常総市若宮戸地区の下流側の溢水箇所はL24.75k付近ではない(鬼怒川大水害)

2019-05-18

●若宮戸下流側の溢水箇所はL24.63kと表記すべきだ

2015年鬼怒川大水害における下流側の溢水箇所の表記は、「L24.63k付近」とすべきだと思います。(合流点からの距離の表記について、国土交通省は、「左岸」を「L」と表記し、「km地点」を「k」と表記する場合が多いので、この表記にならうことにします。)

なぜなら、国土交通省は、重要水防箇所(例えば1986年度)の指定において、下図(株式会社建設技術研究所が作成した2014年度「三坂地先外築堤護岸設計業務設計報告書」のp4−13から引用。紫色の文字と図形は筆者が加筆)の左岸側の下流側堤防(緑の線)の上流端を「24.5k上130m」(=24.63k)と表記していたと考えられ、下流側の溢水は、そこから鬼怒川にほぼ直角に向かう市道東0280号線上で起きたからです。

国土交通省が堤防の上流端を24.63kと見ることが正しいとは限りませんが、筆者が各種の図面で検証しても首肯できる数値です。

要するに、溢水地点は、L24.50kとL24.75kのほぼ中間点にあります。

下図では、L24.50kに近いように見えますが、両岸の距離標を結ぶ線は、河心線の接線に直交して引かれるので、L24.50kの線とL24.75kの線は、平行ではありません。下側(東側)で収束する直線なので、L24.75kの線を下側に延長すると、溢水箇所は、二つの線のほぼ中間点にあると言えると思います。

距離表

●24.75kと表記するのは誤りだ(空中写真の誤り)

国土交通省は、2015年「9月関東・東北豪雨」に係る 洪水被害及び復旧状況等について」(2017年4月1日)のp22頁に次のような空中写真を掲載しました。赤丸は、筆者が溢水箇所として加筆しました。

国土交通省は、この写真で若宮戸地区の下流側の溢水箇所が24.75kよりも上流で起きたことを示していますが誤りです。

上記建設技術研究所作成の報告書で示したとおり、下流側の溢水は、24.75kよりも下流で起きています。

そもそも、24.75kの線を下水道管橋の極めて近い箇所に引いていること自体が理解しがたいことです。

空中写真

●24.75kと表記するのは誤りだ(標高段彩図の誤り)

国土交通省は、前記被害状況等報告書で前掲の空中写真の上部に、下図のとおり標高段彩図を掲載し、被災後の写真(右側)で下流側の溢水箇所の中心部(黒い破線の円の中心部。要するに押堀のど真ん中)が24.75kの線と重なるように描いていますが、上記建設技術研究所の報告書の図で示したとおり、正しい24.75kの線は、下流側の溢水箇所よりも120mほど上流です。したがって、この標高段彩図は、明白に誤りです。

標高段彩図

●なぜ訂正しないのか分からない

国土交通省が公表した2015年「9月関東・東北豪雨」に係る 洪水被害及び復旧状況等について」は、第5版まであります。

鬼怒川の堤防決壊のとりまとめ

初版の2015年10月13日版に誤りがたくさんあるとしても、大目に見るべきでしょう。被災後約1か月ですから。

しかし、被災から約1年半後の2017年4月になっても、未だに誤りが訂正されません。何らかの意図があると勘ぐられても仕方がないと思います。

河川管理者が120mも里程を間違うことなどあり得るでしょうか。しかし、「側線」(2015年「9月関東・東北豪雨」に係る 洪水被害及び復旧状況等について」(2017年4月1日)のp22頁)を未だに訂正しないのですから、ミスに気づいていないのかもしれませんし、気づいていたとしても、訂正すると、ミスに気づいていなかった人も気づいてしまう、つまり、「寝た子を起こす」ようなことになるので放置した方が得だ、と考えている可能性も捨て切れません。

いずれにせよ、河川管理者が氾濫箇所の里程を単純に間違っているとしたら、河川管理権を返上すべきです。じゃ、国土交通省以外の誰が鬼怒川を管理するのか、ということになってしまうので、そうもいかないのが住民にとって悲劇です。

●溢水箇所の誤表記は看過できる問題ではない

以上のとおり、国土交通省は、図や写真に勝手な距離を強引に書き込んでおり、事実を尊重していません。

こんなことがまかり通れば、様々な点で差が出て、国の責任を適正に判断することができなくなるので、看過できる問題ではありません。

●洪水水位が違ってくる

国土交通省は、2015年度「鬼怒川痕跡調査一覧表」を作成しており、それによれば、L24.75kにおける痕跡標高はY.P.21.93mとされており、下流側の溢水地点がL24.75kであれば、溢水地点の痕跡標高はY.P.21.93mで確定です。

しかし、溢水地点が24.63kであれば、話は違ってきます。

上記一覧表で24.50kの痕跡標高はY.P.21.73mなので、24.75kにおける痕跡標高Y.P.21.93mのデータを直線補間すると、下流側溢水地点24.63kの痕跡標高は、Y.P.21.93mよりも約10cm低いY.P.21.83mとなります。

●重要水防箇所も違ってくる

2015年「関東・東北豪雨災害 〜鬼怒川水害〜」というブログでは、国土交通省が2015年度の重要水防箇所に「左岸24.75K下20m〜25.25K下30m」(=L24.73k〜L25.22k)を指定したことをもって、若宮戸地区の下流側溢水地点を指定していたと誤解し、逆に2013年度から2015年度までは、「左岸24.25K下40m〜24.75K下20m」(=L24.21k〜L24.73k)と下流側の溢水地点を重要水防箇所に指定してあるのに、指定していないと誤解するという実害が生じています。

●国土交通省がなぜ溢水地点の表記を偽るのかが理解できない

以上のとおり、国土交通省が若宮戸地区における下流側の溢水地点を実際の河川距離とはかけ離れたキロ数で表示しており、このことが単なる誤記とは思えないのですが、では、その意図は何かというと、残念ながら、筆者の頭脳では推測さえできません。

とにかく議論を混乱させれば、自分たちの責任を免れることができると思っているのでしょうか。

いずれにせよ、重要水防箇所について勘違いをさせられている人も実際にいるわけですから、「24.75k」の表記を早急に訂正すべきです。

(文責:事務局)
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