ダム反対鹿沼市民協議会が公安警察から監視されている

2007-06-13,2007-10-19追記

●市民を監視してどうする?

07-06-07「赤旗」は、「日本共産党の志位和夫委員長は六日、国会内で記者会見し、自衛隊の「情報保全隊」による大規模な国民監視活動を詳細に記録した内部文書を独自に入手したとして、内容を公表しました。志位委員長は「自衛隊の部隊が、日常的に国民の動向を監視し、その情報を系統的に収集しているのは動かしがたい事実であり、違法、違憲の行為だ」とのべ、政府に対し、情報保全隊の活動の全容を明らかにし、ただちに監視活動を中止するよう求めました。」と報じました。  

また、「「情報資料について」は、自衛隊イラク派兵反対運動に限らず、医療費負担増、年金改悪、消費税増税に反対する運動や「国民春闘」といった運動まで詳細に記録しています。」とも書かれています。

このことについて、全国紙も地方紙も「自衛隊は市民を見張ってどうしようというのか」という論調で防衛省を批判しました(例えば、07-06-08「東京新聞」社説)。全国では5紙が一面トップでこの問題を取り上げ、20紙が一面で報じたようです。「下野」は2面記事でした。

今回、日本共産党が入手した自衛隊の内部文書は、次の2種類です。
○陸上自衛隊東北方面情報保全隊が収集した情報を週単位で一覧表にまとめ、分析を加えたもの。2004年1月7日から2月25日までの5週間分。
○情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」という文書。2003年11月24日から04年2月29日までの6週間分。

監視対象としてダム反対組織が含まれていなかったようです。(栃木県の団体や個人も監視対象となっていませんでした。)しかし、上記期間以外の期間で自衛隊がダム反対組織を調査したかどうかは分かりません。

情報保全隊の隊員は全体で927人で、内訳は陸上自衛隊668人、海上自衛隊103人、航空自衛隊156人です(07-06-13「赤旗」)。調査の目的については、いざというときに効率よく市民活動を抑圧するためでもあるでしょうが、監視活動の練習がしたかった、予算を消化するための仕事が欲しかったということもあるのかもしれません。

●自衛隊員に国防意識はあるか(この項目2007-10-19追記)

後藤一信という人が「自衛隊裏物語」(バジリコ)という本を書いているようです。香山リカ氏(精神科医)の書評を読むと、ほとんどの自衛隊員の関心は国防にはなく、「一般隊員ではギャンブルと酒と女、幹部では自分の出世と老後の安泰」だと書いてあるそうです。

それを裏付けるようなニュースが流れました。「防衛省の事務次官だった守屋武昌氏(63)が在任中、軍需専門商社「山田洋行」(東京都港区)の当時の専務(69)と多数回にわたって一緒にゴルフをしていたことが関係者の話で分かった。妻同伴のときもあったという。利害関係者とゴルフをすることは、自衛隊員倫理規程で禁じられており、現職であれば処分の対象だった。大物次官と呼ばれた自衛隊員のトップが法令違反を繰り返していたことになる。」(朝日新聞2007-10-19)。

軍需業者とゴルフ三昧をやっている自衛隊員トップ(しかも4年間も君臨していた)に国民を守るという意識は見えません。トップがこういう意識なら、その下の隊員の意識は「推して知るべし」と言われても仕方がないのではないでしょうか。市民団体の情報を集めることは、防衛のためではなく、自分たちの利益を守るためだと言われても仕方がないのではないでしょうか。

●「国民監視」を報道しないメディアがある

07-06-08「赤旗」の「レーダー」という欄に荻野谷正博さんという人が「「自衛隊の国民監視」問題をどう報じた」と題して、記事を書いています。

荻野谷氏の記事によれば、NHKは、この問題を6月6日の7時のニュースで伝えず、「ニュースウオッチ9」の後半、1分ほどで報じたそうです。そして、守屋武昌防衛事務次官の「自衛隊には任務を遂行するための調査活動は認められており、このこと自体に問題はない」との見解を伝えたようです。

他方、この日、自衛隊関係では、井上康生選手ら、男子柔道選手が自衛隊駐屯地で訓練をしたという事実があるようで、このことについてはNHKはニュースバリューを認め、7時、9時、深夜のニュースで伝えたそうです。NHKがだれのために番組を作っているかを表しています。

また、フジテレビは、6日、7日とも自衛隊による国民監視問題に関するニュースを一切報じなかったようです。国民は自衛隊に監視されて当然だと考えているのか、日本共産党の手柄を認めたくないのか。フジテレビがこの問題を無視する理由は分かりません。

●ダム反対鹿沼市民協議会も監視されている

ダム反対鹿沼市民協議会は、公安警察から監視されています。会長と事務局の家や職場には、警察官がちょくちょく訪れます。事務局の職場を訪れる警察官は、2年くらいで異動になり、現在の担当者は3代目です。担当者は、私たちに名刺を渡してきます。この点、自衛隊の監視活動は隠密に行う、いわゆるスパイ活動ですが、公安警察は堂々と身分を隠さずに活動します。世間話の合間に私たちの活動のことも聞いてきます。警察権力から接触されることは、結構プレッシャーになり、「警察の調査対象になるなら、いっそダム反対運動などやめてしまおうか」と思う人もいるかもしれません。

私たちが、犯罪者予備軍の扱いを受けていることは、心外です。私たちがこれからどのような罪を犯して治安を脅かすというのでしょうか。調査活動は税金を使ってやるのですから、必要な調査をすべきであり、逆に不必要な調査をしてはいけないはずです。

もっとも、今は、チラシを配っただけで刑罰を受ける時代になってしまったのですから、その意味では私たちは犯罪者予備軍かもしれません。国家公務員の場合ですが、「2004年3月3日、警視庁公安部は、社会保険庁職員である堀越明男氏を、国家公務員法違反で逮捕し、3月6日に起訴しました。(ビラを配布した)堀越氏が、国家公務員法102条、人事院規則14ー7違反したという理由からです。」(法学館憲法研究所のサイトから)。ダム反対鹿沼市民協議会の会員が公務員でなくても、将来住居侵入罪を犯すかもしれないという理由で調査対象にされてしまっているのかもしれません。

●警察に尾行されていたダム反対活動市民がいた

公安警察は、自衛官同様市民を尾行する場合もあります。二十数年前のことですが、ダム反対活動をしていたS氏が鹿沼市役所の企画課を訪れました。南摩ダムについて質問するためです。S氏が帰った直後に警察官が企画課を訪れ、S氏がどんな質問をしたかを尋ねました。調査結果を水資源開発公団(当時)に伝えるのが目的だったのではないでしょうか。

警察は、合法的な市民運動を調査する暇があったら、振り込め詐欺の犯人や泥棒を捕まえてほしいと思います。そもそもさしあたって罪を犯すおそれのない市民活動を調査する権限は警察にないはずです。

もちろん、暴力革命を企む者が通常の市民活動を装って活動することはあり得ますから、市民活動を監視することが常に違法ではないでしょうが、市民活動を監視するなら、違法な活動をするおそれがあるという相当な根拠が必要です。警察が合法的な活動をしている市民運動を調査することは、税金の無駄遣いであり、市民への弾圧でもあります。即刻やめるべきだと考えます。

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