鹿沼市上水道の有収水量は減少している

2010-10-08

●1日最大給水量

鹿沼市の水事情はどうなっているのかを改めて確認しておきましょう。データは、毎年夏に公表される、「(鹿沼市)上水道のあらまし」に掲載されています。

水需要といえば、普通1日最大給水量のことを指します。

1日最大給水量とは、年間の1日給水量のうち、最大の値のことです。水道事業体は、通常、この水量に合わせて水源を確保することとされていますので、非常に重要な指標です。

鹿沼市上水道における過去10年間の1日最大給水量の推移は、次のとおりです。

2000年度 33,758m3
2001年度 32,546m3
2002年度 32,802m3
2003年度 31,663m3
2004年度 32,438m3
2005年度 30,335m3
2006年度 29,196m3
2007年度 29,520m3
2008年度 30,007m3
2009年度 30,441m3


全体としては減少傾向にありますが、細かく見ると、2006年度に底を打ち、最近3年間は増加傾向にあります。

増加傾向にあるといっても、2009年度の30,441m3/日は、鹿沼市上水道の1日最大給水量の最高記録である、1994年度の35,739m3/日の85%にすぎず、その差5,298m3/日は、2009年度の1人1日最大給水量391リットルで割ると、13,550人となりますから、最大実績値と比較しても、13,000人以上の給水人口の増加に対応できます。

鹿沼市上水道の1日給水能力は37,800m3/日ですから、2009年度の1日最大給水量30,441m3/日との差は、7,359m3/日となります。これを2009年度の1人1日最大給水量391リットルで割ると、18,821人となります。

1人1日最大給水量が大きく増えない限り、鹿沼市の給水人口が今後18,000人増えても大丈夫ということになります。

2009年度の給水人口は77,762人です。これに18,000人を足すと、95,762人になります。この数字は、計画給水人口86,000人(2015年度)を1万人近く超えています。96,000人の給水人口に対応できるということです。

鹿沼市の設定した計画給水人口は、水道事業懇談会の議論への疑問に書いたように、2016年の人口を105,300人とする人口推計を基本としていますので、過大です。

計画給水人口を82,000人とするならば、正味必要な水源よりも17%(96,000人/82,000人=117%)の余裕を持った水源を既に確保していることになります。

今後どうなるかと言えば、鹿沼市の総人口が毎年400人以上減少を続ける一方で、節水型のトイレや洗濯機の普及により1人当たり給水量が減少していくことが予想されますので、給水人口の増加は見込めず、水余りが顕著になっていくと思います。

●1日平均給水量

1日平均給水量の推移は、次のとおりです。

2000年度 27,863m3
2001年度 27,091m3
2002年度 27,028m3
2003年度 26,667m3
2004年度 26,752m3
2005年度 26,138m3
2006年度 25,764m3
2007年度 26,169m3
2008年度 26,672m3
2009年度 27,025m3


1日平均給水量は、年間給水量をその年度の日数で割ったものですから、年間給水量と相似した推移を示します。

1日平均給水量は、2000年度の27,863m3をピークに減少していたのですが、1日最大給水量と同じく、2006年度に底を打ってV字回復しています。

しかし鹿沼市では、水道事業第5次拡張計画第1回変更計画で2015年度の28,361m3が今後のピークとなると推計しています。

現在(2009年度)よりも4.9%増えると推計しているわけです。

●有収水量

年間有収水量の推移は、次のとおりです。「有収水量」とは、浄水場で生産された水のうち,料金徴収の対象になった水量です。「有効に使用されていても収益にならない水とは,設備の清掃や管理に使用した水,メーターが検出しなかった水など。消火用水や噴水用水は通常料金を一般会計からもらっている。」(水道技術情報の用語集から)そうです。

2000年度 7,789千m3
2001年度 7,629千m3
2002年度 7,595千m3
2003年度 7,520千m3
2004年度 7,652千m3
2005年度 7,654千m3
2006年度 7,564千m3
2007年度 7,591千m3
2008年度 7,620千m3
2009年度 7,581千m3


年間有収水量は、2000年度の約779万m3がピークです。以降減少傾向にあり、2009年度は約758万m3ですから、その差約21万m3減少していることになります。というか、2009年度の有収水量は、2002年度のそれとほとんど変わらないということです。

その間の給水人口の推移はどうだったでしょうか。

2000年度は73,154人でしたが、2009年度は77,762人でした。10年間で4,608人増えました。

給水人口が4,608人(6.3%)も増えているのに、年間有収水量は逆に約21万m3(2.7%)減っているのです。節水が進んでいるということです。

新規水源が必要でしょうか。

ちなみに2000年10月1日現在の鹿沼市の人口は94,128人でした。2009年10月1日現在は93,290人(2006年に合併した粟野地域を除く。)です。10年間で838人減っています。

いずれにせよ、鹿沼市が売る水の量は、給水人口の増加にもかかわらず増えていないのです。

●有収率が下がっている

有収率の推移は、次のとおりです。有収率とは、有収水量を給水量で割った割合です。

2000年度 76.6%
2001年度 77.1%
2002年度 77.0%
2003年度 77.3%
2004年度 78.4%
2005年度 80.2%
2006年度 80.4%
2007年度 79.3%
2008年度 78.3%
2009年度 76.8%


鹿沼市上水道の2009年度の有収率は、76.8%です。2006年度の80.4%をピークに減少傾向にあります。2000年度とほぼ同じです。供給した水の約4分の3しか料金収入に結び付かないということです。無収水量のほとんどは漏水でしょう。

水道事業とはどこでもそんなものなのかというと、そんなことはなくて、2007年度のデータで見ると、宇都宮市は85.2%、足利市は85.8%、小山市は89.9%、栃木市は85.3%、佐野市は81.4%、下野市が89.1%となっています。野木町は94.9%となっています。

鹿沼市も漏水を減らせば、有収率が85%程度にはなって当然です。

そうなれば、給水人口は85/76.8*77,762人=86,065人になっても大丈夫ということです。

では、給水人口は将来86,065人になるのかというと、そうは思えません。

鹿沼市は、水道事業第5次拡張計画第1回変更計画で2015年度に86,000人と推計していますが、その年の人口を105,457人と推計しています。

2010年10月1日現在の人口が102,441人で、減少傾向にありますから、2015年の105,457人は、5,000人以上も過大な推計だと思います。(鹿沼市の人口は、年間約400人ないし500人減少しているので、5年間で少なくとも2,000人減少すると考えられます。)

総人口の推計が過大であるため、給水人口の推計も過大だと言えます。

私は、鹿沼市上水道の給水人口は8万人に達しないのではないかと考えています。仮にピークが82,000人程度になったとしても、漏水を減らし、有収率を世間並みに向上させるだけで足ります。漏水は水源です。鹿沼市では豊富な水源です。新たに水源を確保する必要性があるのでしょうか。

(文責:事務局)
フロントページへ>鹿沼市の水道へ>このページのTopへ