、水道部が秘密主義であったわけではありませんでした。

「全鹿沼市民に対して公表するが、ダム訴訟の原告になっている人物らで構成されているような団体の事務局担当者に対しては情報を提供したくない」ということです。これは差別主義です。運動団体敵視です。私が憤るべき対象は、秘密主義ではなく差別主義だったというわけです。

阿部市長までの時代に、私たちダム反対派は市民扱いされていないと感じていましたが、佐藤市長の時代になっても市民扱いされていないようです。

上記のような差別主義や運動団体敵視が市長の意思でないとすれば、安くてうまくて安全な地下水で足りている水道水源に川の水を加えることが有害無益であることを鹿沼市で一番よく分かっているはずの水道部職員は、一体何を考えているのでしょうか。

水道部の組合も、ダム事業参画が市民の安全と家計を脅かすだけでなく、経費増大により人員削減の危機が迫ってくることが分かっているのに、なぜダム事業参画に反対する声を上げないのでしょうか。名古屋市の水道労組でやっていることが、鹿沼市の水道労組でなぜできないのでしょうか。

●ダムが職員を減らす(2009-06-15追記)

2008-02-16読売に「水危機/暮らしを見直す」シリーズの4回目が載っています。次のように書かれています。日本海に面した北海道南部の江差町は、2002年にダム事業(上ノ国ダム)に参画したことが経営を圧迫し、職員の雇用の場を脅かしているようです。

経営を圧迫しているのは6年前、隣の上ノ国町にできたダムの負担金。3億円の水道料金の大半は、その支払に消える。担当職員は以前の半分の4人、メーター検針や浄水場の業務も民営化したが、人口減で料金収入は減る一方だ。

20m3当たりの料金は全国で11番目に高い5531円だというのに、累積赤字は9億2000万円で、値上げを検討中ということですから、町民はたまりません。

職員も8人だったのに、4人に減らされたというのです。ダムに参画するしか方法がなかったのなら、それでも仕方ないのでしょうが、人口が減っていたのですから、ダムの水を買う必要性が本当にあったのか疑問です。

水道事業体がダム事業に参画すると、民営化が進み、職員が減らされるという実例はほかにもあるはずです。こうした道筋が明らかである以上、職員の雇用を守るべき立場にある鹿沼市の水道労組は思川開発事業計画に反対するのが筋だと思います。水道の現場の職員が減らされるということは、住民の安全が脅かされることでもありますから、組合が住民の利益を少しは考えるならば、住民のためにもダム事業に異議を唱えてほしいものです。

(文責:事務局)
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