栃木県財政健全化計画は茶番だ

2009-05-22,2009-05-24追記,2009-05-31追記

●栃木県が財政健全化計画試案を公表

「福田富一知事は十八日、県財政健全化への道筋を定めた「とちぎ未来開拓プログラム」試案を正式に発表した。二〇一三年度以降、収支の均衡した予算編成とするため、四年間をかけて県の年間事業の三分の一に当たる約千四百事業の廃止や休止、補助制度の見直しを行う。」(2009-05-18下野)そうです。

見直し事業の一覧表は、「とちぎ未来開拓プログラム(試案)」に対するパブリック・コメントの実施についてという県のホームページに掲載されています。

しかし、思川開発(南摩ダム)、湯西川ダム、八ツ場ダムの3事業は見つかりませんでした。三ダム訴訟の原告である私たちに栃木県が三ダム事業から撤退したという話は聞こえてきませんので、県がダム事業から撤退していないことは確かです。

●三つのダム事業は対象外か

三つのダム事業が見直しの対象外だとしたら、理由は事業主体が栃木県ではないということでしょうか。

しかし、3事業に対する栃木県の負担額は、思川開発事業が治水分130億円、水道分 が86億円の合計216億円、湯西川ダム建設事業が治水分の103億円及び八ッ場 ダム建設事業が治水分の10億円であり、総合計は329億円にも上ります。これに、水源地域対策特別措置法に基づく、財団法人利根川・荒川水源地域対策基金の事業の負担額を加えると約400億円にもなります。

財政再建にとって重要なのは、事業主体ではなく、支払う金額でしょう。

財政再建は、聖域なく見直さなければならないはずです。20日付け下野には「火だるま」とか「断腸の思い」とか勇ましい言葉が飛び交いますが、福祉事業は見直しても、ダム事業を聖域とする福田知事の見直し試案は、所詮茶番ではないでしょうか。無駄の典型であるダム事業から撤退しないで、何が財政再建なのか、県がやっていることの意味が分かりません。

南摩ダムについては、参画市町に水需要が増える見込みがないばかりでなく、県が確保したダム水を各市町に配水するための広域水道計画さえ存在しないのですから、不要不急の事業であることはあまりにも明らかです。

ダム事業から撤退しようとしない福田知事に本気で財政再建する気はないと見てよいのではないでしょうか。

●反省なし(2009-05-24追記)

栃木県の財政状況は深刻で、「本県の場合、約210億円の赤字で「財政再建団体」に転落する。」(2009-05-19読売)そうです。

「県財政課の見通しによると、このまま歳出カットをせずに年300億円以上もの財源不足を放置すれば、県は10年度の決算が確定する11年秋以降、国の管理下に入ることになる。」(2009-05-19朝日)そうです。

読売の鹿川庸一郎記者は、「反省と展望見られず」という見出しで、次のような鋭い指摘をしています。

県は「とちぎ未来開拓プログラム」を打ち出す上で、重要な説明が抜け落ちている。

まず、比較的裕福だったはずの県の財政が、なぜこんな窮状になったのか。県民の率直な感想だと思うが、プログラムにはその分析や反省がみられない。高齢化に伴う福祉費用の増加と、国の三位一体の改革による地方交付税減額を挙げているが、他の都道府県も条件は同じだ。

県はバブル崩壊後に景気対策として借金で公共事業を増やしてきた。それが現在、返済負担が多い一因となっている。しかも、2000年代に入ってからも、他県に比べ、削減のペースは鈍い。07年度の道路事業費は557億円で、財政が同規模の宮城県や三重県の2倍に上る。こうした公共事業依存の体質が現在の状況を招いたのではないか。

1988年に消費税法が成立したときも、自民党政府は、「政府にカネがない。消費税を導入するしかないでしょ」という論法だったのを覚えています。

今回の栃木県の財政健全化計画も「カネが足りない。歳出を削るしかないでしょ」という論法です。上記「とちぎ未来開拓プログラム(試案)」に対するパブリック・コメントの実施についての表紙・目次・巻頭( PDFファイル ,78KB)の巻頭言を読むと、財政悪化の要因として、「高齢化の進展に伴う医療福祉関係経費 の増加」、「国の三位一体の改革により地方交付税等が大幅に削減」、「急激な県内景気の悪化に伴う県税収入の落ち込み」などの外的要因ばかりを挙げ、「本県では、これまでも、中長期的な視点に立ち、財政の健全化と自律的な財政運営 に向けた取組を進めてきました。 」と、県の財政運営に全く問題がなかったかのような表現で、反省の弁はありません。

反省もなく、ダム事業から撤退もしないのに、「聖域なく事業の廃止や見直しを進める」と言われても本気とは思えません。

●野村節子県議もダム問題を指摘(2009-05-31追記)

2009-05-25野村節子の活動ニュースによれば、野村節子県議は、5月18日の栃木県議会全員協議会で次のように発言したそうです。

すべての事業を見直したというが、南摩ダム、湯西川ダム、八ツ場ダムなどムダなダム事業に、今後二百数十億円も県費をつぎ込むことや、それを上回るかもしれない規模の総合スポーツゾーン構想も継続する。大型開発はまったく見直されていない。財政再建は県民にとって必要な事業を維持しつつ、大型開発を中止または凍結し、長期の再建計画とすべきではないか。

全く同感です。福田知事が財政再建に聖域を設けていることはだれが見ても明らかでしょう。

●鹿沼市はどうか(2009-05-31追記)

鹿沼市でも前市長が財政調整基金を取り崩してまで大型開発や人気取り事業をやるので財政がガタガタになっている。それを建て直すということで佐藤氏が立候補したという構図があったはずです。

2008-05-02市民の勇気ニュースには、「こんなに赤字や借金が!」、「財政健全化でほこれる鹿沼をつくろう!」が佐藤陣営のスローガンでした。鹿沼市の財政が健全か健全でないかが争点となっていました。

ところが佐藤氏が当選すると、「鹿沼市の財政は健全です」という宣伝が広報に載り、公式には前市長の主張が正しかったことになってしまいました。また、「国や県に対する働きかけを強めます」とも書いてあったのに、ダム問題については国の言いなりになって、使う当てもないのにダムの水利権を16億円も払って取得するというのですから、話が随分違ってきたなという感じです。

しかし、鹿沼市でも歳入不足という厳しい現実はあり、財政健全化は当然必要です。福田知事同様、佐藤市長にとっても国の進めるダム事業が聖域だとすると、鹿沼市における財政健全化も茶番ということになってしまいます。

(文責:事務局)
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