がれきの広域処理に道理はあるか

2012年4月4日

●被曝被害は出ているのか

本題に入る前に、YouTubeに福島では被曝で各種発病が報告されているという映像を見ていただきたいと思います。福島第1から25kmの距離に住んでいる人だそうです。

悲惨な症状が出ていますが、ストレス症状と診断されているようです。

政府は医学的に証明されていないと言って被曝との因果関係を認めないのでしょうね。

彼女には、1日も早く、住めない場所から脱出してほしいと思います。

●宮城県と岩手県のがれきは汚染されていないか

環境省は、宮城県と岩手県のがれきは、福島県のがれきと違って汚染されていないから安全という言い方をしていますが、「院長の独り言」というサイトのガレキ拡散に血税30億円を使う環境省というページに「三陸海岸のどこに汚染していないガレキがあるというのでしょうか。」と書かれています。

日本原子力研究開発機構が作成した第34回原子力委員会の資料を見ると、確かに相当広域に汚染されています。ちなみに栃木県南も汚染されていますね。

●環境省は知見もなければ調べてもいない

「みんな楽しくHappyがいい」というサイトの環境省「放射能の知見もなければ、がれき全体の汚染状況も調べていない」と公言3/27東京新聞よりというページには、2012年3月27日付け東京新聞の記事が紹介されています。3月26日に衆議院第1会議室で開かれた集会で、環境省の役人が次のように述べたそうです。

環境省は廃棄物やがれきの処理は担当するが、放射能に関しては技術的知見を持ち合わせていない。

広域処理の対象となるがれきは測定しているが、各地の仮置き場全てで調査している訳ではない。岩手、宮城両県が測定した空間線量は公表されている。

がれきの汚染の話は、ベクレルの話でしょう。空間線量はシーベルトの話です。素人が聞いてもおかしな話です。

新潟県の泉田知事も「(環境省は)宮城県のがれきを「安全」と言っていますが、なぜサーベイメーターで計測しているのでしょうか。ベクレルの話をしているのです。」(3月26日記者会見)と言っています(「がれき広域処理の正当性を問う」というサイトから)。

環境省の言いなりになっていたら、とんでもないことになりませんか。

●福島のがれきを対象外としたのは汚染が理由ではなかった

ちなみにですが、環境省が福島県のがれきを広域処理の対象から外しているのは、汚染されていることが理由だと思っていましたが、そうではないようです。

上記東京新聞記事によると、福島のがれきは200万トンで、通常の3年分で比較的少ないので、国が責任を持って域内(県内)処理すると環境省の役人は説明したそうです。

量が多かったら福島のがれきも広域処理の対象にしていたということです。

●バグフィルターで放射性セシウムを除去できるのか

上記東京新聞記事には、次のように書かれています。

環境省は、「ろ布式集じん機(バグフィルター)」と呼ばれる高性能の排ガス処理装置が設置された焼却炉であれば、「放射性セシウムをほぼ100%除去できる」と主張する。

「院長の独り言」のパンツでおならは防げないーーーバグフィルターに見るウソに環境ジャーナリスト青木泰氏のブログが紹介されています。

国立環境研究所の大迫政浩・資源循環・廃棄物研究センター長は、バグフィルターが焼却施設に付加されていれば、放射性物質を除去できるため、煙突から煙となって拡散されることはないと「アエラ」で語ったそうですが、彼の発言は実証的な実験の裏付けがあってのことではないそうです。

微小粒子がバグフィルターで99.9%除去できたとする京都大学の高岡昌輝准教授の論文を根拠に言っているだけだそうです。

しかも、この論文が正しいかどうかも怪しいようです。

なぜなら、この論文が正しければ、バグフィルターを設置した施設の周辺でぜんそくは増えないはずですが、現実はそうではないようです。

詳しくは、青木氏のブログのバグフィルターで放射性物質が除去できるか?〜放射能汚染廃棄物の焼却処理〜をご覧ください。

●メーカーも性能を否定している

がれき広域処理の正当性を問うというサイトがあります。

そこには、バグフィルターのメーカーである泉環境エンジニアリング株式会社の担当者が「バグフィルタそのものでは(放射性物質の)除去は不可能と思われます。」と言っているそうです。

メーカーの株式会社東洋紡(カンキョーテクノか?)も「後は使う側の責任だ」と言っているようです。

中尾フィルター工業株式会社でも「放射性物質をとるために作ったわけじゃないので、とれないと考えています」と言ったそうです。

「問い合わせたバグフィルタメーカー7社すべて、放射性物質を除去できないと回答」とも書いてあります。

島田市の行った燃焼実験を民間の研究者が分析し、セシウム137の除去率は6割程度という説を出しているそうです。

フィルターのメーカーが性能を否定しているのに、環境省が性能があると広報するのは奇妙なことです。

性能があるならメーカーが宣伝するはずです。

●広域処理は多数の民意ではない

新聞の投書欄は、がれきの広域処理を支持するものばかりで、反対すれば非国民呼ばわりされそうですが、自民党が行ったアンケートでは、「がれき処理に地方自治体は積極的に参加すべきだ。」という意見について賛成が2440票、反対が20067票でした(時期不明ですが。)。

インターネットのアンケートなんてあまりあてにはなりませんが、反対する意見が圧倒的に多いのです。

だからこそ政府は、広報に24億円もかけるのでしょうけど。

●がれきの状況はどうなっているのか

週刊文春2012年4月5日号の「「震災復興」不都合すぎる真実」には、田中康夫氏の発言として「実は昨年11月段階で被災地のガレキは商業地、住宅地、道路からすべて撤去され、仮置き場という中間貯蔵所に置かれています。」と書かれています。

週刊SPA!2012年4月3日号には、女川町のタクシー運転手が「被災地はガレキの山に埋もれていると思ったでしょう。震災直後、町の中心部はガレキだらけでしたが、今はほとんど片づいています。」と言ったと書かれています。

記事によると、「女川町ではガレキのほとんどが撤去され、仮置き場に搬入済み。生活圏内にガレキの山は見られない。」そうです。

「全国の人たちの支援はありがたいが、ピントがずれている。ガレキは片づいたし、今は住民の雇用の場を創出してほしい」という住民の声も紹介されています。

●復興利権はないのか

上記SPA!は、「利権の疑いを招く元凶は、東京都が作った災害廃棄物処理スキームにある。ガレキ処理費として最初の1年で約70億円、3年間で280億円の運転資金を東京都が貸し付ける「東京都環境整備公社」の理事長は元東京都環境局次長。評議員には東京電力の執行役員や東京都山峡廃棄物協会長らが名を連ねる。さらに、東京電力グループの「東京臨界リサイクルパワー」が可燃性ガレキの焼却事業を請け負っている。」(p24)といいます。

記事によると、東京都は女川町のがれきを受け入れています。

女川町にある女川原発1〜3号機の建屋を建設したのは鹿島建設株式会社です。また、女川町の総合運動場や野球場などのハコモノ建築物を受注しているのも鹿島です。

仙台市にある東北電力株式会社の本店ビル建設を請け負ったのも鹿島です。

その鹿島の執行役員となっているのが栗原俊記氏という人で、石原都知事の元第1秘書だった人です。

東北電力と東京電力は事実上の兄弟会社です。

そして上記のように、東京電力の子会社の東京臨海リサイクルパワーが都に搬入された可燃性がれきの焼却事業を請け負っています。

●がれきは資源

程度のいい木質系のガレキはリサイクルできるものの、ほとんどの植物性のがれきは燃すしかないと思っていましたが、そうではないようです。

上記SPA!で生態学者の宮脇昭氏は、「ドイツなどでは、植物性ガレキを焼いたり捨てたりせずに緑地づくりに活用するよう条例で定められています。」と書きます。

ドイツでできることがなぜ日本でできないのでしょうか。

●原則は域内処理

田中康夫氏が言うように、政府は、ごみは「持ち込まない」、「持ち込ませない」という域内処理を原則としていたのです。そして、この原則は正しいと思います。

新潟県の泉田裕彦知事は、「どこに市町村ごとに核廃棄物(処分)場を持っている国があるのか。IAEA(国際原子力機関)の基本原則で言えば、放射性物質は集中管理すべきだ」(上記文春記事)と言っています。

また、「全国各地で起きた牛肉のセシウム汚染の問題を忘れてはいけません。宮城県で生産された稲わらを食べたことが原因です。・・・このときの稲わらは仙台より北の宮城県北部で採れたものでした。稲わらに付いたセシウムが、ガレキには付いていないと考えることは、楽観的に過ぎませんか?」(同)と述べています。

原則には例外があっても仕方ないと思いますが、政府は、なぜ例外を設けるのかを十分に説明していないと思います。

●基準が突然変わった

泉田知事は、「環境省は震災ガレキの焼却灰などを埋め立てるときの放射性セシウムの安全基準を8000ベクレル以下としています。しかし原子力発電所の運用等を規制する炉規法(原子炉等規制法)では、100ベクレルを超えた廃棄物は、黄色いドラム缶に入れて厳格に管理しなければいけないことになっています。・・・昨年の原発事故を境に突然基準が変わり、8000ベクレル以下は安心と言われても心配です。」と述べています。

泉田知事は、「これまで法律で放射線管理区域が定められていて、年間5ミリシーベルトを超える場所は厳格に管理されていました。・・・ところが、ある日突然、20ミリシーベルトまでなら生活しても大丈夫ですよと基準が変わってしまった。」とも言います。

基準がコロコロ変わっては、国民が政府への不信を感じるのは当然だと思います。

●常設型の焼却炉は認めない

田中氏は、「常設型の新設は認めず、3年限定の仮設焼却場のみ認める四角四面な環境省の方針が問題」だと言います。

もっともな意見だと思います。

もっと地元の意思に任せることはできないのでしょうか。

●まとめ

いずれにせよ環境省の「がれきは安全です」は科学的根拠を持つようには思えません。

私は、頭から広域処理に反対しようとは思いませんが、政府にはまともな理由付けと安全性に関する説明をしてほしいと思います。

「絆で放射能には勝てない」と言った人がいます。

この問題については、絆とか助け合いという言葉から受ける感情論に流されるのではなく、科学的合理性を持った判断をすることが必要だと思います。

(文責:事務局)
文中意見にわたる部分は、著者の個人的な意見であり、当協議会の意見ではありません。
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