右傾化する朝日新聞を講読できるか

2010-01-26,2010-02-04追記,2010-02-09追記,2010-02-27追記

●ひどすぎる朝日の鼎談記事

2010-01-19朝日が安保条約50周年を記念して「日米同盟/成果と展望」というテーマで「識者」の鼎談を掲載しています。興味のある方は、図書館でお読みください。

議論をした3人とは、外交評論家の岡本行夫氏と防衛大学校教授の山口昇氏と防衛政務官の長島昭久氏です。司会者の薬師寺克行という朝日のエディターも右派だそうです。

御用評論家と御用学者とタカ派政治家に議論させて、それらの発言のどこかに真実があると思わせる朝日のやり方はひどすぎます。読者に悪魔の選択を迫るものです。

●なぜ日本人が危ない目に遭うのか

岡本氏は次のように言います。

日本さえ悪いことをしなければ世界は平和だという理屈でやってきた。それが最近変わってきている。テロの恐怖とか、世界の紛争地で日本人が危ない目に遭うことも多くなってきた。

本当に日本は悪いことをしていないのですか。アメリカの殴り込み部隊に毎年2000億円もの思いやり予算をくれてやれば、テロリストから恨まれても当然ではないでしょうか。

日本がテロリストに狙われるとすれば、日本がアメリカの軍事政策に追随しているからだと思います。

「米軍再編」の名で安保条約の枠組みさえ超えて、地球的規模で自衛隊と共同作戦がとれる態勢づくりが進められています。」(2010-01-16赤旗)。

テロリストがなぜアメリカを襲うのかという理由や日本がアメリカの戦争に加担してきたという事実に言及しない岡本氏の発言は詭弁ではないでしょうか。

●軍事同盟は必要か

岡本氏は、「日米安保体制による抑止力に頼らざるを得ない」、「有事に日本が独力で対処するのは無理で、日米が一本化してやるより仕方ない。」、「日本は米軍の抑止力から最大限の恩恵を被っている。」と言います。

有事と言いますが、現実的にどこの国が日本に攻め入ってくるでしょうか。テレビ番組の太田総理で、だれかが言っていたと記憶しますが、米軍が日本に駐留していないと中国が攻めてくるというのが、軍事利権関係者の理論です。

しかし、中国は日本を侵略するための軍艦を持っていないと思います。なるほど中国の軍事費は増大しているという話もありますが、米軍のいない日本に攻め込むでしょうか。攻め込んで、その先どうするのでしょうか。占領するのでしょうか。皆殺しにするのでしょうか。失敗したら中国の政権は吹っ飛びます。現在の権力者がすべてを失う可能性があります。そんな危ない賭けに出るでしょうか。

「米国を中心とした軍事同盟は、この半世紀に多くが解散、機能不全、弱体化に陥っており、「前世紀の遺物」ともいうべき存在です。現在、機能しているのは北大西洋条約機構(NATO)、日米、米韓、米豪の四つだけです。」(2010-01-16赤旗)。

2010-01-13下野の「時評」でも共同通信編集委員の太田昌克氏が次のように書いています。

いたずらに「同盟の危機」をあおるのではなく、「抑止力堅持」を目的とした巨大軍事施設の新設が本当に必要なのか、あらためて問い直さなければならない。そのために不可欠なのは、日米同盟の最大の存在理由とされる「抑止力」の徹底検証である。

岡本氏は「抑止力」の徹底検証をしていないと思います。

●天木直人氏も嘆く

天木直人氏もメルマガで「日米安保50周年礼賛一色の大手新聞」と題する記事を書いています。一部を引用します。出典は、本音言いまっせー!http://blogs.yahoo.co.jp/hellotomhanks/60831706.htmlです。

私がここで指摘したいのは日米安保50周年を報じる大手新聞のすべてが 礼賛一色になっているという現実だ。

 読売、産経新聞の論調が日米安保礼賛である事はまだ分かる。

 しかし毎日、東京、朝日などすべてが日米同盟重視の論調なのだ。

 特に、かつてはリベラル、反戦の雄とみなされていた朝日新聞の 変貌振りが際立つ。

 1月19日の朝日は「日米同盟 成果と展望」と題する識者の鼎談が 特集されていた。

 その顔ぶれを見ただけで朝日新聞の意図が見える。

 鼎談の中身を読まなくてもわかる。

 外務官僚OBの岡本行夫氏、防衛政務官の民主党議員長島昭久氏、 そして元陸将で防衛大学校教授の山口昇氏、これである。

 おまけに司会役が朝日の右派の雄である薬師寺克行政治エディターと なっている。

 彼らが語る論説は、ためらうところがない。

 「日米安保体制の目的は抑止だということ。『やれるものならやってみろ。 そのかわり米国が報復するぞ』と。」(岡本行夫)

 暴力に頼んだガキの喧嘩の発想だ。

 「中国や韓国、東南アジアの国にとって日米安保があるから日本を 信用できるという意味もあった」(山口昇)。

 そこまで信用されていない日本を、元自衛隊幹部として恥ずかしく 思わないのか。

 「敗戦後しばらくは血なまぐさい話は拒否してきた・・・冷戦が終わると 『そんなめでたい世界ではなさそうだ』」という話が国民の間でも 感じられるようになった。一番のきっかけは湾岸戦争だ」(長島昭久)。

 日本も米国の不正義な中東政策に協力して血を流す覚悟をしろとでも 言うつもりなのか。 そんな誤った戦争で真っ先に血を流す覚悟が長島にあるのか。

 私がここで指摘したい事は、これら三名の、独り相撲のようなたわごと ではない。

 これらの政治家、官僚、自衛官らが鳩山政権の対米外交を見事に 命令している言葉を見つけたからだ。

 「米国の(核)拡大抑止に依存している現状を考えた時に、 密約の調査結果は今後の政策を縛るものであってはならない」(長島昭久)。

長島氏の言っていることもひどいと思います。密約に関する調査結果は、事実をあきらかにするものではなく、目的に沿った作文にすると宣言しているようなものです。

長島氏は、この鼎談について、彼のブログで共産党機関紙「赤旗」から名指し批判という記事で言い訳を書いています。そこで次のように書いています。

岡田外相が主導する「核密約」解明も、歴史的事実を明らかにする意義は大きいが、その結果が我が国の今後の安全保障政策を縛るものとなってはなるまい。つまり、核保有を拒否する我が国の立場を前提にした場合、北朝鮮や中国やロシアの巨大な核戦力を前にその安全保障を確立するためには、米国による拡大抑止戦略と緊密な連携をとる(敢えて、ここで「依存する」という言葉使わない!)必要があることは論を俟たないだろう。

「北朝鮮や中国やロシアの巨大な核戦力を前にその安全保障を確立するため」と書きますが、北朝鮮や中国やロシアが日本に核攻撃をするかもしれないと言いたいのでしょう。それらの国が日本に核攻撃をして、それから先どうするのでしょうか。何のために核攻撃をするのでしょうか。そこが私には分かりません。

●赤旗も怒る

2010年1月22日(金)「しんぶん赤旗」も「「朝日」てい談の暴論/ 核持ち込み認め、三原則堅持?」の記事でこの問題を取り上げています。

やはり、天木氏同様、「「朝日」の鼎談は現行安保条約50年企画で、防衛省の長島昭久政務官、元外務省幹部・元首相補佐官の岡本行夫氏、元陸上自衛隊幹部の山口昇防衛大教授と、日米軍事同盟強化論者ばかりをそろえて行われています。」と書いています。

大手メディアは、権力に尻尾を振らないと儲からないのでしょうか。ひどい記事をカネを払って読む気になれません。読者は離れるでしょうが、それでも儲かる仕組みがあるのでしょうね。

●なぜメディアが腐っているのか

民主党を支える運動体に「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)というものがあります。「この「21世紀臨調」に、大量のマスメディア関係者が加わっています。  155人の運営委員(12月2日現在)は、マスメディア・言論関係者が七十数人も名を連ねており、半数近くを占めています。しかも、主要全国紙・通信社のほとんどの政治部長がメンバーといった具合です。」(2010年1月18日(月)「しんぶん赤旗」の「21世紀臨調にメディアが関与」の記事)。もちろん大新聞には書いてないことですが。

メディアが堕落している理由は、この辺にありそうです。

●鳩山首相は普天間基地の代替施設なき返還を唱えていた(2010-02-04追記)

2日の衆議院本会議で日本共産党の志位和夫委員長は、代表質問で次のよう発言しました(2010-02-03赤旗)。

普天間基地の苦しみは、県内はもとより、本土も含めて、どこへ移しても同じ苦しみであり、「移設条件つき返還」では問題は解決しません。問題解決の道が、「代替施設なき返還」ーー「無条件撤去」を、正面から米国に求める以外にないことはいよいよ明白であり、展望のない「移設先探し」はもうやめるべきです。

だいたい総理自身、2005年7月26日の本会議の質問で、この壇上で、「普天間基地については、代替施設なき返還をアメリカに求めるべきであります」と、小泉首相に要求していたではありませか。先日の衆議院予算委員会で、わが党の赤嶺議員がこの事実を指摘し、「政権についたいまこそ、この主張を実効に移すべきではないか」とただしたのにたいし、総理は、「米軍との交渉をかんがみたときに、それは現実的に不可能だ」としか答えませんでした。

総理にあらためて問います。「現実的に不可能だ」という根拠はいったい何ですか。総理になると「不可能だ」と態度を変えた理由は何ですか。しかとお答え願いたい。

鳩山由紀夫総理大臣は、2005年7月26日の本会議の質問で「普天間基地については、代替施設なき返還をアメリカに求めるべきであります」と、小泉首相に要求していたのです。

ところが政権に就くと、手の平を返したように「米軍との交渉をかんがみたときに、それは現実的に不可能だ」と言ったというのです。

人間だれしも「有言不実行」や「立場でものを言う」ということはあるものですが、これはひどすぎます。自分でできないことを他人にやれと言うべきではないと思います。政権に就いて実行できないのなら、「普天間基地については、代替施設なき返還をアメリカに求めるべきであります」などと格好のいいことを言うべきではなかったと思います。

普天間基地問題は、日本共産党の議員や以前の鳩山氏が言うように、無条件撤去が正解だと思います。アメリカは日本を守るためではなく、アメリカの世界を支配するための戦略として日本に基地を置いているのですから、撤退した米軍がどこに行くかなんていうことを、なんで日本が考えてやらなきゃいけないのでしょうか。

鳩山首相の答弁は、赤旗によれば次のとおりです。

アジア・太平洋地域には依然不安定、不確実な要素が存在しており、こういうなかで在沖の米軍を含む在日米軍の抑止力というものが、やはりわが国の安全保障にとり重要だと考えている。したがって、普天間飛行場の一日も早い返還を実現するためには、やはり代替施設なき返還というものは現実的に不可能だ、そのように考えた。

鳩山氏は、野党の時代には、「在日米軍の抑止力」なんてないと思っていた、あるいは、あるとしても日本の安全保障にとって重要なものではないと考えていたはずです。政権を取ると「抑止力」が生まれてきたり、重要なものになってきたりするというわけです。説得力ゼロです。

●在日米軍の「抑止力」とは何か(2010-02-04追記)

志位委員長は次のように続けます。

昨年12月の党首会談で、私が、普天間基地の無条件撤去を主張したのに対し、総理は、「海兵隊は日本の平和を守る抑止力として必要」とのべました。しかし、海兵隊とは、ベトナム戦争、アフガン・イラク戦争など、米国の先制攻撃の戦争で、まっさきに「殴り込む」ことを任務とした部隊であり、その実態は、平和のための「抑止力」でなく、戦争のための「侵略力」ではありませんか。

だいたい「抑止力」というが、いったいどういう危険にたいする「抑止力」なのか。具体的に説明していただきたい。

沖縄県民にとって海兵隊とは「抑止力」でなく、事故と犯罪をもたらす「危険の根源」にほかなりません。「抑止力」の3文字で、「米兵におびえ、事故におびえ、危険にさらされながら生活を続け」る苦しみを、これ以上、沖縄県民に押し付けることは、もうやめるべきです。

海兵隊は、沖縄にも、日本にも必要ない

鳩山首相の答弁は。次のとおりです。

わが国を取り巻く環境、例えば北朝鮮による核実験、ミサイルの発射、こういった依然として核戦力を含む大規模な軍事力があるという認識をしなければならない。こういう状況のなかで日米安保条約によってわが国にたいする武力攻撃は自衛隊のみならず米軍とも退治することになるわけで、したがって侵略が未然に抑止されると、その力を持つと認識をしている。

「大規模な軍事力」と言いますが、北朝鮮の軍事力は日本のそれより小さいのではないでしょうか。

要するに、北朝鮮の指導者は狂っているから何をしてくるか分からん。だから軍事的脅威があると言いたいのでしょう。しかし、狂った指導者は、国家の破滅も自分の死も恐れないでしょうから、在日米軍なんて「抑止力」にならないはずです。北朝鮮が本当に狂っているなら、在日米軍がいてもいなくても日本に攻撃してくると考えるべきです。

北朝鮮の指導者が「抑止力」を感じるほどの判断力を持っていると鳩山氏が言うのなら、日本にミサイル攻撃をしてくる北朝鮮の軍事的メリットを論理的に説明すべきです。正気でなければ、「抑止力」を意識できません。北朝鮮の指導者が理性を持っているなら、在日米軍がいてもいなくても、日本を攻撃することはないと考えるべきです。

鳩山首相の答弁は、北朝鮮の正気と狂気をご都合主義的に使い分けているだけで、「抑止力」が存在することを説明していません。

●無条件返還論に触れない下野(2010-02-09追記)

2010-02-07下野の22面は「教育のページ」です。「NEWSなぜなに」のコーナーで「米軍普天間飛行場の移設」問題を解説しています。

移設が進まない理由を次のように解説しています。

住民からは飛行場をなくしてほしいという要求がずっとあり、1995年に米兵が少女に暴行した事件をきっかけに、その声は強まりました。日本は米国と話し合い、この飛行場をなくして、土地は日本に返されることが96年に決まりました。

約束では5年から7年の間に返されることになっていましたが、今も使われ続けています。代わりに、沖縄県内に新しい基地を造る準備が、おくれているためです。

また、「昨年の衆院選で政権についた鳩山首相は、野党時代に県外や国外への移設を主張してきました。」とだけ書いており、彼が「普天間基地については、代替施設なき返還をアメリカに求めるべきであります」と主張していたことには触れていません。

要するに、下野は、「普天間飛行場の無条件返還はあり得ない」という前提で解説しています。「無条件返還」の立場で解説しないから下野が腐っていると言うつもりはありません。しかし、少なくとも「無条件返還」という考え方があるということを紹介して、解決策の選択肢として示すべきでしょう。だって、「無条件返還」論は、筋が通っているだけでなく、現首相が野党時代に政権に要求していた有力な見解なのですから、本来、無視し得ない説だと思います。

無条件返還はあり得ないという前提での解説で読者(特に生徒)を「教育」されてはたまりません。

●「死ぬ覚悟がある」は本当か(2010-02-27追記)

2010-02-25朝日に「沖縄の海兵隊/抑止と危機対応で重い役割」という記事があります。ポール・ジアラ元米国防総省日本部長の投稿です。

彼は、次のように書いています。

海兵隊は世界で最も能力の高い戦闘部隊だ。日本でのプレゼンスは北朝鮮を含む「敵」に、攻撃を躊躇させる抑止力になっている。 (中略)
それなのに、海兵隊が日本の将来にとってなぜ重要なのかという基本的な問題は、時として沖縄の基地再編論議の中で忘れられてしまう。日本の政治論議で、海兵隊は日本の安全保障に関係がなく、その兵力を削減しても問題ないとみなされているのは皮肉で残念なことだ。
沖縄の海兵隊は「日本の海兵隊」だ。太平洋海兵隊のスタルダー司令官は「日本に駐留する米軍人は、日本防衛のために死ぬ覚悟がある」と語る。これが抑止力の源泉だ。

朝日は、この投稿と違った見解を今後載せるのでしょうか。それとも、この見解で読者を洗脳するつもりでしょうか。

それはともかく、岡田(克也)外相は、「日米同盟はさらに30年、50年持続可能なものになる」と2009-11-18の衆院外務委員会で答弁しています(2009年11月20日(金)「しんぶん赤旗」の米軍基地面積が倍増/80年比 日米同盟から脱却迫る)。今年1月8日の定例記者会見でも「30年50年続く日米同盟にしていくとの認識を互いに共有している」と発言しています(岡田外相「30年、50年続く日米同盟にしていく」JANJAN記事)。こうした発言の根底には、「日本に駐留する米軍人は、日本防衛のために死ぬ覚悟がある」という考え方があると思います。与党は、この建前を崩せないのでしょうね。

ちなみに岡田克也氏は、外交機密費問題で、野党時代の2002年2月の衆院予算委員会で「国民の払った税金をわけのわからない形で政治家が勝手に使っているのではないか。そういう疑念に対してきちんと答えることも大事な改革」と発言しています。

しかし、2001年ごろまで「年間約55億円の外交機密費のうち、約20億円が官邸に上納されてい」たことについて、「岡田氏は、「外交用務に使われたので違法はなかった」と釈明。一方、上納分の使途について「詳細については申し上げられない」としています。」(2010-02-11赤旗)。

立場が変わると正反対のことを言うのですね。  

(文責:事務局)
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