ずっとウソだったんだぜ〜森友学園問題を考えてみた〜(その5)

2018-04-08

(敬称略)
●「財務省が森友学園側に口裏合わせ求めた疑い」とNHKがスクープ

2018年4月4日、森友学園への国有地売却での値引きについてNHKが次のようにスクープしました。

森友学園に国有地がごみの撤去費用などとして8億円余り値引きされて売却された問題で、去年2月、財務省が学園側に口裏合わせを求めていた疑いが出てきました。当時、国会で財務省は野党側から「実際に大量のごみの撤去を確認したのか」などと追及されていましたが、そのさなか財務省の職員が学園側に対し「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」などと、うその説明をするよう求めていたことが関係者への取材でわかりました。大阪地検特捜部はこうしたやり取りを把握していて詳しい経緯を捜査しています。

当時、国会では「値引き額の算定の根拠があいまいだ」などと批判が相次ぎ、去年2月17日の衆議院予算委員会で財務省は「8億円かけてごみを撤去するとなればダンプカー4000台分ぐらいになる。実際に撤去されたか確認したのか」などと野党側から追及されていました。

その3日後の去年2月20日、国有地を管轄する財務省理財局の職員が学園側に電話し、「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」などと、うその説明をするよう求めていたことが関係者への取材で新たにわかりました。


●口裏合わせ工作と安倍の進退答弁との関連はないのか

上記口裏合わせ工作と安倍の進退答弁や籠池夫妻の雲隠れとの関連についてリテラが「財務省が籠池氏に身を隠せと指示したのも3月20日!すべて安倍首相“辞任”発言が端緒」という見方を示しています。

詳しくは、「財務省が森友学園に口裏合わせを要求していた! 安倍首相「私や妻が関係していれば辞める」発言の直後に」又は、下記阿修羅記事を見てほしいのですが、要点を抜粋します。
http://www.asyura2.com/18/senkyo242/msg/543.html

文書を改ざんせざるを得なくなったのは、この安倍首相の進退をかけた発言だったと目されているが、実際にこの日の国会でのやりとりを端緒にして、森友側に嘘の説明を求めていた。やはり、この17日の安倍首相の国会発言をきっかけにして、文書の改ざんや口裏合わせといった“アリバイづくり”に動き出したのではないか。

しかも、財務省の嘘をつかせようとした昨年2月20日には、もうひとつ動きがあった日だ。籠池泰典理事長は、昨年2月に顧問弁護士だった酒井康生氏を通じて財務省が籠池理事長に10日ほど隠れるようにと指示したと証言していたが、著述家の菅野完氏によれば、籠池夫妻が姿を消したのはまさにこの日、昨年2月20日月曜の深夜だという。

ようするに、こういうことだ。17日金曜に安倍首相の口から飛び出した「総理も国会議員も辞める」発言で青ざめた官邸は、急いで森友学園と安倍夫妻のかかわりを指し示す文書の改ざんをはじめ、それと合わせたかたちの今後の答弁作成に動き出した。そして、週明けの月曜に森友側へ嘘の説明を求め、さらには当事者である籠池理事長がマスコミの前で勝手なことを喋らせないために、口封じ目的で雲隠れを命じた──。そうとしか考えられない。

後記のように、2月20日月曜日に「籠池理事長がマスコミの前で勝手なことを喋らせないために、口封じ目的で雲隠れを命じた」という推理は違うと思います。

●NNNが報じたもう一つの裏工作

4月5日付けNNNニュースは、次のように報じています。

関係者によると、去年2月17日、安倍首相が、「自分や妻が関与していたら辞職する」と発言した直後に、近畿財務局の職員が森友学園側に、「ごみの撤去費用は不明」などと記された書面を提示して、サインをするよう求めた。

財務省の公文書改ざん以外の裏工作は、2月17日から始まった証拠が出たということです。

●菅が説明を受けた日及び出席者が明かされた〜太田局長も出ていた〜

4月5日付け日刊ゲンダイは、次のように報じます。川内博史議員が出席者を聞き出すまでに20分かかったことを示す動画も是非ご覧ください。

異常なまでの“逃げの答弁”だった。財務省の森友文書改ざんについて、国会で批判の矢面に立つ太田充理財局長が、問題のカギとなる“秘密会議”に出席していたことが発覚した。

会議が開かれたのは、朝日新聞が最初に森友問題を報じてから約2週間後の昨年2月22日。当時の佐川宣寿理財局長が菅官房長官と面会し、財務省側が報道後初めて森友問題の詳細を説明した場だった。
(中略)
今月3日の衆院財務金融委員会で答弁に立った太田局長の慌てた様子は、よほど重要なやりとりがあったことをうかがわせる。

立憲民主の川内博史議員に「誰が同席したのか」と問われると、太田局長は妙に焦った様子で「最終的な責任を持って説明したのは理財局長」「出席者を細かく答える必要はない」と繰り返すばかりで、逃げの一手。食い下がる川内氏に、ようやく「事実関係を確認させて欲しい」と答え、審議は一度打ち切りに。再開後、確認を済ませた太田局長は、ため息交じりに「同席者は総務課長と総括審議官」と明かしたのだった。

まるで他人事のように同席者の役職名だけを打ち明けたが、よくよく調べてみると、当時の総括審議官は太田局長自身だ。15年7月から2年間、職務に就いている。

「総括審議官は、財務省大臣官房で官房長に次ぐ『ナンバー2』。省内のあらゆる案件を把握すべき立場です。佐川氏が証人喚問で、前任者から森友案件について引き継がれていなかった旨を証言しましたから、太田氏の方が事情に精通しているはずです。昭恵夫人の名前があった改ざん前の文書の存在を知っていた可能性もあり得ます」(野党関係者)

太田局長は必死になって“秘密会議”への同席を隠していたわけだ。ひょっとして、改ざんの“主犯”は太田局長か。

太田が職名しか答えなかったのは、川内議員が職名を聞いたので仕方ないと思います。

菅が説明を受けたのが「昨年2月22日」であったことは、太田理財局長が3月30日の衆議院財務金融委員会で答弁したことで明らかになりました。

川内議員の質疑を中断したのは、太田が出席者を明かしてよいかについて官邸の了解をとるためだったと思います。

国土交通省の和田浩一航空局次長の答弁も不誠実なもので、最初は記録がないから出席者も分からないと言っていたのに、「航空局長に聞いたのか」と迫られて、「局長は調査に対応できず、次長が出ていた。次長は、他の出席者は覚えていないとのことだった」と小出しに答弁しました。

信じられません。その日、菅長官から指示があったかもしれないのに、記録を残しておかなかったとは思えません。

記録がなかったのが事実だとしても、覚えていないのも不思議です。わずか1年前の大事件と自分との関わりを、IQが高いはずの航空局次長が一晩かけても本当に思い出せないとしたら、高給を返上すべきです。

政府がここまでムキになって、この会合を秘密にしたがるということは、この会合で何らかの指示が官邸から示されたと考えたくなるのが人情です。

それにしても、改ざんを調査している太田局長が改ざん前の決裁文書を見ていた可能性があるしたら、いくらなんでも、いくらなんでも、いくらなんでもひどすぎる話です。

●2017年2月のタイムラインを整理してみた

私のこれまでの推理は、菅への説明が2月20日だと考えた点で外れましたし、その説明の後に様々な工作が始まったと見た点でも間違いでした。

2017年2月のタイムラインを整理してみます。

菅野完の記事にあるタイムラインをベースにさせていただきます。

2月17日金曜日:
・衆院予算委員会にて民進党福島伸享議員(当時)による質問。この質問にて福島議員は「ゴミは本当にあったのか」等を問いただすとともに、安倍昭恵の森友学園への関与を問いただす
・これに対し答弁にたった佐川理財局長(当時)は、「学校を建設するにあたって必要な廃棄物の撤去を適切に行ったというのは近畿財務局で確認している」等と答弁
・また、安倍晋三総理は「私や私の妻や私の事務所が関係していたら、総理も議員もやめる」と答弁
(以下は追記)
・安倍が「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いております」(衆議院予算委員会)と答弁
・近畿財務局の職員が森友学園側に、「ごみの撤去費用は不明」などと記された書面を提示して、サインをするよう求めた

2月18日土曜日:
・土曜日のため国会全休
(以下は追記)
・理財局の嶋田課長補佐が酒井康生弁護士を通して籠池にしばらく身を隠すよう指示(籠池泰典の子の佳茂がそう語った(『週刊金曜日』2018年4月6日号p5で佐高信編『安倍友学園のアッキード事件』を引用))

2月19日日曜日:
・日曜日のため国会全休

2月20日月曜日:
・財務省より森友学園側に口裏合わせの依頼。学園側はこれを拒絶(NHK報道)
・籠池、深夜にTBSラジオ電話出演。その後、財務省からの依頼による逃避行に出る

(追記)
2月22日水曜日:
・菅内閣官房長官が理財局と航空局から説明を受ける(出席者:菅長官、長官付き秘書官、佐川理財局長、理財局総務課長(中村稔)、財務大臣官房総括審議官(太田充)、航空局次長)

(追記)
2月24日金曜日:
・安倍が「官房長官からも、(質疑で)特に私の家内の名前も出たから、しっかりと徹底的に調べろという指示をした」(衆議院財務金融委員会)「(籠池は)非常にしつこい」(衆議院予算委員会)と答弁
・佐川が「(契約は)適正」(衆議院予算委員会)「学園との交渉記録は廃棄した」「本件の土地処分について、不当な働きかけは一切なかった」(衆議院財務金融委員会)と答弁
・菅が午後の記者会見で、決裁文書のことなど誰も言っていないのに、記録廃棄を正当化するために、自ら「決裁文書にほとんどのことは書かれている」と発言

(追記)
2月27日月曜日又は28日火曜日:
・理財局が「今後の開示請求に備えたほうがいい」と「特例承認」の決裁文書の改ざんを近畿財務局に指示(根拠は2018年3月14日付け朝日)

●特定承認決裁の改ざん日4月4日は正しいか

朝日の仮説と理財局長の説明で矛盾が出てきます。

朝日は、理財局からの改ざん指示があったのは、「佐川氏が「廃棄した」と答弁した数日後だった。」(2018年3月14日付け朝日)としているので、佐川答弁の日が24日金曜日だったことを考えると、指示した日は、2017年2月27日又は28日しかないことになります。

確かにこの説は、改ざんが昨年2月下旬から始まったとする公式見解と符合します。

しかし、太田理財局長は、「特例承認」の決裁文書(2015年4月30日付け、本省決裁)は、4月4日に改ざんされたことが分かっていると説明しています。根拠は下記日刊ゲンダイ記事のとおり。

何よりも、太田充理財局長は、2018年3月19日の参議院予算委員会で「一連の怪しい土地取引の入り口ともいえる「特例承認の決裁文書」について、太田充理財局長が「2017年の4月4日に変更している」と答弁」(2018年3月21日付け日刊ゲンダイデジタル

2月末日近くには理財局から改ざんの指示があったのに、4月4日まで改ざんしなかったとはどういうことなのか理解できません。

この「特例承認」の決裁文書だけに昭恵が「進めてください」と言ったなどの記述があるので、真っ先に改ざんしなければならないはずです。

この決裁文書が4月4日に改ざんされたという太田の説明は正しいのでしょうか。

2018年3月30日に森ゆう子、山本太郎(自由)、辰巳孝太郎(共産)の3議員が財務省の理財局業務課の執務室に行き、「普通財産の貸付けに係る特例処理について」と題する文書の変更履歴を見せてほしいと職員に言ったが、駆けつけた文書課職員は、「内部システムの管理上」という理由で「傲然と突っぱねた」そうです(「改ざん履歴確認させろ」財務省に乗り込む野党議員 監視役果たさぬ記者クラブ(田中龍作ジャーナル))。

結局、「特例承認」の決裁文書の改ざん日については、太田が4月4日と言っているだけで、理財局はその証拠を国会議員にさえ見せないのですから、信用しろと言われても無理があります。

改ざんは2017年2月下旬から始まったといいながら、一番ヤバイ文書である特例承認決裁文書を、改ざん作業の最終盤の4月4日に改ざんしたという説明には合理性がないと思います。

●タイムラインから何が見えるか

「昨年の2月17日、20日、22日、24日を繋いでいけば、真実が見えてくる。」(4月5日、辰巳孝太郎参議院議員)という意見に異論はないと思います。

2018年4月6日付け日刊ゲンダイは、次のように見立てます。

コトの始まりは、昨年の2月17日の衆院予算委。当時の民進党の福島伸享元衆院議員が8億円の値引きの根拠となったごみの撤去工事について「ダンプカー4000台」に相当する規模だなどと追及し、当時の佐川理財局長は「適正な価格で売っている」と応じた。おまけに、安倍首相は「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いている」と学園をヨイショしていた。

■断った籠池氏をバッシング

“口裏合わせ”が行われたのは、この答弁から3日後の2月20日だ。ところが、「事実と違うのでその説明はできない」と学園側が財務省の依頼を突っぱねると事態は一変。籠池氏が財務省の指示で公の場から姿を消したとウワサされる日だ。

2月22日には、何を話し合ったのか、太田充理財局長が総括審議官(当時)として、当時の佐川理財局長と共に菅官房長官に面会。その直後、24日の衆院予算委で安倍首相が籠池氏を「しつこい」呼ばわりし、17日の答弁と打って変わって森友学園を突き放し始めたのである。

要するに、口裏合わせを持ちかけても籠池氏が応じなかったため、手のひらを返したように“籠池切り”が始まったのだ。と同時に、決裁文書の改ざんが始まった可能性が高い。

ジャーナリスト安積 明子の分析(森友学園問題 「口裏合わせ依頼」の巨大衝撃 昨年2月20日前後 いったい何があったのか)もいい線行っていると思います。

「2017年2月17日の衆議院予算委員会では、このように安倍首相の籠池評は好意的だった。だがこれが2月下旬になると、一気に否定的へと変わっていく。」という見方に異論はないと思います。

ただし、安積が「この(TBSラジオ出演の)直後、籠池氏が当時の顧問弁護士を通じて理財局の職員から「身を隠してほしい」と言われた」と、辰巳議員の「籠池氏に『姿を消せ』と言ったのは、ラジオ番組でしゃべりすぎたために口止めが必要だと思ったのだろう」については疑問があります。

週刊金曜日が引用する『安倍友学園のアッキード事件』には、理財局が籠池に雲隠れを頼んだのは、2月18日と書かれているらしいからです。

籠池が出演したラジオ番組の概要は、【音声配信&抄録書き起こし】「大阪の学校法人への国有地払い下げ問題〜森友学園・籠池泰典理事長に荻上チキがインタビュー」(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」2017年2月20日放送分)に書かれています。

荻上チキは、2月20日より前に籠池の出演を予告していたので、理財局が2月18日には雲隠れを依頼したと見る方が自然です。同時にラジオに出演しないように依頼した可能性もあると思います。実際に20日の放送の内容を聞いて依頼したわけではないと思います。

●何が見えるか(私見)

識者が指摘しているように、偽装工作の起点は、2017年2月17日の安倍の進退答弁でしょうし、2月22日の菅への説明会合の前後で安倍の籠池への評価と佐川の答弁が変わったことも否定できないと思います。

財務省側は、2月20日までは、公文書改ざんを考えずに、籠池との口裏合わせで乗り切ろうとしたのではないでしょうか。籠池が自由に操れないと分かると、手のひら返しで籠池を切り捨てる作戦に出たものの、決裁文書に書かれた不都合な記述は糊塗する手段がないため、最初からなかったことにするという禁じ手が考えられたと思います。

また、2月20日までの偽装工作は稚拙であり、役人の考えそうなことです。「トラックを何千台も使ってゴミを撤去したと言ってほしい」と籠池に頼んで彼が従ったとしても、近所の人に聞いて回れば、そんな事実がないことはすぐにバレてしまいます。2月20日から先の偽装工作は公文書改ざんですから、大胆不敵であり、それまでと同一人物による指示とは思えません。

だとすると、政治家が登場する2月22日の会合は、政府側の対応策の転換点となる重要な作戦会議だったと目されます。

そこで改ざんが指示されたのではないと政府側が主張するのであれば、その会合をひた隠しにしてきた対応を改め、堂々と詳細を説明すべきです。

会合の内容を記載したメモが1枚たりとも存在しないということはないはずですから、政府はそれを示すべきです。

(文責:事務局)
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