ずっとウソだったんだぜ〜森友学園問題を考えてみた〜(その4)

2016-09-05

(敬称略)
●佐川はお縄を頂戴しろ

自己に不利益な供述を強要されないことは、憲法第38条第1項で保障される人権ですから、証言拒否権を行使するのは自由です。

そして、言行一致が至難であることも承知しています。

しかし、佐川の証言拒否の連発は、その発言と辻褄が合わず、憤りを感じます。

金子原二郎・参議院予算委員会委員長から決裁文書の改ざんについて質問され、「国会で大きな混乱を招き、国民の行政への信頼を揺るがす事態になり、誠に申し訳ない。」と言っています。

本当に申し訳ないと思うなら、刑事訴追のおそれがあろうとも、進んで事実を洗いざらいしゃべって、自分のやったことが刑事法規に触れるなら、潔く刑罰を受けて罪を償うのが筋ではないでしょうか。

佐川は、「当時の担当局長として責任はひとえに私にある。」と言い、つまり、自分は改ざんのことは知らなかったが、実際に起きたのであれば、その当時の責任者なので結果責任を負うという言い方をします。

それが事実なら刑事訴追されることはないでしょう。佐川が告発されている犯罪はすべて故意犯なので、改ざんが行われていることを知らなかった場合には、共犯としての故意が認められず、刑事責任を問えないからです。

佐川の態度は、「民主制の基盤を壊すような悪いことはしましたがしゃべれません、刑罰を受けたくありませんから」ということです。理解できません。

確かに「申し訳なく思うこと」と「処罰を甘受すること」とは、理論的には違うのかもしれませんが、処罰されたくないということは、結局は、心底申し訳ないことをしたとは思っていないということだと思います。

本当に申し訳ないと思うなら、全部白状してお縄を頂戴したらどうでしょうか。

●佐川証言の見返りは何か

佐川が政権を守ろうとしたことは誰の目にも明らかだと思います。

何でそんなことをするのかと言えば、政権から見返りを保証されているから、と見ざるを得ません。

2018年3月9日付け日刊ゲンダイによれば、近畿財務局にある決裁文書の最終責任者の近畿財務局管財部長・小堀敏久(57)が「近畿財務局管財部長に就いたのは、2015年7月。翌16年6月に破格の約8億円値引きで森友学園に国有地を売却するまで、交渉窓口となった管財部のトップを務めたキーマンである。」とされています。

2016年7月に九州財務局総務部長に異動し、1年で大臣官房付きとなり、今は、独立行政法人「水資源機構」の一般職に天下りしているそうです。

記事には次のように書かれています。

ただ、(水資源機構の)理事に就いているのは所管の国交省や農水省の幹部OBだけで、所管外の財務省から人材を迎え入れるのは異例のこと。しかも小堀氏は「常務参与」という肩書を与えられているが、この役職は、小堀氏の就任以前5年間も担当者不在で“空席”だった。わざわざ、彼のために用意されたポストのようにも見えるのだ。

森友問題で小堀の実例があるのですから、自民党永久政権を前提として、佐川も、水資源機構等への天下りが約束されていると見るべきではないでしょうか。

●菅発言についての朝日新聞の見立ては正しいか

2017年2月24日の佐川の答弁に関する菅義偉・内閣官房長官の同日午後の記者会見発言を朝日新聞は次のように報じています(2018年3月14日付け「文書が外部の目に触れるのは…」焦る財務省、指示次々)。

朝日新聞が学園側への不透明な国有地売却を報じたのが同月(2017年2月)9日。国会で野党の追及が始まった。安倍首相は関与を否定し、同月17日、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言い切った。

佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)は同月24日、国会で「不当な働きかけは一切なかった」とし、学園との交渉記録は「速やかに廃棄した」と答弁した。同じ日の記者会見で、記録の廃棄を疑問視する質問に、菅義偉官房長官はこう返した。「決裁文書に、(交渉の経緯の)ほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」

国会での佐川氏の強気の発言とは裏腹に、理財局内は混乱していた。菅長官の言うとおり、決裁文書に多くのことが書かれていたからだ。

この記事を読むと、記録を廃棄したとする佐川答弁と決裁文書は30年保存であり、そこに経緯のほとんどが書かれているから記録を廃棄しても問題ないとする菅発言を契機として、職員があわてて改ざんを始めたということになると思います。

しかし、菅が実際の決裁文書も見ないで「決裁文書に、(交渉の経緯の)ほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」と言うでしょうか。

朝日の見立ては、職員への取材に基づいていると思うので、確度は高いと思いますが、その見立てとは逆に、2017年2月24日までに主要な決裁文書は既に改ざんされていたという推理も十分可能ではないでしょうか。ノンフィクション作家で『総理の影: 菅義偉の正体』の著書がある森功もラジオで同趣旨のことを言っていました。

朝日新聞の見立ては、2月24日の佐川答弁と菅発言が改ざんの契機だったということになると思いますが、野党の見解は異なります。

玉木雄一郎議員は、「昨年2月17日の(衆院予算委員会での)首相答弁。『私や妻が関わっていたら総理も議員も辞める』との答弁に合わせて、事実の方をねじ曲げ、文書の改ざんを行うきっかけになったのではないか。」と言います(2018年3月12日朝日デジタル版)。

●菅発言の趣旨を確認してみた

正確を期すために2017年2月24日(金)午後の記者会見の動画(8:00あたりから)を見ると、次のようなやり取りがありました。

【記者】
東京新聞のイクシマです。話題変えます。
森友学園の関連ですけれども、今日の予算委員会で財務省の佐川理財局長がですね、森友学園と財務局側との交渉記録についてですね、記録が残っていないと、事案は終了しているので速やかに廃棄していると思うという答弁をされているんですが、まず、この点についてですね、これは適当だというふうにお考えでしょうか。
【菅】
まずここで御理解を頂きたいんですけど、財務省においては、公文書管理法の規定に基づいて制定されているということです。そしてその財務省の行政文書管理規則に基づいて、また同じように文書管理も行っている。この法則に基づいて契約書を含む国有財産の取得及び処分に関する決裁文書については、30年の保存期間が定められているということです。ですから、30年間保存しているんです。

また一方で、面会等の記録については、その保存期間は1年未満とされているということで、具体的なこの廃棄をするその時期については、説明したとおりだったというふうに思います。

【記者】
関連ですけども、面会記録の方はですね、1年未満ということで今回は廃棄をされていると思うということなんですけれども、似たような話で、防衛省の日報問題の1年未満という部分で、稲田防衛大臣は、見直しも含めて検討するお考えを示されていますが、こうした面会記録等についてはですね、政府としては何らか対応する・・・。
【菅】
いずれにせよですね、各省庁とも、この公文書管理法の規定というのに基づいて行っているんだろうというふうに思います。
そのことにおいてですね、何らか著しい弊害が出るということであれば、それはまた、見直しする必要があるんだろうというふうに思いますけども、基本的にはですね、決裁文書については30年間保存しているわけでありますから、そこにほとんどの部分というのは書かれているんじゃないでしょうか。

菅は、小池 晃(日本共産党)2018 03 28 参議院予算委員会19:00〜で、2017年2月24日午後の記者会見では、「(「基本的にはですね、決裁文書については30年間保存しているわけでありますから、そこにほとんどの部分というのは書かれているんじゃないでしょうか。」は)一般論として申し上げたんです。」と菅は答弁しました。

しかし、菅の答弁は、公文書管理の一般論ではないと思います。

記者は、「関連ですけども」「防衛省の日報問題の1年未満という部分で」とフェイントをかけた形になっていますが、「こうした面会記録等についてはですね」と、結局は面会記録も含めて聞いています。

これに対し菅は、おそらくは「国有財産の取得及び処分に関する決裁文書については、30年の保存期間が定められている」ことを前提として、「決裁文書については30年間保存しているわけでありますから、そこにほとんどの部分というのは書かれているんじゃないでしょうか。」と答えているので、面会記録について答えたことになると思います。

全体的に見ると、記者は、森友学園問題で面会記録が1年未満で廃棄されることが適当か、という質問をしています。

これに対して菅は、「全く問題ない」という決め台詞は出ませんでしたが、国有地処分に関する決裁文書は30年保存であり、そこに経緯のほとんどが書かれているので廃棄しても問題ない、なんなら見せましょうか、という趣旨の応答だったと読むのが自然だと思います。

●菅は改ざん前の決裁文書を見ていた可能性がある

2018年3月26日の参議院予算委員会で、菅義偉・内閣官房長官は、「昨年2月の佐川氏の答弁があった「少し前」に、国有地処分を担当する当時の財務省理財局長だった佐川氏と、売却問題に関わっていた国土交通省航空局長から説明を受けた、と認めている。佐川氏は喚問で「(菅氏からの)指示はなかった」と証言したが、菅氏とのやりとりが答弁に影響を与えなかったのか、疑念が残る。」(3月31日付け東京新聞)という報道があります。「昨年2月の佐川氏の答弁があった」日とは、2017年2月24日であり、菅が上記記者会見を行った日でもあります。

動画は、<参議院・予算委員会>集中審議(午後の部) 2018-3-262:22:36あたりから

質問したのは福山哲郎議員で、菅の実際の答弁は、次のとおりです。

(2017年2月)24日の少し前だったと思いますけども、森友学園の問題が国会で大きな問題となっていたので、総理からもしっかり調べるようにという強い指示がありました。
私自身、財務省理財局長、国交省航空局長の両局から土地の売却の経緯について説明を受けました。
そして土地の値段等については、公共事業に使う基準で積算しており問題はない、こういうことでありました。
何か問題になるようなことはないとのことだったので、その旨総理にご報告をいたしました。
(中略)
決裁文書について、私はその内容を示されたこともなく、説明も受けておりません。

局長は、この会談に、特例承認に係る決裁文書を持参したはずです。

決裁文書を示されなかった、説明も受けていない、という菅の答弁は、信じ難いものです。

この会談で、理財局長からも航空局長からも、「決裁文書には、政治家や総理夫人のことが記載されています。異例の扱いをしていることも書かれています。どうしましょうか」という話が出なかったとすれば、局長はあまりにも無能だったことになると思います。

決裁文書の確認もしないで、総理に「何の問題もありませんでした」という報告をしたとすれば、菅もまた相当に無能だったことになってしまいます。

●菅が説明を受けた日を明確に示すべきだ

菅が説明を受けた日が具体的にいつだったのかをはっきりさせるべきだと思います。

普通に推理すれば、総理大臣が進退答弁をしたのが2月17日(金)ですから、両局長から説明を受けたのが休み明けの2月20日(月)と考えるのが自然です。

この2017年2月20日という日は、佐川の部下である国有財産企画課の嶋田賢和課長補佐から酒井康生弁護士経由で指示された籠池が3月10日まで身を隠し始めた日でもある(政権の「佐川主犯」物語に終止符! 一年前のある発言から明らかになる「綻び」 <取材・文/菅野完>(ハーバー・ビジネス))ことも上記仮説の妥当性を担保すると思います。

2017年2月20日に人と文書の隠蔽工作が始まったとする見方もあります。

この仮説で見ると、同月24日の菅の記者会見の発言内容(経緯のほとんどが決裁文書に書かれている)と2018年3月28日の菅答弁(2017年2月24日以前に両局長から説明を受けた)と太田充理財局長答弁(改ざんは2017年2月下旬から4月にかけて行われた)とが矛盾なく理解できます。

つまり、2017年2月20日に官邸が事案の説明を受けるための会合があり、そこで決裁文書を誰かが見て、『なんでこんなものが残っているんだ!』と怒鳴ったので、『なかったことにするしかないよね』という流れになったという仮説なら矛盾なく経緯を説明できます。

太田の言う「2月下旬」という改ざん開始時期は具体的にいつなのか、そして、菅が局長から説明を受けた日がいつなのか、この二つをはっきりさせることができれば、上記仮説が誤りかもはっきりすると思います。

太田理財局長が改ざんは2017年2月下旬から始まった、理財局が指示した、と言っている以上、野党は、2月中旬における理財局の動きを探るでしょう。そして公表されているイベントとしては、菅への説明会くらいしか思い浮かばないのですから、福山議員が追及しているのだと思います。

菅は、土地取引が適正であり、公文書改ざんの指示等をしていないのであれば、疑いを晴らすためにも、上記説明会の日時、場所、出席者、内容、後に削除された情報に触れなかった理由等の詳細を明らかにした方が政権のためにもよいことだと思います。

●菅の答弁は不自然

重複しますが大事な問題なので菅の上記答弁を具体的にイメージして、じっくり考えた方がよいと思います。

改ざんの時期は、改ざんを指示した者を特定するための重要な手がかりになると思います。だからこそ、佐川証人は、改ざんの時期については絶対に話さないように弁護士から言い含められ、「改ざん前の文書を見たか」という質問は「いつ見たのか」という質問になるから、証言しない、と言ったのでしょう。

菅は、「(2017年2月)24日の少し前だったと思いますけども、森友学園の問題が国会で大きな問題となっていたので、総理からもしっかり調べるようにという強い指示がありました。」と答弁しました。

この総理の「強い指示」があったのはいつでしょうか。総理の進退答弁のあった2月17日という仮説は成り立つと思います。

そして官邸が理財局と航空局から説明を受けたのが、上記のとおり、2月20日だったとします。

太田理財局長の答弁を前提とすれば、2月20日は、2月中旬ですから、改ざんはぎりぎり始まっていないので、佐川理財局長は、改ざん前の決裁文書を基に菅に説明したことになります。

そこには、野党に追及されたくないことが山ほど書かれていました。昭恵や政治家の動き、日本会議、事前の価格提示等についての記載です。

別に局長がエリート官僚でなかったとしても、説明の際にそれらの不都合な記述に触れると思います。

それなのに、両局長は、上記不都合な記述に一切触れることなく、「土地の値段等については、公共事業に使う基準で積算しており問題はない」とだけ説明したので、菅は「何か問題になるようなことはないとのことだったので、その旨総理にご報告をいたしました。」というのが菅の答弁です。

総理が問題がないかを「しっかり調べるようにという強い指示があ」ったにもかかわらず、切れ者と言われる菅が、両局長から決裁文書から遊離した「問題ない」という内容の説明を聞いて、ああそうか、と言って、総理に「何か問題になるようなことはありませんでした」と報告したのなら、まるで子どもの使いです。総理の指示に対する長官の対応としては落第点しかつかないと思います。

菅が本当に改ざん前の情報を把握していなかったとしたら、事実確認に失敗したということであり、その結果、調査という使命も果たしていないということです。

内閣官房長官と局長が集まって、「事実確認」や「事実認識の共有化」に失敗するということがあるのでしょうか。

菅の答弁は、菅が切れ者で、エリート官僚が優秀であるという評判や経験則に反し、不自然です。

(文責:事務局)
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