鬼怒川の河道貯留効果が分からない

2019-08-05

●鬼怒川の河道貯留効果をまとめると

以下は何が分らないかを書いただけですので、ご了承ください。

鬼怒川の石井・水海道地点間の河道貯留効果をまとめると、下表のようになると思います。単位はm3/秒です。

                   
鬼怒川の河道貯留効果
地点4ダムなし4ダムあり
石井(A)66004600
水海道(B)45004300
河道貯留効果(A-B)2100300


【出典】
4ダムによる洪水調節ありのデータ(4600及び4300(氾濫しなかった場合の流量))については、5回鬼怒川・小貝川有識者会議(2015年10月29日)の資料1「『平成27年9月関東・東北豪雨』の 鬼怒川における洪水被害等について」p30

4ダムによる洪水調節なしの石井の流量6600については、第6回鬼怒川・小貝川有識者会議(2015年12月4日)の資料1「鬼怒川河川整備計画の目標(案)について」p4

4ダムによる洪水調節なしの水海道の流量4500については、以下の条件により計算しました。
4ダムなしの水位:8m
4ダムありの水位:8.25m
零点高:Y.P.9.914m
11kのHQ式(Q=A(H+B)^2)
A=36.567、B=-7.050を代入。
4ダムありと4ダムなしの流量差は約200m3/秒となったので、水海道の4ダムあり流量(氾濫戻し後)4300+200=4500m3/秒とした。

以上を前提とすると、鬼怒川の石井・水海道地点間の河道貯留効果量は、4ダムありの場合が300m3/秒、4ダムなしの場合が2100m3/秒となります。

河道貯留効果とは、ダムの有無で、言い換えれば流量の大小で、効果量が7倍も違ってくるものでしょうか。

●ダムなし石井の6600は大きすぎるのか

なお、学者は石井でダムなしの6600を大きすぎると見ており、佐山敬洋・京都大学防災研究所准教授は、平成 27 年 9 月関東・東北豪雨による 関東地方災害調査報告書2015年関東・東北豪雨災害 土木学会・地盤工学会合同調査団関東グループ(2016年3月)において「ダムが無い場合の石井地点のピーク流量は約6,000 m3/sと推定され、ダムがある場合に比べて約1.4 倍大きくなるという推定結果となった。」(p44)と書いています。

(ちなみに、ダムありの石井地点の流量を約4300m3/秒と見ており(6000÷1.4=4286)、これも公式見解よりも300m3/s少なく推定しています。そうなると、公式見解ではダムありの水海道地点の流量は4300(氾濫戻し後)ですから、河道貯留効果はゼロになってしまいます。)

したがって、ダムなしの石井地点の流量が6000m3/秒だったとしても、ダムなしの水海道地点の流量が4500m3/秒だとすると、河道貯留効果は1500m3/秒となり、これでも公式見解の400m3/秒と大きな隔たりがあります。

300m3/秒から2100m3/秒までの幅があるとすると、鬼怒川の河道貯留効果は全くとらえどころがありません。

●田川合流量を加えるのか

池田裕一・宇都宮大学地域デザイン科学部教授らは、鬼怒川河川整備計画(2016年)で目標流量を石井で4600、水海道で4300としていることから、田川からの合流量を河川整備基本方針(2006年)と同じ600m3/秒とすれば、「単純計算で4600+600−4300=900m3/sの河道貯留効果を見込んでいることになる。」(上記報告書のp46)と書いています。

そうだとすると、河川整備基本方針にある石井5400、水海道5000という数値から計算される河道貯留効果400m3/秒も、実は田川合流量600を加えた1000m3/秒だということになります。4ダムなしの場合は2700m3/秒にもなってしまいます。

つまりは、河道貯留効果の定義は広狭二とおりあって、狭義では2地点間の流量の差だが、広義ではこれに支流からの合流量を合計したものということでしょうか。

ますますわけが分かりません。

(文責:事務局)
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