八ツ場ダムの費用対効果は0.20

2011年1月26日

●言行不一致の鑑を見つけた

本題に入る前に、野田佳彦首相の動画を是非ご覧ください。

2009年の衆院選で野田首相は、大阪16区の森山浩行衆院議員の応援に駆けつけました。そのときの動画がYouTubeに掲載されています。野田氏応援演説です。

ゲンダイネットは、彼の演説について次のように報じています。

野田二枚舌首相 過去のペテン演説を見つけたゾ- ゲンダイネット(2012年1月19日10時00分)

<だから、この男は信用できない>

  野田佳彦首相が週末の民放テレビ番組に出演し、消費税増税を含む社会保障と税の一体改革に向けて「この国を守るため、私の政治生命をかけて一体改革をやり抜く」と息巻いていた。この男の言葉の軽さにはウンザリだが、実はそれを裏付けるエピソードがある。
  
     09年の衆院選での応援演説だ。当時の野田は幹事長代理。大阪16区の森山浩行衆院議員の応援に駆けつけた野田はまず、〈政権公約(マニフェスト)は、ルールがある。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです〉と絶叫したのだ。野田は、後期高齢者医療制度を導入した自公政権をヤリ玉に挙げて〈書いていないことを平気でやる。おかしいではないか。マニフェストを語る資格はない〉と切り捨てたのだが、この言葉をそっくり、野田に返したい。
  
     マニフェストを「命懸けで実行」どころか、書いていない消費税引き上げに「命懸け」になっている野田は、こんなふうに口からデマカセ男なのである。

  この演説で野田はさらに、天下り法人に12兆6000億円の税金が投入されていると指摘した上で、〈消費税5%分の税金に天下り法人がぶらさがっている。シロアリがたかっているのです。シロアリ退治しないで消費税引き上げなんですか?消費税の税収が20兆円を超えたら、またシロアリがたかるかもしれません。天下りをなくす、そこから始めなければ消費税を引き上げる話はおかしいのです〉と声を張り上げた。これにも目を白黒だ。
  
     民主党政権は「独立行政法人などへの現役出向は天下りじゃない」「役所でなくてOBが斡旋するならば問題じゃない」などの抜け道をつくって事実上、国家公務員の天下りを黙認している。渡辺喜美行革担当相時代の自民党政権の方がまだマシで、民主党政権は誕生後、たった1年で4000人以上が独法などに天下っている。シロアリは退治されるどころか、やりたい放題。それでも消費税増税とは開いた口がふさがらない。
  
    (日刊ゲンダイ2012年1月16日掲載)
   http://news.infoseek.co.jp/article/19gendainet000162557  
 

マニフェストに書いてあった八ツ場ダムの中止は実行せず、マニフェストに書いてなかった消費税増税をやろうとしている野田首相が「政権公約(マニフェスト)は、ルールがある。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです」と言っていたのです。  

彼は、この矛盾をどう説明するのでしょうか。自分の言行不一致は気にしないのでしょう。政治家でなければできないことです。  
 
 ●費用対効果分析のどこが欺まんか  

八ツ場ダムの費用対効果については、「どうする、利根川?どうなる、利根川?どうする、私たち!?」というブログの費用対効果のお話・追加は、必見です。  

そこでリンクされている「費用対効果6.26のからくりを解く」という論文には、次のようなカラクリがあるという指摘がなされています。  

     
  1. 堤防の高さは十分であっても、十分な幅がないと破堤する。(スライドダウン)
  2.  
  3. 河道水量が無害流量に達した時点で破堤する。
  4.  
  5. 想定される破堤箇所は、氾濫ブロックにおいて被害が最大となる場所である。
  6.  
  7. 堤防は基部まで破堤する。
  8.  
  9. 一つの洪水で同時に何箇所も破堤する。
  10.  
 

上記のほとんどが治水経済調査マニュアル(案)に書かれていることです。  

スライドダウンにはある程度合理性はあるのかもしれませんが、その他の想定は「ダムありき」の想定だと思います。  

特に何箇所でも破堤するという想定は、あまりにも経験則に反します。  

マニュアルがダム推進に都合よくつくられているのです。  

マニュアルをつくったのはだれか。役人と御用学者の合作です。  
 
 ●八ツ場ダムの費用対効果は0.20  

国土交通省は、ダム建設後50年間の年平均被害額を8,643億円として八ツ場ダムの費用対効果を計算しています。  

しかし、水害統計によれば、利根川流域の実績年平均被害額は186億円(2005年度の価格換算)です。(しかも利根川・江戸川本流での堤防決壊はここ60年皆無です。一方、国土交通省は利根川・江戸川本流の破堤による被害を想定していますから、本当はゼロ円と8,643億円を比較するのが筋論です。)  

国土交通省は、想定される年平均被害額を実績の年平均被害額の46.47倍に膨らませているということです。  

ということは、年平均被害軽減期待額も46.47倍に膨らませているということです。  

国土交通省は、八ツ場ダムの治水便益を2兆1,925億円としていますが、46.47倍に水増ししているのですから、1/46.47を乗じて472億円とするのが妥当です。  

そうすると、八ツ場ダムの総便益は
   472億円+139億円(流水の正常な機能の維持に係る便益)+残存価値100億円=711億円
  となります。(139億円(流水の正常な機能の維持に係る便益)にも大問題がありますが、ここではいじらないことにします。)

国土交通省は、八ツ場ダムの総費用を3,504億円としています。

そうだとすると、八ツ場ダムのB/Cは、次のようになります。

711億円/3,504億円=0.20

国土交通省は、実際の被害額とかい離した想定被害額を用いることによって過大な費用対効果を得る計算を行っているのです。

このことについて塩川鉄也・衆議院議員が質問主意書で政府に質問したところ、政府は次のように回答しています(2011年11月25日付け答弁書)。

なお、想定被害額は、氾濫ブロックにおいて、その無害流量を超えた場合に、当該氾濫ブロックについて、被害が最大となる一地点において堤防が決壊するなど一定の想定の下に算定している。一方、実際の被害は、水防活動の状況、堤防内部の構成材料等の様々な要因が複雑に関連した結果生じるものであることから、想定被害額と実際の被害額は、単純に比較できるものではないと考えている。

「想定被害額と実際の被害額は、単純に比較できるものではない」という結論を言っているだけで、実際の被害額とかけ離れた想定被害額で計算することがなぜ妥当なのかということを全く説明していません。説明できないのです。本音を言えば、ダムを造りたいから想定被害額をできるだけ大きくしているということでしょうが、本音を言うわけにはいきません。だから、答弁不能に陥っているのです。

「単純に比較できるものではない」と言われて納得する国民が何人いるでしょうか。被害実績とあまりにもかけ離れた被害額を想定して費用対効果分析を行うことが許されるとは思えません。許されるかどうかは主権者である国民が決めるべきことです。

国土交通省による費用対効果分析は、エセ科学というほかありません。

(文責:事務局)
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