公務員賠償保険の加入増

20010-03-23

●「ダーツの旅」かと思った

2010-02-22下野の3面に「いつ矢が当たるか」という見出しがありました。所ジョージのテレビ番組の中のコーナー「ダーツの旅」の話かと思ったら、公務員賠償責任保険の話でした。

1面では、「公務員自衛で保険加入増/賠償請求のリスク回避」の見出しで次のように報じています。

県内の自治体職員に、訴訟に備えた賠償責任保険に加入する動きが広がっている。市民の権利意識の高まりなどを背景に、公務員に対する住民・民事訴訟は増加傾向にあり、「安心」を買い、自己防衛する姿が浮かび上がる。旧氏家町(現さくら市)の浄水場訴訟控訴審判決で、損害賠償請求権を放棄したさくら市議会の議決が違法とされた影響もあって、市町長の間にもリスク回避の意識が高まっている。

公務員賠償責任保険とは、「地方公共団体職員が公務に起因する損害賠償などを請求された場合に、損害賠償金と争訟費用が保険金として支払われる保険」(上記記事)です。

●例は的外れ

上記下野の3面には、次のように書かれています。

窓口で言葉遣いに立腹された。公園を利用した住民がけがしたーー。訴訟までいかなくても、公務には日々、トラブルの種が潜んでいる。「いつ矢が当たるか分からない」。県内自治体職員からこんな声が漏れる。

しかし、「窓口で言葉遣いに立腹された。公園を利用した住民がけがした」。こんなことで、職員個人が訴えられることはないと思いますし、そんな実例もないと思います。仮に公園施設に瑕疵があったことで自治体が訴えられたとしても、公務員個人が自治体から求償されるのは、管理する職責を有する公務員に故意があると認められるような悪質性がある場合に限られるはずです。

挙げられた例は、賠償保険につながるとは思えず、ピント外れのように思います。

●まじめに仕事をしていれば賠償責任は負わない

下野の樺沢修記者に話をした公務員は、訴訟を起こす住民をクレーマーや訴訟狂とみなしているのではないでしょうか。「自分はどんなに真面目に仕事をしていても、おかしな住民に訴えられたら賠償責任を負わされてしまう」とでも言いたいのでしょうか。

私たちはダム訴訟の原告ですが、首長や一般職の職員の過失を責めていません。単なる過失を追及する住民訴訟は皆無ではないでしょうか。

住民訴訟を起こす市民は暇を持て余している市民だけではありません。訴訟は手間ひまがかかりますから、訴訟の対象は、よほどひどい行為にしぼらざるを得ないのが実情です。

窓口の対応のまずさくらいの問題で訴訟にまでなることは、まず考えられません。

どこの自治体でもこれから水需要が増えるはずがないのに、意図的に水需要を過大に見積り、保有している水源を放棄し、あるいは取水能力を過小に見積り、不要で不安定で安全性に劣るダム水を確保するために、故意に住民に損失を与えようとしているから、全国の首長や水道事業管理者が訴えられているのです。

ダムや空港や道路の建設事業で需要を過大に見積もるのは、計算ミスではないのです。ハコモノを造るために意図的に需要を膨らませているのです。需要予測が狂っても、だれも過大予測の責任を問われてこなかったのです。首長や議員や職員は、意図的に住民に損失を与えてきたのです。あるいは与えようとしているのです。訴えられて当然ではありませんか。

なんにも悪いことをしていないのに、いきなり住民から訴えられる様を「いつ矢が当たるか」と表現し、被害者意識を丸出しにするのは筋違いだと思います。

上記記事は、住民訴訟を起こす側の市民の立場を理解しているのか疑問に思います。

(文責:事務局)
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