湯西川ダムは今からでも中止すべし

2010-05-12

●湯西川にトワダカワゲラがいた

5月8日に、ムダなダムをストップさせる栃木の会などが主催する行事があり、湯西川に行ってきました。湯西川の川沿いを散策して自然環境を確認するのが行事の目的です。

湯西川の支流を散策していて、トワダカワゲラを見つけました。レッドデータブックとちぎで「要注目」とされている種です。

1990年以降の記録では、鬼怒川本流の沢でしか見つかっていないようです。

レッドデータブックとちぎを執筆した櫻井正美氏によると、生息環境については、「幼虫の生息域は源流付近の細流、小流の石の下や落ち葉の間に棲み、生息場所の水温一般に10℃以下である。」とされています。確かに採取場所は源流の近くで、水温は9.5℃でした。

トワダカワゲラは、「関東北部以北の本州に分布する。栃木県は分布の南限にあたる。」そうです。湯西川地区は南限に当たるのですから、そこでのトワダカワゲラは、より貴重であると言えます。

「地域開発や山間観光道路の建設などによる枝沢の枯渇、湧水の減少による生息環境の消滅。」が危惧されています。

●ハコネサンショウウオがいた

湯西川の本流では、ハコネサンショウウオらしきサンショウウオを見つけました。サンショウウオも清流でしか生きられない生物です。

京都府のレッドデータブックを見ると、「森林伐採、山岳道路建設、堰堤建設などによる流水環境の寸断などが生存を脅かしている。」、「繁殖に必要な水環境(渓流)と成体や幼体の生息場所となる周辺の陸環境(森林)を、一括して保全していく必要がある。」とされています。カテゴリーは、絶滅危惧種です。

●釣り人も来ていた

13時ごろ、6時から釣りに来ていたという二人組に会いました。5時間かかって釣ったという大きな、美しいイワナとヤマメを10尾くらい見せてくれました。ほとんどがイワナでした。もっと釣れたが小さなものはリリースしてきたと言います。おそらく天然ものではないでしょうか。

湯西川ダムのすぐ上流の本流は、かつては湯西川発電所に導水するために、はるか上流から取水されてしまうために、水量が乏しかったのですが、ダムを建設するために、湯西川発電所を取り壊し、取水する必要がなくなったために、本流の流量が本来の勢いを取り戻し、たくさんのイワナやヤマメを養うことができるようになったとしたら、皮肉なことです。

ダムが完成したら、渓流釣りの絶好の場所が水没してしまうということを釣り人たちは銘記すべきです。

●今からでもやめられる

わずか数時間で湯西川の生態系の豊かさを実感できる散策でした。

貴重な生物がダムによって死滅してしまうことは明らかです。

建設中の湯西川ダムの高さは、10メートルにも満たないように見えました。今から中止して取り壊しても何の問題もないと思います。

もちろん、契約の相手方である鹿島建設などは損失を被りますが、賠償すればいい話です。逸失利益を賠償すればよいのですから、完成させるよりはるかに安く上がります。賠償を避けるために環境を破壊するのは、本末転倒です。

福田昭夫衆議院議員ががんばって、民主党栃木県連の意見を湯西川ダム中止でせっかくまとめたのに、結局、本体工事が始まっているので継続ということになりました。

無駄な箱モノは造らないというのが民主党の方針だったのですから、本体工事着工は本来中止の基準にならないはずです。にもかかわらず、「本体着工したものは継続」というルールを民主党が決めたのは、岩手県で「小沢ダム」と呼ばれる胆沢ダムを、無駄と知りつつ継続事業とするためだったとしか思えません。

最近のニュースを紹介すると、「前原誠司国交相は昨年10月、全国56のダム事業のうち48事業の工事の一時凍結を表明したが、胆沢ダムは工事の最終段階となる本体工事に入っているため対象から外れた。」(2010-05-11岩手日報)のです。そして、「奥州市胆沢区若柳の胆沢川上流部で建設が進む国内最大級のロックフィルダム「胆沢ダム」(総貯水量1億4300万立方メートル)は今月末にも、ダム本体の堤体(ていたい)盛り立て工事が終了、2013年度の完成に向けて最終段階に入る。ダム建設の中核を成す堤体盛り立てが完了することで、高さ132メートル、幅723メートルの巨大ダムが全体像を現す。」という段階に入ってしまいました。

もちろん、民主党が政権をとればすべてが良くなるとは思っていませんでしたが、ダム行政についてはがっかりすることが多すぎます。

湯西川ダムの建設を熱心に促進した日光市長・斎藤文夫氏と栃木県知事・福田富一氏の名は当サイトにおいて、当サイトのある限り"顕彰"したいと思います。

奇しくも、三者とも旧今市市の出身です。湯西川ダムについては、福田昭夫氏だけが反対の立場ですが、2009-09-01朝日には、反対の理由が「利水、治水のいずれの観点からも必要ない。本体着工は中止すべきだ」と紹介されているにすぎないので、福田昭夫氏が湯西川の環境問題をどれだけ重視しているのかは分かりません。

(文責:事務局)
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