国土交通省の主張は疑似科学

2008-05-12

●国土交通省のホームページに何が言いたいのか分からない記述がある

国土交通省河川局のホームページに意味不明の記述があります。ダムの項目の「基本的な考え方」というページに、「日本の平均寿命の伸びは、上水道給水人口、上水道のダム容量の増加と同じような傾向を示している。」という記述があります。タイトルは、「上水道給水人口、人の平均寿命の推移」ですが、「日本人の平均寿命」と「上水道給水人口」と「上水道のダム利水容量」の推移を表すグラフが付いています。

私は、国土交通省の役人が上記の記述とグラフで何が言いたいのか全く分かりません。

●相関関係と因果関係を混同させる手口だ

敢えて想像するならば、「日本人の平均寿命が伸びたのは、ダム容量が増えたからだ」、「利水ダムをたくさん建設すれば、平均寿命が伸びて幸せになれる」ということかもしれません。しかし、そのような因果関係があることの証明はなされていません。付属するグラフも因果関係を証明するものではありません。

彼らは、平均寿命とダム容量に相関関係があると言っているにすぎません。それは正しいのでしょう。しかし、相関関係があるから因果関係があるとは限りません。

国交省の役人はそれを承知だから、「日本人の平均寿命が伸びたのは、ダム容量が増えたからだ」と書かないのだと思います。「日本の平均寿命の伸びは、上水道給水人口、上水道のダム容量の増加と同じような傾向を示している。」と書いただけだと言うのでしょう。それを「日本人の平均寿命が伸びたのは、ダム容量が増えたからだ」と誤解するのは、誤解する者の責任だと言いたいのでしょう。

池内了氏は「疑似科学入門」(岩波新書)の「はじめに」のp6で「月齢と交通事故の相関など、見かけ上の相関関係を因果関係として安易に結びつけ、事実誤認させる方法もある。」と書いています。月齢と交通事故に因果関係があるのかどうか私は知りませんが、国交省はまさに池内氏が批判するような科学の悪用をやっているわけです。このように「確率や統計を巧みに利用して、ある種の意見が正しいと思わせる言説」などを池内氏は「疑似科学」と呼んでいます。

要するに国交省は、ダムを造りたいためにエセ科学を使って国民をだまそうとしているのです。税金を使ってこんなインチキなホームページをつくることが許されるのでしょうか。

(文責:事務局)
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