バイステックの7原則でケースワーカーが不幸になる

2009-04-10

●「バイステックの7原則」とは何か

生活保護の職場は、情報が外に出ることがありませんので、市の福祉事務所では県の監査を受ける以外は批判されることがありません。その意味では楽な職場です。しかし、申請者や受給者から悪態をつかれたりして、3K(「きつい」「汚い」「危険」)の職場であることは確かです。ただでさえ3Kなのに、バイステックの7原則を勉強しすぎた人がいるためにケースワーカーが不幸になっている福祉事務所があります。

「バイステックの7原則」とは、ケースワークでの援助関係における、援助者が修得しておくべき7つの基本原則です。「ケースワーク (casework) とは、困難な課題、問題をもった対象者(クライエント)が主体的に生活できるように支援、援助していく個人や家族といった個別に対する社会福祉援助技術のこと」(Wikiedia)です。

そもそも「バイステック」か「バイスティック」かという問題があります。Googleで「バイステック」で検索すると「もしかして: バイスティック」と出てくる始末ですので、「バイスティック」が本流として扱われているようですが、この原則の提唱者はアメリカの神父で社会福祉学者のフェリックス・P・バイステック(1912〜1994年)であり、名前のスペルはFelix P. Biestek ですので、バイステックと読むのが自然ではないでしょうか。tekをティックと読むのは何語読みなのでしょうか。英語で類例があるのでしょうか。「ケースワークの原則ー援助関係を形成する技法 」(フェリックス・P. バイステック (著), Felix P. Biestek (原著), 尾崎 新 (翻訳), 原田 和幸 (翻訳), 福田 俊子 (翻訳) )という本にも「バイステック」と表記されていますので、バイステックでいいのではないかと思います。

裏にのりのついた紙片を「ステッカー」と言っていますが、英語のスペルはstickerですので、「スティッカー」の方が近いと思います。日本人はスティッカーと発音しづらいので、ステッカーが日本語辞書に搭載されたのはよく分かるのですが、発音しやすい「バイステック」よりも「バイスティック」の方が本流になる理由が分かりません。

「バイステックの7原則」の内容は、ねるこはそだつというサイトによれば、以下のとおりです。

1.クライエントを個人として捉える(個別化)
2.クライエントの感情表現を大切にする(意図的な感情の表出)
3.援助者は自分の感情を自覚して吟味する(統制された情緒的関与)
4.受けとめる(受容)
5.クライエントを一方的に非難しない(非審判的態度)
6.クライエントの自己決定を促して尊重する(クライエントの自己決定)
7.秘密を保持して信頼感を醸成する(秘密保持)


●バイステックの7原則の解釈でケースワーカーが不幸になる

上記の原則から、受給者の類型化は禁物であるから対応マニュアルは作成しないという方針の福祉事務所があります。宇都宮市福祉事務所のように「危機管理マニュアル」(2009-04-03朝日参照)を作成するのは誤りということになります。しかし、類型化しなければケースワーカーの経験が生かされないのではないでしょうか。

「百姓は生涯一年生」という言葉があります。何千年の時が流れても、気候は毎年違います。だから農業は難しいという意味です。1年として同じ気候の年はありませんが、やはり類似性の中に法則性を見いだして賢明に対応することは可能ではないでしょうか。農業では毎年異なる気候を相手にしていますが、経験がものを言うことはだれしも認めるところではないでしょうか。

ベテランのケースワーカーが経験を生かしているとすれば、類型化をしているということではないでしょうか。そして類型化するということは、個性を否定することにはならないと思います。

人類は同じ国の人間であっても一人一人生まれも育ちも違いますが、国民性は否定できないと思います。バイステック博士の説が「類型化することによって偏見を持ってはいけない」という意味なら理解できますが、一般論を全否定することを意図しているなら、正しいとは思えません。ケースは一つ一つ違っても一般論は成り立つものだと思います。

受給者の感情表現を大切にしなければならないために、ケースワーカーは受給者から怒鳴られても、蹴られても我慢しなければならないとされている福祉事務所があります。ケースワーカーも人間です。罵詈雑言を浴び、暴力を受けたら、少なくとも精神病に陥ってしまいます。ケースワーカーの健康を犠牲にして受給者の感情表現を大切にする意味はないと思います。助ける側が病むような援助は倒錯した福祉であり、無意味です。

怒鳴る受給者は相手にしないことを原則とすべきだと思います。援助者の健康を第一に考えるべきだと思います。暴力を振るう受給者は刑務所で暮らしてもらうべきです。

福祉事務所は受給者の言うことを受容しなければならないから、不正受給したいと言われたら、受け入れるべきだとする方針の福祉事務所があります。福祉事務所は税金を配っているのですから、「それは駄目です」と言わなければならないと思います。

(文責:事務局)
フロントページへ>その他の話題へ>このページのTopへ