ずっとウソだったんだぜ〜森友学園問題を考えてみた〜(その6)

2018-04-09

(敬称略)
●佐伯啓思・京都大学名誉教授が朝日新聞に寄稿した

2018年4月6日付け朝日新聞「異論のススメ」に、保守の論客でと言われる佐伯啓思・京都大学名誉教授が『森友問題一色の国会 重要政策論の不在、残念』というタイトルの論評を寄稿しました。

次のように書かれています。

しかし、現時点で確かなことは、ただ財務省内部での改ざんの事実であり、官邸の関与はなかったと佐川氏が発言したことであり、森友学園問題は現在、検察が捜査中、ということだけである。官邸が関与したという事実は何もでていない。

財務省内部で「忖度(そんたく)」があろうがなかろうが、首相夫人が安易なリップサービスをしようがしまいが、それは官邸の関与を示す証拠にはならない。

もしも、官邸が森友学園に関与したり、文書の書き換えを指示したりしたという有力な証拠や証言がでれば、その時には強く追及されなければならない。しかし、現時点では証拠はない。



●佐伯は安倍と昼飯を食っている

佐伯は、三浦瑠璃と同様、安倍と昼飯を食べる仲です。

2018年3月29日に安倍と昼食をとっていることが、次のとおり朝日の首相動静に載っています。

【午後】0時1分、佐伯啓思京大名誉教授、京大こころの未来研究センターの吉川左紀子センター長、広井良典教授らと昼食。

佐伯は安倍に気に入られているのだと思います。この昼食代は、官房機密費から出ているのではないでしょうか。

●佐伯は印象操作をしていないか

佐伯は、二階俊博(西田昌司や丸川珠代も同様)とは違い、佐川証言があったからといって、官邸の関与がなかったことが明らかになったとは言っていません。

それなら、なぜ確実なこととして、「ただ財務省内部での改ざんの事実であり、官邸の関与はなかったと佐川氏が発言したこと」を挙げるのでしょうか。

官邸の関与はなかったという印象操作をしたいためではないかと勘ぐりたくなります。なにしろ佐伯は、アベトモまでは行ってないのかもしれませんが、安倍と昼飯を食べる仲だからです。

●改ざんに関わってなければ官邸の関与がないことを証明できない

そこで念のため、過去記事の二階の非論理的思考に関する記述を次のとおり補足します。

確かに佐川は、3月27日に「改ざんに官邸の関与はなかった」と証言しましたが、官邸の関与がなかったかどうかは、改ざんの一部始終に関わった者でないと分からないはずです。

ところが佐川は、自分が関わったかどうかは、刑事訴追されるおそれがあるので答えないと言いました。

自分が関わったかを明らかにしない者が、誰が指示したかあるいは指示しなかったかを証言しても意味がありません。

佐川が、部下がやっている改ざんを知っていて黙認していたなら、関わっていたことになりますから、佐川が関わっていない場合には、部下が佐川に知られないように改ざんしていることになります。

したがって、官邸が佐川の部下に直接指示した場合には、その部下は佐川に報告しないでしょう。

江田憲司議員は、次のとおり鋭い指摘をしています。

あなたがもし改ざんに関与してないとすれば、あなたは部外者なんですよ。こんな改ざんというのはおおっぴらにありませんから、密室でやるんですよ。唯一あなたが関与してる時だけね、いろいろ関与してたけども、どこからも関与も圧力もありませんでしたといって初めて断言できるじゃないですか。

佐川は、「官邸なり大臣なりから仮に指示があったとすれば、必ず私のところに報告が上がってくるというふうに思います。」と答えましたが、佐川を部外者にしたいと思っている部下が報告するはずがありません。「必ず私のところに報告が上がってくる」は、あり得ません。

それに、佐川は要するに「報告が上がってくるはずだ」と言っており、「はずだ」を前提としている限り、結論にも「はずだ」が付くのであり、「官邸の関与はございませんでした」という断定の結論は出せないことになります。そこが理解できない二階や西田や丸川は、江田よりも劣る政治家と言えます。

●官邸が関与した状況証拠は出ている

佐伯は、「官邸が関与したという事実は何もでていない。」と書きます。

しかし、(その5)に書いたとおり、2017年2月22日に菅が佐川らから説明を受けた会合を政府が隠そうとしている事実は、官邸の指示を示す状況証拠です。

会合が2月22日(中旬)で、改ざんが始まったのが2月下旬とされているのですから、疑うのが当然です。

以下は、逢坂誠二議員と佐川証人とのやり取りです。

【逢阪】
昨日ですね、参議院の予算委員会で菅官房長官がこんな答弁をしているんですね。
24日の少し前だったと思いますけれど。これは24日というのは、去年の2月の24日のことであります。私自身、財務省理財局長、国交省航空局長、この両局から、土地の売却の経緯について説明を受けましたというふうに言っているわけです。
その後、また答弁続くんですけれども、こうやって官邸に説明に行っていることはある。これは事実だというふうには思いますが、加えてその時に何らの指示も、何らのサジェスチョンもないということなんですか。
【佐川】
今のおっしゃるとおりで、日付をちょっと覚えてないんですけどこの議論が国会で始まった割合早い段階だったと思いますが、官房長官のところに私ども理財局と、それから国土交通省の航空局で経緯についてご説明に上がって、こういう、いつ頃取得要望やスケールとか、そういうような経緯を私どもからして、国土交通省は確か工事の話だったような気はしますけども、そんなお話をして、それを官房長官がお聞きになってということだったと思います。
【逢坂】
それではその時には、何らの指示はなかったということでよろしいでしょうか。
【佐川】
指示はございませんでした。

佐川証言では、佐川らは経緯を説明し、官房長官は専ら聞き役に回ったということになりますが、長官と局長の会談で官邸からの指示が全くなかったという話は余りにも不自然です。佐川の言うとおりなら、森友問題における国会対応をどうすべきかことについての原局と官邸の擦り合わせは、いつ行ったのでしょうか。やましいことがなければ、内容は言えないとしても、時期は言えるはずです。

ちなみに、「いつ頃取得要望やスケールとか、そういうような経緯」についての説明を佐川がした際には、「特例承認」の決裁文書を基に説明したはずなので、菅が決裁文書を見ていないし、説明も受けていないという菅の話は不自然です。

●政府が「指示してないこと」を証明すべきだ

水俣病裁判など汚水垂れ流しを巡る公害裁判では、原告側が汚染物質の痕跡をたどって、ある工場の排水口までたどり着いたら、その工場が垂れ流していないことを証明する責任があるとされているという話を聞いたことがあります。

野党は多大な質問時間を使って、疑惑の秘密会合までたどり着いたのですから、政府は、その詳細を説明して、疑惑を晴らす証明責任があると思います。

佐伯は、昨年2月22日の太田局長まで出ていた秘密会合のことを知らないのかもしれません。

●佐伯は約8億円が不当に値引きされたことを知らないのか

佐伯は、「現時点で確かなことは、ただ財務省内部での改ざんの事実であり、官邸の関与はなかったと佐川氏が発言したことであり、森友学園問題は現在、検察が捜査中、ということだけである。」と書きますが、約8億円の値引きが不当だったことは明らかだと思います。

佐川は「鑑定評価に基づく取引だった」と言いますが、鑑定人は約8億円というゴミ処理費用については鑑定しておらず、大阪航空局が計算したということであり、しかも、学園側の業者の見積もりをそのまま使って算出したのですから、正当な売却とは言えません。

●佐伯は谷査恵子が籠池に送ったファクスを無視するのか

佐伯は、「もしも、官邸が森友学園に関与したり、文書の書き換えを指示したりしたという有力な証拠や証言がでれば、その時には強く追及されなければならない。しかし、現時点では証拠はない。」と書きます。

何言ってるんでしょうか。2015年11月17日に谷が籠池に送ったファクスは官邸側が関与した明白な証拠です。

木村太郎も、「御用」と言われる須田慎一郎でさえも、谷が送ったファクスは、昭恵夫人の関与を示すものではないのかと言っています。

谷は、ファクスに次のように書きました。

「小学校敷地に関する国有地の売買予約付定期借地契約に関して、資料を頂戴し」
「財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得ました。」
「大変恐縮ながら、国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたい」
「なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております。」
「内閣総理大臣夫人付 谷 査恵子」

世間では、こういうのを「口利き」と言います。

菅は、「当方としても見守ってまいりたい」の「当方」とは誰のことかと聞かれて、「それは当然、谷さんだと思います」と言います(2017年3月24日、参議院予算委員会)が、以下の点でおかしいと思います。
(1)谷個人が見守っても、学園側としてはありがたくも何ともない
(2)谷が個人として見守るなら、「内閣総理大臣夫人付」と書いた意味も、勤務時間内に役所のファクス機を使った理由も説明できなくなる

いずれにせよ、谷が個人的な意味で「見守ってまいりたい」と書いたのなら、何様のつもりかと思いますし、谷は正常な判断能力を失った職員だと思います。

●谷のファクスに関する菅の会見を聞いてみた

2017年3月23日(木)は、籠池の証人喚問があった日で、午後の官房長官記者会見で、菅は谷のファクスについて細かく聞かれています。

菅は、ファクスの内容を夫人に報告したことは認めています。

菅の回答で特徴的なことは、籠池からの手紙が(内閣総理大臣夫人付き)谷あてだったこと、そしてファクスの内容がゼロ回答だったことを何度も強調していることです。「(総理夫人が関与していないことはファクスの)内容を見れば一番分かる」と言います。

しかし、口利きとは「間に立って紹介や世話をすること。」(大辞泉)であって、成果が出たかどうかは関係ありません。

そもそも安倍の進退答弁の「(土地取引や小学校設置認可に)関係していたら」とか「関わっていたら」の定義を明らかにしないから、議論が空転すると指摘する人がいます。

確かに正論ですが、定義の議論を脇に置いても、取引に関する一方の要望を他方に伝えれば、成果が上がらなくとも、関わったことになると解釈するのが普通だと思います。

その意味で、名誉校長に就任したことは、処分に関わったことにならないという安倍の言い分は、もっともだと思います。

「ゼロ回答だったから、取引に関わったことにならない」という菅の主張は、安倍の進退答弁の意味をすり替える詭弁です。

なお、当時はゼロ回答だったかもしれないが、長い期間で見れば、要望は実現しているという指摘もあります(川本ちょっとメモの<安倍人脈―森友学園> 森友学園の願い通りになった 籠池陳情手紙と安倍昭恵 夫人付谷氏ファクスと格安国有地の関係)。

菅は、土地取引に関する財務省への問い合わせが山ほど来るから、そうした問い合わせに答えただけだ、と言いますが、それは当然です。本件では、国有地に関する要望や質問が夫人付き職員に来ており、谷が籠池に代わって財務省に聞いてやっていることを無視してすり替えています。

要するに、菅の説明は、谷の個人プレーだと言いながら、夫人に報告するのは当然と言ったりして支離滅裂です。

●昭恵は報告を受けていた

上記記者会の動画を見ると、菅は、谷が送ったファクスについて、「夫人は事前に報告を受けていたんじゃないでしょうか」という、断定を避けた言い方をしていますが、夫人が報告を受けていたことは認めたことなると思います。

菅が否定できないのですから、昭恵は報告を受けていた、と受け取るしかないと思います。

そうであれば、なぜ昭恵は、「そのファクスを送信するのはやめなさい」と言わなかったのでしょうか。
「内閣総理大臣夫人付 谷 査恵子」

という名義で送信すれば、夫人が送付したのと同じことになるからやめなさいと言うべきでした。

ところがそう言わなかったということは、自分が国有地処分に関し口利きをしたことになるという事態を容認していたことを意味すると思います。

それでも、「夫人は関わっていなかった」という安倍や菅の主張は通らない理屈だと思います。

●朝日新聞が谷査恵子・在イタリア日本大使館1等書記官に取材した

2018年3月28日付け朝日新聞に昭恵氏付の職員だった谷氏、指示や関与を否定という記事が載っています。

そこには、次のように書かれています。

谷氏は2015年秋、取引について財務省に問い合わせ、学園前理事長の籠池泰典被告=詐欺罪などで起訴=にファクスで回答していた。回答には「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」と記されていた。この表現について、谷氏は「(籠池前理事長が)夫人と直接やりとりされているような方だったのでそのように書いたのであり、意味はない」と説明。問い合わせが昭恵氏の指示によるかについて「いろいろ言われているが、そういうことはない」と述べた。

なんと河原田慎一記者は、谷に本件ファクスについて昭恵夫人に報告していたのかどうかを聞いていないようです。

「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」という記述について谷は「意味はない」と説明しているので、実際は報告していなかったのかもしれません。

それなら、なぜ菅は、「報告しているのではないでしょうか」と言ったのでしょうか。

政府は、この点を明確にするべきです。

なお、下記サイトによれば、谷は相当おかしなことを言っていることになります。
谷査恵子氏(元昭恵氏付職員)の「昭恵氏の指示なかった」はノンキャリ国家公務員の仕事おとしめるもの

●イメージを作っているのは政府だ

佐伯は、「こうして、あたかも官邸や財務大臣が財務省に圧力をかけ、「事実」を隠蔽(いんぺい)しようとしているかのようなイメージが作られる。」と書きますが、隠蔽のイメージを作っているのは政府です。それを払拭したいなら、2017年2月22日の秘密会合の詳細を公開すればよいのです。

●他人の意見を読んでいない

佐伯は、「財務省の文書改ざんの「真相解明」はそれでよいとしても、それ一色になって、重要な政策論が見えなくなるのは残念である。」と書きます。

しかし、公文書改ざんは民主政治を破壊するものであることは、多くの識者もマスコミも指摘するところです。

佐伯は、そうした指摘を読んでいないのでしょうし、民主政治を理解していないから、思いつきもしないのでしょう。

佐伯は、「重要な政策論が見えなくなるのは残念」と書きますが、いろんな省庁で公文書が改ざんされ、あるべき文書が「存在しない」とウソをつかれている中で、国会やマスコミは、どうやって重要な政策論を議論すればよいと言うのでしょうか。

(文責:事務局)
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