「総理大臣も議員も辞める」答弁は「収賄していない」という意味だ、という答弁には無理がある(森友学園問題)

2018-06-20

(敬称略)
●首相は「関係していたら」の意味を急に限定したのか

2017年2月17日の安倍晋三内閣総理大臣の森友問題に関する進退答弁(進退を賭けた答弁)は、虚偽答弁や公文書改ざんの起点となった重要な答弁です。

2018年5月28日の参議院予算委員会で増子輝彦(国民民主党)の質問に対して安倍は、「こうした(収賄という)文脈の中で私は全く関与していないということを申し上げてきた」と答弁しました。

これを受けて、5月30日の党首討論で枝野幸男・立憲民主党代表は、「贈収賄などに該当すれば、もう総理や国会議員を辞めるのは当たり前の話でありまして、1年以上にわたって限定なく、関係していたら辞めるといったことを前提に議論してきたにもかかわらず、どうも昭恵夫人が一定の関係をしていたことをうかがわせるような材料が出てきたら、急に金品や贈収賄のような限定を付したとすれば、一般にはそういったことを『卑怯(ひきょう)な行為』といいます。」(産経Web)と言いました。

これに対し安倍は、「急に限定したわけではない。議事録をよく読んでから質問しろ」と答えました。

進退答弁を山本太郎参議院議員の2017年4月6日の質問主意書で確認します。

平成二十九年二月十七日の衆議院予算委員会において、安倍首相は学校法人森友学園に対する大阪府豊中市の国有地譲渡等及び当該学校法人の小学校新設に係る設置認可(以下「本件」という。)に関する質疑において「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います。」、また「繰り返して申し上げますが、私も妻も一切この認可にも、あるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして」、さらに「繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさにこれはもう私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。全く関係ないということは申し上げておきたいと思います」との答弁を行った(以下「首相答弁」という。)。

そして山本議員は、次のように書きます。

首相答弁において、安倍首相が「かかわっていた」あるいは「関係していた」との言葉を、その範囲や定義を何ら限定することなく用いた以上、本件に関して、安倍首相あるいは首相夫人が本件に係る事務を所掌する財務省、国土交通省あるいは文部科学省に直接働きかけをしたとの事実が存在しなくとも、首相夫人が本件における国有地譲渡等の経緯に係る情報を平成二十七年十一月の時点で得ていたとの事実は存在するのであるから、首相夫人は「国有地払い下げ」に「かかわっていた」あるいは「関係していた」と言わざるを得ず、首相答弁にある「一切かかわっていないということ」あるいは「全く関係ないということ」にも全く当てはまらないと考える。

これについての内閣の答弁(2017年4月14日付け)は、次のとおりです。

同年三月二十四日の参議院予算委員会において、「問題の本質は、まさになぜ安くなったのかということについては・・・、そこに政治の関与があったのかなかったのかと。それに関して言われたことは、何か政治に籠池さん側から依頼があって、そしてそこに何かお金の流れ、言わば籠池さん側が政治家等に対して様々な便宜を図る中において政治家が応えたのではないかという、これはそういう疑惑だったはずであります。ですから、その中において私も妻も一切関わっていないと言ったのは事実であります」、「今回の夫人付きからのファクスでは、籠池氏側の要望に沿うことはできないときっぱりとお断りをしたと承知をしております。ゼロ回答であり、・・・そんたくしていないことは明らかであろうと思います。また、回答内容については国有財産に関する問合せに対する一般的な内容であり、仮に籠池氏側から財務省に対して直接問合せがあったとしても同様に答える内容であると承知をしております。したがって、今回の夫人付きが財務省に問い合わせた行為やファクスで回答した行為が国有地への払下げに私の妻が関与したことには全くならない」と答弁したとおりであり、同年二月十七日の衆議院予算委員会における安倍内閣総理大臣の御指摘の答弁は撤回する必要はないと考えている。

確かに便宜供与する代わりにカネの流れがなければ関係したとは言えない、つまりは法的責任のことを言ったのだ、と受け取れる答弁は、2017年3月24日からしていることになります。

したがって、「関わっていたら」の意味を限定する答弁は早い時期からしていた、という限りにおいては、安倍の言い分の方が正しいように思います。

●なぜ当たり前の話をする必要があったのかを安倍は説明すべきだ

しかし、安倍の答弁を誤解した野党や私たちが悪いと言えるのでしょうか。

枝野が言うように、「贈収賄などに該当すれば、もう総理や国会議員を辞めるのは当たり前の話」なのですから、安倍はなぜ当たり前の話を、かなり興奮して、それも繰り返してまで言う必要があったのか、その後も1年以上にわたり、「私や妻が・・・」という進退答弁を無限定に何度も繰り返したのか、を説明する必要があると思います。

●「辞める」とは「自分の意思で」という意味のはずだ

「総理大臣も国会議員も辞める」という発言の意味は、自分の意思で辞めるということのはずです。

枝野が言うように、収賄などに該当すれば、法律の規定により否応なく議員を辞めさせられてしまいます。辞めないという選択肢はありません。

通常、「辞める」ということは、「辞めない」という選択肢もあるが、敢えて「辞める」方を選択する、ということのはずです。

通常、「辞めさせられる」ことを「辞める」とは言いません。

「辞める」とは「辞めさせられる」の意味だった、という安倍の言い分には無理があります。

安倍が「辞めされられる」の意味で「辞める」と言ったのなら、意思疎通能力を著しく欠如しており、いずれにせよ首相失格です。

●「関係していたら」が収賄の意味ならムキになって便宜供与を否定する必要はない

また、「関係していたら」「かかわっていたら」を収賄罪に該当する場合に限定するなら、妻は収賄罪の主体でないし、仮に共犯となるとしても、夫婦とも賄賂の収受、要求、約束をしていないから収賄罪は成り立たないと言えばすむ話です。

それなのに安倍は、「ゼロ回答であり、・・・そんたくしていないことは明らか」「今回の夫人付きが財務省に問い合わせた行為やファクスで回答した行為が国有地への払下げに私の妻が関与したことには全くならない」と必死に言い訳をします。

道義的責任としての辞任を宣言したからこそ、ゼロ回答だった、だの、忖度はなかった、との言い訳を必死にする必要があったのではないでしょうか。

●夫人の名誉校長就任も「収賄罪とは関係ない」と言えばすむ話

検索できないのですが、「夫人が森友学園の名誉校長に就任したこと自体が「関わった」ことになるのではないのか」という追及に、安倍は「関わっていたら辞める」と答弁した当時、既に妻が名誉校長を引き受けたことは報道もされており、それを知った上で答弁したのだから、名誉校長になったことは「関わる」から除かれる」という答弁をしていたと思います。

つまり、時間の前後関係の問題としていました。妻の名誉校長の就任が進退答弁の後だったら問題になる、と安倍が言っていることになります。

しかし、職務権限のない妻の名誉校長就任は収賄罪とは関係のない事実です。

「就任は収賄とは関係ない」と言えばすむ話を、「就任は「辞める発言」の前だったから「関わる」から除かれる」と答弁したのは、「辞める発言」が道義的責任の意味だったことを示すと思います。

●被支配者の奴隷根性が問われている

要するに首相は、「自分が収賄罪を犯しているなら議員を辞めざると得ない」と言いたかったのなら、最初からそう言えばよかったのです。「なぜそんな当たり前のことを言うのか」という批判は浴びるでしょうが、安倍が言いたかったことは、そういうことになります。

収賄罪や斡旋利得罪を犯すなどをして、被選挙権を失った国会議員は退職者となると法律(国会法第109条、公職選挙法第11条、第11条の2)で決まっています。

それにもかかわらず、安倍が興奮して「私や妻が」とか「一切かかわっていない」とか言って、大見得を切ったということは、道義的責任について語ったと受け取られても仕方がないと思います。

安倍が法的責任を言ったにすぎないのであれば、この無意味な答弁のために役所は膨大な量の公文書を隠ぺいし、廃棄し、改ざんし、自殺者まで出したことになります。国会審議も1年以上無駄になりました。

公務員は、約3000ページの文書を改ざんするために膨大な勤務時間を使ったのです。

それでも財務大臣も総理大臣も責任を取りません。責任を取るとは、再発防止策を考えることだと口で言うだけです。

皆さんの行動が問われていると思います。

(文責:事務局)
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