2024年10月からレプリコンワクチンが導入されました。
その直前に日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」がレプリコンワクチンについての解説記事を載せています。
しかし、記事の中身は、内閣府の広報動画に出演している御用学者の見解だけであり、党としての見解が明記されていませんでした。
そこで、2024年10月7日に次のような質問メールを赤旗に送付しました。
日頃の活動に敬意を表します。
しかし、コロナワクチンについては、大変な人権侵害が起きています。
死亡との因果関係が認められた人は、900人近くになります。
認定を申請している遺族は2200人以上います。
2024年8月28日のNHKテレビのあさイチでは、2000人以上が重篤な被害を訴えたと言います。
赤旗を毎日見ていますが、この人権侵害に対して日本共産党は全く問題視していないと思います。
その理由を教えていただけないでしょうか。
また、10月から接種が始まるレプロコンワクチンについては、9月24日と25日の赤旗で中山哲夫教授のインタビュー記事を掲載しただけです。
中山氏は接種を推奨する立場です。
日本共産党の立場もレプリコンワクチンの接種を推奨する立場ということでしょうか。
そうであれば、その理由を教えてください。
質問からちょうど2週間後の2024年10月21日に回答のメールが次のとおり届きました。
私のために長文のメールを書いたのかと思ったら、コロナワクチンに関する質問に対しては雛形が用意してあったとのことであり、雛形に一部を加筆したようです。
長文なので読みづらいでしょうから、やむなく見出しを加筆することにしました。
【日本共産党からの回答メール】
(見出しは引用者)
【基本方針】
新型コロナワクチンの接種について、日本共産党はこれまで、以下の4点を基本にしながら対応をしてきました。
【接種は自由意思による】
1、ワクチンを接種するか、しないかは個々人の自由な意思によって判断されるべきであり、接種への強制や圧力、接種の有無による差別には断固反対する。
【ワクチン接種は命を守る重要な手段、徹底した情報公開と説明の要求】
2、同時に、党としては、専門の医学会の知見にもとづき、ワクチンの接種が、新型コロナ感染症の発症・重症化から国民の命を守る重要な手段の一つであると考え、希望する人への安全・迅速な接種を政府に求める。その前提として、ワクチンの有効性(発症予防効果、重症化予防効果など)と安全性(発生しうる副反応やその頻度・重篤度など)について、徹底した情報公開や、国民への説明を要求する。
【有害事象の原因究明と補償を求める、国会論戦と新聞報道を行う】
3、あらゆるワクチンには、感染症の脅威から命を守るメリットとともに、副反応のリスクがある。新型コロナワクチンについても、接種後に起こっている有害事象への徹底した原因究明と被害者への救済・補償を求め、国会論戦や、「しんぶん赤旗」での報道を行う。
【虚偽情報に与しない】
4、ワクチンをめぐってはネット上で様々な虚偽情報(フェイクニュース)が垂れ流され、右翼勢力がそれを政治利用しているが、そうしたデマには与さない。
【専門家の知見と政府が承認に用いたデータを踏まえる】
私たちは政党であり、個々の医薬品やワクチンの当否を判断できるような独自の医学的知見をもっているわけではありません。
ワクチンの有効性・安全性については、専門の医学会から示される知見と、政府が承認の際に用いたデータを踏まえながら、国民の生命と安全をまもる立場で、行政に適確な対応を求めるのが基本となります。
【差別、強制の禁止】
上記の1にあるとおり、ワクチン接種はあくまで個人の自由意思にもとづいて行われるべきであり、接種の有無による差別があってはならない、というのが党の立場です。
アレルギー性疾患などで、接種を控えるよう医師から指示・助言されている人もいます。
法制度上も、行政機関や学校、雇用主などが、個人に接種を義務として強制することはできません。
【専門学会・医療界の共通の知見に基づく、安全・迅速な接種を要求する】
同時に、上記2にあるとおり、日本共産党は、専門学会・医療界の共通の知見にもとづき、希望する人が安全・迅速にワクチンを接種できるよう政府に対応を求めています。
【発症・重症化を予防する高い効果があることは科学的に証明されている】
新型コロナワクチンには、感染による発症・重症化を予防する高い効果があること、公費接種が国民の命の防護策となることは、科学的に証明されています。
この間、日本で接種に用いられてきているファイザー社製、モデルナ社製のm-RNAワクチンには、新型コロナの発症・重症化を接種後の6カ月間、70〜90%予防する効果があることが、内外の研究機関の検証によって確認されています。
2021〜22年に英国オックスフォード大学の研究チームが、新型コロナワクチンの接種を受けた3000万人(2回接種:1621万人、3回接種:1384万人)を対象に行った追跡調査で、ワクチンにコロナ感染症の重症化を予防する高い効果があること、その効果は、追加接種を行うことでさらに高まることが立証されました。
2022年9月、国際的な医学誌『ランセット』に掲載された、インぺリアル・カレッジ・ロンドンのO・ワトソン研究員の論文では、コロナワクチンが開発・普及されたことで、2021年の一年間の、世界185カ国における「コロナ感染死亡者」と「コロナの蔓延の影響による超過死亡者」は、3,140万人から1,160万人に減少し、約2000万人が死亡を免れた、と推計されています。
日本国内でも、国立感染症研究所が東京都内のデータをもとに行った調査によれば、ワクチン接種による死亡回避効果は8割で、2021年からのワクチン接種が行われていなければ、国内のコロナ感染者の死亡(2023年時点で7.4万人)は2〜3倍超に跳ね上がっていたとされています。
【接種のメリットが、リスクよりも有意に大きいことは証明されている】
しかし、上記3にあるとおり、ワクチンには、感染症の脅威から命を守るメリットとともに、副反応のリスクがあります。
もともと、あらゆる医薬品は人体にとっての異物であり、副作用のリスクがない薬や、副反応のリスクないワクチンはありません。
治験によるワクチンの安全性の確認とは、ワクチンが無害であることの確認ではなく、接種後に生じる有害事象の種類・頻度・重篤度が、接種のメリットとの比較で、許容範囲内であることの確認を意味します。
ファイザー社製のm-RNAワクチンについては、接種後の副反応として、接種部位の痛みや発熱などとともに、重度のアレルギー症状(アナフィラキシー)を起こす事例が、100万回当たり2〜5例の割合(0.0002〜0.0005%)であることが、当初から示されていました。
また、同ワクチンには、接種100万回当たり5〜20例(0.0005〜0.002%)の割合で心筋炎・心膜炎を起こすリスクがあることも報告されています。
その一方、ワクチン未接種の人が新型コロナに「自然感染」した場合、心筋炎・心膜炎を発症する割合は、感染100万人当たり6000人〜2万人(0.6〜2%)と報告されています。
接種のメリットが、リスクよりも有意に大きいことは証明されていると考えますが、ワクチン接種がノー・リスクではないことは、明らかです。
【接種4億回に数百件の重篤な副反応は許容範囲内】
日本における新型コロナワクチン接種は4億回を超えており、上記の頻度をあてはめても、数百件の重篤な副反応が起こっていても不思議ではありません。
【原因究明と補償を求める】
私たちは、希望しない人にワクチンを打つことを強制したり、ワクチンを「打てない・打たない人」を差別したりすることを絶対に許さないことと同時に、接種後の有害事象の原因を徹底的に究明し、健康被害への迅速な補償・救済を行うことを求めています。
田村智子議員、宮本徹議員、倉林明子議員などが、ワクチン接種後の有害事象の問題を、国会でたびたび取り上げて質問し、徹底した原因究明と、すみやかな被害者救済を求めているのは、その一環です。
そうしたワクチンのリスクの側面や、接種後有害事象の救済をめぐる国会質問の内容は、「しんぶん赤旗」の日刊紙・日曜版でも適宜、報道してきました。たとえば、「しんぶん赤旗」日曜版(2024年)2月12日号には、ワクチン接種直後に30代の息子さんが亡くなった、広島県の遺族の方へのインタビューが掲載されています。
日本共産党が、新型コロナワクチンの副反応の問題について、科学的なリスク論の立場から、正確な情報の提供を進め、被害の徹底検証、被害者への補償・救済を求めていることを強調したいと思います。
【虚偽情報が拡散されている】
その一方、上記4のとおり、新型コロナワクチンについては、「新型コロナワクチンは、治験が終わっていないのに緊急承認された」、「ワクチンの長期的な人体への影響は検証されていない」、「遺伝子組み換えワクチンは危ない」、「ワクチンを打てば、AEDという現象によって、かえって免疫が下がり、感染しやすくなる」、「ワクチンのせいで日本の超過死亡が増えている」__など、科学的根拠も事実の裏付けもない虚偽情報(フェイク・ニュース)が、ネット動画や「反ワクチン」本をつうじて、拡散されている現状があります。
レプリコンワクチンをめぐる、「接種者から病原体が放出され、感染が広がる(=シェディングが起こる)」、「体内でスパイクタンパク質が大量に増殖し、人体に悪影響を与える」、「ワクチンによって投与されたm-RNAによって人間の遺伝情報が書き換えられる」__なども、同様です。
【デマの火付け役は非専門家】
こうした虚偽情報拡散の火付け役となっているのは、感染症やワクチンの専門家ではない、一部の"自称医師""自称学者"です。
それらの"自称学者""自称医者"の共通する特徴は、「ワクチンは危険だ」という自らの説を学会で論証する活動をまともに行わず、専門的な知識のない素人への発信と、政治家・政党への働きかけに終始していることです。
この間、そうした"自称医師""自称学者"と結びつき、参政党、日本維新の会、自民党極右派など右翼勢力が、ワクチンにかかわるデマの拡散をしながら、自らの政治的な影響力を広げる活動を強めています。
【ワクチンの効果や害悪について疑問を持つことは厳密な科学的検証によって得られた学問の到達を歪めるものである】
これは、厳密な科学的検証によって得られた学問の到達を、政治の介入によってゆがめようとする、邪道の行動であると私たちは考えています。
今年4月に東京都内で行われた「反ワクチン」集会の主催者は、「英霊の名誉を守り顕彰する会」の会長を務める右翼活動家でした。
9月の東京都内の「反ワクチン」集会には立憲民主党の国会議員なども参加しましたが、集会を主導したのは右派勢力であり、主催者側の一部がSNS等で「デモに参加すれば日当を払う」旨を拡散し、参加者を集めたことが、テレビ・新聞等で報道されています。
そうした極右勢力が垂れ流す虚偽情報を、「しんぶん赤旗」が両論併記的に報じることはありません。
【赤旗記事は専門学会(日本ワクチン学会)の共通の知見を示したもの】
○○様にもお読みいただいた、「しんぶん赤旗」(2024年)9月24日付・25日付の北里大学教授の中山哲夫氏のインタビュー記事は、レプリコンワクチンに関する専門学会の知見を「しんぶん赤旗」読者に知らせるとともに、ネット上を飛び交う虚偽情報の誤りを明らかにするために企画・掲載されたものです。
同記事は、学術上の論争がある問題の"一方の見解"を載せたものではなく、専門学会の共通の知見を示したものです。
日本ワクチン学会の公式の見解は、「しんぶん赤旗」紙上で、中山教授が解説しているとおりです。
【日本感染症学会もレプリコンワクチンに期待している】
日本感染症学会も、今年5月に示した「COVID-19ワクチンに関する提言(第9版)」において、コロナ感染の新たな「波」から高齢者や基礎疾患のある人の命と健康を守るため、新しい国内産ワクチンの開発・製造を進めることを提言し、そうした新型国産ワクチンの一つとして、「レプリコン」型のm-RNAワクチンに「期待」を表明しています。
【レプリコンワクチンの有効性・安全性は大規模な国際共同治験と国内の治験によっても確認されている】
レプリコンワクチンについては、研究・製造の過程で有効性・安全性が立証され、大規模な国際共同治験と国内の治験によってもそれが確認されている、というのが、専門学会の一致した見解です。
【専門学会の公式見解は真実であり、その報道は当然】
レプリコンワクチンを「危険」「有害」と叫んでいるのは、もっぱら、ネット上や「反ワクチン本」で虚偽情報を垂れ流している"自称医師""自称学者"であり、その"情報"は、科学的根拠も、事実の裏付けもないものです。
ワクチンに対する評価や、自分が接種するかしないかは、当然、各自の判断ですが、科学的根拠のない虚偽情報の拡散に対し、真実を知らせるのは、当然の報道であると考えます。
【死亡一時金の支給が認められた事例が、「600件」超ある】
◯◯様のメールには、ワクチン接種後に亡くなり、「死亡との因果関係が認められた人は、900人近くになります」という一文があります。
これは、国が運営する「予防接種健康被害救済制度」により、死亡一時金の支給が認められた事例が、「600件」超あることを指しての記述であると考えます。
【「予防接種健康被害救済制度」は健康被害の原因がワクチンであることを認定する制度ではない】
しかし、「予防接種健康被害救済制度」は、接種後の一定期間に健康被害が生じた人を、ワクチンとの因果関係が立証されないケースも含めて救済・補償する仕組みであり、健康被害の原因がワクチンであることを認定する制度ではありません。
【「ワクチン副反応疑い報告制度」では、現在のところ、接種後の死亡事例で、ワクチンとの因果関係が認められたものはない】
ワクチンと健康被害の因果関係については、「ワクチン副反応疑い報告制度」という別の制度で検証されており、現在のところ、接種後の死亡事例で、ワクチンとの因果関係が認められたものはありません。
【仮に、実際の同制度の運用が、ネットの"情報"どおりに行われたら、補償・救済の対象は今よりさらに"狭き門"となる】
ネット上には、「予防接種健康被害救済制度」の認定を"ワクチンによる健康被害を国が認めたもの"と扱う言説が飛び交っていますが、それは正しい情報とはいえません。仮に、実際の同制度の運用が、ネットの"情報"どおりに行われたら、補償・救済の対象は今よりさらに"狭き門"となり、多くの被害者が置き去りにされることになります。
日本共産党は、同制度を充実させ、接種と健康被害との因果関係が明確に否定されるケース以外はすべて対象とし、より幅広い被害者への補償・救済を行うことを求めています。
【ワクチンのメリットとリスクの両面について正しい情報を確認することが重要】
以上のように、新型コロナワクチンをめぐっては、同ワクチンの有効性・安全性について科学的立場から語る人を「ワクチン推進派」と呼んで、副反応の問題を無視しているかのように決めつけるのでなく、ワクチンのメリットとリスクの両面について正しい情報を確認し、接種をするか、しないかは、各自が自由な意思によって判断するという立場を堅持することが重要です。
【学問的探究によって導き出された結論に素人が口を出すべきではない】
また、ワクチンの有効性・安全性は科学的研究によって検証されるべきものであり、学問的探究によって導き出された結論を、政治の介入によって歪めることを絶対に許してはなりません。ワクチンを"政治問題"にしようとする、一部の勢力の策動を許さず、これらの勢力が拡散する虚偽情報の影響を一掃することが求められます。
【虚偽情報がふりまかれている】
重ねての強調になりますが、新型コロナワクチンをめぐっては、米国のトランプ派や日本の右翼勢力、それらと結びついた「反ワクチン」の医師・学者などがインターネットをつうじて、科学的根拠のない虚偽情報をふりまいている現実があります。
【「反ワクチン」の動きはまじめな医師・医学者の努力に対する妨害行為】
こうした策動は、高齢者や基礎疾患のある人をコロナの危険性から守り、医療体制の崩壊を防ごうとする、まじめな医師・医学者の努力に対する妨害行為であると同時に、科学的なリスク論にもとづく副反応対策や、接種後に健康被害が生じた被害者への円滑な補償・救済にも困難を持ち込む、きわめて悪質な活動となっています。
総選挙でも、参政党など極右勢力が、「反ワクチン」のデマやその影響を受けた有権者の不安・不信につけこみ、自らの得票・議席の伸張を図ろうとすることは必至です。
【反科学のデマ情報を断固として跳ねのけていく必要がある】
そうした現実を直視し、反科学のデマ情報を断固として跳ねのけていく必要があることを申し述べ、返信とさせていただきます。
日本共産党中央委員会 質問回答係