民主党が議員定数削減を公約にした

2009-08-18

●民主党が議員定数削減を公約にした

民主党が衆議院の議員定数を80削減することを公約にしました(2009-08-16下野)。自民党でも50あるいは180を削減するとの案が出ているようです。いよいよ悪政の競い合いです。

●比例定数がターゲット

2009年8月6日(木)「しんぶん赤旗」には次のように書かれています。

民意を正確に反映する衆院比例定数の削減について、民主党の直嶋正行政調会長は5日、「政権を取れば、法案を作成して提出したい」との考えを明らかにしました。福岡市で開かれたマニフェスト説明会後の記者懇談会での発言。提出時期にはふれなかったものの、比例定数を「ムダ」として削減する方針をあらためて表明しました。

このなかで直嶋政調会長は「衆院選は政権選択の選挙。できるだけ小選挙区中心が望ましい」とのべました。

比例定数がターゲットになっていることは、明らかです。

●シミュレーションするとどうなるのか

民主党の公約が実現されるとどうなるのでしょうか。2009年8月8日(土)「しんぶん赤旗」http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-08-08/2009080801_01_1.htmlには、次のように書かれています。

本紙の試算(6月13日付)では、80削減を07年参院選の結果にあてはめた場合、自民・民主の両党が67・6%の得票で95・3%の議席を独占する事態になります。日本共産党や公明党など他の政党は32・4%の得票にもかかわらず、議席はわずか4・7%に押し込められます。

2005年の総選挙では、得票率47.8%の自民党が議席の7割以上を占めました。一方、例えば日本共産党は、7.3%の得票率でも議席ゼロです。仮に「480の全議席を比例代表制にすると、自民党は得票率38.2%で183議席、日本共産党は7.3%で35議席となり、民意が正確に反映されます。」(2007-10-13しんぶん赤旗)。

比例代表を減らし、小選挙区の比重を高めることが民意をゆがめることは明らかです。民主党の意図は、民意無視にあるとしか思えません。

この暴挙には、既に以下のような批判が加えられていますのでお読みください。
「上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場」での
議員定数削減論批判と民主党への注文
議員定数を削減したら官僚政治は打破できない!

●民主党の反論

JANJANに議員定数削減に抗議する!地元の民主党候補とやり取り(2009-08-06大津留公彦記者)というニュースが載っています。

記者が彼の地元の選挙区の民主党候補に比例定数を削減する公約を見直してくれとメールしたら、次のような回答が来たそうです。 中野譲という人が回答者のようです。

定数削減につきましては、現状でどの政党に有利・不利に見えるという視点で、政策を考えるべきではないと思います。

あくまでもあるべき方向性を考えるのが先決ではないでしょうか(国会議員の数は現状でも適切か?地方分権を進めた場合、 中央官僚とともに国会議員自体も担わなくてはならない役割が激減する。などなど)。

社民党の前身の社会党を例にあげるなら、十数年前までは野党第一党、衆議院数も3ケタを有した大政党でした。 それが、社民党に至るまでの経緯の中で、なぜ、議員数が一ケタ台前半まで落ち込んだのか? 民主党や自民党についても、現状の議席数が多いからと言って、この先、どうなるかは判りません。

昨今のヨーロッパにおける政党の劇的なる栄枯盛衰を見れば、お分かりいただけるかと思います。 裏を返せば、今、弱小政党と言われていようが、今、存在しない政党でさえ、未来はわからないということだと思います。

一つ言えることは、政策、理念が国民から見放されれば、その政党の未来は明るくない、 国民の支持を受ければ、比例定数に関係なく、大きな議席数を得ることが出来るということではないでしょうか。

「定数削減につきましては、現状でどの政党に有利・不利に見えるという視点で、政策を考えるべきではないと思います。」とのことですが、要するに選挙制度を議論するときに、シミュレーションをしてはいけないと言っているわけで、理解できない論旨です。シミュレーションをしたら、党利党略がばれてしまうからでしょうか。

「あくまでもあるべき方向性を考えるのが先決」だとしたら、民意をゆがめるのが民主党の「あるべき方向」なのでしょうか。「あるべき方向性」は、民意をできるだけ正確に政治に反映することではないでしょうか。

「国会議員の数は現状でも適切か?」とのことですが、日本の国会議員数は、人口10万人当たり0.57人で(上記http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51089862.html)、諸外国と比較して多いとは言えません。

「地方分権を進めた場合、 中央官僚とともに国会議員自体も担わなくてはならない役割が激減する」とのことですが、それが正しいとしても、小選挙区定数ではなく比例定数を削減する根拠にはなりません。

社会党が大政党だったとのことですが、それは中選挙区制でのことだったのではないでしょうか。社会党の凋落が選挙制度と無関係だったというのが中野氏の言いたいことだとすれば、賛同できません。

「政策、理念が国民から見放されれば、その政党の未来は明るくない、国民の支持を受ければ、比例定数に関係なく、大きな議席数を得ることが出来る」とのことですが、 選挙制度なんてどうだっていいという議論に聞こえます。かつて多くの政治家が政治改革は選挙制度改革だと 言っていました。あれは何だったのでしょうか。選挙制度なんてどうでもいいのなら、民主党が小選挙区制、二大政党制にこだわるのは矛盾してませんか。「国民の支持を受ければ」とのことですが、比例定数を削減していったら、「国民の支持」がゆがめられた議席数となるという問題点を中野氏が理解しているとは思えません。

政策や理念が国民の支持を得られれば、選挙制度なんてどうだっていいのだとすれば、比例定数をいじらなくたっていいし、中選挙区制に戻したっていいはずです。

国民は民主党の「ねらい」が何なのかを考えた方がいいと思います。

(文責:事務局)
フロントページへ>その他の話題へ>このページのTopへ