南摩ダムの本質

2008-10-14

●西川公也衆議院議員が南摩ダムについて講演した

1998-11-27に西川公也衆議院議員が鹿沼商工会議所会館で建設業関係者を相手に講演していました。思川開発事業に関する内容の概要は次のとおりです。



●予言は当たらなかった

「野木町では井戸水を揚げすぎて地盤沈下している。」とのことですが、確かに、1997年の野木町の代表的な観測地点である潤島800-1の地層収縮量は、19.24mmでしたが、2006年のそれは1.21mmにすぎませんでした。野木町など県南での地盤沈下は、2000年以降は沈静化してきています。

「栃木市、小山市の水道用水が足りない。」というのも事実に反します。栃木市の保有水源は3万8000m3/日ですが、2007年度の1日最大給水量は2万4577m3/日ですから、保有水源に対して約1万3000m3/日の余裕があります。これを栃木市の2007年度の1人1日最大給水量319リットルで割ると約4万人分の水量になります。栃木市では人口が減少傾向にありますので、余剰水量は増える一方になります。

小山市の保有水源は、思川開発を前提とした暫定水利権を除いても57,784m3/日であり、2007年度の1日最大給水量は4万7222m3/日ですから、保有水源に対して1万0500m3/日の余裕があります。これを小山市の1人1日最大給水量340リットルで割ると、約3万人分の水量になります。小山市の人口は増加傾向にありますが、あと3万人は増えないでしょう。国の推計によれば、小山市の人口は2007年の人口に加えて7,200人程度しか増えないことになっています。

旧粟野町の水道に南摩ダムの水を使うなんて問題外です。旧粟野町は、思川開発には参画しませんでした。水源は地下水で十分だからです。粟野地域の簡易水道では、半分くらいは漏水しているようです。それでも市民は困っていませんから、地下水源は必要量の倍くらいはあるということです。

鹿沼市も水道用水は足りています。鹿沼市の保有水源量は38,100m3/日です。2007年度の1日最大給水量は29,520m3/日ですから、8,580m3/日の余裕があります。2007年度の1人1日最大給水量384リットルで割ると、約22,000人分の水です。給水人口が2万人増えても大丈夫ということです。

西方町は確かに1日最大給水量が保有水源量に迫っています。西方町の保有水源量は、4,060m3/日であるのに対し、2007年度の1日最大給水量は4,026m3/日と、ほぼイコールです。しかし、西方町は、全くあわてていません。思川開発事業の完成を悠長に待っているだけです。これは、1日最大給水量を水源確保の基準とする必要がないことを示唆していると思います。

「将来の工業をどう予測するかと、こういうことを考えながら水利権を取得をしていただきたい。」と言いますが、南摩ダムの水は工業用には使われませんし、水を使う工業が今後発展するとは思えません。

「あまり水利権を取得するとお金がかかりすぎて大変なので、50年先どうなんだということを見込みながらやられたらいかがか。」は、そのとおり。50年後の水需要は減っているでしょうから、南摩ダムは不要ということになります。西川議員が将来を見通せる政治家なら、南摩ダムは要らないと発言すべきです。

「できるかできないか、これは取水口がいくら反対しようとも、国は進めると思って間違いない。」は、外れました。今市市長が大谷川取水に反対したので、国は大谷川取水を断念しました。

「私は賛否について意見を言わない。まだ反対者がいるから。」って言うけど、言っているじゃありませんか。

「事業規模は今2,520億円だが、間もなく改定されて、3,100億円になるはずだ。」とのことでしたが、なりませんでした。事業が縮小されましたから。

「物価スライドを調べても、結果的に3,500億円ぐらいのカネが思川関係で落ちてくる。」も外れです。事業費は天から「落ちて」きません。国民や下流県の税金や水道料です。

「工事は2008年度には終わしちゃうということだ。」も外れです。国土交通省関東地方整備局と独立行政法人水資源機構は2007年12月13日,八ッ場(やんば)ダム,霞ヶ浦導水,思川(おもいがわ)開発の3事業の工期を5年延長し,完成を2015年度末までに変更すると発表しました。

西川議員は、先読みが苦手のようです。

「いずれにしても、この地区の建設業の皆さんは、この10年間は非常に仕事量が増えることだけは間違いない。」。これが南摩ダムの本質なんでしょうね。で、建設業者の仕事が非常に増えたのかは分かりません。

(文責:事務局)
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