鹿沼市議が政務調査費でゴルフ

2009-04-15

●鹿沼市の政務調査費問題を下野がスクープ

鹿沼市は、昨年3月12日に2005年度の鹿沼市議会の5会派の政務調査費の使い方が違法であるとして、市長に対して48万2,920円の返還を会派に請求するよう命じる宇都宮地裁の判決を受けました。今年も鹿沼市議会の政務調査費について下野が次のようなスクープを報じました。

2009-03-27下野新聞
日帰り可能な視察で宿泊/ 04年に鹿沼市議会会派
 鹿沼市議会の会派「明政クラブ」(現在は解散)が二〇〇四年、日帰り可能な視察にもかかわらず約五十キロ離れたホテルに政務調査費を使って宿泊し、翌日、近くのゴルフ場でプレーしていたことが二十六日、下野新聞社の取材で分かった。プレー代は各自支払ったが、二日目の日当や交通費も政調費から支出していた。同会派の会計責任者だった市議は「ゴルフは視察後で問題ない」としているが、オンブズ組織の関係者は「ゴルフありきの視察。極めて悪質」と問題視している。
 (以下略)

以下はその続報です。

2009-04-02下野新聞
鹿沼市議会視察問題/ 市議ら政調査費返却
鹿沼市議会の会派「明政クラブ」(現在は解散)が二〇〇四年八月、日帰り可能な茨城県日立市を視察後、約五十キロ離れた福島県のホテルに政務調査費を使って宿泊し、翌日ゴルフ場でプレーした問題で、当時同会派市議だった八人が、鹿沼市議会事務局に政務調査費約二十二万円を返却したことが、一日までに分かった。
(以下略)


●もう少し詳しい事実

2004年8月26日に鹿沼市議会の最大会派である明政クラブの会員8人が茨城県日立市を視察した後、福島県いわき市の宿泊施設に1泊し、翌27日に宿泊先近くのゴルフ場でプレーしたそうです。視察の目的は、「市町合併の進め方」の調査です。

明政クラブの会員は、鈴木幸夫氏、鈴木章由氏、阿見英博氏、飯塚正人氏、冨久田耕平氏、小川清正氏、増渕靖弘氏、津久井健吉氏の8人でした。 下野タイムスNEWSによると、視察に行ったのは9人で、他会派から1人参加したようです。他会派の1人がだれかは今もって不明です。一行は、自動車2台に乗り合わせたようです。

不思議なのは、ゴルフをやるなら8人でちょうどよい数字なのに、なぜわざわざ9人で行ったのかということです。

●下野新聞が誤報

なお、返却額については、下野タイムスNEWSは、「日帰りの視察が可能であったことから日当3300円×8人、16500円×8人の158400円を鹿沼市に返還した。」としており、下野の「約22万円を返却した」という報道と食い違っています。全額返却と一部返却では意味が違ってくると思います。

議会事務局に確認すると、返却額は158,400円だったとのことなので、下野新聞が誤報だったことになります。最近の誤報では、日本テレビ系のバンキシャ(岐阜県庁裏金問題)と週刊新潮(朝日新聞阪神支局襲撃事件犯人手記)の事件があります。いずれも一人の証人の証言を裏付けも取らずに報道するというミスでした。

今回の下野新聞の誤報はなぜ起きたのでしょうか。やはり明政クラブの会員から聞いた話を裏付けも取らずに書いたということではないでしょうか。

●政務調査費の算出根拠

2004年度の鹿沼市議会の政務調査費の交付額は、2004年度政務調査費交付決定額一覧(PDFファイル32KB)のとおりです。議員1人当たり年間432,000円を限度に政務調査費が使えることになっていました。

問題の明政クラブの収支報告書は、2004年度政務調査費収支報告書(PDFファイル164KB)のとおりです。この資料によると、明政クラブが日立市への視察に要したとする費用約22万円の内訳は次のとおりです。
宿泊料16,500円×8人=132,000円
日当6,600円×8人=52,800円
交通費4,480円×8人=35,840円
合計220,640円

交通費が1人当たり4,480円であることの根拠は、新鹿沼駅から東武日光線、JR両毛線、JR水戸線、JR常磐線と電車を乗り継いで行った場合の電車賃のようです。さすがに復路いわき市を経由する運賃ではなかったようですが、当時は、いわき市に宿泊する必要があったということで宿泊費と日当を請求したのに、電車賃だけは日立市から直帰というのは辻褄が合いません。

当時は、政務調査における出張を公務出張と同じに扱うというルールをお手盛りで決めていたのかもしれませんが、筋論としては、公務ではないのですから、実費弁償とすべきです。実際は、自動車2台に乗り合わせたとのことです。その場合の実費を試算してみます。

行政が自動車の燃料代を実費弁償する場合、走った分だけのガソリンの領収書は取得できませんから、1km当たり30円で計算することが一般的です(例えば長野県議会の政務調査費マニュアル)。 ガソリンの価格をリッター100円程度と仮定すると、リッター3km程度の恐ろしく燃費の悪いクルマを想定しています。

道路時刻表によると、鹿沼市と日立市との距離は115.7kmですから、問題の視察では、115.7×2×30円×2台=13,884円も払えば十分ということになります。実費弁償という考え方からは、実際に政務調査費から支払われた35,840円との差額の21,956円は、払い過ぎということになります。

また、公務ではないのですから、日当も不要でしょう。

●公明党と同時期に九州へ

公明党の収支報告書(PDFファイル84KB)をご覧ください。公明党の2人は、2005年2月8日〜10日に宮崎県都城市と大分県別府市を視察しています。視察目的は不明です。

明政クラブも1日ずれて、2005年2月7日〜9日に宮崎県都城市と大分県別府市を視察しています。こちらは目的が明記されています。

視察目的は、都城市は「地域福祉計画策定事業について」と「ウェルネス都城ブランド確立事業について」で、別府市は「管理職応募制及び降任制度について」と「議会の一問一答方式について」でした。

そもそもわざわざ九州まで調査に行く必要があったのか疑問です。本当に必要なら公務で行くべきではないでしょうか。

また、2か所とも同じ市に行くなら、日程を合わせて一緒に行けばいいのにと思います。1日違いで鹿沼市から視察に来られて、都城市と別府市も迷惑だったのではないでしょうか。

●終わった話か

去年、市が敗訴した判決が出たのが2005年度の事案、今回は2004年度の事案。裁判にも負けて政務調査費のルールも議員の意識も変わったのだから、古い話をほじくり返さなくてもいいではないかという意見もあるでしょう。しかし、明政クラブは、多額の会議費を飲食に充てていたことが特徴的でした。会員8人の明政クラブの2004年度の会議費は439,661円でした。同年度の創政会(自民系。会員6人)の会議費は97,255円でした。民主連合(会員4人)の会議費は50,400円でした。税金で飲み食いするのが仕事と考えているのではないかと言われても仕方のないような行動をしていた議員が、裁判に負けたからといって簡単に変わるのか、また、執行部の税金の無駄遣いをチェックできるのか、疑問です。旧明政クラブの議員の意識が市民感覚に近くなったのならば、ダムや水道を巡る税金の無駄遣いを追及してもよいのではないでしょうか。南摩ダムが中止にならないのは、市長の責任もありますが、議員の感覚が市民感覚とずれているからではないでしょうか。

(文責:事務局)
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