水道事業懇談会の議論への疑問

2010-03-02

●水道事業懇談会の資料と議事録がホームページに掲載されていた

鹿沼市水道懇談会の資料と議事録が鹿沼市のホームページに掲載されていましたので、ご覧ください。

場所は鹿沼市水道部のページです。私は、鹿沼市が懇談会の資料等をホームページに掲載していないのはおかしいと書いてきましたが、実際は、既に掲載されていたのかもしれません。

私は、水道懇談会は鹿沼市民にとって非常に重要な問題なので、当然、鹿沼市のホームページのフロントページのお知らせ欄に掲載されるものとばかり思っていました。

ところが、水道部のページにひっそりと掲載されていたのです。人目につくことを恐れるかのように。

水道部のページは、非常に行きにくいのです。水道部のページに行くには、フロントページのくらしのガイドを開き、上水道をクリックします。もう一つの方法は、フロントページの休日水道工事をクリックし、HOMEをクリックします。

フロントページの「各課紹介」からはリンクしません。環境部のページにはリンクするのに、水道部のページにはリンクしないのです。

水道事業懇談会の資料と議事録がホームページに載ったのは結構ですが、委員の名前は会長を除いて匿名です。匿名でないと困る人には、委員をやってほしくないと思います。

●破たんした上水道水源の適正利用量

懇談会の第2回会議の記録で太田会長が「鹿沼市は過去において、減断水は行ったことがあるか」と聞いています。事務局は、「減圧(給水)は平成13年以前にあったが、断水したことはない。」と答えています。

2002年以降減圧給水がないということです。

しかし、鹿沼市は、2001〜2003年度に実施された地下水調査に関する私たちの質問に対し、「専門会議報告書p1にある通り、平成6年度から平成12年度について見ると、市上水道は頻繁に給水制限を実施していることから、地下水は不足気味だと言えます。」(鹿沼市地下水調査に関する公開質問回答)と答えていました。

鹿沼市は、1994年度から2000年度に頻繁に給水制限を実施していることから、地下水は不足気味であると言い、上水道における揚水量を23,187m3/日以下に減らすべきだという理屈を立てたのです。

しかし、鹿沼市は、2002年以降、給水制限をしなくなったのですから、地下水が不足気味であることの根拠を失ったことになります。

地下水が不足していないなら、上水道における揚水量を抑制する必要がなくなります。

鹿沼市上水道の地下水源の適正利用量が23,187m3/日であるという理屈は、給水制限がなくなったことにより破たんしているのです。

水道事業懇談会では、鹿沼市地下水調査報告書の結論は無視すべきです。

●給水人口の推計は過大だ

ある委員が「目標の給水人口86,000人、1日最大給水量37,800m3/日は多すぎるのではないか」と発言しています。

これに対して、事務局は、次のように答えています。

第5次拡張第1回変更の給水人口86,000人は市の総合計画に基づき算定している。一日最大給水量についても拡張計画策定当時のトレンドから言っても、推計はおかしくはないと考えている。

総合計画では、2016年の人口を105,300人としています(鹿沼市第5次総合計画基本構想p14)。だから給水人口が多くてもおかしくないというのが水道部の理屈です。

しかし、総合計画の人口予測が間違っていることは明らかです。鹿沼市の人口推計がまともになったで紹介したように、 「次世代育成支援対策後期行動計画(案)」 「第5章 児童人口の推計」の「第1節 総人口」に、「本計画の目標年度である平成26 年の総人口は100,961 人と推計され、平成21 年4 月1 日現在の総人口103,436 人と比較して2.4%減少します。」と書かれています。

現状を無視した架空の人口予測がまかり通る時代ではなくなってきたということです。

詳しくは鹿沼市の人口推計がまともになったを読んでいただきたいが、総合計画では総人口を4,000人以上過大に推計していたのですから、これをまともな推計値に修正する以上、給水人口も4,000人以上下方修正するのが筋です。

水道部職員は、「第5次拡張第1回変更の給水人口86,000人は市の総合計画に基づき算定している。」と言っています。だからなんなのでしょう。だから妥当だというのでしょうか。総合計画の人口推計が妥当でない以上、これに基づく給水人口の推計も妥当でないのです。

水道部職員が総合計画の人口推計が妥当でないことに気づいていないとすれば、あまりにも不勉強です。

水道事業懇談会では、計画給水人口がまともな人口推計を基にしているかを検証すべきです。

「一日最大給水量についても拡張計画策定当時のトレンドから言っても、推計はおかしくはないと考えている。」もおかしいです。

第2回の説明資料のp19図2.2水量の実績と推計結果のグラフを見れば分かるように、実績と推計がつながっていません。過大な推計だということです。

これに対して、「過大」ではなく「余裕だ」というのが水道部職員の主張です。負荷率を小さく設定することによって余裕をつくる必要があるというのが当局の主張です。

●計画負荷率は妥当ではない

委員からの「(計画)負荷率は低すぎるのではないか」という疑問に対して、太田会長は「負荷率については、過去10年間の実績に基づき最小値を採用しているので操作しているということはない。負荷率を最小値にしているのは、行政上は断水等にならないようにするためでおかしいということはない。」と弁護する一方で、「ただし、負荷率をどの数字にするかは考え方の問題で今後の決定することではある。」と言っています。

計画負荷率を過去10年間の最小値にすることは妥当でないと思います。確保すべき水源に過剰な余裕を見ることになり、過剰な設備投資を招くことになります。

総務省は自治体への通達で、水道事業について「投資規模の適正化を図ること」を求めていますし、太田教授も湯西川ダムについて、「宇都宮市が湯西川ダムによる水資源開発に参画するにあたっては、上記総務省の指摘等を十分に斟酌し、過大な利用者負担とならない投資規模の適正化に配慮したか否かが問われなければならないであろう。」と主張しています(水道懇談会も「ダムありき」か参照 )。 。

どこの自治体でも鹿沼市のように、計画負荷率を過去10年間の最小値にしているのでしょうか。そんなことはありません。

宇都宮市水需要予測(2002年度)では、「今回予測の負荷率は給水の安全性を考慮して過去10年間の平均値より85.3%とした。」とされています。

計画負荷率として過去10年間の実績値の平均値を採用しても「給水の安全性を考慮して」いるのです。

●総合計画は2011年度までか

総務部長の発言で「給水人口が平成27年まで上昇しているのは現実的ではないないのでは?」というのがあります。もっともな疑問です。

事務局は、「平成27年度までは給水管が延びて使用者が増加することが見込まれるため、人口の減少を考えても増加傾向になる。」と強気ですが、既に2007年度から給水区域内人口が減少していますし、給水管を延ばしても加入者が増えないことは、西部簡易水道で実証済みなので、給水管を延ばすことで給水人口が多少増加しても、現在の給水区域内人口の減少で打ち消されてしまうと思います。

委員の発言で「現在の(総合)計画は平成23年度まで」というのは、意味が分かりません。上記鹿沼市第5次綜合計画基本構想は、2016年度が目標年次です。2016年度の人口を105,300人と推計しています。

●人口問題研究所とは

総務部長は「人口問題研究所はどのようなところか」と聞いています。

事務局は、「総務省の外郭団体で国勢調査を基に人口予測を行っている」と回答しています。

人口問題研究所は、正式名称は「国立社会保障・人口問題研究所」であり、厚生労働省の機関です。機関の素性はともかく、現在はまともな人口推計をしているのですから、鹿沼市は独自に人口推計をせずに、研究所の推計を尊重してほしいと思います。

●地下水で賄うのか

看過しがたい矛盾があります。

第2回の議事録では、事務局は、次のように述べています。

市長は「地下水により賄っていく」との方針であるため、地下水の涵養、他からの融通の検討、今以上に節水についても取り組んで行くことにより、できるだけ「地下水で賄っていく」との方針で水道部としては推進していきたいと考えている。

すばらしい回答です。ところが、第3回会議の議事録を見ると、委員が「表流水を使わない方向で検討をしたらどうか」と発言したのに対して、事務局は「どちらの方向になる場合も想定した形での審議をお願いしたい。」となってしまいました。コンサルタントの意向でしょうか。

(文責:事務局)
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