県南関係市町(2市3町)の保有水源量は145,393m3/日(「栃木の水道」(2010年度版))であり、2010年度の1日最大給水量の合計は103,305m3/日(「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討(案)」(以下「案」という。)p27図表4−1)ですから、水源余裕率は40.7%となります。
人口の減少と節水機器の普及により、2030年度には60%程度になると予想されます。
2市3町がこれ以上水源を確保することは過剰投資になり、水道事業の健全な経営を害することになり許されません。
●目標は達成できない
案は、2030年度には2市3町が表流水を35,000m3/日利用する計画です。
しかし、県南関係市町(2市3町)の思川開発事業への参画水量は、合計で0.277m3/秒(23,932m3/日)です。
中間目標水量に11,068m3/日足りません。
ということは、2市3町が追加要望しなければ、中間目標は達成できないということです。
更に県南関係市町の地下水依存率40%という基本目標を達成するには、60,000m3/日の表流水を確保しなければなりません。県南関係市町の思川開発事業への参画水量0.277m3/秒(23,932m3/日)との差は、36,068m3/日(0.4m3/秒)にもなります。
しかし2市3町は、県に対して広域的水道整備計画の要請さえしないのですから、追加要望などするはずがありません。
そして栃木県の参画水量は0.403m3/秒(34,819m3/日)ですから、これを全部使っても基本目標は達成できません。(県は、基本目標を達成する時期はずっと先になるから、需要量はずっと小さくなり、大量の代替水源は必要性がなくなると言うのでしょうが、需要量がずっと減るなら、県はいつごろどれくらいまで減るのかを示すべきだし、水源転換の必要性もなくなると思います。)
その意味でも案は、実現可能性の全くない机上の空論です。
机上の空論に基づいてダム事業に参画することは、最少費用最大効果の原則と公企業経営の健全性の原則に違反し、違法です。
達成できない目標を掲げるところも、八つ場ダムの治水問題と同じです。利根川における基本高水と計画高水の差をダムで解消するには、既存のダムのほかに、ダムが10基くらい必要になりますが、利根川にダムの適地はもうありません。だから国の利根川治水計画は、絶対に達成できない計画なのです。河川官僚は、整合性なんて考えていないのです。
桐生川ダム、二風谷ダム、玉川ダム、七ヶ宿ダム、熊野川ダム、大町ダム、湯西川ダム、長良川河口堰、徳山ダム、苫田ダム、紀の川大堰、鶴田ダムなどの水源開発施設では、開発水量の全部又は大部分が使われていません。
県内にも川治ダム、草木ダム、松田川ダム、東荒川ダムのように開発水量が余っているダムがあります。
地盤沈下が沈静化し、水余り現象が進んでいく時代を迎え、南摩ダムがそのような、使われないダムになることは確率的に明らかです。
少なくとも、水道用水供給事業計画の策定できる見込みのない栃木県が使わないダムになることは明白です。
県は先例を教訓として思川開発事業からの撤退を決断すべきです。
●先例に学べ