阿刀田高氏はイスラエル問題を知らないのか

2017-08-28

●阿刀田高氏が東京新聞にイスラエル問題を書いた

ダムの根拠にはウソが多いので、当サイトは、ウソを暴くことに努めています。

小説家の阿刀田高氏が東京新聞に「この道」という自伝エッセイを書いており、2017年7月21日には、次のように書いています。

聖書についてのエッセイを綴るためイスラエルを訪ね、道すがら死海のほとりマサダまで足を延ばした。マサダの丘は西暦73年ローマ軍に攻められて陥落し、これにてユダヤ人の国家が消滅したところである。ユダヤ人は世界に散り、国をなくしながらも民族の血を守り続け、1948年にイスラエル国として復活することになる。

ーしぶといなあー
ほかの民族ならとうに消えていたのではあるまいか。それを支えたユダヤ教の力にあらためて驚きの思いを馳せてしまった。

これを読んで「なんだこら」と思いました。

物知りで知られる阿刀田氏がこんな一般的な説明を書くのはどういう意図があってのことかと思いました。

「一般的な説明」は、例えば、カレイドスコープのイスラエルはタルムードの国であることを宣言しているに次のように書かれています。

およそ2000年前、ローマ帝国によって、エレサレムの神殿を破壊され、祖国を追われて世界に散らばったユダヤ人たちが、迫害や差別を逃れて、神が約束した祖先の土地に戻って国を再建したというのが一般的な説明になっている。

阿刀田氏の記述は、この「一般的な説明」と変わりません。

この「一般的な説明」を覆すような記述がこのあとに出てくるのかと期待しましたが、一向に出てきません。

イスラエル問題に関する阿刀田氏の理解は、「一般的な説明」の域を出ていないのでしょうか。

●阿刀田氏の記述のどこが問題か

阿刀田氏の上記記述には、少なくとも次の三つの点で問題があると思います。
1. 2013年で人口の約20%がアラブ人である(Wikipedia)イスラエルをユダヤ人の国家と呼んでよいのか
2. ユダヤ人は「国をなくしながらも民族の血を守り続け」たと言えるのか
3. ユダヤ教の力でイスラエルは建国されたのか

●血統は2000年間続いたのか

日本人の覚醒【The Awakening of The Japanese】の偽ユダヤ人(白人)の起源には、次のように書かれています。

ノーベル賞受賞者の3分の1以上はユダヤ人といわれているが、ハイネ、マルクス、フロイト、アインシュタイン、チャップリン、キッシンジャーなどなどといった数多くの有名ユダヤ人たちは、不思議なことにほとんど白人系である。一体どうして世の中には「白人系のユダヤ人」が数多く存在しているのか? 本当のユダヤ人は白人では決してないはずである。

『旧約聖書』に登場するユダヤ人に白人は1人もいない。彼らは人種的に「セム系」と呼ばれ、黒髪・黒目で肌の浅黒い人々であった。モーセやダビデ、ソロモン、そしてイエスもみな非白人(オリエンタル)だったと記述されている。

一般にユダヤ社会では、白人系ユダヤ人を「アシュケナジー系ユダヤ人」と呼び、オリエンタル(アジア・アフリカ系)ユダヤ人を「スファラディ系ユダヤ人」と呼んで区別している。

アシュケナジーとは、ドイツの地名にもなっているように、もとはアーリア系民族の名前であった。一方、スファラディとは、もともと「スペイン」という意味だが、これは中世ヨーロッパ時代のユダヤ人たちの多くが地中海沿岸、特にイベリア半島(スペイン)にいたことに由来している。

8世紀以前の世界には、ごくわずかな混血者を除いて、白人系ユダヤ人はほとんど存在していなかった。それがなぜか8〜9世紀を境にして、突然、大量に白人系ユダヤ人が歴史の表舞台に登場したのである。いったい何が起きたのか?

(略)

アシュケナジー系ユダヤ人N・M・ポロックは、自然科学の教科書の翻訳者であり、出版会社から頼まれて本の校正もしていた学者であった。その彼が1966年8月、イスラエル政府に抗議したことがあった。彼はその当時のイスラエル国内の60%以上、西側諸国に住むユダヤ人の90%以上は、何世紀か前にロシアのステップ草原を徘徊していたハザール人の子孫であり、血統的に本当のユダヤ人ではないと言ったのである。

イスラエル政府の高官は、ハザールに関する彼の主張が正しいことを認めたが、後にはその重要な証言をもみ消そうと画策。ポロックは自分の主張を人々に伝えるため、その生涯の全てを費やしたという。

このように「アシュケナジー系ユダヤ人」は、『旧約聖書』に登場するユダヤ人(セム系民族)とは「血縁的に全く関係のない民族(ヤペテ系民族)」であり、国をあげてユダヤ教に大改宗して以来、現在に至るまで"ユダヤ人"になりきってしまっているのである。

「アシュケナジー系ユダヤ人」が非セム系民族であるとすると、現在、世界中に散らばっている"ユダヤ人"と呼ばれている人間の90%以上が、本来のヘブライ人とは全く関係のない異民族ということになってしまうが、これは恐るべき事実である。この「ニセユダヤ人問題」(ちょっと言葉が悪いが)が世界史のタブーであることがうなずけよう。

「(1966年)当時のイスラエル国内の60%以上、西側諸国に住むユダヤ人の90%以上は、何世紀か前にロシアのステップ草原を徘徊していたハザール人の子孫であり、血統的に本当のユダヤ人ではない」という説は、有効な反論を見ないので、正しいと考えてよいと思います。

●建国の根拠はユダヤ教なのか

イスラエル建国の根拠となった思想はシオニズムと呼ばれています。

シオニズムとは、「19世紀末、ヨーロッパで始まったユダヤ人国家建設を目ざす思想および運動。」(日本大百科全書(ニッポニカ)の解説)と一般に理解されています。

ヤコブ・ラブキン教授(カナダの歴史学者、モントリオール大学教授、ユダヤ教徒)は、シオニズムはユダヤ教と相容れないと言います。Wikipediaには、次のように書かれています。

2010年4月22日放映のテレビ番組NHK BS1アジアを読む「中東問題の根源は ヤコブ・ラブキン教授に聞く」に出演。インタビューにこたえ「シオニズムは、ユダヤ教の集団を1つの民族に統合し、共通の言語を与え、パレスチナの土地に移住させ、支配させようという、19世紀の終わりにヨーロッパで生まれた政治運動だ。宗教用語を多用するが、他の者への同情や調和、親切心といったユダヤ教の教えとは根本的に相容れない。無神論的とも言える。」等と述べた。

ラブキン教授の説が正しいとすれば、ユダヤ教はイスラエル建国の根拠ではありませんから、阿刀田氏の「それを支えたユダヤ教の力にあらためて驚きの思いを馳せてしまった。」は、何の意味も持たないことになります。

イスラエル建国は、民族問題でも宗教問題でもないというのが、自分で物を考える人にとっては、今や常識ではないでしょうか。

以上により阿刀田氏の記述には、かなり問題があると思います。

東京新聞も事実確認をすべきだと思います。

阿刀田氏は、2017年8月27日付け東京新聞の「この道」によれば、小説についての格言として、「*恵まれない人への光。」を大切にしているようです。

(文責:事務局)
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