思川開発建設所副所長の主張に合理性はあるか

2017-07-04

●下野新聞が思川開発事業を特集した

2017年6月26日に下野新聞が思川開発事業についてほぼ全面を使った特集記事を組みました。

見出しは、「思川開発事業/鹿沼・南摩ダム 20年度本体着工」「反対運動、住民移転、凍結7年/曲折経て本格再開」「「本当にできるのか」根強い不信」「県内5市町、水道に予定」「地下水頼み限界/値上げに懸念も」です。

手塚京治、岩崎駿祐両記者の署名記事です。

インタビューとして、水資源機構思川開発建設所の小島幸康副所長の「洪水対策、取水安定に必要」という主張と、思川開発事業を考える流域の会の伊藤武晴代表の「水収支破綻の「欠陥ダム」」という見出しの主張を載せています。

全体的に両論併記型であり、思川開発事業の推進が正義に適うのか、税金や水道料金の使い道として妥当なのかをジャーナリズムの立場からチェックするという観点はありません。また、いわゆるファクトチェックはなされていません。

私は、記者さんが机上の情報処理だけで記事を書いていると言っていません。現地取材もしていますし、役所の話だけでなく、市民集会に足を運び住民の話を聞いた上で書いていることは承知しています。記事は論評を避けているということです。

下野新聞は中立の立場からある程度の情報や賛否の意見を提供するから、事業の是非は読者が判断してくれということでしょう。

この事業に関心の薄い県民が多いと思われる中、運動団体の意見も盛り込まれており、運動団体としては、ありがたいことだと受け止めています。

反面、事業を進める側の国土交通省、水資源機構、栃木県としては、国民の知らない間に予算を消化したいでしょうから、新聞に「寝る子を起こす」ようなことはしてほしくないのが本音でしょう。

以下は、これまで書いてきたことの繰り返しになりますが、事業者から繰り返し同じ説明がなされる以上、やむを得ません。

●川ではなく「溝」と説明される南摩川

記事には、次のように書かれています。

「あそこの溝が南摩川です」。予定地を見渡す工事用やぐらから、案内役の水資源機構職員が指さした。

水資源機構職員でさえ南摩川を「溝」だと説明するほど、南摩川は細く、瀬切れの多い川です。

予定地を始めて訪れた人は、「一体川はどこにあるの」と南摩川を探のが常です。

遠くから見ると溝にしか見えない南摩川に総貯水容量5,100万の巨大ダムを建設することに、そもそもの無理があります。

●水没予定地の氾濫を洪水被害の例として挙げる神経が分からない

記事には、次のように書かれています。

川は伏流する場所も多く、ダムの水源としては小規模な「小川」の印象だが、職員は「この辺りは雨で川が増水し、(側溝などがあふれる)内水氾濫が起きている」と付け加えた。

職員がなぜこんなことを言うのか分かりませんし、この発言を活字にした記者の意図も私には分かりません。

内水氾濫が起きるような場所があると、その周辺に住む人を立ち退かせ、ダム湖に沈めてしまうことが治水事業だとでも言いたいのでしょうか。

実は、事業者からこの話を聞くのは今回が初めてではありません。

1998年に鹿沼市の運動団体が鹿沼市内で水資源開発公団の説明を聞く集会を開いたところ、公団の課長は、ダムの治水機能が必要であることの理由として、南摩川の被害状況(護岸崩壊)の写真をパワーポイントで示しました。「こうした洪水被害があるから南摩ダムが必要だ」という話だったと思います。

ところが、後で予定地直下流の室瀬地区の住民に聞くと、その場所は水没予定地内でした。

「水害の起きる場所をダム湖で沈めて水害をなくす」というのが、公団時代からの水資源機構の発想のようですが、私には理解できません。

ダム事業者が、水没予定地の氾濫を洪水被害の例として挙げる神経が分かりません。

ダムの効果を説明するなら、ダムより下流での氾濫をどの程度防ぐのかを説明するのが筋ではないでしょうか。

事業者にとって「なぜダムを造るのか」は眼中にないのだ、と考えると、彼らの発想が理解できるような気がします。

●地下水は汚染に弱いか

記事には、県内5市町が南摩ダムの水を水道用水に使うのは、「ゆっくり流れる地下水が汚染に弱いことも理由にしている。」と書かれています。

しかし、栃木県南地域における水道水源確保に関する検討報告書(以下「検討報告書」という。)p22の図表3−30にも書かれているように、2003年〜2009年に全国の水道(簡易水道と専用水道)で健康被害が出るような汚染事故が4件あったとされ、そのうちの3件が表流水を水源としていました。

地下水はひとたび汚染されると、回復するまでに時間がかかるのは事実ですが、そうならないように、汚染防止に万全を期すべきです。水道水源保護条例などを制定して水源井戸を守るべきです。大気や土壌や地下水を汚染から守るための既存の法律を駆使するのが先決です。必要なら法改正を国に求めるべきです。

未然防止対策に手を尽くそうともせず、汚染されることを前提にダム水を買うという発想は安直すぎます。

また、地下水は汚染されたら使えなくなるというものでもありません。

むしろ、汚染物質を除去しながら使うことが汚染への対応策として重要です。

さらに、2011年3月の水道水の放射能汚染事故を忘れてはなりません。当時水道水から放射性ヨウ素が検出されたのは、栃木県内では、野木町と宇都宮市だけでした。宇都宮市の表流水依存率は約79%(2015年度)です。野木町は99%(同年度)です。

原子力規制委員会の調査では、事故後5年経った2016年6月になっても、宇都宮市の水道の蛇口水からセシウム134が0.00047bq/kg、セシウム137が0.0018 bq/kg検出されています。この量は、福島市の水道水に含まれる放射性物質よりも多いのです。

微量ですが、水道水で粉ミルクを溶いている人もいると思います。微量だから乳児にとっても問題ないとは誰も言い切れないはずです。実験データがないのですから。国は人体実験をやっていることになります。

セシウムは心筋に蓄積されて心臓病の原因になるなど様々な病気の原因になること、セシウム以外の放射性物質も含まれている可能性があること、食べ物からも内部被曝することなどを考えれば、成人にとっても安全な状況と言えるのか疑問です。

宇都宮市の水源が地下水ならこんなことにはならなかったはずです。地下水100%は無理としても、地下水依存率を上げることはできます。

栃木県は、検討報告書で、県南市町の水道水源は地下水:表流水=4:6がベストミックスだと言っています。

しかし、そうなった場合、水源の6割は県からの受水であり、表流水は1系統ですから、それが汚染された場合には、水源の6割を一挙に失うのですから、断水は免れないと思います。ダム水を導入すれば、汚染リスクは増大することになると思います。

ダム水の導入がなぜ「汚染に強い水道」につながるのか、栃木県は説明すべきです。

●鹿沼市はなぜ表流水の浄水場を建設しないのか

記事には、次のように書かれています。

岩盤が固く、取水が不安定な浅井戸しか掘れない鹿沼市は「水道設備の老朽化もあり、給水するギリギリの量しか取水できずにいる」と訴える。

鹿沼市が水源不足でそれほど困っているなら、設備を更新するためには、暫定水利権を取得して、大芦川にさっさと浄水場を建設して、表流水を利用しないのでしょうか。佐藤信市長が「できるだけダムの水は使わない。浄水場も造らない」と言っている(2008年7月22日鹿沼市議会一般質問での答弁)のはなぜでしょうか。市民に説明すべきだと思います。

鹿沼市は、鹿沼市水道事業第5次拡張事業第1回変更計画認可申請書の1−3−2において、28本の井戸の能力を37,590m3/日としています。この数字はウソだったのでしょうか。

2015年度の1日最大給水量は27,772m3/日です。井戸の能力は、1日最大給水量の1.35倍です。なぜ、「給水するギリギリの量しか取水できずにいる」のでしょうか。「水道設備の老朽化」が原因なら、設備を更新すべきでしょう。

とりあえず私が鹿沼市に説明してほしいのは、認可申請書の井戸能力37,590m3/日は何だったのかということです。

●鹿沼市の水源量は南摩ダム参画で増えるのか

鹿沼市は、南摩ダムに参画すれば、本当に水源量が増えると考えているのでしょうか。

鹿沼市は、南摩ダムに単独参画していますが、取水地点は、大芦川の御幣岩橋付近と言われています。

鹿沼市には五つの浄水場があり、四つは、黒川と大芦川の近くにあります。南摩ダムが完成して、黒川と大芦川から導水されたら、両河川の水位が下がり、沿川にある浄水場の井戸の水位も下がると考えられますので、取水量も減ると思います。

鹿沼市が南摩ダムに参画するといっても、その減少分を大芦川上流からの取水で賄うだけなら、ダム建設負担金を払う意味はありません。賄えない可能性もあると思います。(県が負担する分も含めて)54億円もかけて新規水源を確保したことになるのか疑問です。

鹿沼市は、黒川と大芦川の導水によって既存の浄水場での取水量が減ることがないことを説明すべきだと思います。

ちなみに、鹿沼市の状況と他の4市町の状況は同様だと誤解する読者もいると思いますが、水源量が足りないと言っているのは鹿沼市だけで、広域水道の対象となる栃木市、下野市及び壬生町では、水源不足だとは言っていません。小山市も水源量が不足するとは言っていないと思います。

栃木市では、岩舟地区では地下水が出ないようですが、合併のメリットを生かし、他の地区から融通してもらえば問題ありません。

●南摩ダムの治水効果は利根川に及ばない

水資源機構思川開発建設所の小島副所長は、「事業は思川流域を含む利根川沿川地域の治水、利水にとって重要だ。」と言いますが、大ウソです。

南摩ダムの治水効果は利根川には及びません。

渡良瀬、巴波川及び思川からの洪水流量を渡良瀬遊水地でゼロにするというのが、1980年の利根川水系工事実施基本計画であり(社会資本整備審議会・河川分科会 河川整備基本方針検討小委員会(第28回、2005.12.6) 配付資料・参考資料1のp4)、その部分は今の河川整備基本方針でも変わっていません。

国土交通省は、南摩ダムがあるからこそ、渡良瀬遊水地が利根川への影響をゼロにできると言いますが、渡良瀬遊水地の洪水調節容量は1億7,680万m3もあり(環境省のホームページ)南摩ダムの洪水調節容量500万m3の約34倍であり、2015年9月の豪雨(鬼怒川流域で1/110確率)でも使った貯水容量は約8,600万m3だった(利根川上流河川事務所発行の「利根川だより」第174号)ので約9,080万m3の貯水容量は余っていました。

洪水調節容量500万m3の南摩ダムがなくても、利根川への影響をゼロにできることは明らかです。

●小島副所長の言う「洪水被害」とは何かが不明

小島副所長は、次のように言います。

思川流域は2015年の関東・東北豪雨など、過去20年間に4回の洪水被害があり、鹿沼市や県南で冠水するなどしてきた。

「過去20年間に4回の洪水被害」とは、どの河川のどの被害を指しているのか不明です。

また、私は、鹿沼市内に20年以上住んでいますが、南摩ダムの下流の鹿沼市内において、南摩ダムによって防げるような浸水被害があったという記憶がありません。

小島副所長の言う思川流域の洪水被害が南摩ダムで防げるかどうかは、その被害を特定して検証することが必要です。

●2015年の関東・東北豪雨による洪水被害も南摩ダムでは防げない

2015年の関東・東北豪雨では、鹿沼市の奈佐原地区で黒川の堤防が決壊しましたが、南摩川に南摩ダムが建設されていたとしても、川筋が違うので防げません。

小山市内でも白鴎大学の南の右岸で支流の堤防が決壊しましたが、南摩ダムが完成していたとしても、内水氾濫なので防げません。ダムで思川の水位をかすか(5cm程度と思われるが、水資源機構は、運動団体が質問しても明らかにしていない。)に下げたとしても、結果は同じだったと思います。

小山市内で思川の水位が異常上昇したという話もありましたが、その原因は、嶋津暉之氏の調査によると、乙女地点から約1.6km下流地点の河床の高水敷の高さが計画値より約2mも高くなっている(2002年2月測量、2013年測量でも同様)ことにあります。

嶋津氏は、「河床を計画どおりに掘削すれば、2015年9月洪水規模の洪水が来ても、計画高水位以下のレベルで流下させることが十分に可能と考えられる。」(「思川開発事業の検証に係る検討報告書(素案)」に対する パブリックコメントについてp7)と言います。

●河床掘削が実施されていないという意見は無視された

南摩ダム検証でのパブリックコメント(p37)には、「乙女地点より約1.6km下流地点の2002年2月測量の河道断面図を見ても、河床の高水敷の高さが計画値より約2mも高くなっており、おそらくは現在もそのままなので、2015年9月洪水で乙女地点の水位が異常に上昇した。したがって、「河道掘削等を実施中である。」という記述は妥当でない。」という意見がありましたが、「思川開発事業の検証に係る検討報告書(素案)」に対する パブリックコメントについて)を探しても、その意見は見当たりませんので、無視されたと言えると思います。

都合の悪い意見はなかったことにしてしまう。こんなデタラメなパブコメをやって、検証が終わったとは言えないと思います。

●南摩ダムの効果は微々たるもの

小島副所長は、次のように言います。

被害の防止、軽減には河川改修と洪水調節施設を組み合わせた治水対策が必要で南摩ダムはその一翼を担う。

しかし、思川での治水基準地点である乙女地での基本高水流量は4,000m3/秒であり、その際の南摩ダムによる流量削減効果は65m3/秒とされていますから、削減率は約1.6%にすぎません。流量観測誤差は5%程度はあると言われますから、南摩ダムの効果は誤差の範囲内です。

「一翼を担う」と言えるようなものではありません。

●減圧給水と稲の生育不良の被害額はいくらなのか、ダムによっていくら減るのか

小島副所長は、次のように言います。

01年には思川流域で渇水による減圧給水や稲の生育不良などの被害が起きた。

どこのどの被害を指しているのか分かりませんが、それはともかく、このような「被害」を挙げるということは、このような「被害」が思川流域での代表的な渇水被害だということです。

減圧給水と稲の生育不良の被害額はいくらなのか、ダムによっていくら減るのかが分からなければ、ダムが必要か分かりません。

減圧給水は、ほとんどの人が気付かないくらいですから、被害者はいないと言ってよいと思います。

また、稲の生育不良の被害額はいくらなのでしょうか。農業には不作があるので、共済制度があるのではないでしょうか。ダムというハード対策よりも、保険というソフト対策の方が有効ではないでしょうか。不作に備えて備蓄米もあるはずです。

小島副所長がどのような被害があると言っているのか分かりませんが、仮にわずかな被害があったとしても、その被害は、南摩ダムによって何%減るのでしょうか。南摩ダムができれば減圧給水は起きないのでしょうか。1,850億円かけたダムで軽減しなければならないような渇水被害がどこにあるのでしょうか。

コメを粗末に扱うつもりはありませんが、日本の人口は減っていくのですから、これからコメをたくさん作っても食べる人がいません。

「稲の生育」のために80世帯を立ち退かせ、里山の環境を水没させ、1,850億円の公金を使う政策が妥当とは思えません。

そもそも、南摩ダムの目的に農業用水はないのですから、「稲の生育」にどれだけ効果があるのか疑問です。仮に効果が相当あるとすれば、農家がダム建設負担金を支払わないのは不公平です。

また、仮に思川流域で稲の生育不良が起きないような効果が南摩ダムにあるとしても、導水される黒川と大芦川の流域で農業用水や水道用水が不足することが考えられ、総合的に考えて便益があると言えるのか疑問です。

小島副所長は、南摩ダムの利水の必要性の根拠として、減圧給水と稲の生育不良程度しか挙げられないわけで、「政策事実」(政策の正当性を支える事実)が存在しません。

●小山市での地盤沈下は終わった話だ

小島副所長は、次のように言います。

流域自治体の中には地盤沈下対策のため既に南摩ダムの暫定水利権を取得し、取水を行っているところもある。

栃木県では小山市のことを指しています。

小山市の地盤沈下の状況を2015年度栃木県地盤変動・地下水位調査報告書p11で見てください。

小山1号という観測井では、1979年から2015年までの累積変動量(地層収縮量)は、206.11mmで、小山市内で最大です。

しかし、小山1号での地層収縮量は、1997年以降沈静化しています。ほとんどの年で4mm以内となっています。

2009年以降に限って言えば、大地震のあった2011年を除いて、ほぼ1mm以下の収縮量と言えます。

また、近年の小山市での地盤変動の特徴は、地層が膨張しているということです。小山2号、小山若木、小山大谷1号、小山大谷2号、小山大谷3号で、その現象が見られます。

小山市では、暫定水利権(1995年取得か)しかなくても、支障なく取水できているし、地盤沈下も終息しているのですから、歪んだ水利権行政を改善すればよいのであり、今更南摩ダムは必要ありません。

●野木町でも地盤沈下は沈静化している

ちなみに、栃木県の地盤沈下の挙動を代表する観測所である「野木(環境)」でも沈静化しています。

2000年〜2015年の16年間の地層収縮量の平均は、約4mmにすぎません。

年間4mmの沈下を限りなくゼロに近づけるためには、農業用の地下水採取を禁止するしかないでしょう。水道水源の転換をしても意味はありません。

少なくとも、南摩ダムが完成すれば、この4mmの沈下がどう変化するのかを説明する責任が事業を推進する側にはあると思います。

こんな検証もせずに南摩ダムの検証は終わったことになっています。

南摩ダム検証で国土交通省が言ったことは、「現在も年間2cm未満の地盤沈下は依然として継続していると報告されております。」(「パブリックコメントや学識経験を有する者、関係住民より 寄せられたご意見に対する検討主体の考え方」p8)だけです。

●表流水は渇水に弱いことをどうとらえるのか

小島副所長は、「利水面からもダムによって水源確保と取水の安定化を図る必要がある。」と言いますが、表流水が渇水に弱いことをどうとらえているのでしょうか。

雨が降らなければ、まず川の水位が下がり、次に地下水位が下がります。したがって、表流水に依存すれば、それだけ渇水に弱くなります。

ダム水を確保すれば、なぜ「取水の安定化」につながるのか、小島副所長は、説明すべきです。

●権力者の意見で事実を変えることはできない

小島副所長は、次のように言います。

水需要の減少が見込まれるとの指摘があるが、利水面で事業参画している全自治体・企業団が、事業の是非を検証し16年に事業継続を決めた「検討の場」で参画継続を表明している。

「水需要の減少が見込まれるとの指摘」に対して、肯定も否定もしないのは欺瞞です。

水需要が既に減少傾向にあり、この傾向が今後も続くことは誰も否定できないはずです。

事業者がこの事実を認めないということだけでも、この事業が欺瞞であることが分かります。

水需要の減少が見込まれることは、たとえ利水面で事業参画している全自治体・企業団が参画継続を表明しているとしても、否定できません。

事実を首長の意見で変えることはできないのです。

●国土交通省さえ需要減少を予測した

国土交通省は、「2008年度版日本の水資源」p5において、利根川水系における生活用水使用量は、50年後には約62%にまで減少すると予測しています。

「水需要の減少が見込まれる」という極めて確実性の高い予測を国土交通省関東地方整備局も水資源機構も平気の平左で否定するのですからむちゃくちゃです。

思川開発事業の検証に係る検討報告書4−61以降を見ていただくと分かるように利水参画団体による水需要予測は、栃木県のものを例外として、すべて増加するとしています。

検証でこんなデタラメな予測がまかり通るのですから、何のための検証か分かりません。

●知事らはなぜ参画継続を表明したのか

水需要が減るのを分かっていて、(栃木県を除き)なぜ知事らは増加予測を見直さず、参画継続を表明したのかと言えば、国土交通省が怖いからだと思います。

国土交通省の意向に背くと後で何をされるか分からないと考えているからだと思います。

そうでなければ、わざわざ水需要の過大予測をしてまでダム事業に参画しないでしょう。

いずれにせよ、知事らが参画継続を表明したことは、水需要の減少が見込まれないことの根拠にはなりません。

●ダムに水がたまることを説明すべきだ

小島副所長は、次のように言います。

水収支の懸念も南摩川と黒川、大芦川の水を運用することで貯水量は確保できる。

嶋津氏は、国土交通省自身の南摩ダム貯水池運用計算でも、30年間のうち12年は最低貯水量になる期間があって、その期間が7か月に及ぶ年もある、利根川水系では1960年が渇水基準年であり、この年で貯水量がほぼ確保されるから計画どおりの開発が可能と判断されているが、1960年の渇水レベルは30年間で13番目以下であると言います。

水資源機構は、これらの疑問に誠意をもって答えるべきです。

(文責:事務局)
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