津波が原因で電源を喪失したのか

2011年5月23日

●石川節が炸裂

今日のTVタックル(テレビ朝日)を見ていたら、石川迪夫(いしかわみちお・日本原子力技術協会 前理事長)氏が「原子力が一番いいエネルギーだ」と言っていました。懲りない人です。

プルトニウムがどこまで飛散しているのかのデータもないのに、避難者は戻った方がいいという無責任な発言もしていました。福島に戻っても大丈夫と言うなら、せめて核発電所から10キロメートルくらいのところに自ら家族と一緒に移り住んでからにしたらどうでしょう。お仲間の加納時男氏によれば、「低線量の放射線は、体にいい」そうですから。

ほかにも問題なのは、福島第1原子力発電所は地震には耐えたが、津波の被害で大きな事故になったという趣旨の発言をしていたことです。

これって間違いだと思います。

●津波到達前に被害発生

5月17日付け読売は、「冷却装置 津波前に停止」の見出しで、次のように書いています。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110516-OYT1T01016.htm

冷却装置、津波前に一時停止 東電詳細データ

 東京電力福島第一原子力発電所1号機で、東日本大震災による津波襲来の前に非常用冷却装置が一時停止していたことが16日、東電が公表した大震災直後のデータでわかった。

 東電は、この冷却装置が津波後に停止したとの前提で、地震発生から16時間後に炉心溶融(メルトダウン)に至ったとする分析結果を15日発表していた。冷却装置が正常に作動すれば、メルトダウンを遅らせることができた可能性もある。

 公表データは、事故原因解明のため、経済産業省原子力安全・保安院が東電に求めたもの。大震災が発生した3月11日午後2時46分から14日頃までの原子炉内の水位、放射線量などの膨大なデータのほか、運転員の当直日誌、操作実績をまとめた。

 データによると、運転中の1号機は地震発生後、原子炉に制御棒が挿入されて緊急停止。1号機では、地震直後の11日午後2時52分、直流電源で動く緊急時冷却装置の「非常用復水器」が自動起動し、原子炉の冷却・減圧が始まった。

 しかし、約10分後の午後3時頃には、復水器は一時停止。作業記録によると、その後、弁の開け閉めが行われ、稼働、停止を繰り返した。原因は不明だが、東電によると、地震直後に原子炉内の圧力が乱高下し、この現象を抑えるため、作業員が手動で停止した可能性もある。

(2011年5月16日21時58分読売新聞)

記事には、タイムテーブルも載っています。

そこには、3月11日の3時ごろに非常用復水器系の一時停止があり、3時半ごろ津波到達と書かれています。

その後、3時37分に1号機の全交流電源喪失、3時38分に3号機の全交流電源喪失、3時41分に2号機の全交流電源喪失と書かれています。

非常用復水器が停止した原因は不明とされてますが、津波が原因でないことだけははっきりしています。

ちなみに、上記記事によれば、全交流電源喪失は津波到達の後に起きたことになっています。

●津波の到達時刻はいつなのか

重要な事実であるにもかかわらず、津波の到達時刻がないがしろにされているように思います。

5月19日付け読売は、「堤防を破壊、流されるタンク 原発襲う津波」の見出しで次のように報じています。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110519-OYT1T00548.htm

堤防を破壊、流されるタンク 原発襲う津波

福島原発 津波が押し寄せる福島第一原子力発電所(3月11日)=東京電力提供 津波の先端が到達(3月11日午後3時42分)=東京電力撮影 重油と軽油のタンクが水没(3月11日午後3時43分)=東京電力提供 津波がひいた後(3月11日午後3時46分)=東京電力提供

 東京電力は19日、東日本大震災が発生した3月11日、福島第一原子力発電所に津波が到達した直後の写真を公開した。

 東電社員が、5号機付近の斜面で撮影した写真には、堤防を破壊して原発に迫る津波の様子が記録されている。圧力抑制室用水タンク(高さ15メートル)と2基の重油タンク(高さ10メートル)は、水没したり、流されたりした。

 4号機に近い集中廃棄物処理施設のプロセス主建屋4階にいた協力企業社員は、同施設でみるみる水位が上昇していく過程をとらえた。

 津波は午後3時42分に先端が到達した後、1分足らずで水煙を上げて水位を増し、同施設の補助建屋(高さ9・5メートル)脇の重油と軽油のタンクが水没。補助建屋の壁も破壊され、津波がひいた後には、流された車が立ったまま壁にひっかかっている。

(2011年5月19日14時28分読売新聞)

「津波は午後3時42分に先端が到達した」と書かれています。

しかし、17日付けの読売には、東京電力の発表として3時半ごろに津波到達と書かれています。

この矛盾について読売は何も説明していません。

もしも、津波の到達時刻が午後3時42分なのであれば、それ以前に全交流電源が喪失していたということになります。

そうだとすれば、地震対策は万全だった、津波さえ来なければ問題なかったという石川発言が崩れることになります。

●外部電源の喪失は地震が原因だった

福島第1原発の外部電源の喪失は、地震による受電鉄塔の倒壊によるものだという指摘は、既に4月27日の衆議院経済産業委員会で日本共産党の吉井英勝議員がしていました(4月30日付け赤旗)。以下のとおりです。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-04-30/2011043004_04_0.html

2011年4月30日(土)「しんぶん赤旗」

外部電源喪失 地震が原因

吉井議員追及に保安院認める

 日本共産党の吉井英勝議員は27日の衆院経済産業委員会で、地震による受電鉄塔の倒壊で福島第1原発の外部電源が失われ、炉心溶融が引き起こされたと追及しました。経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認めました。

 東京電力の清水正孝社長は「事故原因は未曽有の大津波だ」(13日の記者会見)とのべています。吉井氏は、東電が示した資料から、夜の森線の受電鉄塔1基が倒壊して全電源喪失・炉心溶融に至ったことを暴露。「この鉄塔は津波の及んでいない場所にある。この鉄塔が倒壊しなければ、電源を融通しあい全電源喪失に至らなかったはずだ」と指摘しました。

 これに対し原子力安全・保安院の寺坂院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認め、全電源喪失の原因が津波にないことを明らかにしました。海江田万里経産相は「外部電力の重要性は改めて指摘するまでもない」と表明しました。

石川氏は、こうした議論を知っているのでしょうか。知らないとすれば、専門家としてあまりにも不勉強であり、知っているとすれば、国民をだましていることになります。

御用学者にだまされないようにしてください。

(文責:事務局)
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