鹿沼市議会のかぬま魅力向上特別委員会が傍聴者を追い出した

2018-04-21

●秘密会決定の経緯

2018年3月18日付け「明るい鹿沼No.10」(「明るい鹿沼をつくる会」準備会が発行)に「第3回かぬま魅力向上特別委員会 途中から秘密会へ 傍聴者3名排除される」という見出しで次のように書かれています。

3月14日(水)かぬま魅力向上特別委員会が開催されました。傍聴者は3名でした。
開会直後、赤坂委員長より「明るい鹿沼No6」という「怪文書」に第2回かぬま魅力向上委員会の記事が掲載されている。委員会の方向性かが未だ決まらない中でこのような記事が掲載されると困るので、今回の委員会は秘密会としたいとの提案がありました。
傍聴者は議会事務局に対し、「議会のホームーページでも開催が案内されており、会議途中からの秘密会はあり得ない」と話しました。

赤坂委員長が困ると言った「明るい鹿沼No.6」に書いてあったこととは、次のとおりです。

2月15日(水)同委員会(第2回ーー引用者)が開催されました。
出席は、赤坂委員長、大島副委員長、委員として石川議員、鈴木毅議員、島田議員、阿部議員、加藤議員、市田議員、荒井議員、湯沢議員、横尾議員、関口議長、谷中副議長。
関口議長、谷中副議長の委員会へのお願いの後、各議員が、鹿沼市の魅力やその向上についての思いを発表しました。
「大きいショッピングモールがあれば人が集まる」「教育を魅力の一番にするために、鹿沼市 の教育者(臨時職員等)の賃金をあげれば、高 い水準の教育ができる。そうすれば人が集まる」等
その後、左記のテーマ(省略しますーー引用者)について次回会議3月14日までに考えておくことを決めました。

つまり、鹿沼市議会のホームページで特別委員会の開催案内が出ていたので、市民が傍聴しに行ってみたら、開会直後に秘密会とされ、傍聴者は部屋から追い出されたということです。

秘密会とされた理由は、会議の方向性が決まらない中で、委員の発言が断片的に報道されると困るということのようです。

●かぬま魅力向上特別委員会とは何か

かぬま魅力向上特別委員会への付託調査事項及び委員名は、次のとおりです。

(1) 付託調査事項
・鹿沼市の魅力向上について
・教育と子育てを中心とした、市外在住者への移住・定住促進について
・鹿沼市の主に県内他市町との比較における、本市の魅力の分析について
・その他かぬま魅力向上に関する事項
(2) 委員名
委員長 赤坂 日出男
副委員長 大島 久幸
委員 石川 さやか、鈴木 毅、島田 一衛、阿部 秀実、加藤 美智子、市田 登、荒井 正行、湯澤 英之、横尾 武男
●秘密会決定に反対したのは石川さやか議員だけ

「明るい鹿沼No.15」によれば、3月14日の第3回かぬま魅力向上特別委員会の秘密会決定に反対した委員は、欠席していた荒井正行委員は別にして、石川さやか委員だけだったとい います。

●会議公開原則とは

地方自治法第115条第1項には、次のように規定されています。

第115条 普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する。但し、議長又は議員三人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

地方自治法の逐条解説を読むと「普通地方公共団体の議会の会議」とは、本会議のことであると解釈されており、委員会の会議を公開するべきかについて法律は何も言っていないことになります。

地方自治法第111条で 「(前略)委員会に関し必要な事項は、条例でこれを定める。」 と規定されているのですから、委員会の会議を公開するかどうかは、各自治体の議会の判断に任せるというのが法律の趣旨と解されます。

地方自治法は 「普通地方公共団体の議会における委員会について会議公開の原則はこれを採用せず、その公開の許否、いかなる場合に公開するか等については、これを専ら、これに関する条例の制定も含めて各普通地方公共団体の自由裁量 ともいうべ き広範な裁量に委ねたものと解するのが相当である」(大阪高裁判決1982年12月23日)という判例もあります。

会議公開の原則は、
「議員以外の者が会議の内容を直接見開する」ことを意味する傍聴の自由、
「報道機関が新開やテレビなどを通 して会議の内容を」「広 く一般に知 らせる」ことを意味する報道の自由、
「会議の記録」を公表することを意味する会議録の公表、
の3つを含むと伝統的に理解 されているようです(会議公開に関する憲法上の諸問題-地方議会における 「委員会」傍聴不許可事件を素材 として-小倉 一 志)。

したがって、記者が傍聴した発言をどう切り取って、どう報道しようと報道機関の勝手です。

報道が不当又は違法であれば、訂正を求めるとか告訴するとかをすべきであって、報道の内容が気に入らないからといって、委員会の会議を秘密会にすることは許されないと思います。

●鹿沼市の条例はどう規定しているのか

鹿沼市議会委員会条例には、次のように規定されています。

(秘密会)
第17条 委員会は、その議決で秘密会とすることができる。
2 委員会を秘密会とする委員長又は委員の発議については、討論を用いないで委員会に諮って決める。

「秘密会とすることができる」ということは、原則は公開するという趣旨と解されます。

鹿沼市自治基本条例第12条では、議会の役割として「常に市民の声を反映した政策の提言及び立案を行うものとします。」(第2項)、「説明責任及び情報提供の徹底を図り、市民参加の機会の確保及び仕組みづくりに努めます。」(第4項)と規定されています。

「市民の声を反映」させるためには、議会がどのような議論をしているのかを市民が知る必要があります。「市民参加の機会の確保及び仕組みづくりに努めます。」と書かれている以上、委員会の会議についても原則公開とするという趣旨と解されます。

鹿沼市議会基本条例は、次のように規定します。
「公平性、公正性及び透明性を確保するとともに、市民に開かれた議会を目指すこと。」(第2条第1号)
「市民の意見を把握し、政策形成に生かせるよう、市民参加の機会を確保すること。」(同条第2号)
「説明責任を果たすため、市民に分かりやすい方法で議会の会議の原則公開及び情報の提供を行うこと。」(同条第5号)

極めつけは、同条例第6条第1項及び第2項で、次のように規定します。

(市民と議会との関係)
第6条 議会は、市民に対して積極的に情報を発信し、情報の共有化を推進するとともに、説明責任を十分に果たさなければならない。
2 議会は、本会議、常任委員会その他の会議を原則として全て公開するものとする。

「常任委員会その他の会議を原則として全て公開する」と明記しているのですから、全員協議会までが原則公開と解され、かぬま魅力向上特別委員会も原則として公開されなければならないことは明らかです。

現実には議会での実質的な審議は委員会でされており、本会議はセレモニー化していることを考えれば、委員会を公開しなければ意味がありません。

●秘密会の要件とは

どんな理由で委員会の会議を秘密会にできるかについて法律や条例の規定はなく、ネット検索しても見つかりません。

しかし、委員会として議決すれば、どんな理由でもよいということにはならないと思います。合理的な理由が必要なはずです。

例えば、傍聴者の中に委員の気に入らない人間がいるから、という理由はあり得ないでしょう。

秘密会にする合理的な理由は、プライバシー保護くらいしか思いつきません。

今回の事件では、報道の仕方がまずい、というのが理由ですから、論外です。

●議員の傲慢さを感じた

傍聴者を追い出すという前代未聞の暴挙を知って私が感じたのは、議員の傲慢さです。

「会議を原則として全て公開する」、「透明性を確保するとともに、市民に開かれた議会を目指す」、「説明責任を果たすため、市民に分かりやすい方法で議会の会議の原則公開及び情報の提供を行う」と条例で決めたのは議員ではありませんか。

なぜ自分たちで決めたことを守らないですか。

自分たちで決めた条文の意味が理解できないということでしょうか。

議員さんは、そんな知能の低い方たちではないはずです。

ではなぜ自分たちで決めたことを守る姿勢がないのか。「傲慢」以外に答が見つかりません。多くの議員は、市長の権限には及ばないが、法律が議会に与えた権限は、議員が決めれば勝手に行使できると考えているのでしょう。

せっかく委員会の会議を傍聴に来たのに、追い出されてとぼとぼ帰る傍聴者の気持ちを考えたら、大した理由もなく秘密会にできるはずがありません。

●謝罪の言葉はなかった

第4回かぬま魅力向上特別委員会が4月11日(水)に開 催されたので、傍聴してきました。

傍聴者5人のうち少なくとも2人は前回と同じ顔ぶれだったにもかかわらず、前回の会議を秘密会にしたことの説明も陳謝もなく、何事もなかったかのように会議が始まりました。

赤坂委員長と副委員長を含めて8人の委員には、秘密会にしたことについての反省はないようです。

(文責:事務局)
フロントページへ>その他の話題へ>このページのTopへ