東京新聞はなぜ佐藤優に執筆依頼を続けるのか

2019-07-27

●佐藤優の本音

2019年7月5日付け東京新聞の「本音のコラム」欄に佐藤優が次のように書きました。

大阪日ロ首脳会談
6月29日、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が大阪市で会談した。会談後、ロシアと合意した内容として以下の報道機関向け文書を外務省が発表した。

「安倍首相とプーチン大統領は、2019年6月29日に大阪にて会談し、18年11月にシンガポールにおいて共に表明した、1956年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの決意の下で、精力的に交渉が行われていることを歓迎し、引き続き交渉を進めていくことで一致した。

両首脳は、16年12月に長門(山口県長門市での会談)で表明した平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を確認し、四島における共同経済活動の実施に向けた進展を歓迎した」。この合意文書ができたので、北方領土交渉は先につながった。

しかし、その過程で日本外務省の交渉力低下が露見した。首脳会談の最終準備のため6月20日、モスクワで森健良外務審議官とロシア外務省のモルグロフ次官が会談したが、合意文書作成は見送られることになった。

この状況に首相官邸、森喜朗元首相、鈴木宗男氏らが強い危機感を抱き、日ロの各方面に強く働きかけた。

その結果、会談前日の28日に大阪市内で森健良氏とモルグロフ氏が極秘裏に会談し、合意文書作成に至った。北方領土交渉については外務官僚に対する政治的圧力が不可欠だ。

要するに、日本の外務官僚は無能だが、アベ、森、鈴木のような有能な政治家や元政治家がいるおかげで優れた外交ができて、日本国民は幸せだね、という話です。

上記評論は、「本音のコラム」として書かれたものです。アベ・ヨイショが佐藤の本音なのです。

なお、佐藤と森の仲良しぶりは、人生は冥土までの暇つぶしというブログが載せている次の画像で確認できます。佐藤の本の帯で森が推薦文を書いています。

佐藤優著書

こんな幇間コラムを、なぜ購読料を払って読まされなければならいのか分かりません。

「週刊金曜日」は、読者の指摘を受けてか、既に佐藤に愛想を尽かし、執筆依頼をやめています。

私は東京新聞に、佐藤への執筆依頼をやめるように申し入れましたが、完全に無視されています。

東京新聞が佐藤を使う理由が全く分かりません。

読者からの要望を跳ね除けてでも佐藤を使い続けると東京新聞に何か御利益でもあるのでしょうか。

政府の立場から書く人が東京新聞のコラムニストにいても構いませんが、それだったら、政府の立場を代弁することを公言する田崎史郎のような分かりやすい人に依頼すべきです。

●引用文が長すぎる

コラムの半分近くは外務省が発表した文書の引用が占めています。これで原稿料が入るなら、楽な商売です。

原文をそのまま引用しないと誤解される場合もあるでしょうが、上記コラムはそういう場合ではないと思います。

●「北方領土交渉は先につながった」のか

佐藤は、「北方領土交渉は先につながった」と言いますが、交渉の内容は、返還ではなく、「四島における共同経済活動」ではないでしょうか。そうだとすれば、日本がカネだけ取られるという話がつながったということです。

佐藤は、「北方領土交渉」と言えば、読者が「返還交渉」だと誤解することを期待しているのではないでしょうか。

●「北方領土交渉は先につながった」ことはすばらしいことなのか

佐藤は、「北方領土交渉は先につながった」のだから、すばらしいことだと言いたいのだと思います。

しかし、自民党は、ほんの一時期を除いて、ずっと政権を担当してきました。そして、アベは、7年間も政権を握っていたんでしょう。

2019年になっても何の成果もなく、「北方領土交渉は先につながった」からよかった、とか、すばらしい、なんて、とてもじゃないけど思えません。

●外務省の交渉力は昔は高かったのか

佐藤は、「その過程で日本外務省の交渉力低下が露見した。」と言います。

昔は交渉力が高かったような口ぶりです。

昔の外務省の交渉力が高かったとしたら、既に成果が現れていてもよいのではないでしょうか。

●外務省をコントロールできない首相が有能なのか

佐藤は、「北方領土交渉については外務官僚に対する政治的圧力が不可欠だ。」と言いますが、意味が分かりません。

首脳会談の準備のために高官同士が会談するなら、日本側は首相と外務審議官が打ち合わせをしておくべきだと思います。

「首脳会談の最終準備のため6月20日、モスクワで森健良外務審議官とロシア外務省のモルグロフ次官が会談したが、合意文書作成は見送られることになった。」ことを首相が予め知らなかったとでも佐藤は言うのでしょうか。事後に知ったから官邸が動いた、とでも言うのでしょうか。

そうだとすれば、首相が外務省をコントロールできていなかった、つまり、政治主導の外交ができていない、という話であり、首相を褒め讃えるような話ではないでしょう。

書いてあることが事実だとすれば、政治家でもない人が政治力を行使していることも問題だと思います。

●極秘だったのか

佐藤は、「会談前日の28日に大阪市内で森健良氏とモルグロフ氏が極秘裏に会談し」と言いますが、「極秘裏」の話がどうして新聞のコラムで公表されるのか不思議です。

内容から見ても、もともと「極秘」というほどの会談ではなかったのだと思います。

●佐藤はイスラエル擁護派だったことが分かった

Wikipediaで佐藤優を引くと、次のように書かれています。

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対しては武力行使も辞さずという立場だが、媒体によってトーンの強弱を使い分けている。

レバノン侵攻、イスラエル・パレスチナ紛争などイスラエルの関わる問題では、一貫してイスラエル全面支持を表明し、イスラエルと「私たちは人間としての基本的価値観を共有している」と主張している。レバノン侵攻や2006年のガザ侵攻は、ヒズボラやハマスのイスラエル人拉致というテロに対する当然の行動であったと主張した。

事実だとすると、佐藤がイスラエル擁護派とは、今まで知りませんでした。

なぜ「週刊金曜日」から執筆依頼されていたのか、改めて不思議です。

イスラエルと「私たちは人間としての基本的価値観を共有している」と主張している、という話が事実なら正気とは思えません。

自分のことを、勝手に「私たちは」なんて言って、自分が日本人の大多数の代表者みたいに言っちゃダメでしょう。

「武力行使も辞さず」ということは、佐藤が平和憲法を理解していないということです。

その佐藤が、領土返還のためには戦争しないとどうしようもなくないですか、と言った丸山穂高・衆議院議員を批判している(現代ビジネスの「丸山穂高議員の「戦争扇動発言」が、問答無用で許されない理由」)というのですから、訳が分かりません。

(文責:事務局)
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