ダム推進派による見直し

2009-11-25,2009-11-27追記,2009-11-28追記,2009-12-07追記,2009-12-08追記

●ダム検証チーム発足

民主党が発足させる治水策を検討する有識者会議について、2009-11-21 朝日は次のように報道しています。

脱ダムの治水基準見直し、有識者会議の9人選任 国交相

 全国のダム事業の見直しを掲げる前原誠司国土交通相は20日、ダムに頼らない新たな治水基準を検討する有識者会議の委員9人を明らかにした。前原国交相は来年度の予算編成にあたり、所管する56のダム事業について再検証するものと継続するものに分けた上で、有識者会議が示す基準をもとに中止する事業を決める方針だ。

 委員9人の専門分野は、河川工学のほか森林科学、災害心理学、行政法など。座長には、旧建設省ダム水理研究室長で京大工学部長を務めた中川博次・京大名誉教授(水工学)が就く。前原国交相は「できるだけニュートラル(中立)な方を選ばせていただいた」と述べた。  有識者会議は個別のダム事業を再検証するための評価基準やダムに代わる治水対策の立案手法を来夏までに提示。八ツ場(やんば)ダム(群馬県)を含め、再検証の対象とされた個別のダム事業にあてはめ、最終的に中止するか、継続するかを決める。
2009-11-21熊本日日新聞は、次のように報道しています。
ダム検証チーム発足 国交省、別の治水策探る

http://kumanichi.com/news/local/main/20091121002.shtml  前原誠司国土交通相は20日の閣議後会見で、川辺川ダムなど全国 143ダム計画に代わる治水策を探る有識者会議の発足を発表した。 ダムを軸にした治水策(洪水対策)の転換を図る。

 同会議の初会合は12月3日。2010年夏に、コストや環境影響 など多角的検証し、ダムに代わる治水策の基準を策定。11年夏まで には河川行政の基準である各河川の想定最大流量(基本高水)も検証 し、治水の基本理念をまとめる。

 国交省は中止方針を明らかにしている川辺川ダムと八ツ場ダム(群 馬県)などを除いた国直轄ダム計画を、年末までに「継続」「凍結」 に分類。有識者会議の基準に従い、凍結となったダムに代わる治水策 を各河川で検討する。基準は川辺川、八ツ場両ダムの代替治水策にも 反映される見込み。

 会議は河川工学や行政学など幅広い分野の9人で構成。昨年、蒲島 郁夫知事に提言した川辺川ダム有識者会議の森田朗東京大大学院教授 (公共政策学)と鈴木雅一同教授(森林科学)も加わる。

 前原国交相は「社会福祉などの財源が必要な中、今後ダムに予算を 投じられない。できるだけ中立な立場から最適な河川づくりを考えて いただく」と説明。策定された指針に従い、道府県営ダム計画も見直 すよう関係自治体にも働き掛ける。

 県内の国直轄ダム計画は川辺川ダムのほか立野ダム(大津町、南阿 蘇村)と七滝ダム(御船町)。県営は路木ダム(天草市)や五木ダム (五木村)がある。(清田秀孝)

 その他の委員は次の通り。▽座長=中川博次京都大名誉教授(水理 学)▽宇野尚雄岐阜大名誉教授(地盤工学)▽三本木健治明海大名誉 教授(行政法)▽田中淳東京大大学院教授(災害心理学)▽辻本哲郎 名古屋大大学院教授(河川工学)▽道上正※鳥取大名誉教授(土砂水 利学)▽山田正中央大教授(水工学) ※は「矢」の右に「見」


●どこが中立か

上記有識者のうち、宇野尚雄岐阜大名誉教授、辻本哲郎 名古屋大大学院教授、道上正※鳥取大名誉教授(※は「矢」の右に「見」)、山田正中央大教授、森田朗東京大大学院教授は、ダム推進派と見られています。

座長の中川博次京都大名誉教授も旧建設省ダム水理研究室長ですから、どちら側かは想像がつきます。

山田正中央大教授は、今年10月20日の読売新聞で八ッ場ダム必要論を展開し、「近年は予測困難な気象現象が発生しており、それを考慮した治水対策が不可欠だ。長期的には堤防改修も必要だが、当面の費用対効果を考えれば、ダムを含めた治水対策の方が効果的だ。」と言っています。

道上氏については、民主党衆議院議員村井宗明氏のサイトをご覧ください。彼の国土交通委員会での八ツ場ダムに関する質問資料が掲載されています。

八ッ場ダム「ヒ素隠ぺい問題」のポイント(PDF)を是非ご覧ください。

問題の(財)ダム水源地環境整備センターの役員に道上氏の名前が見えます。八ツ場ダムの利権の当事者ではありませんか。どこが「ニュートラル」なのでしょうか。(財)ダム水源地環境整備センターは、国交省OBの天下り先法人(現在7人在籍)で、建設会社の出捐金で設立されたのですから、そこの役員の発言は聞かずもがな、というものです。民主党政権は、こんな学者をダム検証チームに加えて、本当にダムに頼らない治水が検証できると思っているのでしょうか。

とにかく、ダム検証チームのメンバー9人のうち少なくとも6人がダム推進派だと思われます。

しかも、有識者会議は非公開で行うらしいのです。だれがどんな発言をしたかも公表しないようなのです。事実なら自民党政権よりひどい政治に戻ってしまったということです。民主党って、決定過程の透明性をモットーとしていませんでしたっけ。

民主党は官僚に飲み込まれてしまったのでしょうか。

●宇野尚雄岐阜大名誉教授は八ツ場ダム関連工事受注企業の顧問だった(2009-11-27追記)

今後の治水対策のあり方に関する有識者会議については、国土交通省のホームページ(下記)に掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/index.html

宇野尚雄氏は、株式会社ニュージェックの顧問です。

株式会社ニュージェックとはどんな会社か。Wikipediaによれば、「株式会社ニュージェックは、大阪府大阪市北区本庄東に本社を置く関西を基盤とする中堅の総合建設コンサルタント会社。親会社は関西電力。」です。株式の74%を関西電力が持っているようです。

2009-11-13赤旗の「八ツ場ダム事業受注/45法人に天下り93人/国交省OB/随意契約も」の記事に株式会社ニュージェック関東支店が2004年4月から2009年3月までの5年間に、4人の国交省OBの天下りを受け入れ、受注額は6,940万円と書かれています。

八ツ場ダム関連工事の受注企業の顧問が八ツ場ダムの必要性を検証すれば、答は最初から見えています。検証チームは、八百長審議会です。茶番です。あまりにも不公正な人選です。どこが「ニュートラル」なのでしょうか。

公平中立な学者なんていません。石原慎太郎・東京都知事や福田富一・栃木県知事が推薦する有識者を検証チームの委員に加えるのはやむを得ないとしても、反対派の有識者も加えないとバランスがとれません。ふたを開けたら推進派だらけというのは、どう考えたっておかしいでしょう。

民主党は役人に籠絡されてしまったとしか言いようがありません。民主党は、こんなことやっていて、来年の参議院選挙で勝てるのでしょうか。

●あきれるばかりの言行不一致(2009-11-28追記)

10月30日の参議院本会議で社民党・護憲連合の近藤正道議員が鳩山政権の基本政策について質問しています。審議会の在り方について、次のように質問しています。

エネルギー基本計画の見直しは、旧政権下で選任された委員が占める総合資源エネルギー調査会で行われます。派遣法の改正も、旧政権下の労政審の委員が審議をしております。

政官業癒着構造の中で、官僚と業界主導の隠れみのとして、官僚がいわゆる御用学者を一本釣りにして審議会の委員に選任することが横行してまいりました。戦後行政の大掃除のため、政治主導の下で審議会委員の見直し、英国の公職任命コミッショナー制度のような選任過程の透明化が必要ではないでしょうか。

鳩山由紀夫・内閣総理大臣は、次のように答弁しています。

 それから、審議会の委員の在り方についてのお尋ねがございました。

 これまでの政府、御案内のとおり、審議会の委員について、各省庁の事務局が実質的な人選を行っていたというケースが大半であったと思っております。したがいまして、官僚にとって都合の良い人選が行われ、官僚主導型の政策決定が行われる、これを助長した結果になったと思います。

   したがいまして、新内閣では、官僚主導型による政策決定を政治主導に変えていくということでございますので、大転換をしてまいります。すなわち、今後は、選考過程の透明化を進めてまいるのは言うまでもありませんが、御指摘のありました英国の公職任命コミッショナー制度、こういった制度も参考にしながら、各省庁の政務三役が説明責任を担うという中で、政治主導で人選を実施していきたいと思います。  

 なお、人選の問題のみならず、審議会の在り方自体というものもしっかりと見直してまいりたいと、これも私どもの新政権の大きな目的でございまして、御協力をよろしくお願いをいたします。

どこが「政治主導で人選を実施」なのでしょうか。どこが「大転換をしてまいります」なのでしょうか。政治主導で旧来の御用学者を集めたとしたら、もっと問題です。「各省庁の事務局が実質的な人選を行っ」たのが実態ではないでしょうか。

上記「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」についてには、次のように書かれています。

これではだれがどういう発言をしたかが分かりません。無責任な発言が飛び交うと予想されます。審議会の在り方が自公政権のときより後退します。

しかし、鳩山総理は、「人選の問題のみならず、審議会の在り方自体というものもしっかりと見直してまいりたいと、これも私どもの新政権の大きな目的でございまして」と言っていたのです。

民主党は、来年はダブル選挙に打って出て、自民党にダメージを与えるとともに、連立を組んでいる小政党や共産党を消滅させて一人勝ちするつもりだという推測がされていますが、こんな言行不一致をやっていては、国民に見放されるのではないでしょうか。

●座長は大滝ダムの設計者だった(2009-12-07追記)

上記のように、11月21日朝日によれば、座長の中川博次(ひろじ)京都大名誉教授は、旧建設省ダム水理研究室長でした。

そして、奈良県の欠陥ダムである大滝ダムの設計者だったようです。根拠は、岩畑政行氏の下記ブログです。
http://blog.twwwa.org/archives/53809943.html

岩畑氏は、次のように書いています。

中川(博次)氏は長年に渡って和歌山県におけるダム事業を推進、特に紀ノ川における治水の基本計画の実現に全面的に参画、現実に近畿地方整備局の長年の悲願だった大滝ダムの設計者として、紀ノ川大堰、大滝ダム、紀伊丹生川ダムの3点セットに大きく貢献しています。

大滝ダムが白屋地区で地すべりを起こしている欠陥ダムであることについては、Wikipediaや下記のサイトを参照してください。
きまぐれな日々
http://caprice.blog63.fc2.com/?mode=m&no=1009

●座長はダム・堰施設技術協会会長だった(2009-12-08追記)

座長の中川博次(ひろじ)京都大名誉教授は、社団法人ダム・堰施設技術協会の会長です。この団体は、どんな団体なのでしょうか。定款の第3条には、次のように書いてあります。

本会は,ダム・堰等に設置する取水・制水・放流設備及びこれらに関連する設 備等(以下「施設等」という。)について,ダム・堰等と一体的に建設・維持及び 管理するための技術の開発並びに普及を図ることにより,経済社会の発展に寄与 することを目的とする。

2009-05-28現在の役員は、組織概要のとおりです。

会 長
中川博次
京都大学名誉教授
(立命館大学 理工学部 客員教授)

副会長
葉山莞児
大成建設株式会社 代表取締役会長

副会長
鈴木 學
株式会社日立製作所 執行役常務

専務理事
島岡 司
株式会社丸島アクアシステム 代表取締役会長

理 事
昼間祐治
株式会社IHI 代表取締役副社長

理 事
船本隆則
株式会社熊谷組 専務執行役員

理 事
山下敏和
株式会社栗本鐵工所 執行役員 鉄構事業部長

理 事
関口啓司
佐藤鉄工株式会社 代表取締役社長

理 事
秋吉博之
日本工営株式会社 電力事業本部 プラント事業部長

理 事
坂井正裕
日立造船株式会社 執行役員 鉄構事業部長

理 事
金谷俊宗
豊国工業株式会社 代表取締役社長

理 事
沓名俊久
株式会社間 組 代表取締役副社長

監 事
上阪恒雄
株式会社建設技術研究所 常務取締役 技術本部長

監 事
西田進一
西田鉄工株式会社 代表取締役社長

中川氏は、ゼネコンのまとめ役じゃありませんか。

中川氏は、ゼネコンの意向に反する言動をするとは思えません。

(文責:事務局)
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