西宮市が川上ダムから潔く撤退した

2010-11-29

●西宮市がダム事業から撤退

2010年11月27日付け読売新聞は、次のように報じています。

読売新聞兵庫版 2010年11月27日

川上ダム西宮市撤退
負担金6億円支払いへ

 将来的な水需要の増加を見込み、1990年代から川上ダム(三重県伊賀市)の建設計画に参加していた西宮市が計画からの撤退を決め、6億円の負担金を「独立行政法人 水資源機構」(さいたま市)に支払うことを26日、明らかにした。市は当初、人口増を受け、約3万トンの水不足を予測していたが、節水意識の高まりなどで地元での利水のめどが立ったため、決断した。しかし、当時の市の判断が“一滴の水”も買わずに巨額の支払いを求められる事態を招いており、今後、議論を呼びそうだ。

 川上ダムは、同機構が伊賀市の木津川上流で計画。市は1992年、県のあっせんを受けて同計画に県内で唯一参加し、総事業費850億円のうち47億円を負担する予定だった。

 しかし、実際は景気後退による工業用水の減少や、節水意識の高まりから水の需要が減少。その結果、阪神水道企業団から給水のめどが立ち、2009年4月、撤退を決めた。

 ただ、同機構は「市の参加がなければ不要な工事があった」と負担金を市に要求。これまで費やした建設費1億2200万円と金利負担として、計約6億円を負担することで合意した。

 市は12月3日開会の市議会に提出する補正予算案に、過去に支出した地元負担金を含む9億2600万円を臨時損失として計上した。  当時の市の判断について、市議からの追及が予想されるが、市水道局は「当初計画ではダム建設への参加は必要だった。このまま計画への参加を続けると30億円以上を支払うことになり、撤退は妥当な判断だった」としている。

 川上ダム
 水資源機構が1992年度に策定した事業実施計画では、三重、奈良両県、西宮市が参加。しかし、現在は三重県の伊賀市だけの参加となり、同機構は実施計画を見直している。

 当初、2004年度としていた完成予定は、地元住民の反対などで遅れ、現在は15年度の完成を目指している。事業費は当初の約850億円から約1200億円に膨れ上がっている。計画では高さは約90メートル、貯水容量は約3100万立方メートル。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hyogo/news/20101127-OYT8T00086.htm

淀川水系前深瀬川に川上ダム(三重県伊賀市)の建設計画があります。

「水資源機構が1992年度に策定した事業実施計画では、三重、奈良両県、西宮市が参加。しかし、現在は三重県の伊賀市だけの参加とな」ったということです。

伊賀市の水需要はどれくらいあるかというと、14,270m3/日で、そのうちの半分の7,100m3/秒は工業用水だそうです(淀川水系流域委員会第8回利水・水需要管理部会(2006年11月23日)審議資料1−2)。

伊賀市の人口は、2009年10月1日現在で99,208人です。伊賀市は、鹿沼市より小さい市です。人口も2030年には7万人台にまで減少すると予測されています。工業系の水需要が大幅に伸びるという計画には無理があります。14,270m3/日の新規水需要があるとは思えません。

上記審議資料には、「自己水源の廃止(14,294m3/日)は、伊賀用水が整備されれば要らなくなるとの見方から更新整備がなされなかったことによる取水量の低下である。」という記述がありますから、伊賀市は、14,294m3/日の自己水源を放棄したようです。

自己水源を放棄しなければ、ダムなしで水道事業を継続できることは明らかではないでしょうか。

「水が足りないからダム事業に参画する」のではなく、「ダム事業に参画するために既存水源を放棄して水不足状態を作出する」という本末転倒が伊賀市でも行われているということのようです。

水資源機構は利水ダムを建設する権限しかありません。川上ダムの利水目的は消滅しているのですから、建設を中止すべきでしょう。

●鹿沼市も潔く撤退できないのか

48万人の人口を抱える西宮市の水需要は特殊だったのでしょうか。そんなことはないと思います。水需要が増える見込みのある都市なんて、全国に皆無ではないでしょうか。西宮市にダム水が不要で、鹿沼市にダム水が必要だという理由は、見い出しがたいと思います。

鹿沼市は思川開発事業に0.2m3/秒で単独参画していますが、建設負担金は、鹿沼市が約16億円、栃木県が約37億円、合計で53億円を水資源機構に支払うことになります。

ダムの水を使う予定がないのに、53億円の税金や水道料がダムのために使われるのです。そして、ダムや導水管が完成すれば、それらの維持管理費用も事業に参画する自治体は負担しなければなりません。

今後水需要が減るにもかかわらず、ダム水を使わないが負担金や維持費だけを支払うという事態が想定されます。

「50年後か100年後か分からないが、いつの日かダムの水を使う日が来るかもしれないから」という理由でダム事業に参画してよいものでしょうか。

鹿沼市は、思川開発事業から潔く撤退すべきではないでしょうか。

(文責:事務局)
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