5月2日付け毎日夕刊に「ビンラディン容疑者:殺害、遺体収容…米大統領が緊急演説」という見出しの記事が載りました。次のように書かれています。
【ワシントン古本陽荘】オバマ米大統領は1日夜(日本時間2日午後)、テレビで緊急演説し、01年9月の米同時多発テロ事件の首謀者として手配していた国際テロ組織アルカイダの最高指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者(54)を殺害し、遺体を収容したと発表した。AP通信などによると、ビンラディン容疑者はパキスタン・イスラマバード郊外の住居に家族と滞在中だったという。大統領は「正義は達成された」と強調した。
しかし、分からないことが多すぎる事件です。
●オサマ・ビン・ラディンは9.11の容疑者か
アメリカ大統領は、オサマ・ビン・ラディンを9.11の容疑者としているが、刑事訴追されていません。
容疑者とはマスコミ用語であり、法律上は被疑者のことです。そして、被疑者とは、「捜査機関によって犯罪を犯したとの嫌疑を受けて捜査の対象となっているが、まだ公訴を提起されていない者のことをいう、司法手続及び法令用語である。」(Wikipedia)とされています。
しかし、アメリカ連邦捜査局(FBI)は、オサマ・ビン・ラディンを9.11の容疑で手配していません。
「マスコミに載らない海外記事」というサイトのFBI捜査広報課長、ビン・ラディンを9/11と結びつける確証はないと語る 06年6月10日によれば、「FBIは、ビン・ラディンについてのウエブ・ページで、オサマ・ビン・ラディンは、1998年8月7日のタンザニアのダルエスサラームと、ケニヤのナイロビでのアメリカ大使館爆破事件との関連で指名手配されていると書いている。FBIによれば、攻撃で200人以上が亡くなった。FBIはビン・ラディンを「指名手配」している理由の最後に、「さらに、ビン・ラディンは、世界中のテロリストによる攻撃の容疑者である。」と書いている。」だけなのです。
具体的に事件を特定せず、「世界中のテロリストによる攻撃の容疑者である。」という理由で指名手配ができるとすれば、アメリカの刑事司法とは野蛮極まりないものと言えます。
世界中のテロが彼の責任で起きているというのです。先進国の捜査機関がこのようなめちゃくちゃなことを書くとは信じられませんが、現実のようです。アメリカは法治国家と言えないと思います。
FBIの指名手配のウエブページは下記のURLなのですが、私のパソコンでは5月6日には閲覧できたのですが、今日はなぜか閲覧できません。
http://www.fbi.gov/wanted/terrorists/terbinladen.htm
上記「マスコミに載らない海外記事」には、次のように書かれています。
2006年6月5日、Muckraker Reportは、なぜビン・ラディンの重要指名手配ポスターには、オサマが9/11に関しても指名手配されているとは書いていないのか調べようとFBI本部(202) 324-3000に連絡をとった。Muckraker Reportは、FBIの捜査広報課長レックス・トム氏と話した。ビン・ラディンの重要指名手配ウエブ・ページに、なぜ9/11についての言及がないのか尋ねるとトムは答えた。「オサマ・ビン・ラディンの重要指名手配ウエブ・ページに9/11についての言及がない理由は、FBIはビン・ラディンを9/11に結びつける確たる証拠を持っていないからです。」
証拠がないということは、「犯罪を犯したとの嫌疑」がないということです。「嫌疑」とは、「ある者が犯罪を行なったのではないかという証拠に裏付けられた疑い」(Weblio辞書)です。
証拠がないということは、嫌疑がないということですから、被疑者=容疑者ではないということです。
大統領やマスコミがオサマ・ビン・ラディンを9.11の容疑者とする根拠が分かりません。
「オバマ氏は「ビンラディンには数千人の無実の米市民の命を奪った責任がある」と指摘」(5月3日付け赤旗)したそうです。
その証拠があるのかというと、「FBIはビン・ラディンを9/11に結びつける確たる証拠を持っていない」(FBIの捜査広報課長レックス・トム氏)というのです。
オバマ大統領かFBIの職員のどちらかがウソを言っていることになります。
●日本共産党もオサマ・ビン・ラディンを9.11の首謀者と断定
5月3日付け赤旗(日本共産党の機関紙)は、次のように書いています。
ウサマ・ビンラディン容疑者
国際テロ組織アルカイダの指導者で、2001年に米国で起きた9.11同時多発テロの首謀者でした。
「首謀者でした。」と断定しています。
FBIが証拠がないと言っているのに、日本共産党がなぜ断定できるのでしょうか。
アメリカ政府がそう言っているから、だと思います。日本共産党がいつも批判している「アメリカ言いなり」ではありませんか。
その一方で赤旗は、「93年に起きたニューヨークの世界貿易センタービル爆破などのテロに関与したとされています。」と書き、93年の事件については断定を避けています。
トンキン湾事件がアメリカの自作自演であることを暴いた日本共産党ですが、9.11に関する日本共産党の対応には理解しがたいものがあります。
●主権の侵害である
今回アメリカ政府がやったことは、パキスタンの主権を侵害する行為だと思います。
オサマ・ビン・ラディン殺害が適法であるならば、1973年に起きた金大中拉致事件も違法ではないことになると思います。
イスラエルがモサドを使ってパレスチナ人指導者を暗殺してきた(公知の事実でしょう。例えばイスラエルの暗殺の歴史)ことも問題ないということになると思います。
アメリカでは、「フォード大統領が1976年に署名し、レーガン大統領が81年に更新した暗殺禁止大統領令が現在も有効だ。」(5月5日付け下野)そうです。
アメリカは、国際法はもとより自国で決めたルールも守らないというわけです。
アメリカこそテロ国家です。
●ジェロニモとは何事か
5月4日付け毎日によれば、アメリカ政府は、オサマ・ビン・ラディンを暗号名「ジェロニモ」と呼んでいたそうです。
Jーcastテレビウオッチのアパッチ族「ビンラディン暗号名ジェロニモ」不愉快だ!オバマ謝罪せよによると、アパッチ族は怒ってオバマ大統領に謝罪を求めているそうです。
アメリカ政府首脳にアメリカが先住民を侵略して建国したという意識はないのでしょう。ジェロニモもオサマも殺しの標的でしかないのです。
ちなみに、アパッチ族のチェアマンが「米国民としてビンラディン殺害を誇りに思い歓喜した」と発言したとすれば、他国の主権侵害と個人の人権侵害を容認する発言であり、問題です。
●銃撃戦のウソ
5月2日付け読売によれば、「約40分の銃撃戦の末、ビンラーディンを殺害し、遺体を回収した。」はずでしたし、5月4日付け朝日によれば、「米政府はこれまでビンラディン容疑者や側近らと米軍が銃撃戦になり、一緒にいた妻を「人間の盾」にしたと説明していた。」のですが、「カーニー米大統領報道官は3日の記者会見で、米軍特殊部隊が国際テロ組織アルカイダ指導者のオサマ・ビンラディン容疑者を急襲した際に、同容疑者が「武装していなかった」と明らかにした。」そうです。
「米当局は当初、「激しい銃撃戦の末、ビンラディン容疑者は頭部に一発、胸部に一発の銃弾を受けた。即死状態だった」などと発表していたが、カーニー米大統領補佐官が3日の会見で、 「ビンラディン容疑者は丸腰で抵抗した」と述べるなど主張がブレてきている。」(http://www.sanspo.com/shakai/news/110506/sha1105060503011-n1.htm)という報道もあります。
そこには、「(ウサマの娘は)2日未明の米軍の急襲数分後、 ビンラディン容疑者は特殊部隊に捕まり、屋外に連れ出されて家族の前で射殺されたと主張しているという。 隠れ家にいた住民らも「こちらからは一発も発砲していない」と口をそろえているという。 」とも書かれています。これが真実なら、一発も発砲していない相手を5人も殺害することが正当防衛になるとは思えません。
銃撃戦がなかったことは確かです。アメリカ政府のウソが一つ明らかになりました。
ちなみに、「AP通信は5日、国防総省高官の話として、潜伏施設を襲撃した米部隊に発砲したのは、ビンラーディン容疑者の側近で、射殺されたアブアハメッド・クウェイティ容疑者のみだったと伝えた。米紙ニューヨーク・タイムズやCNNテレビなども同様の話を報じている。
クウェイティ容疑者はビンラーディン容疑者が射殺された建物とは別棟で死亡しており、米部隊はこれ以降、“交戦”のないままビンラーディン容疑者ら4人を射殺したことになる。」(5月6日付け産経)という記事もあり錯綜しています。
●最初から殺害目的だった
5月4日12時16分のNHKニュースによると、「アメリカ政府は今回の作戦について、ビンラディン容疑者を拘束できなければ殺害する計画だった」と説明していたが、「ロイター通信は、アメリカ政府高官の話として、「作戦は最初から殺害が目的だった」と伝えるなど、アメリカ国内では、作戦は当初から容疑者の殺害を狙ったものだったのではないかという見方が出ています。」とのことです。
「国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者襲撃作戦を実行した米海軍特殊部隊が受けていた命令は、「身柄拘束」ではなく「殺害」だったことが6日、分かった。作戦の全容を知る米政府筋が共同通信に明らかにした。」(5月6日付け産経)そうです。
●24時間以内に本人確認ができたのか
5月3日付け時事ドットコムには次のように書かれています。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201105/2011050300150
空母からアラビア海に水葬=DNA確認、ビンラディン容疑者−米 【ワシントン時事】米国防総省高官は2日、パキスタンで殺害した国際テロ組織アルカイダの首領ビンラディン容疑者の遺体を空母「カール・ビンソン」に運び、アラビア海で水葬にしたことを明らかにした。高官は水葬にした理由について「イスラム教では遺体を24時間以内に埋葬しなければならない。遺体を引き取る国がなかったので、水葬にした」としている。
同省によると、水葬は米東部時間2日午前1時10分(日本時間2日午後2時10分)から約50分間、空母艦上で行われた。米軍将校が立ち会い、葬儀の宗教的な言葉はアラビア語に通訳された。遺体は洗浄された後、白い布に包まれ、重しを付けて海に流された。
一方、遺体がビンラディン容疑者かどうかは、殺害後にまず中央情報局(CIA)の専門家が写真で照合。この時点で95%間違いないと判断したという。現場にいた同容疑者の妻からも確認を得た。さらにビンラディン容疑者の家族数人のDNAを使った鑑定で2日、100%の確率で本人と確認した。(2011/05/03-11:33)
24時間のうちにDNA鑑定ができるものでしょうか。やればできるようですが、あれだけの大事件の下手人だとしたら、慎重にやるべきでしょう。
そもそもどこで鑑定をやったのか、どの記事にも書かれていません。空母「カール・ビンソン」の中に鑑定施設があるのでしょうか。
5月5日付け時事通信によれば、「オバマ米大統領は4日、CBSテレビのインタビューで、国際テロ組織アルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者の遺体写真を公表しないことを決めたと述べた。」そうです。
私たちは、オバマ政権がパキスタンでだれを暗殺したのか全く分かりません。
●なぜ殺害目的だったのか
「米政府はこれまで、ビンラーディン容疑者が抵抗したために殺害したと説明してきたが、当初から殺害目的の作戦だったことになり、国際法上の適法性などにあらためて疑問の声が上がりそうだ。 同筋は、身柄拘束ではなく殺害命令が下された背景について「ビンラーディン容疑者を裁判にかければ(安全な法廷設置や弁護士費用などに)数百万ドル(数億円)かかる」と財政上の問題を指摘した上で、イラク戦争で米軍が拘束、イラク国内の裁判で死刑になったフセイン元大統領の例を引き合いに「(独裁者やテロ指導者の)最後の主張が世界に知れ渡るような裁判を米政府は望まない」と述べた。」(5月6日付け産経)そうです。
カネがかかるから裁判をやらないで暗殺したのだそうです。
クリントン元大統領のセックススキャンダルには4,000万ドルもかけて調査をしたのに、ですか。
仮に殺害されたのがオサマ・ビン・ラディン本人だったとすると、アメリカ政府が当初から殺害目的だったことは、9.11自作自演説からはうまく説明がつきます。
なぜなら、裁判にかけたら、彼が真犯人でないことが明らかになるかもしれないからです。だから、アメリカ政府は、9.11の遺族がどんなに真相解明を求めようとも、一顧だにせず、犯人に仕立て上げた人物を有無を言わさず殺害するしかなかったという合理的な推論が成り立ってしまうのです。