森友学園への土地売却は1.7兆分の1の確率の特例だった

2017-12-01

●川内博史議員が「特例4連発」を明らかにした

2017年11月28日の衆議院予算委員会で川内博史委員がよい質問をしました。同日付け日刊ゲンダイは、「学校法人「森友学園」への国有地売却の特異性と、安倍首相の無責任さが改めて浮き彫りにされた。」と書きます。 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/218489/1 https://ameblo.jp/tiger-mask-fighter/entry-12332203414.html

続けて次のように書きます。

立憲民主党の川内博史議員の質問に対し、財務省の太田充理財局長は「平成24〜28年度(2012〜16年度)に売却契約を結んだ1194件の中で、売却を前提に定期借地契約を結んだのは本件のみ」「平成24〜28年度に売却契約を結んだ1241件中、土地代金の分割払いを容認した延納特約を売買契約に付したのは本件のみ」と答弁した。

さらに太田局長は、随意契約では1カ月以内に価格を公表すると定めた同省通達に沿わず「非開示」と決めたことや、国が損害賠償請求訴訟を回避できる瑕疵担保責任免除特約を設定したことも「本件のみ」と述べ、財務省が森友学園の事案を特別扱いしたことを認めた。

1194件とは、財務省所管の契約のうち公共性の高い随意契約の件数です。

1241件とは、一般会計のほか空港整備勘定(特別会計)を含めた随意契約の件数です。

売却価格の非公開の分母となる件数は、2013〜16年度の公共性の高い随意契約の件数972件です。

まとめると、次のとおりです。

売却価格を非公開とした確率 1/972
売却を前提に定期借地契約を結んだ確率 1/1194
国が損害賠償請求訴訟を回避できる瑕疵担保責任免除特約を設定した確率 1/1194
土地代金の分割払いを容認した延納特約を売買契約に付した確率 1/1214

全部をかけ算すると1/1,682,260,000,000となりますから、森友学園の特例扱いは、おおざっぱな話として、約1.7兆分の1の確率となります。

政府がこれだけの特例扱いをした理由を安倍晋三首相は説明する責任があります。

政府の説明責任を直接的に規定した法律は、おそらくないと思いますが、次の法律は、政府に説明責任があることを前提として規定されています。(「人を殺すな」、「物を盗むな」と直接的に書いた法律がないのと状況が似ています。)

・行政機関が行う政策の評価に関する法律第1条
・中央省庁等改革基本法第4条第7号
・公文書等の管理に関する法律第1条


安倍首相が説明できないなら、そのことについての責任を取るべきです。

●安倍首相は常識が分かっていない

ところが安倍首相は、責任を取るつもりはありません。

なぜなら、11月27日の衆議院予算委員会で長妻昭委員に次のように答弁しているからです(28日付けヤフーニュースの「衆院予算委 長妻氏、安倍首相に謝罪求める」から)。

衆議院予算委員会で立憲民主党の長妻代表代行は森友学園への国有地売却を巡り、会計検査院が「土地の値引き額の根拠が不十分」と指摘したことを受けて、これまでの政府の答弁について安倍首相に謝罪を求めた。

立民・長妻代表代行「国会に対してこれは申し訳なかったと。(価格算定は)適切ではなかったというようなことは、国民の謝罪も含めて、お認めにならないんですか」

安倍首相「財務省や国土交通省から適切に処分していたとの答弁があったところであり、私もそのように報告を受けていました。これまでの私の発言については、そのような理解の上で申し上げたものでありました」

つまり首相は、土地売却が適切でなかったとしても、それは財務省や国土交通省の責任であって、自分は何も悪くないもん。「適切だった」という報告を上げてきた財務省や国土交通省が悪い、自分は被害者だと言いたいのだと思います。

しかし、首相は行政府の長であり、「私は総理大臣であります」と大いばりしています。(ただし安倍首相は、「私は立法府の長」だと何度も言っています。これは、自分が国会議員の中の最大の党の党首だから、という意識の表れでしょう。)

部下の失敗は、トップの失敗です。

現場の職員が不適切な土地取引を行ったら、トップが謝るのは当然です。トップには強い権限が与えられているからです。

確かに昔は、「国家公務員の人事は、最終的には、すべて内閣の権限と責任の元で行われる(日本国憲法73条4号)」(Wikipedia内閣人事局)という建前はあっても、実際は、官邸が事務方の人事に介入できなかったようですが、2008年に制定された国家公務員制度改革基本法により、2014年5月30日から内閣官房に内閣人事局が設置され、内閣の人事権は強化されたのですから、なおさら安倍首相には、事務が適正に執行されるようにする大きな責任があると言えます。

首相は、川内氏の質問に対して「私自身で申し上げたのは、(財務省が)適切な価格で売買していると信頼していると申し上げた。部下を信頼するのは当然だ。私が調べて私が適切だと申し上げたことはない。」と答弁しました。

「部下を信頼したからトップに責任はない」という理屈が通るなら、トップの謝罪は一切不要になります。部下の報告を検証せず、部下を信頼したことに上司の落ち度があります。

「部下の報告が間違っているから、上司に責任はなく、謝罪も必要ない」という理屈が通ると思っている無責任男に首相の資格はないと思います。

もう一つ安倍首相が常識を弁えない点を挙げると、「無罪の推定」の原則を理解していないことです。

2017年10月13日付け朝日の記事「首相、籠池被告を「詐欺働く人物」 「無罪推定」どこへ」には、次のように書かれています。

安倍晋三首相が11日夜のテレビ朝日の番組「報道ステーション」で、学校法人「森友学園」の前理事長の籠池泰典被告(64)について「詐欺を働く人物」と語った。籠池被告は詐欺罪などで起訴されたが、裁判の判決はまだ出ていない。法曹関係者から「無罪推定の原則を無視した発言だ」との批判も出ている。

番組では各党党首の討論を放送。安倍首相は、番組コメンテーターから森友学園の問題について問われた際、籠池被告について「詐欺で逮捕、起訴されました。これから司法の場に移っていくんだろうと思います」としながら「こういう詐欺を働く人物の作った学校でですね、妻が名誉校長を引き受けたことはやっぱり問題があった。こういう人だからだまされてしまったんだろう」と述べた。

大阪地検は、国や大阪府・市から補助金をだまし取ったとして籠池被告と妻を詐欺罪などで起訴したが、公判は始まっていない。
(以下略)

安倍首相は、籠池被告を「詐欺を働く人物」とテレビで言ったのです。

しかし、マスコミは度々無視していますが、「無罪の推定」の原則というものがあります。

法律の根拠としては、刑事訴訟法第336条だと言われています。また、日本も批准している国際人権規約も「そのB規約第14条2項は「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。」と、権利の形で明確に保障している。」(Wikipedia推定無罪)とされます。

歴代首相の中で刑事被告人を犯罪者呼ばわりした人がいたでしょうか。思い出せません。

有罪判決を受けていない人を犯罪者呼ばわりしてはいけないことは、世界の常識です。

安倍首相は、責任を取ることの意味が分かっていませんし、判決前の犯罪者呼ばわりが人権侵害であることも分かっていません。

自民党と公明党に投票した国民に何の反省もないのでしょうか。

(文責:事務局)
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