「中ノ畑ダム」、「遠ノ木ダム」とは何か

2009-06-02,2009-07-02追記

●南摩ダムの費用対効果に関する資料を請求した

水資源機構に対する情報公開請求により、思川開発事業の費用対効果に関する資料を入手しました。具体的には、「思川開発事業治水経済調査検討業務報告書(2001年3月)」です。水資源機構は、当初、費用対効果を職員が計算したと言っていましたが、実際は、株式会社建設技術研究所が報告書を作成していました。内容は、思川の乙女(小山市)より上流における年平均被害軽減期待額を計算するものです。

●南摩ダムの費用対効果計算のどこがデタラメか

まず、「思川開発事業治水経済調査検討業務報告書(2001年3月)」の抜粋(PDFファイル232KB)をご覧ください。

思川の氾濫計算をするに当たって、「遠ノ木ダム、中ノ畑ダム、南摩ダムを考慮する。」(No.39)と書いてあります。遠ノ木ダム、中ノ畑ダムなんて名前は聞いたことがありません。ダム便覧にも掲載されていませんので、おそらく計画さえ存在しないと思います。

念のため栃木県知事に対し、5月12日に「遠ノ木ダム及び中ノ畑ダムの計画の概要が記載された文書」の公開を請求しましたが、13日付け公文書非開示決定通知書には、「開示請求に係る公文書は保有していません。(理由)開示請求に係る公文書は、取得、作成していないため。」と書かれていました。

遠ノ木ダム、中ノ畑ダムが県営なのか国営なのか知りませんが、栃木県内のダムの計画を栃木県の砂防水資源課で把握していないはずがありません。

鹿沼市中粕尾地区に「遠ノ木」又は「遠木」という地名はあるようです。大芦川沿いにも「中の畑」という字がありますが、場所は草久地内の西大芦コミュニティセンター手前の塩沢橋付近のようです。コミュニティセンターを沈めるダム計画なんて地元の住民も聞いたことがありません。

しかも、それらのダムの容量は、遠ノ木ダムが1,070万トン、中ノ畑ダムが870万トンだったようですが、行川ダムが2000年に中止となったために同ダムの治水容量300万トンを中ノ畑ダムに足して、中ノ畑ダムの治水容量を1,170万トンにしてしまうという乱暴な計算をしています。

思川の上流には南摩ダムしか計画がないはずなのに、費用対効果の計算をするときに「思川上流ダム群」を想定して計算する意味が分かりませんが、納税者を欺くためのトリックとしか思えません。費用対効果の計算に当たって、架空のダム群を想定しなければならないということは、南摩ダムの治水効果が極めて乏しいことを暴露していると思います。

●遠ノ木ダム、中ノ畑ダムは計画さえ存在しないダムだった(2009-07-02追記)

私は、6月9日に国土交通省関東地方整備局長あてに遠ノ木ダム及び中ノ畑ダムの計画概要を記載した文書の公開を請求しました。

6月30日に関東地方整備局の情報公開担当者のシジョウ(四条?)氏から電話があり、文書不存在なので取り下げますかという問い合わせでした。

水資源機構の作成した資料に書いてあったので、あるはずだと言ったら、国交省OBに尋ねたりしたが、両ダムは想定上のダムであり、ダムサイトを検討したわけでもないし、具体的に計画が存在するわけではないことが分かったとのことでした。

「計画がないと言うが、貯水容量がちゃんと書かれていたのだから、計画がないということはないのではないか」と食い下がると、「(役人は)地図をながめて、この辺りにダムを造れば、これだけの水がたまるだろうという計算をすることがある」との返事でした。

いくら食い下がっても、ないものは仕方ありません。

「想定上のダム」を前提として計算しないと出ないような南摩ダムの治水効果など、所詮幻にすぎないことが明らかになったと思います。

こんなデタラメなダム計画のために鹿沼市の環境を破壊されて、市長や市民は心が痛まないのでしょうか。

(文責:事務局)
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