堤防強化に関する詭弁を見つけた

2020-05-03

●沖大幹教授へのインタビュー記事が載った

2019年台風19号の後、2019年10月26日付け東洋経済オンラインに沖大幹教授へのインタビュー記事「日本人は豪雨災害頻発の未来から逃れられない/どうすれば深刻な事態に備えられるのか」が掲載されています。

著者は「河野 博子 : ジャーナリスト」です。

●詭弁発見

5ページに次のようなやりとりがあります。

――今回の河川の決壊箇所をすべて補修したうえで、長期的にも堤防をより強固にして、決壊しない堤防を目指せばいいのではないですか。

堤防の強化は、大事です。しかし、むやみに堤防を高くすると、壊れた時、あるいは越流した時の危険度もどんどん上がってしまいます。例えば、今まで高さ5メートルだった堤防を10メートルにかさ上げすると、崩れた時には10メートルの水の壁が勢いよく住宅街などに流れ込むわけです。

破壊力も大きくなるので、あまりに高くするのは危険です。上流のダム貯水池などだけではなく、普段はテニスコートや公園のようになっているけれど豪雨の際にはいったん水を貯める機能がある遊水地を作るのも有効です。流域にできるだけ水を貯めて河川に水が流れ込む前の流域全体で洪水を管理しようという「総合治水」という考え方は当初都市河川を対象に取り入れられましたが、大河川や農村部でも検討していく価値があります。

質問は、「決壊しない堤防を目指せばいいのではないですか。」ですが、沖教授は、「堤防の強化は、大事です。しかし、むやみに堤防を高くすると、壊れた時、あるいは越流した時の危険度もどんどん上がってしまいます。」と答えられました。

しかし、質問者は、「堤防を高くすればいい」とは言っていません。

沖教授は、「決壊しない堤防」の話を「高い堤防」の話にずらされたのです。

論点ずらしはこうやってやるのだ、というお手本を学生たちに示されたのだと思います。

私は、質問の趣旨は、「越水しても短時間では決壊しない堤防の建設を目指せばいい」ということだと思いました。

つまり、耐越水堤防とかアーマーレビーとかハイブリッド堤防と呼ばれる類の堤防への転換が必要ではないか、という趣旨だと思います。

水問題にお詳しい沖教授が耐越水堤防をご存知ないはずがありません。

論点ずらしのお手本を学生に示されたのだと思います。

(文責:事務局)
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