労組の特定政党向け募金は違法だ

2009-06-09,2010-02-27追記,2010-03-07追記

2009-05-09赤旗の「知りたい聞きたい」のコーナーに次のような質問がありました。

自動車関連会社の労働組合員ですが、組合が「国政募金」の名称で特定政党へのカンパを集めています。組合幹部が何度もきて「認めてほしい」と頭を下げます。日本共産党の考えを教えてください。

日本共産党の答え(抜粋)は、次のとおりでした。

労働組合は、労働者が思想信条の違いを超えて労働条件や暮らしにかかわる要求を守り、実現するために団結してたたかう組織です。会社や政党、特定団体にしばられたり支援したり、特定政党を支持し、カンパを集めることは大きな間違いで、日本の労働組合の重大な弱点です。

労働組合が特定の党の指示を組合員に義務づけ、投票や選挙運動、選挙カンパを強要することは、憲法で保障された思想信条の自由という基本的人権を侵害し、組合の団結を破壊することになり、そのことによって一致する要求で団結してたたかう障害にもなります。

「特定政党支持」は、いまは破たんしています。「連合」組合の職場では、特定政党支持の押しつけがくずれ、無党派層が急増しています。「同意できない」と拒否し、それでも組合が「労働組合の機関決定に従うべきだ」などといってくれば、憲法で保障された権利を守るよう主張することが大事です。

私鉄総連営団労組事件判決(1977年5月、東京地裁)、全逓山口地区本部事件判決(84年3月、山口地裁)などでも、「政党への募金の強制は、組合員の政治的信条の自由を侵すものであり、法律上認められない」と断じています。

判例とともに正論が書かれています。

判例では、「募金」の問題について書かれているのですが、組合員が払った組合費を執行部の機関決定で特定政党のために支出することもまた違法と言えるのではないでしょうか。組合が多数決で民主党のために組合費を使うということは、民主党支持でない組合員は脱退してくれということです。

●民主党、またヤミ献金疑惑(2010-02-27追記)

小林千代美衆院議員(北海道5区)陣営が北海道教職員組合(通称「北教組」。連合・日教組加盟)から違法献金を受け取っていた問題を2010-02-28赤旗日曜版が取り上げています。

小林議員が連座制での辞職の危機にさらされています。

この事件について、日本共産党の志位和夫委員長は、2月18日の記者会見で、「連合指導部や北教組がとっている特定政党支持義務付け、強要に問題の一番の根っこがある」と言いました。

志位氏は記者会見で、次のように述べました。

労働者の切実な要求実現のために、政党・政派の支持や思想・信条の違いを超えて、切実な要求実現のために団結する組織であり、特定政党支持の強要は、労働組合の性格を根本的にゆがめるものだ。

志位氏は、連合指導部が「特定政党支持路線」と「労使協調主義」という二つの重大な弱点を指摘しています。さらに次のように主張します。

特定政党支持の強要はやめ、労働組合員に政党支持の自由を保障するのが当たり前の民主主義のやり方だ。

労働組合は、いつになったら「特定政党支持路線」をやめるのでしょうか。

●日教組の論理(2010-03-07追記)

2010-03-07サンデープロジェクトの特集は、北海道教職員組合の違法献金問題でした。

レポーターが日教組の中村譲委員長に「組合組織が特定政党を支持する機関決定をしてよいのか」と質問したところ、中村市は次のように答えました。

一人一人が意思を持って入っている組合ですから、外からとやかく言われる筋合いじゃないと思う。
(特定政党への支持を)強制をしていないし、していくべきではない。強制は教育に一番遠い行為だ。

テレビ朝日から日教組へした質問に対し、日教組は、次のように文書回答しています。地位利用もまずいと言っています。

「労働組合としての」政治活動の自由は、憲法等の規定から保障されるべきであると考えます。

両方合わせれば、地位利用や強制でなければ、組合としての政治活動の自由は憲法等で保障されているというのが日教組の言い分ですが、実際は、半強制だという組合員の声もあります。「多数決という名の全体主義」という批判も紹介されていました。カンパを払わない組合員は、団結を乱す者というレッテルをはられます。

組合員への何の強制も伴わない特定政党支持の機関決定にどれほどの意味があるのか疑問です。「組合で決めたことは守れ」、「組合員は団結を乱すな」というルールで組合員を強制することに意味があるのだと思います。

組合の支持する特定政党を支持しない組合員が何の不利益も被らないのなら、日教組の言い分にも一理あるでしょう。

しかし、番組でも紹介していたように、現実にはそうではありません。特定の政治家の後援会カードが割り当てで配られたら一応は受け取るでしょう。「協力したくありませんから」と言って、受け取らないのは、勇気が要ることでしょう。

だから、民主党を支持しない組合員にとっては、組合が民主党支持の機関決定をすることは、政治的自由の侵害であり、憲法の精神に反します。

結局、組合の民主党支持が気に入らない組合員は脱退するしかありません。脱退を迫る組合運動というのもおかしなものですが、組合がそのおかしさに気づくことはあるのでしょうか。

(文責:事務局)
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