野村節子県議が栃木県南広域的水道整備事業に関して質問した

2017-11-15

2017年9月26日に開催された栃木県議会本会議の一般質問で野村節子議員(日本共産党)が栃木県南広域的水道整備事業に関して次のとおり質問しました。

【野村議員】 県南広域的水道整備事業について保健福祉部長に質問します。
県は建設中の思川開発(南摩ダム)から県南地域の水道用水を確保して・・・地下水依存率が高く、代替水源としての表流水を持たず、地盤沈下や地下水の汚染が危惧されるなどとして、栃木市、下野市、壬生町等の地下水依存率を2030年度65%にする方針です。

事業費は、2012年の試算で約327億円と巨額の費用が見込まれております。

今後、取水地等の調査を進め、関係市町の合意を得た後に、2023年に事業認可を取得、24年着工、27年から一部給水、2030年に全部給水を目指すとのことです。

対象となる栃木市、下野市、壬生町では、おいしくて安全で安い地下水をなぜ表流水に切り替えなければならないのか、県から給水を受けると、水道料金が高くなるのではないかと疑問を持った市民などが市民ネットワークを結成し、県の方針見直しも含め、これまでどおり、水源が地下水100%の維持を求めています。

県内各市町の水源状況を調べてみました。8市町が水道水を地下水のみで供給しておりました。そのうち、栃木市など2市1町と同様に地下水以外の他の水源がないというのが那珂川町と上三川町でした。

また、足利市と那須烏山市は表流水の水利権がありますが、取水施設がないために、地下水以外は供給できない、こういう状況でした。2市1町だけに水源の転換を求める整合性はないと考えます。
豊かで安全、そして地域を潤す地下水は水源地栃木の強みであります。にもかかわらず、ダム事業への参画のために表流水への切り替えを迫ることは、宝を捨てるも同然と考えます。

人口減少時代に入り、将来人口も水需要も減少することが見込まれます。節水や環境保全に努めれば、地下水を利用し続けることは十分可能だと考えます。

そこで、最終受益者である2市1町の住民の合意なく県南広域的水道整備事業を推進し、市町に受水を強いることは、許されないと思いますが、事業に関する計画を見直す考えはないか保健福祉部長に答弁を求めます。

【山本圭子部長】
ただいまのご質問にお答えいたします。
県は水道用水の地下水依存率が高い状況にある県南地域において、将来にわたり安全な水道水の安定供給を確保するため、地下水から表流水への一部転換を促進し、地下水と表流水のバランスを確保することとして、思川開発事業に利水参画しております。

思川開発事業については、国よるダム事業検証が実施され、事業の必要性や代替案の可能性の視点などから総合的な評価が行われた結果、所定の手続を経て、平成28年8月に事業の継続が決定されました。

これを受け、県南広域的水道整備については、本年度から既存の取水施設の活用なども含め、実現可能な水道施設計画に関する調査・検討を始めたところであります。

これまでも、県と関係市町で検討部会を設置し、情報交換等を行ってきたところであり、引き続き県南広域的水道整備について市町の意見をうかがいながら、検討を進めてまいります。

【野村議員】
再質問をいたします。
先ほど、試算の段階で巨額の費用がかかると、このように申し上げました。これ県の試算であります。

どのようにその費用負担を捻出することになるのでしょうか。
水問題研究家の嶋津暉之氏が県南広域的水道から給水を受けた場合の試算を明らかにしておられますが、2市1町の水道料金は3割から4割上がると、このような試算もございます。

是非ですね、どのように住民の負担となっていくのかという点、これ、明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【山本部長】
ただいまの再質問にお答えいたします。
正に、今年度の調査の中で既存の施設で使えるものがあるかどうか、どういう所に取水管などを引くとどのような費用がかかるかということも含めて調査・検討をしているというところですので、その調査結果についてまた市町との協議会などでもお示ししながら、市町とともに継続的に検討してまいりたいと考えております。

【野村議員】
具体的なお答えはいただけませんでしたけれども、それはまあ試算の段階であるということかもしれません。

ただですね、水道事業はライフラインであります。水を飲まなくてもいいという方はいらっしゃらないわけで、命にかかわる水道事業であります。

ですから、それを買わなければならない市民の皆さん、住民の皆さんが一体どれだけの、この事業によって負担を被るとことになるのかということは、これは早い段階で明らかにして、そして、市町の同意を得ていくという、このプロセスが本当に重要なんだというふうに思います。

ダムに参画するためにですね、将来水事業やりますということで国の方に提出した資料がですね、今の県の2013年3月の方針となっているわけです。

住民にしてみれば、ダムのためにライフラインの基本である水道事業が歪められようとしていると感じるのが当然だと思います。

その上ですね、高くてまずいダムの水を飲まされるのはご免だという、この住民の声は是非とも正面から受け止めていただいて、事業の見直しを含め、是非、再検討していただきますように強く求めるものであります。


●ダムの水が安ければ買うわけではないはず

質問時間はわずかでしたが、こんな質問をしてくれる栃木県議は、野村議員しかいないと思います。

時間が足りなかったせいか、また、水道料金の値上げ問題なら世間の注目を集めやすいということもあるのか、2市1町の住民の経済負担を中心とした質問になっていますが、負担が軽ければダムの水を買ってもいいということではないはずです。

本筋は、2市1町にダムの水が必要かということだと思います。

「豊かで安全、そして地域を潤す地下水は水源地栃木の強みであります。」という野村議員の発言の「水源地栃木」は、南摩ダムを前提とするように誤解する人もいるかもしれません。

●山本部長の答弁はごまかしだ

山本部長は、「県は水道用水の地下水依存率が高い状況にある県南地域において、将来にわたり安全な水道水の安定供給を確保するため、地下水から表流水への一部転換を促進し、地下水と表流水のバランスを確保することとして、思川開発事業に利水参画しております。」と答弁していますが、ごまかしです。

2市1町の水道水源における地下水の割合を40%にすることが、なぜ「安全な水道水の安定供給」につながるのかの説明が「栃木県南地域の水道水源確保に関する検討報告書」(2013年3月、栃木県作成)でもなされていません。40%という数値は、県内他地域の地下水依存率に合わせたものにすぎず、科学的根拠はありません。

渇水リスクだけを考えても、地下水依存率を下げれば、リスクは増大します。

地盤沈下は、農業用地下水の過剰な採取が原因であり、水道用地下水が原因であるとは、栃木県環境審議会ではとらえていません。また、そもそも栃木県には地盤沈下による被害の報告はなく、最近では沈静化していますから、水道水源の転換に巨費を投じても利益はありません。

近年最大の水道水源汚染事故は2011年の放射能汚染ですが、汚染されたのは河川水を水源とする水道でした。厳密な話をすれば、栃木県では那須町の地下水源から放射性物質が検出されたことになっていますが、当該水源は実際には伏流水であり、河川水と同視すべきものです。

(文責:事務局)
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