2009-12-28下野は、次のように報じています。
南摩ダム参画/鹿沼と小山市/給水量1.3倍の水源保有/水需要予測/現実と差
鹿沼市の思川開発(南摩ダム)に県を通さず単独で参画している鹿沼市と小山市は、いずれも年間で給水量が最も多い日(1日最大給水量)之実績値に対して1.3倍の水源を保有していることが、両市への取材で分かった。県を通して参画している県南の2市6町の1.5倍を下回るが、鹿沼、小山両市とも将来の水需要予測が現実を大きく上回っている。 (中略)
鹿沼市は水源をすべて地下水に依存し、2007年度の1日最大給水量は約2万9500立方メートル。節水機器の普及などから水需要は低下傾向にあるが、15年度には給水量が保有水源量と同じ3万7800立方メートルまで伸びる計画。同市は地下水保護として独自に取水制限しており、南摩ダムに約4万5千人分に相当する1日約1万7300立方メートルの水量を求めている。
同市の佐藤信市長は「ダムの水を使うつもりがない」と明言しているが、計画はダムなしでは達成できない。同市水道施設課は「新たな井戸を増やすことも含め、あらゆる角度から対応を検討している」と話した。
本質を突いた記事だと思います。「水源隠し」が南摩ダム利水の本質です。
●地下水適正利用量とダム水不使用は両立しない
鹿沼市では、だれの意思か分かりませんが、市長が代わろうが、ダムの水を使おうが使うまいが、どのダムからの水であろうが、とにかくダムの水を毎秒0.2トン買うという方針は堅持されています。
しかし、鹿沼市上水道の需要は伸びず、水は余っています。保有水源が余っているのに、さらにダムの水を買えば、過剰な設備投資だと市民から批判される。その批判をかわすためには、地下水を使ってはいけないことにする。それが、記事の中の「同市は地下水保護として独自に取水制限しており」の意味です。
小山市では過去に地盤沈下が起きていましたから、地盤沈下防止という大義名分がありましたが、鹿沼市では地盤沈下は起きていませんから、地下水の利用を自己規制する理由は、「地下水賦存量を維持するため」(鹿沼市水道事業懇談会第1回の説明資料p9)くらいしかありません。
「佐藤信市長は「ダムの水を使うつもりがない」と明言しているが、計画はダムなしでは達成できない。」というのも鋭い指摘です。水道水源として地下水を23,187m3/日しか取水してはいけないということを決めてしまったら、2008年度実績でも1日最大給水量は約3万m3/日はありますから、当面はダムの水を使わないと水源は足りないということです。
一方で地下水は23,187m3/日しか取水してはいけないと言い、他方でダムの水は使わないという鹿沼市の方針は矛盾します。一体どうするのでしょうか。どちらかの方針を捨てないと解決しません。
「同市水道施設課は「新たな井戸を増やすことも含め、あらゆる角度から対応を検討している」と話した。」そうですが、地下水の利用を自己規制する理由が「地下水賦存量を維持するため」なのですから、「新たな井戸を増やすこと」は地下水賦存量を減らすので解決策になり得ません。
鹿沼市の地下水の保有水源量は38,100m3/日です。1日最大給水量は、約29,500m3/日(2007年度)です。
38,100m3/日÷約29,500m3/日=1.29ですから、鹿沼市の水源は現在約3割の余裕があるということです。1日最大給水量は、今後減るでしょうから、余裕は増えていくと見込まれます。
ちなみに、鹿沼市水道部では、鹿沼市は南摩ダムに参画する必要がないとする私たちの主張に対して、水源の「余裕」を無視した机上の空論だと批判しているという噂が聞こえますが、意味が分かりません。私たちの主張は、財団法人水道技術研究センターの水源余裕率のページを見ると、3割の余裕率は全国的に見て平均に近く、実務の要請を無視した主張ではありません。
1日最大給水量が2015年度に37,800m3/日になるという鹿沼市の計画の方が机上の空論だと思います。
●小山市の需要予測もインチキ
上記下野記事は、小山市の水道計画の欺まん性も暴いています。
(前略)
その小山市も現状では、水需要予測と現実との差がみられる。25年度を基準に08年度より人口が約3千人伸びる予測に対し、給水人口は約1万8400人も伸びるとした。1日最大給水量は30%以上伸びて、保有水源量を超える計画だ。
計画が現実となるには、現在の簡易水道給水区域のほとんどを上水道に転換しなければならない。同市水道施設課は「現在の給水区域外に上水道をのばす具体的な計画はない」としている。
人口の伸びはせいぜい3千人で、給水区域を広げる計画がないのに、給水人口が18,400人も増えるはずがないと思います。
「広報おやま」は訂正記事を掲載するのか に書いたように、小山市は、2000-12-15「広報おやま」に「平成21年度頃には、現在より小山市の人口や水道水を飲む人が増え、1日当たり75,900トンの水道水量が必要になります。」と書きましたが、現実は5万トンに達していないと思われます。小山市は、過大な需要予測をやめるべきです。