震災がれきの広域処理が分からない

2012年3月26日

●3県のがれきはどれだけあるのか

東日本大震災により発生したがれきの量はどれくらいでしょうか。

2012年3月21日付け下野新聞には次のように書かれています。

東日本大震災で発生したがれき(災害廃棄物)は岩手県で約60万トン、宮城県で約350万トン。

しかし、社会実情データ図録には、次のような東京新聞記事が紹介されています。

東北3県のがれき推計量は、約2,247万トン(岩手県約449万トン、宮城県約1,570万トン、福島県 約225万トン)であり、これは阪神・淡路大震災の1.6倍、全国の年間一般廃棄物総量の2分の1に相 当する(東京新聞2011.6.25)。

2011年5月21日付け福井新聞にも同様の記事があり、「震災によるがれきは岩手、宮城、福島3県だけで計2490万トンと阪神大震災の1・7倍超に上る。」と書かれています。

東京新聞が書くように、東北3県のがれきが「阪神・淡路大震災の1.6倍」なら、阪神・淡路大震災 で発生したがれきの量は、約2,247万トン/1.6=1,404万トンということになります。

1997年に兵庫県が作成した「阪神・淡路大震災における災害廃棄物処理について」という資料の p4には、1995年6月30日現在の推計では2,000万トンと書かれています。

しかし、その うち約550万トンは道路・鉄道等の公共公益系であり、「市町の災害廃棄物処理事業として実施さ れるのは、住宅・建築物系の約1,450万トンである」と書かれていますので、東京新聞記事は、 阪神・淡路大震災における住宅・建築物系の災害廃棄物約1,450万トンと「東日本大震災による 災害廃棄物」を比較したものと思われます。

そうだとすると、東京新聞が書く「東北3県のがれき推計量・・・約2,247万トン」は、全体のがれ きの量から公共公益系を除いた住宅・建築物系のみを指すと思われます。量を比較をするからには同 じ性質のものを比較しているはずだからです。

東北3県のがれきが住宅・建築物系のみで約2,247万トンだとすると、公共公益系を含めた全体のが れきの量はもっと多かったことになりますが、本当にそうなのでしょうか。

2012年3月4日付け河北新報 には、「岩手、宮城両県で広域処理が必要ながれき量は380万トン(岩手57万トン、宮城323 万トン)に上る。」と書かれていますので、「岩手県で約60万トン、宮城県で約350万トン」と する下野記事の数字は、発生したがれきの量ではなく、広域処理を環境省が求めているがれきの量の ような気がしてなりません。

環境省は広域処理情報サイト で「地震と津波の被害により、被災三県の沿岸市町村においては、約2,200万トンも の膨大な量の 災害廃棄物(岩手県で通常の約11年分、宮城県で通常の約19年分)が発生しました。」 と書いているのですから、東日本大震災による3県のがれきは約2,200万トンなのだと思いま す。

いろいろな数字が出て、真相がよく分かりません。

●がれきの質はどうだったのか

上記福井新聞記事 によると 「今回は木造住宅の被害が多く、国交省は地盤として再利用しやすいコンクリート類の占める割合は 阪神大震災時の75%を大幅に下回る15%程度と推計。」しているそうです。 今回は可燃性廃棄物の割合が圧倒的に多いという指摘があります(moltoke_Rumia1pのブログ )。

だから「今の東日本大震災の被災地の震災がれきは可燃物が 主体であり、その焼却処理は広域で行うことがベストなのです。」という意見があります。論理に飛躍があると思いますが。

「可燃物が多い。だから広域処理がいい」ということにはならないと思います。

●阪神・淡路大震災のときの県外処理量はどれだけあったか

広域処理の是非を考えるには、阪神・淡路大震災との比較が必要になります。

環境省の広域処理情報サイト には次のように書かれています。

阪神・淡路大震災の際には、兵庫県で発生した可燃性の災害廃棄物のうち約14%が県外で焼却され、 埋め立てられました。

発生量が2,000万トンだとすると、県外処理量は、約2,000万トン×0.14=約280万 トンということになります。

しかし、上記兵庫県作成の資料には、次のように書かれています。 今回の震災により生じた住宅・建築物系のがれきのうち、兵庫県外で焼却処理及び埋立処理をされる ものは145万トン(10%)と見込まれている。

10%という割合は、分母が住宅・建築物系のみだからで、分母を全体量の約2,000万トンとす れば、145/2,000=約7%にすぎません。

環境省のいう約14%は、分母を「可燃性」の災害廃棄物にしぼったからなのでしょうが、分子も分 母も数値が示されていませんので、14%が正しい数字なのか検証できません。

河野太郎氏のブログの震災がれき Q&A その3 http://www.taro.org/2012/03/post-1173.php には、「阪神淡路大震災で発生したがれきは、1958万トンで、そのうち不燃物が1673万ト ン、うちコンクリート殻943万トン、金属31万トン等、そして可燃物が285万トン。」 と書かれており、おそらく、この「可燃物が285万トン」は正しいのでしょう。

そして環境省のホーム ページの「兵庫県で発生した可燃性の災害廃棄物のうち約14%が県外で焼却され、埋め立てられまし た。」も正しいのでしょう。

そうだとすると、県外で処分された可燃物は、285万トン×14%=約40万トンなのでしょう。

40万トンは全体量2,000万トンの2%です。

今回の広域処理が20%、阪神・淡路のときが14%、そんなに違わない、と国民に思わせたいのか もしれませんが、分母の大きさが全く違うということに注意する必要があります。

●女川町のがれきが復興の妨げになっているのか

環境省のサイト には、次のように書かれています。

被災地の一刻も早い復旧・復興のためには、仮置場に積まれた災害廃棄物の迅速な撤去・処理が求め られています。例えば、宮城県女川町では、町有地のほとんどが山林であり、限られた民有の平地に 仮置場が設置されています。このため、仮置場に積まれた災害廃棄物の存在自体が復興の大きな妨げ になっています。

しかし、日経BPケンプラッツの石巻のがれき処理は1923億円、1250人の雇用を創出 というページによると、宮城県は2011年9月から「鹿島を代表とする9社のJV(共同企業体)と契約を締結 し、同JVは契約の翌日から2014年3月25日まで、地元の住民を雇用しながらがれきなどを最終処 分」しているようです。

「石巻地区の災害廃棄物処理業務は、石巻市と東松島市、女川町の合計685万4000tのがれきと合計 200万m3の土砂を最終処分するもの。」ですから、女川町のがれき処理は着々と進んでいないとおかしいと思います。

また、社会実情データ図録の「東日本大震災被災地のがれき量」によれば、女川町のがれきは、44万4000トンで、石巻市と東松島市、 女川町の合計685万4000tのがれきのわずか6.5%にすぎないのですから、女川町がよほど困って いるなら優先的に処理してもらうことはできないのでしょうか。

●石巻市のがれきは復興を妨げているか

読む・考える・書くというサイトのガレキ問題の真相(3) 石巻市の例から見る では、 上記河北新報記事の焦点-大震災から1年/見えぬ「出口」復興阻む/がれき広域処理進まず という記事などで「広域処理が進まないせいでガレキが減らず、反対運動が復興を妨げているという報道が盛んに繰り返されてい る。」という宣伝がなされていると指摘します。

そこには次のような指摘があります。

616万トンものガレキを抱える石巻市で、そのわずか15分の1でしかない40万トンの県外搬出ができ ないせいでガレキ処理が進まないというのは、話の辻褄が合わない。

細野豪志・環境・原発大臣は「岩手、宮城のがれきは日本全体で受け入れないと、被災地の切り捨て になる。」(2012年3月13日付け読売新聞)と言いますが、村井嘉浩宮城県知事は、がれきの広域処理が停滞していることを聞かれて、「県外への受け入れ要請 は引き続きやっていくが、予想以上に県内の処理が進んできたため、沿岸部同士でも分散して受け入 れる。県外に運ぶよりも経費を抑制でき、放射能汚染を懸念する声も少ないと思う。」(2012年 3月7日付け時事通信)と答えていますので、広域処理が進まないことが復興の妨げになっているよ うにも見えません。

また、酒田市の阿部寿一・市長は、「これまで、親交のある宮城県石巻市、多賀城市、岩沼市、南三陸町に 受け入れを非公式に打診したが、直接の要望がなかった」(2012年3月16日付け読売新聞)そうで す。

●広域処理で解決するのか

ガレキ問題の真相(2) によれば、2月15日の東京新聞で環境専門シンクタンク「環境総合研究所」の池田こみち副所長が 次のように言っているそうです。

被災地に何度も足を運んでいるが、『がれきがあるから復興が進まない』という話は聞かない。被 災地では、住宅再建や雇用の確保、原発事故の補償を求める声が圧倒的だ。がれきは津波被害を受け た沿岸部に積まれるケースが多いが、そこに街を再建するかはまだ決まっていない。

高台移転には、 沿岸部のがれきは全く全く障害にならない。がれきが復興の妨げになっているかのような論調は、国 民に情緒的な圧力を加えているだけだ。

また、田中康夫氏も3月8日付け日刊ゲンダイ に次のように書きます。

ツイッターで数日前に連続投稿した僕は、その中で戸羽太・陸前高田市長、伊達勝身・岩泉町長、両 名の“慧眼”発言も紹介しました。 「現行の処理場のキャパシティーを考えれば、全ての瓦礫が片付くまでに3年は掛かる。そこで陸前 高田市内に瓦礫処理専門のプラントを作れば、自分達の判断で今の何倍ものスピードで処理が出来 る。国と県に相談したら、門前払いで断られました」。 「現場からは納得出来ない事が多々有る。山にしておいて10年、20年掛けて片付けた方が地元に金 が落ち、雇用も発生する。元々、使ってない土地が一杯あり、処理されなくても困らないのに、税金 を青天井に使って全国に運び出す必要がどこに有るのか?」。

しかし、最近現地視察に行った河野太郎氏の続 震災がれき によると、 「広域処理をやめて地元で処理することにして増える雇用は理論的には、焼却炉の運用と破砕オペ レータで数名ずつ。」であり、 「地元で十年でも二十年でも時間をかけて処理すればいい、地元処理ならば雇用が増えるというの は、机上の空論だ。」そうです。そうだとすると、町長たちは地元の問題を理解できていないことになります。

河野氏は、次のように書きます。

再利用できる角材なども二、三年以上経過するとリサイクルには適さなくなる。 さらに、発酵熱による自然発火が昨年、数週間も続き、また、害虫の発生や悪臭もある。

宮古をはじめ今回の被災地は、山が海に迫っているところが多い。がれきの仮置き場になっていると ころは貴重な場所だ。宮古では、港湾施設と運動公園、野球場ががれきの仮置き場になっている。

処理が終わらなければ、こうした場所を利用することができない。 がれきは仮置き場に集められ、もう街中にはないのだから、がれきが復興を妨げているということは ないなどと、したり顔して言う人はぜひ、被災地で復興にあたっている行政マンと直接、話をするこ とをお勧めする。

しかし、「岩手、宮城両県で広域処理が必要ながれき量は380万トン(岩手57万トン、宮城323万トン)」(上記河北新報記事)です。

がれきの量は2,200万トン。

したがって、広域処理の目標を達成したとしても、380/2,200=17.3%しか処理できません。

これまで処理した 分が約6%とか。合計でも約23%。

仮に河野氏が言うように、がれきの広域処理ができたとして も、77%は現地処理しなければなりません。そうだとすると、がれきの問題が広域処理で解決するとも思えません。

現地を視察した河野氏は次のように書きます。

がれきの選別は、コンベヤに載ってくるがれきを毎日八時間、選別する。なかなか雇用しても続かな いそうだ。

広域処理するがれきも、選別までは地元で行うので、ここまでの雇用には広域処理も地元処理も影響 はない。 がれきの処理については、被災地の希望を聞いて支援が必要ならば支援するべきだ。

地元で処理すれ ば雇用が生まれるなどと、よそで勝手に言ってみても、地元には迷惑だ。

ここからは、選別は地元で行うこと及び選別工のなり手が少ないことがわかります。

「選別までは地元で行う」ことが決められていて、選別工は「なかなか雇用しても続かない」のであ れば、広域処理も進みません。

河野氏は、「広域処理をやめて地元で処理することにして増える雇用は理論的には、焼却炉の運用と 破砕オペレータで数名ずつ。」と書いています。

「広域処理をやめて地元で処理することにして」も選別工は増えないということです。

選別工が増えなければ、どっちみち処理は進みません。

選別作業が進まないのであれば、「広域処理をすればがれき処理が早くできる」という河野氏の主張は破たんしていませんか。

「日々妄想。日々迷想。」 というサイトの震災と瓦礫と広域処理。その隠されていた事実 というページに次のように書かれいます。

(岩手県の)推計総量435万トンの瓦礫には、一般廃棄物も産業廃棄物も土砂も金属くずも含んだ 数字です。これに対して、現在の処理が5%程度だと言っているのです。数字のマジックでしかあり ません。

再利用する土砂の170万トン、売却する金属くずは73万トン、合計すると243万トンあります。 これを引くと、処理しなければいけない瓦礫は192万トンになる。

この量なら、岩手県内の一般廃棄物年間排出量の5年分にしかならない。 2014年3月末までに処理を終える事を前提にしているが、その根拠は何なのだろうか? 全国で広域処理をするためにつぎ込む予算を、現地での処理施設の増設・拡充に充てれば済む事では ないでしょうか?
実際、NHKのドキュメンタリー番組でも地元自治体の震災復興の遅れに対する難問として、被災自治 体でのマンパワーの不足・複雑すぎる事務処理に対する悲鳴・申請した復興事業に対する認可率の低 さ(60%程度)・地元住民の高台移転に対するコンセンサスの遅れが指摘されていました。 (2012/03/10)

これらの問題が、がれきの広域処理で解決する問題とは思えません。

●焼却炉は増設されたのか

河野太郎氏のブログ 震災がれき Q&A その3 によると、宮城県内に24基の焼却炉をこれから設置する予定のようです。

衆議院議員・気象予報士 斎藤やすのりBLOG によると、阪神・淡路大震災のときには、3か月後には焼却炉の増設が始まり、兵庫県内で34基の 焼却炉が増設されたらしいのです。

斎藤氏は、「宮城県では震災から1年経っているのに、仙台市の3つの炉以外は動いていない」 と書いています。

兵庫県と宮城県で焼却炉の増設のスピードがどうしてこんなに違うのでしょうか。

●島田市長は産廃業者だった

2012年3月16日付け読売新聞によると、「静岡県島田市の桜井勝郎市長は15日、岩手県山 田、大槌町のがれきについて、「東北の痛みを分かちあうため、可能な限り早い時期に本格受け入れ をしたい」と表明した。・・・受け入れ期間について市長は「片づくまでやりたい」との意向を示し た。・・・同市は茶の栽培が盛んで風評被害を懸念する声もあったが、地元説明会を繰り返すなどし て、理解の取り付けを進めていた。」そうです。

しかし、上記ガレキ問題の真相(4) 最終処理が進まない本 当の理由は、次のように指摘します。

桜井勝郎・島田市長だが、後援会のホームページに載っている経歴を見ると、「桜井資源株式会社 代表取締役」とある。桜井資源株式会社は産廃処理業者。桜井市長は、元産廃業者の社長だったのだ。そして現社長の桜井洋一氏は息子である。

おまけに彼は、市長就任後、市の廃棄プラスチック処理業務を不正に親族会社に受注させるという事件まで起こしている。

桜井市長の起こした事件については、藤森克美法律事務所のサイト をご覧ください。

広域処理受け入れを静岡県で逸早く決めたのは、「東北の痛みを分かちあうため」だったのでしょうか。

●東京との受注企業は東電の子会社だった

上記日刊ゲンダイ記事の田中康夫氏 によると「東京都に搬入予定の瓦礫処理を受け入れる元請け企業は、東京電力が95.5%の株式を保 有する東京臨海リサイクルパワーで す。」。

がれき受け入れにかかわる企業がなぜ東電の子会社なのでしょうか。

なお、田中氏の記事で枝野幸男氏の父親の話が出てきますが、根拠がないようです。

●広域処理で石油をどれだけ使うのか

「絆」で瓦礫は処理できるのか- ゲンダイネット(2012年3月24日10時00分) で田中康夫氏は次のように書いています。

(被災地以外の地域ががれきを)受け入れない理屈は通らない」と宣う細野氏は、20%=400万トンの 瓦礫を10トントラックで全国に運搬したなら40万台、の驚愕すべき現実を再認識すべき。

40万台のトラックが消費する軽油の量は想像がつきません。

もちろん船を使うのですが、沖縄県でも受入自治体が現れました(恩納村がれき受け入れ決議参照)。

化石燃料を消費するとCO2が増えて地球が温暖化するから核発電の比重を高めるというのが政府の方針だったのに、石油を最大限に使う廃棄物の処理方法を選択することに矛盾はないでしょうか。

CO2の問題のほかに、全体の経費を考えてどうなのでしょうか。 処理施設を新たに建設するのと、各地に運んで既存の施設にバグフィルターを設置するのと、どちら が安いかという検証はしているのでしょうか。

●処理費用が高すぎる

広域処理以前の問題として災害廃棄物の処理費用が今回高すぎるという話があります。

zakzakの復興特需で“札束”飛び交う東北...政策不在、増税が不安 には、次のように書かれています。

仙台へのカネの出所は地震保険支払い、義援金などがまず挙げられるが、8月以降は本格化したがれ き処理の代金が高額消費へとなだれ込んでいる。

何しろ、民主党政権はがれき処理を急ぐあまり、地 元自治体のいい値を丸のみして法外とも見えるがれき処理費を100%出している。

1995年1月 の阪神大震災のがれき処理コストはトン当たり2万2000円。その後、人件費や資材価格が下がる デフレ時代が続いていることから、コスト上昇はないはずなのに、仙台周辺や岩手県ではトン当たり 10万円もかかるケースがあるという。

処理単価について2011年11月17日付け記事「産経震災がれきの処理費用膨張 阪神大震災大幅に上回る洗浄、放射線検査の必要」は次のように報じます。

環境省によると、阪神大震災のがれき処理費用の総額は約3246億円で、1トン当たりの処理単価 は約2万2千円。

これに対し岩手県の場合、当初の見通しは総額3千億円で、1トン当たりは阪神の 3倍弱の6万3千円。

宮城県は総額7700億円で、1トン当たりは阪神の2倍超の約5万円と、両 県とも阪神のコストを大幅に上回る見通し。放射性物質の付着が懸念される福島県は費用の概算も 立っていない。

処理単価が高くなる理由は、見出しにも書かれいるように、洗浄、放射線検査の必要があるからだそ うですが、洗浄と放射線検査で費用が3倍や5倍にもなるのでしょうか。

ただでさえ処理単価が高いのに、なぜ更にカネをかけて全国に運ぶのかという疑問はあります。

●新聞広告に6,000万円かかった

国(環境省)は、2012年3月6日の朝日新聞に全面見開き広告を出しました。「みんなの力でが れき処理」(http://twitpic.com/8sjy1wで写真が見られます。) の広告です。

これだけの広告を打つには、新聞社にだけでも四千数百万円以上払うことになり、広告代理店に払う カネを含めると約6,000万円かかると言われています。

今後、朝日が広域処理に対して、細かい注文はつけることがあっても、根本的な疑問を投げかけるよ うなことはないと思います。

ちなみに、読売新聞は社説で「がれき広域処理 受け入れ拒否が復興を妨げる」(2012年3月7日付け)と書いています。3月7日付け産経もほぼ同旨。

毎日新聞も社説で震災がれき処理 受け入れ広げる努力を(2011年11月5日付け)と訴えてい ます。

3月4日付け日経新聞も「初心を貫き町と産業を復興しよう」で同旨。

社説の比較は、 錦吾郎のサイトのがれきの広域処理に関する新聞社説の問題点でできます。

東京新聞の社説は見当たりませんが、3月10日付けの記事減らぬがれき 晴れぬ心 被災3県 処 理済み6.3% を見る限り、広域処理を支持する立場です。

新聞は、すべて広域処理に賛成と見てよいと思います。

●広報予算は40億円

http://twitpic.com/8y1wo1によると、政府は、2012年度予算で、がれきの広域処理の広報業務に15億円 、除染の広報業務に15億円を使う予定です。

2011年度には広告代理店の博報堂に総額9億円の広報業務・普及啓発業務として発注されていた という情報も書かれています。

もっと詳しくは誰も通らない裏道というサイトのさあ!「除染広報15億円」 +「災害廃棄物の広域処理広報15億円」 計30億円争奪戦の始まりです!及び朝日新聞社のみなさまへ ~ 震災瓦礫広告についての質問 をご参照ください。

●がれき広域処理は3,800億円のビジネス

日々妄想。日々迷想。のトラックバックには、 週刊ダイヤモンド によると 「環境省のがれき処理予算で3,800億円だそうです。」と書かれています。何年度分かは分かり ませんが。 (2014年度までに1兆700億円使うと書いているサイトもあります。)

日々妄想。日々迷想。には、 「瓦礫の広域処理事業自体が以前から災害のたびに進められてきていて、この事業を核に瓦礫処理業 者の再編が行われている」そうです。

「環境省は「今回の震災の復興が進んでおらず、その原因が震災瓦礫の処理が進まない」として震災 瓦礫の広域処理を打ち出したのではなく、「以前から全国の産業廃棄物処理業者と取り決めていた」 から震災瓦礫の広域処理を押し進めている事が分かります。」、「広域処理を政府に迫っているのは自 民党側なのです。」とも書かれています。

キーワードは、PFI/PPP (Private Finance Initiative)、財団法人日本環境衛生セン ター、パシフィックコンサルタンツ株式会社、国土総合研究機構、全国産業廃棄物連合会です。

社団法人全国産業廃棄物連合会(事務局はパシフィックコンサルタンツ株式会社)が2009年2月に作成した「災害廃棄物処理支援の手引き」のp41には、全国の業者団体の義援金の拠出方法が書かれています。

詳しくは上記サイトをお読みください。

確かに環境省と産業廃棄物処理業者の団体が決めたことを着実に実行に移しているだけのよ うにも見えます。

与党も野党も広域処理の是非について議論する考えはないのでしょう。

●日本共産党の対応

日本共産党もがれきの広域処理には賛成のようです。

2012年3月18日付け赤旗の「主張」欄には、がれき「広域処理」 政府は責任をもった方策をと書かれています。

京都府議会では、震災がれき処理決議への見解発表 前窪・共産党府議団長に同党府議団の見解が書かれています。

同党福岡市議団も「「広域処理」をすすめることが必要です。」がれき問題での決議案についてと書いています。

同党北九州市議団の対応については、不条理なる日本共産党というサイトの日本共産党が「ガレキ受け入れ」に動 き出した・・・北九州市議会 で詳しく解説されています。

ただし、日本共産党高知県委員会の役員は、広域処理に疑問を持っているようです。

●防潮堤防には使えないのか

衆議院議員・気象予報士 斎藤やすのりBLOG には、次のように書かれています。

一方で釜石市は可燃物の処理は埋め立てる場所がない、コンクリートがらなどを埋戻し材として使えればいいけど、あてがない。

2012年3月25日放送のテレビ朝日の報道ステーションSUNDAYで南相馬市の桜井勝延市長は、岩手県と宮城県のがれきを南相馬市の沿岸の防潮林の土台に使いたいと言っていました。

この案は、生態学者の宮脇昭氏が提案しているようです(河野太郎氏のブログ震災がれき Q&A その2 参照)。

「宮城県の岩沼市も津波の破壊力を弱めるための 10mの丘を瓦礫で作る計画も立てていた。」(衆議院議員・気象予報士 斎藤やすのりBLOG )そうです。

桜井市長の案について、テレビ局が環境省に問い合わせると、「被災県内でのがれきの移動は想定し ていない」との回答だったそうです。

「想定していない」では、桜井市長の案を却下する理由になっていないと思います。

その「想定」とは、いつだれがどうやって決めたものでしょうか。

環境省の役人と環境族議員と産廃業者が震災前に想定したのでしょうか。

しかし、2011年5月21日付け福井新聞の国交省、がれき埋め立てに指針 被災地で地盤に活用には、次のように書かれています。

「国土交通省は21日までに、東日本大震災で発生した大量のがれきを被災地などで埋め立てて再利用するための指針を策定することを決めた。津波被害を防ぐための宅地をかさ上げしたり、防災公園を新たに整備したりする際の地盤として活用することを想定している。

だったら、桜井市長の案を採用したらいいでしょう。

政府の方針はどうなのか、わけが分かりません。

大震災で東北の東岸は70〜100cmも沈んだのですから、埋められる物を運び出すことはないでしょう。

テレビ朝日によると、被災地のがれきは、17%は全国に拡散しなければいけないというのが環境省の考え方です。

「費用がかかるじゃないか」とか「CO2の排出量が増えるじゃないか」という質問には、「復興を優 先させる」の一言で一蹴するのでしょうね。

しかし、災害廃棄物であろうとも放射能汚染やアスベストの問題もありますので、廃棄物は発生した 場所で処理するのが原則ではないでしょうか。 この原則を変える理由が明示されたと言えるのでしょうか。

また、復興だから費用対効果を度外視していいのか疑問です。

●地元の焼却施設を壊すのか

河野太郎氏は「焼却炉のほとんどはがれき処理が終わると解体され、地権者に土地を戻すことになり ます。」(震災がれき Q&A その2 )と決めつけますが、山内知也氏(神戸大学大学院教授)は、「発電装置を備えた焼却施設をつくれ ば、がれき処理を終えた後も、森林の間伐材を使った木質バイオマス発電として活用できます。」 (3月16日付け朝日)と提案しています。

施設を残すという考えはだめなのでしょうか。

●広域処理不要論はたわごとか

河野太郎氏は、がれきの広域処理が必要ないという意見は、現地の状況を知らない者のたわごとだとでも 言いたいようですが、現地(仙台市)の国会議員である斎藤恭紀氏は次のように主張していま す(”みんなで瓦礫処理”の裏側。なお、広域処理 について・記事を紹介も参照してくだ さい。)。

ここ数日、報道されているような「瓦礫があるから復興が進まない」という政府の認識には違和感を おぼえます。

そもそも、なぜ、国は広域処理にこだわるのか?実は環境省は昨年4月に各都道府県に受け入れの協力を要請している。本来であれば、被災地でどれほど処理できるか概算を出し、処理できない量を出 してから、広域処理という流れになるのに、初めから広域処理ありきだったのです。

視察に行った河野太郎氏の言うことが正しいのか、現地に住んでいる斎藤恭紀氏の言う事が正しいのか、どっちなのでしょう。

(文責:事務局)
文中意見にわたる部分は、著者の個人的な意見であり、当協議会の意見ではありません。
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