旧河川法を読みやすくしてみた

2016-02-09

●旧河川法を読みやすくしてみた

マニアックな話になりますが、旧河川法(1896年法律第71号)が読みにくいので、多少読みやすくしてみました。

原典の旧河川法は、国立国会図書館デジタルコレクションの「廃止法律」にあります。

条文見出し及び項番号は、原文にはありませんので、ご承知おきください。いずれも私が適当に付けたものです。また、誤字脱字等があっても一切の責任を負いません。

朕帝国議会の協賛を経たる河川法を裁可しここに之を交付せしむ。
御名御璽
明治29[1896]年4月7日
内閣総理大臣 侯爵伊藤博文
内務大臣 芳川顕正
法律第71号(官報4月8日)
河川法

第1章 総則[第1条ー第5条]
第2章 河川の管理[第6条ー第15条]
第3章 河川の使用に関する制限並びに警察[第16条ー第23条]
第4章 河川に関する費用の負担、土地所有者の権利並びに河川の管理より生ずる収入等[第24条ー第48条]
第5章 監督及び強制手続[第49条ー第58条]
第6章 訴願及び訴訟[第59条ー第63条]
第7章 附則[第64条ー第66条]

河川法
第1章 総則
[河川の定義]
第1条 この法律において河川と称するは主務大臣において公共の利害に重大の関係ありと認定したる河川をいう。

[河川の区域]
第2条 河川の区域は地方行政庁の認定するところによる。
2 流水、河川の区域外にいでて永期にわたるべきものと認むるときは地方行政庁は、その河川の区域を変更すべし。

[河川に関する権利の性質]
第3条 河川並びにその敷地若しくは流水は、私権の目的となることを得ず。

[河川法の適用範囲]
第4条 地方行政庁において河川の支川若しくは派川と認定したるものは、命令をもって特別の規程を設けたる場合を除くの外、すべて河川に関する規程に従う。
2 堤防、護岸、水制、河津、曳船道その他流水によりて生ずる公利を増進し、又は公害を除却若しくは軽減するために設けたるものにして地方行政庁において河川の付属物と認定したるものは、命令をもって特別の規程を設けたる場合を除く外、すべて河川に関する規程に従う。

[河川法の準用]
第5条 この法律に規定したる事項は命令に定むるところに従い、河川に流入し、若しくは河川より分岐する水流若しくは水面又は第1条の認定を受けざる河川に準用することを得。

第2章 河川の管理
[河川の管理者]
第6条 河川は、地方行政庁においてその管内に係る部分を管理すべし。ただし、他府県の利益を保全するため必要と認むるときは、主務大臣において代わって之を管理し、又はその維持修繕をなすことを得。

[地方行政庁の義務]
第7条 地方行政庁は、河川に関する工事を施行し、その維持をなすの義務あるものとす。ただし、第43条により通航料徴収の許可を得たる者をしてその義務の一部を負担せしむることを妨げず。

[国直轄の河川工事]
第8条 河川に関する工事にして利害の関係するところ一府県の区域に止まらざるとき、又はその工事至難なるとき、若しくはその工費至大なるとき又は河川の全部若しくは一部につき大体にわたる一定の計画に基づきて施行する改良工事なるときは、主務大臣は、自らその工事を施行し、又はその工事により特に利益を受くる公共団体の行政庁に命じて之を施行せしむることを得。
2 前項の場合においては、主務大臣は、この法律によりて地方行政庁の有する職権を直接施行することを得。

[下級行政庁による工事等]
第9条 地方行政庁は、命令の定むるところに従い、その管内の下級行政庁をして河川に関する工事の一部を施行せしめ、又はその維持をなさしむることを得。

[河川の付属物に関する工事等]
第10条 河川の付属物にして兼ねて他の工作物の効用をなすものあるときは、地方行政庁は、その工作物の管理者をしてその付属物に関する工事を施行し、又はその維持をなさしむることを得。
2 他の工作物にして兼ねて河川の付属物の効用をなすものあるときは地方行政庁においてその工作物に関する工事を施行し、又はその維持をなすことを得。

[他の工事の施行]
第11条 他の工事により河川に関する工事の必要を生じたるときは、地方行政庁は、その工事の施行者をして河川に関する工事を施行せしむることを得。
2 河川に関する工事により必要を生じたる他の工事又は河川に関する工事を施行するために必要なる他の工事は、地方行政庁において併せて之を施行することを得。

[行政庁の請負の禁止]
第12条 行政庁は、河川に関する工事の請負をなすことを得ず。

[工事の請負の制限に関する委任]
第13条 河川に関する工事の請負の制限は、命令をもって之を定む。

[河川台帳の調製等]
第14条 地方行政庁は、その管理に属する河川の台帳を調製し、主務大臣の認可を受くべし。
2 台帳の調製、保管、記載事項等に関する規程は、命令をもって之を定む。
3 主務大臣の認可を経たる台帳に記載せる事項に関しては反対の立証を許さず。ただし、台帳調製後、その事実の変更したることを証するを妨げず。

[河川管理のための吏員の設置]
第15条 地方行政庁において河川管理のため特に吏員を置くことを要するときは、その定員、給料、手当、職務権限並びにその費用の負担者等は命令をもって之を定むることを得。

第3章 河川の使用に関する制限並びに警察

[舟筏の通航及び流水に関する規程の委任]
第16条 舟筏の通航及び流水に関する規程は、命令をもって之を定む。

[工作物の新築等に係る許可]
第17条 左に記載する工作物を新築、改築若しくは除却せむとする者は、地方行政庁の許可を受くべし。
一 流水を停滞せしめ、若しくは引用し、又は流水の害を予防するために施設する工作物
二 河川に注水するために施設する工作物
三 河川の区域内において敷地に固著して施設する工作物又は河川に沿い、若しくは河川を横過し、若しくはその床下において施設する工作物

[占用の許可]
第18条 河川の敷地若しくは流水を占用せむとする者は、地方行政庁の許可を受くべし。

[工事、営業等の制限]
第19条 流水の方向、清潔、分量、幅員若しくは深浅又は敷地の現状等に影響を及ぼすのおそれある工事、営業その他の行為は、命令をもって之を禁止若しくは制限し、又は地方行政庁の許可を受けしむることを得。

[許可の取消し、条件の変更等]
第20条 左の場合において、地方行政庁は許可を取り消し、若しくは効力を停止し、若しくはその条件を変更し、又は既に施設したる工作物を改築若しくは除却せしめ、又は原形の回復を命じ、又は許可せられたる事項によりて生ずる危害を予防するために必要なる設備をなさしむることを得。
一 工事施行の方法若しくは施行後における管理の方法、公安を害するのおそれあるとき。
二 河川の状況の変更その他許可の後に起こりたる事実により必要を生ずるとき。
三 河川に関する工事を施行し、又は許可を与えたるものの外に、工事、使用若しくは占用を許可するために必要なるとき。
四 この法律に基づきて発する命令の規程により必要を生ずるとき。
五 法律命令に違背したるとき。
六 公益のため必要あるとき。

[権利義務の移転の禁止]
第21条 本章の規程により与えたる許可によりて生ずる権利義務は、地方行政庁の許可を受くるに非ざれば之を他人に移すことを得ず。

[法令に違背した者の義務]
第22条 法律、命令若しくは許可の条件に違背したる者は、行政庁の命ずるところに従い、その違背によりて生じたる事実を更正し、かつ、そのよりて生ずる損害を予防するために必要なる設備をなすべし。

[危険切迫時の土地使用等]
第23条 洪水の危険切迫なるときは、地方行政庁又はその委任を受けたる官吏は、その現場において直ちに防御のために必要なる土地を使用し、土砂、竹木その他の材料、車馬その他の運搬具及び器具等を使用若しくは徴収し、又はその現場にある者を使役し、又は家屋その他の障害物を破毀することを得。
2 前項の場合において、地方行政庁又はその委任を受けたる官吏は、その管内において夫役を命じ、又は下級公共団体に命じて土地、材料、運搬具、器具及び夫役を供せしめ、又は市町村長その他の市町村吏員等を指揮して必要なる処分をなさしむることを得。
3 地方行政庁は、その管内の下級公共団体に命じて、あらかじめ洪水防御のため必要なる準備をなさしむることを得。

第4章 河川に関する費用の負担、土地所有者の権利義務並びに河川の管理より生ずる収入等
[河川に関する費用の負担]
第24条 河川に関する費用は、府県の負担とす。
2 主務大臣において第6条ただし書により河川の管理若しくは維持修繕をなす場合においては、国庫においてその費用の全部若しくは一部を負担することを得。
3 第1項費用の範囲は、主務大臣の定むるところによる。

[通航料徴収のために施設した工作物のために要する費用の負担]
第25条 通航料徴収の許可を受けて施設したる工作物のために要する費用はその徴収期間、許可を受けたる者の負担とす。

[国庫補助]
第26条 河川の改良工事に要する予算費用にしてその府県内の地租額10分の1を超過するときは、その超過額の3分の2以内を国庫より補助することを得。ただし、地租額を超過する部分については、その超過額の4分の3以内を補助することを得。
2 災害により必要を生じたる工事に要する費用は、前項によるの限りにあらず。
3 工事費用精算の上、予算より減ずることあるも、既に与えたる補助金は之を還付せしめざることを得。

[国直轄工事に係る費用負担]
第27条 第8条により主務大臣において工事を施行する場合においては、府県は前条の規程に準じてその予算費用を負担し、国庫は、その残額を負担すべし。
2 前項の場合において、府県の負担すべき金額並びに不足額の補充及び残余金の処分等は、主務大臣之を定む。

[国直轄工事の負担金の納付]
第28条 第8条により主務大臣において工事を施行する場合においては、府県はその負担すべき予算金額を国庫に納付すべし。

[下級公共団体の負担金の納付]
第29条 地方行政庁は、その管内の下級公共団体をして河川に関する費用の一部を負担せしむることを得。

[河川の付属物に関する費用負担]
第30条 河川の付属物にして兼ねて他の工作物の効用をなすものあるときは、その工作物の管理者たる行政庁の直接に管轄する公共団体若しくは管理者たる私人をしてその付属物に関する費用の全部若しくは一部を負担せしむることを得。

[営業者の費用負担]
第31条 営業の結果により特に河川に関する工事の必要を生ぜしむるものあるときは、その営業者をしてその費用の一部を負担せしむることを得。

[他の工事に係る費用負担]
第32条 河川に関する工事にして他の工事により必要を生じたるものなるときは、その費用は、工事の必要を生じたる程度において、その原因たる工事の費用負担者をして之を負担せしむることを得。
2 河川に関する工事によりて必要を生じたる他の工事の費用は、その工事の管理者たる行政庁の直接に管轄する公共団体若しくは管理者たる私人の負担とす。ただし、命令の定むるところに従い、河川に関する費用の内よりその費用の全部若しくは一部を補助することを妨げず。

[他の府県又は公共団体の受益者負担]
第33条 河川に関する工事にして他の府県若しくは他府県内の公共団体において著しく利益を受くるものなるとき、又は河川に関する工事若しくはその維持にして主として他府県内の住民の河川の使用により必要を生ずるものなるときは、その府県若しくはその府県内の公共団体をしてその費用の一部を負担せしむることを得。

[命令順守のための費用負担]
第34条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令により行政庁の命じたる事項を順守するために要する費用は、特別の規程を設けたる場合を除くの外、その命を受けたる者の負担とす。
2 第52条により主務大臣若しくは地方長官において義務者の履行すべき事項を自ら執行し、若しくは第三者をして執行せしめたるがために要したる費用は、その義務者より之を追徴することを得。

[公共団体からの寄付]
第35条 公共団体は、河川に関する工事若しくは費用のため寄付をなすことを得。

[公共団体からの補助]
第36条 公共団体は、河川に関する費用につき私人若しくはその区域内の下級公共団体に補助をなすことを得。

[公共団体による費用賦課]
第37条 公共団体は、河川に関する費用につき利害関係の厚薄を標準として、その区域内において不均一の賦課をなすことを得。

[河川工事のための土石等の供給]
第38条 河川に関する工事のため必要なるときは、地方行政庁は、管内の土地若しくは森林の所有者に命じ、補償金として時価相当の金額を下付して、その所有に係る土石、砂礫、芝草、竹木及び運搬具を供給せしむることを得。ただし、時価に関して協議整わざるとき、又は所有者不明なるとき、若しくはその所在不明なるときは、地方行政庁は、相当と認むる金額を供託して、本条の供給をなさしむることを得。

[工事のための堤外地への立入り等]
第39条 河川に関する工事のため必要なるときは、地方行政庁は、その堤外地に立ち入り、又はその土地を材料置場等に供し、又はやむを得ざるときは、その土地に現在する建設物その他の障害物を除却することを得。
2 堤外地にあらざる沿岸若しくは沿堤土地に関しては、その地先に施行すべき工事のため必要なる場合に限り、前項を適用することを得。
3 前2項の適用により損害を受けたる所有者は、使用若しくは除却の後、3か月以内に府県に対し補償金を請求することを得。

[危険切迫時の土地使用等に係る補償]
第40条 第23条第1項の処分により著しく損害を受けたる者あるときは、地方行政庁は、その管内の市町村、町村組合若しくは水利組合に命じて、その物件の価額を補償せしむることを得。その価額は、行政庁之を定む。
2 前項補償の手続は、命令をもって之を定む。

[違法な工事による損害賠償]
第41条 法律、命令若しくは許可、認可の条件に違背したる工事、設備、使用、占用若しくは工作物の管理により損害を受けしめたる者は、その損害を賠償すべし。
2 前項により行政庁において下付すべき賠償金は、その行政庁の直接に管轄する公共団体の負担とす。

[使用料及び占用料]
第42条 流水を停滞し、若しくは引用するための工作物の施設その他河川の使用若しくは占用を許可するときは、その管理者、使用者若しくは占用者より使用料若しくは占用料を徴収することを得。
2 本条の使用料若しくは占用料その他河川より生ずる収入は、府県に帰す。

[通航料]
第43条 地方行政庁は、私人若しくはその管内下級公共団体において舟筏の便を謀るため新築若しくは改築工事を施工する場合に限り、舟筏より通航料を徴収することを許可することを得。ただし、その年限は、当初許可したる時より30か年を超過することを得ず。
2 通航料の徴収を停止すべき場合における補償その他通航料の制限等に関する規程は、命令をもって之を定む。

[河川敷地の公用の廃止]
第44条 河川敷地の公用を廃したるときは、地方行政庁は命令の定むるところに従い、之を処分すべし。ただし、この法律施行前、私人の所有権を認めたる証跡あるときは、その私人に下付すべし。

[河川付近の土地工作物所有者の義務]
第45条 河川付近の土地若しくは工作物の所有者は、命令の規程により行政庁の命ずるところに従い、その土地の決壊若しくは土砂流出を予防するため、又はその工作物の河川に及ぼす損害を予防するために必要なる設備の全部若しくは一部をなし、又はその費用の全部若しくは一部を負担するの義務を有す。

[土砂流出のおそれのある土地の所有者の義務]
第46条 河川に土砂を流出するのおそれある土地の所有者は、行政庁においてその土地に竹木芝草を植え付け、若しくは培養し、又はその他土砂扞止の設備をなし、若しくは之を維持することを拒むことを得ず。
2 前項により植え付けたる竹木芝草は、命令の定むるところに従い、その土地所有者をして収益の全部若しくは一部を取得して之を培養するの義務を負わしむることを得。
3 土砂扞止のために要する土地は、行政庁において土地収用法により之を収用することを得。
4 第1項土地の区域は、地方行政庁においてあらかじめ之を告示すべし。

[河川付近の土地等への制限]
第47条 この法律をもって定めたるものの外、なお、河川付近の土地、家屋若しくはその他の工作物に関し、河川の公利を増進し、又は公害を除却若しくは軽減するために必要なる制限は、命令をもって之を定む。

[河川又は河川付近の土地に関する規定の準用]
第48条 河川若しくは河川付近の土地に関して規定したる事項は、命令の定むるところに従い、河川に関する工事により新たに河川となるべき区域若しくはその付近の土地に之を準用することを得。

第5章 監督及び強制手続
[河川行政の監督]
第49条 主務大臣は、河川に関する行政を監督す。
2 地方長官をして第一次において監督せしむべき事項は、命令をもって之を定む。
3 この法律に規定したる事項にして主務大臣若しくは地方長官の認可を要するものは、命令をもって之を定む。
4 第35条及び第36条に規定したる事項並びにこの法律により行政庁に付与したる職権に関しては、命令をもって制限を設くることを得。

[他の府県等の費用負担の手続]
第50条 他の府県若しくは他の府県内の公共団体をして費用を負担せしむるために必要なる手続は、命令をもって之を定む。

[地方行政庁への監督]
第51条 主務大臣は、地方行政庁に命じて河川に関する工事を施行せしめ、又は河川の区域及びその付属物の認定若しくは台帳の更正をなさしめ、その他この法律に規定したる地方行政庁の職権を施行せしむることを得。

[義務の代執行]
第52条 義務者においてこの法律若しくはこの法律に基づきて発する命令による義務を履行せず、若しくは之を履行するも必要の期間内に終了するの見込みなきとき、又はその履行の方法宜しきを得ざるときは、主務大臣若しくは地方長官は、自ら之を執行し、又は第三者をして之を執行せしむることを得。

[義務の間接強制]
第53条 私人においてこの法律若しくはこの法律に基づきて発する命令による義務を怠るときは、主務大臣若しくは地方長官は、一定の期限を示し、もし、期限内に履行せざるとき、若しくは之を履行するも不十分なるときは、1000円以内において指定したる過料に処することを予告してその履行を命ずることを得。

[保証金の充用及び差押えの禁止]
第54条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令に規定したる事項に関し納付せしめたる保証金は、行政庁において直ちにその納付の目的又は過料に充用することを得。
2 前項保証金は、他の債権のために差し押さうることを得ず。

[費用及び過料の徴収等]
第55条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令により私人において負担すべき費用及び過料は、この法律において特に民事訴訟を許したる場合を除くの外、行政庁において国税滞納処分法により之を徴収することを得。
2 前項の費用及び過料につき行政庁は国税に次ぎ、先取特権を有するものとす。
3 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令により公共団体において負担すべき費用に関しては、この法律において特に民事訴訟を許したる場合を除くの外、主務大臣若しくは地方長官は必要なる場合においては金額を定めて之をその予算表に掲げ、その他必要なる処分を指導し、直ちにその金額を支出せしむることを得。

[処分の強制力]
第56条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令により行政庁に付与したる職権は、行政処分により之を強制することを得。
2 行政庁の許可若しくは認可に付したる条件に関しても、また本条及び前条を準用す。

[河川視察吏員の職権]
第57条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令において規定したる事項に関しては、河川視察の職務を有する官吏をして命令の定むるところに従い、警察官の職権の全部若しくは一部を執行せしむることを得。

[罰則]
第58条 この法律に規定したる私人の義務に関しては、命令をもって200円以内の罰金若しくは1年以下の禁固の罰則を設くることを得。

第6章 訴願及び訴訟
[訴願]
第59条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令により主務大臣若しくは地方行政庁のなしたる処分に対して不服ある私人若しくは公共団体は、主務大臣に訴願することを得。
2 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令若しくは地方行政庁の委任により下級行政庁のなしたる処分に対して不服ある私人若しくは公共団体は、地方長官に訴願し、地方長官の裁決に不服ある者は、主務大臣に訴願することを得。
3 この法律により行政訴訟の提起を許したる場合においては、主務大臣に訴願することを得ず。

[行政訴訟]
第60条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令に規定したる事項に関し、行政庁の違法処分により権利を毀損せられたりとする私人若しくは公共団体は、前条により訴願の裁決を経たる後、行政訴訟を提起することを得。ただし、主務大臣若しくは地方行政庁の処分に対しては直ちに之を提起することを得。

[損害賠償に係る民事訴訟]
第61条 第41条第1項により損害賠償を請求する私人若しくは公共団体は、損害を受けたる日より3か月以内に民事訴訟を提起することを得。
2 法律、命令若しくは許可、認可の条件に違背したるや否やにつき争いあるときは、前数条の手続によりその違背したりとの事実確定したる後にあらざれば、民事訴訟を提起することを得ず。ただし、この場合においては、前項の期間は、確定の日より起算するものとす。

[補償金額に係る民事訴訟]
第62条 第38条若しくは第39条により下付すべき補償金額に対し不服あるときは、行政庁において補償金額の通知をなしたる日より6か月以内に民事訴訟を提起することを得。ただし、第39条の場合において補償金請求の後、3か月以内にその金額の通知なきときは、その期限経過後6か月以内に民事訴訟を提起することを得。

[民事訴訟の禁止]
第63条 この法律若しくはこの法律に基づきて発する命令に規定したる事項に関しては、本章の規程により特に許したる場合を除くの外、訴願若しくは行政訴訟を提起し、又は行政庁に対し民事訴訟を提起することを得ず。

第7章 附則
[施行の区域及び時期]
第64条 この法律の全部若しくは一部を施行すべき区域及び時期は主務大臣之を定む。

[河川台帳の調製期間]
第65条 河川の台帳は、この法律施行の日より2か年以内に之を調製すべし。

[慣例への効力]
第66条 災害土木費負担に関する慣例及び外国人居留地内における河川に関する慣例は、この法律をもって変更するの限りにあらず。


●何が分かったか

旧河川法は、第日本帝国憲法下で制定された法律であり、地方自治の尊重という考え方はありません。

国直轄事業の費用負担については、旧河川法第27条及び第28条に規定がありますが、国のいいなりになって負担金を支払うことが前提となって規定されていると思います。

南摩ダムなど3ダムに係る住民訴訟で2015年9月8日に敗訴の決定が最高裁から下されたわけですが、要は、国からの請求によほどひどい瑕疵がない限り、自治体は請求を審査する権利義務がなく、支払うしかないというのですから、旧河川法で裁かれていたように思います。

1964年に新河川法が制定されたことの意味を、戦後生まれのはずの裁判官が理解していないのだと思います。

(文責:事務局)
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