「食育」はうさんくさい

2009-06-22,2009-07-29追記

●「鹿沼市食育推進計画(素案)」に対する パブリック・コメント

「鹿沼市食育推進計画(素案)」に対する パブリック・コメント募集結果が鹿沼市のホームページに公表されています。

コメントは三つあり、それぞれに回答が付されています。三つ目のコメントと回答を転載します。

(コメント)
 素案は、「1日3食でなければいけない」「朝食を抜いてはいけない」「毎回の食事では主食、主菜、副菜を必ずとるべし」「このルールに反すれば健康に生活できない」という前提で書かれていると思いますが、科学的に正しいことが論証されているのでしょうか。

   甲田光雄という医学博士は、「長生きしたければ朝食は抜きなさい」(河出書房新社)という著書で「朝食を抜き、少食を心がけるだけで体は健康になります。」と説いています。  甲田説のどこがなぜ間違っているのか教えてください。私はどちらの説が科学的に正しいのか分かりません。  少なくとも素案の前提となる学術論文名を示してください。文献をお持ちのはずです。情報公開請求をしたいので。  市が税金をかけて政策を推進するからには、科学的に正しい事実を前提としてください。

   香川靖雄自治医科大学名誉教授が「朝食を抜いた学生は成績が悪い」と結論づけた調査をしましたが、調査の内容が不明です。朝食を抜いた学生の勉強時間が少なかったとしたら、成績が悪いのは当然です。「朝食をとるとらないが成績に反映するかどうかは、生活全般にわたって同じ条件のもので比較をしないかぎり、正確な結論をだすことはできない」(前掲書p36)のです。

 仮に育ち盛りの子どもには1日3食が必要だという説が科学的に正しいとしても、成長の終わった成人が1日3食とったら肥満傾向になるのは当然ではないでしょうか。1日3食とって「脱メタボ」は無理だと思いませんか。

 科学的根拠がないのだったら、宗教的信念と同じですから、税金を使って市民に押し付けることはやめてください。  私は朝食抜きで健康を保っていますので、科学的根拠もなく朝食、しかも主食、主菜、副菜セットで、強制されても困ります。  「食の安全・安心への知識の普及」を地域と家庭で図るようですが、学校で児童・生徒に教えないのはおかしいと思います。

   食育は、今に始まったことではなく、学校給食を通して行われていたはずです。給食は教育の一環だったはずです。今、新たな食育計画が必要ということなら、これまでの食育がどのようなものだったのか、失敗だったのか、失敗だとすればなぜ失敗したのかという分析があってしかるべきと思います。  

 食は、基本的には個人の自由が尊重されるべき問題だと思います。強制が許される分野ではないと思います。行政がやるべきことは、科学的なデータに基づいて住民に選択肢を示すことだと思います。したがって、食育計画に数値目標を設定すべきではないと思います。  

 (回答)
 食生活のあり方は、個人の価値観や考え方に負うところが大きく、自由な判断と選択に委ねることが基本です。今回の計画においても、市民のみなさんの自由な意思により、食生活の改善への意識を促すもので、強制を伴うものではありません。特に、家庭をはじめ、個人が実践するかどうかを主体的に判断することになります。行政においては、「食育基本法」に基づき、食育を推進し、市民の食意識の向上へ努力していくものです。

 「食の安全・安心への知識の普及」については、学校においても給食をはじめ、食指導を通じて取り組んでいます。より効果的に進めるため、家庭・地域が連携して進めるものです。  

 目標値は、食育推進の効果を計るうえで重要です。市民のみなさんが、食育の取り組みや進捗状況を確認するためにも必要なものと考えています。  
 

コメントでは、「1日3食でなければいけない」「朝食を抜いてはいけない」「毎回の食事では主食、主菜、副菜を必ずとるべし」「このルールに反すれば健康に生活できない」という前提で書かれていると思いますが、科学的に正しいことが論証されているのでしょうか、素案の前提となる学術論文名を示してください、と聞いているのに、鹿沼市はこの問いを全く無視しています。  

科学的根拠を説明できないところが、食育のあやしいところです。科学的根拠も示せないし、「個人が実践するかどうかを主体的に判断する」のだったら、最初から、「三食きちんと食べなければいけません」なんて行政が言うべきではないと思います。   

この回答は、科学的根拠はともかく、法律でやることになってるんだから、やるしかないだろうという口調です。   

「「食の安全・安心への知識の普及」については、学校においても給食をはじめ、食指導を通じて取り組んでいます。」というのなら、何十年も食指導をやってきたのなら、それは成功しているのか、失敗しているなら、子どもたちが添加物だらけのジャンクフードを好んで食べるという状況がなぜ改善されないのかという疑問にも回答は答えていません。   

科学的な根拠がないなら、強制でなくても、目標値を達成するために税金を使うのは間違っていると思います。選択肢を示すだけなら文句は言いませんが、目標値を設定し、その達成に向かって行政が努力するということは、「あなたの食生活は間違っています」と行政が言うことは明らかであり、「家庭をはじめ、個人が実践するかどうかを主体的に判断することになります」という記述と矛盾すると思います。   

というようなことを考えていたら、同じ考えを持つ人がいました。   

  ●「食育」は国や企業に踊らされている   

2009-05-30朝日に「「食育」は国や企業に踊らされている」という見出しの記事が載っていますので紹介します。副題は、「「食」は個人や家庭の営み。多様さ豊かさ知り、生活者の知恵磨こう」となっています。   

在野の研究家河合知子氏(管理栄養士で農学博士)がインタビューに応じています。   

法律の前文には「国民運動として食育に取り組む」と規定されています。河合氏は、個人や家族単位でする行為について、「国民運動と称してお上が旗を振ることに、危うさを感じます」と言います。   

基本法の背景には、BSE問題や食肉偽装の問題もあったようですが、「食の安全は国の責任。食育とは別のこと。お金がある人もない人も、食への関心が高くても低くても、誰もが安全なものを食べられるようにするのが、国の役目です。」と河合氏は言います。   

法律の前文には「人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている」と書かれていますが、「「まるで勉強しないと被害に遭いますよ」と消費者に責任転嫁しているようにも読めてしまう」と河合氏は言います。   

河合氏は次のように言います。   

  食品産業や外食産業は(食育を)自社の宣伝に利用しています。食育とうたえば予算がついて、人が集まり、物が売れる。食育ビジネスが大はやりなのです。ブームに紛れ、特定の食品を目の敵にしたり勧めたりするダイエット法や食事療法、科学的根拠のない言説も幅をきかせています。   
  

やっぱりそういうことみたいですね。   

  ●民主党はまともだ   

上記朝日記事によると、食育基本法は、2005年6月、自民、公明、共産各党などの賛成で成立しました。民主党と社民党は賛成しなかったようです。   

そこでネット検索すると、「食育基本法案」に対する見解についてが民主党のホームページに掲載されていました。曰く、   

   そもそもわが国の食品行政は、さまざまな矛盾を抱えており、消費者が健全で安全な食生活を送るうえで、その前提となる環境が整備されているとは言い難い。「食に関する知識と、食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践する能力を育てる」という「食育」の基本理念は理解できる面もあるが、健全で安全な食生活のための環境整備がないままに、「食育」の名目で法律を制定し国民に協力を強いることは、国の責任放棄であり、本末転倒だと言わざるを得ない。これら消費者の選択にかかる環境整備こそ、国が優先して取り組むべき事項である。   
  

ですって。正論だと思います。食育そのものは悪いことではないが、法律まで制定する意味が分かりません。   

9.11と食育については、共産党よりも民主党の方が対応がまともだと思います。   

この民主党の対応に自民党は「選挙上の損得勘定で反対したとしか思えません」と怒っています。(自民党機関紙「自由民主」 2005/9/20・27号掲載の食育基本法制定と今後の展開参照)   

上記ページには次のように書かれています。   

  わが党は七月十九日、東京都内のホテルで小泉純一郎総理も出席して「食育基本法施行を祝い国民運動を推進する会」を開催。立党五十年事業として食育を「交通安全運動に負けないぐらいの国民運動に盛り上げていく」(武部勤幹事長)ことで一致、今後、各地でさまざまな運動を展開していくことを確認しました。   
  

うさんくさいでしょう。   

自民党は、「民主党の反対討論によれば、個人の食に安易に権力が介入すべきでないという理由のようですが、同法がそのような内容でないことは、法文を一読すれば簡単に分かることです。」と書きますが、やはり国民運動でやられたら、反対する人間は非国民扱いされるでしょうから、権力の介入になるおそれはあると思います。   

河合氏は次のように言います。   

  食育という言葉が広まるずっと前から、食生活や調理は家庭科や給食で、産業や環境は社会科や理科で、小学校から教えています。わざわざ言い換えるまでもなく、やってきたことをつないで発展させればいいと思いませんか。   
  

そう思います。   

  ●「先生、どうやってヤセたんですか?」(2009-07-29追記)   

現役の医師山田春木氏が10か月で20キログラムやせた体験を基にダイエット法を著わしたそうです。   

タイトルは、「先生、どうやってヤセたんですか?」です。   

体重は毎日測定する、1日3食は食べるべきである、酒を飲むときは何か食べる、などの健康常識の問題点を指摘しているそうです。   

3食を食べることが絶対善だと思っている人たちが税金を使って教育やキャンペーンをやることが許されるのでしょうか。       

(文責:事務局)
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