フロントページ   プロフィール 鹿沼市の特徴
鹿沼市の人口 鹿沼市の水道 思川開発事業(南摩ダム)
東大芦川ダム その他のダム その他の話題


鹿沼市地下水調査に関する公開質問回答

2005-4-3

2005年2月9日付けのダム反対鹿沼市民協議会から鹿沼市長あての鹿沼市地下水調査に関する公開質問に対して3月31日付けで回答が届きました。現物は、PDFファイル(156KB)でご覧になれますが、回答文のみです。

質問と対照させた回答を以下のとおり作成しました。ダム反対鹿沼市民協議会にとって科学的に正しいと思われる回答は、ほとんどありませんでした。今回の地下水調査の無意味さがはっきりしてきたと思いますが、特に鹿沼市民は、どう判断されるのでしょうか。「コメント」は、ダム反対鹿沼市民協議会によるコメントです。

[問]1 地下水収支の計算対象期間は、2001年8月17日から2002年8月31までなのでしょうか、それとも2001年9月1日から2002年8月31日までなのでしょうか。

[答]1 地下水収支の対象期間は、2001年9月1日から2002年8月31日です(専門会議報告書p33参照)。ご質問の中にあった2001年8月17日から2002年8月31日までは、地下水流動シミュレーションモデル構築及び再現のための計算期間です(専門会議報告書p29参照)。

[コメント]地下水収支の対象期間が始期が2001年9月1日から2002年8月31日なら、始期と終期の地下水位の差は、低地部で0.8m、台地部で2.4mにもなります。終期の方が低いのです。シミュレーションをやるまでもなく、地下水収支はマイナスになることを意味します。

[問]2 地下水調査で水文年の始期と終期を地下水位が雨の影響を受けやすい8月又は9月に設定することは極めて異例ではないでしょうか。異例でないとすれば、実例を教えてください(できればインターネットで検索できるようなものがありがたいです。)。

[答]2 本調査は、平成13年度から3カ年の計画で実施されており、平成13年度に現地調査及び資料収集整理による“水文循環調査”、平成14年度に地下水流動シミュレーションモデルによる“水収支調査”、平成15年度にモデルを活用した“地下水適正利用量調査”及び調査とりまとめを実施しています。平成14年度に“水収支調査”を実施する必要があったことから、業務の実態に合わせ、現地観測を開始した平成13年9月を水文年の始まりとしています。なお、「地下水調査および観測指針(案)建設省河川局監修 山海堂」のp261には“対象領域が広く長期間の水収支を検討する場合は‥・、1ケ月、3ケ月、乾操期〜雨期あるいは1カ年などの長期間を設定することが多い”とあり、水文年の始まりに関する指針は示されていません。

 

[コメント]今回の水文年の設定は異例か、他に実例があるのか、と聞いているのに、全く答えていません。答えられないということは、異例であるということでしょう。

 

[問]3 調査報告書の総括部分で「水収支の観点からは、年間の地下水貯留量が不足気味である」と書いてあります。「気味」とは傾向の意味と思われます。いつからいつまでの期間において地下水貯留量が不足する傾向にあるのでしょうか。

 

[答]3 専門会議報告書p1にある通り、平成6年度から平成12年度について見ると、市上水道は頻繁に給水制限を実施していることから、地下水は不足気味だと言えます。このことを定量的に検討するために2001年9月1日から2002年8月31日の間(年間降水量:1,670mm)の水収支を地下水流動シミュレーションで解析しています(専門会議報告書p34、35)。

[コメント]調査報告書の総括部分(p43)には、「平成13年9月から平成14年8月まで1年間の水収支を解析した結果、・・・・・・この期間の鹿沼市域の地下水貯留量は不足気味であることが明らかとなった」ということです。
報告書は、1年間について「不足気味」と言っているだけです。解析の結果を1994年度から2000年度までの、(市民のだれもが気づかない程度の)減圧給水制限と関連づけていません。
「このことを定量的に検討するために」と言いますが、報告書には1994年から2000年までの上水道の減圧給水と鹿沼市域の地下水収支の解析を関連づける記述はありません。
最終報告書のp33には、2001年9月から2002年8月の間に鹿沼市域の地下水貯留量が減ったことは、「上水道水源施設において冬季に水不足が発生する現状を裏付けており」という記述が見られますが、両者の関係は科学的に論証されていません。専門委員たちの「印象」で両者を関連づけているだけです。
もし、両者に関連があるのなら、2001年以降減圧給水がないことを鹿沼市はどう説明するのでしょうか。

   

[問]4 地下水流動解析のシミュレーションモデルは、実測した地下水位に合わせて作られ、シミュレーション結果も実測した地下水データに追随するから、水文年の始期に地下水位が高く、終期に低ければ、地下水貯留量変化がマイナスになるのは、シミュレーションをするまでもなく明らかではないでしょうか。

 

[答]4 降雨量は年毎に変わるので、過去23年間の平年的な年間降水量(1,573 mm)に近い2001年9月1日から2002年8月31日の間(年間降水量:1,670 mm)を、水収支の基準年としています。地下水位が始まりに比べて終わりに低かったことは、基準年の降雨条件のもとで水収支がマイナスであったためと考えられます。

[コメント]質問に答えていません。今回のような水文年の設定の仕方をすれば、地下水貯留量変化がマイナスになるのは、「シミュレーションをするまでもなく明らかではないか」と聞いているのに答えていません。
それに、年間降水量が23年間の平均降水量と近いからといって、どこで水文年を区切っていもよいというものではありません。
「地下水位が始まりに比べて終わりに低かったことは、基準年の降雨条件のもとで水収支がマイナスであったためと考えられます。」という部分は、正しいと思います。
「基準年の降雨条件のもとで水収支がマイナスであった」。まさにそれだけの話です。鹿沼市は、それだけを調べるのに4,620万円の費用をかけたのです。
基準年の水収支がマイナスであっただけで、それ以前の年の水収支もマイナスであるということには、理論的にならないし、将来の水収支もマイナスになるということにはなりません。
「基準年の降雨条件のもとで」水収支がマイナスであっただけのことですから、降雨条件が変われば、水収支はプラスになることもあるわけです。1年間の地下水位を計測して一喜一憂しても始まりません。
とにかく今回の地下水調査報告書では、特定の年の地下水位の計測結果がなぜ将来の地下水収支を予測する根拠となるのかが論証されていません。

   

[問]5 調査項目に「地下水利用の検討」があり、「新規に地下水取水を行う場合の適地選定と取水可能量」及び「新規に取水施設を設置した場合の周辺への影響」を検討することになっていたはずです。その結論は、調査報告書のどこに書かれていますか。書かれていないとすれば、なぜですか。

 

[答]5 “適地選定”と“周辺への影響”に関する調査は、当初の検討項目の1つでしたが、専門会議では、調査の過程で実際の水道事業において実現が困難と考えられたことから、専門会義報告書から除外しました。なお、調査結果については、平成15年度報告書の「参考資料:地下水開発の可能性について」でまとめております。

[コメント]確かに新規地下水源の候補地は記載されていますが、そこからの「取水可能量」についての記述はなく、回答でも触れていません。
それに意味の分からない回答です。「新規に地下水取水を行う場合の適地選定」がなぜ「実際の水道事業において実現が困難」なのでしょうか。鹿沼市水道事業第5次拡張計画(1995年度策定)では、南押原での新規地下水源からの11,100m3/日は確実であると太鼓判を押していたはずです。
1995年度には、亀和田・北赤塚地区における地下水、日量11,100m3について、「新設井の取水の確実性は検討結果より計画取水量の確保は確実である」(「鹿沼市水道事業変更認可申請書(第5次拡張)」p64)と書いていたのに、なぜ2003年度には「実際の水道事業において実現が困難」になってしまうのでしょうか。
新規地下水の取水が「実際の水道事業において実現が困難」という話は、第14問での新規地下水源の確保への「努力をやめたわけではない」という回答とも矛盾します。

   

[問]6 第5次拡張計画で南押原地区にあるとされた日量11,100m3の地下水源からはどれだけの取水が可能ということになったのでしょうか。それとも全く取水してはいけないことになったのでしょうか。報告書のどこに書かれているかお示しください。

 

[答]6 本調査は、鹿沼市(正確には地下水盆と判断される領域)の地下水の全体像を検討しており、南押原地区など個々の地区の事象については調査項目とはしておりません。

[コメント]第5次拡張計画で南押原地区にあるとされた日量11,100m3の地下水源からはどれだけの取水が可能かを調査しない調査など意味がないと思います。
それに、「本調査は、鹿沼市(正確には地下水盆と判断される領域)の地下水の全体像を検討して」いるにすぎないのなら、上水道水源井戸での水位低下は「個々の地区の事象」にすぎないのであり、鹿沼市域の地下水収支との直接的な関連はないことになるはずです。

   

[問]7 断層破砕帯の地下水は調査されたのでしょうか。調査されなかったとすれば、なぜ調査しなかったのでしょうか。

[答]7 本調査では、第三紀の岩盤より上位に堆積する第四紀層までを主要帯水層として調査しました。一般に岩盤中の地下水貯留量は少なく水道水源として利活用することは困難であるため、岩盤中の地下水は調査対象としておりません(一般に、岩体地山の地下水は降水浸透涵養が遅く、循環性に乏しいと考えられるからです。)。

[コメント]断層破砕帯の地下水は使い物にならないという見解のようですが、それならどうしてこうした地下水を掘り出している株式会社北日本ボーリングやドリコ株式会社のような業者が営業を続けていられるのでしょうか。
また、鹿沼市も断層破砕帯の地下水が水道水源として利用可能と思ったからこそ、1993年にその調査を実施したはずです。

   

[問]8 この調査は、給水量が増加するという前提で始まりましたが、前提が間違っていると思いませんか。

[答]8 給水量については、専門会議報告書p13に昭和55年から平成13年までの実績を示している通りであります。

 

[コメント]給水人口は増えているのに有収水量が減っているという現実があります(グラフ(PDFファイル32KB。出典:「上水道のあらまし」)参照)。したがって給水量が増加するという前提は間違いです。調査の前提に関する致命的な誤りを指摘されると、このような回答しかできないのでしょうか。

           

[問]9 上水道水源からの揚水量が適正かどうかは、鹿沼市全体の地下水収支の計算結果とは無関係だと思いませんか。思わない場合は、その理由をお示しください。

[答]9 地下水利用にあたっては、揚水量の適正の判断は、地下水盆全体の水収支を満たすこと、周辺への影響がないこと、持続的・安定的な供給が可能なことと考えています。上水道における地下水利用も同様の考えに基づいています。

[コメント]質問に答えていません。地下水盆全体の水収支と上水道水源井戸における適正揚水量とがどう関係するのかについて全く答えていません。

   

[問]10 現在の上水道の揚水量は適正揚水量を超えているとのことですが、毎年のように過剰揚水をしているのに、その弊害が出ないのはなぜですか。それとも弊害が出ているのでしょうか。

[答]10 専門会議報告書p1にある通り、平成6年度から平成12年度の間で見ると、市上水道は頻繁に給水制限を実施していることから、実際に水道水源では冬季に井戸枯れを起こしており、弊害は出ております。

[コメント]弊害は出ていません。夜間に減圧給水をしていることなど、よほど神経質な人以外は、だれも気づいていません。減圧給水で市民は困っていないのですから、弊害が出ているとは言えません。
年間約100万m3(約15%)程度の過剰揚水を10年以上繰り返しているとしたら、もっと深刻な弊害が出ているはずです。出ていないということは、適正揚水量の設定の仕方がおかしいということです。

         

[問]11 近年の傾向として鹿沼市の地下水収支はマイナスでしょうか。根拠も示してお答えください。

[答]11 3番の質問で答えたとおりです。

[問]12 鹿沼工業団地における地下水揚水量は、近年は日量約7,000m3と書かれています。工業団地における最大限の地下水揚水可能量はどれくらいですか。根拠も示してお答えください。

[答]12 本調査は、鹿紹市(正確には地下水盆と判断される領域)の地下水の全体像を検討しており、鹿沼工業団地など個々の地区の事象については調査項目としておりません。

 

[コメント]工業団地にどれくらいの地下水が余っているのかを調べない調査なんて意味がないと思います。今回の調査では、鹿沼市が地下水をあとどれくらい使えるかを全く調査しておらず、ほとんど無意味な調査と言えます。
工業団地には、日量約16,000m3の地下水が余っており、ということは、ダム水を確保する理由がなくなるため、市長としては工業団地の地下水について触れたくない気持ちは分かりますが。

[問]13 「地下水保全総合計画」と「地下水利用計画」の定義と関係を教えてください。

 

[答]13 地下水利用計画とは、地下水利用のあり方を指します。これは本調査の目的です。地下水保全総合計画とは、水収支の実態を加味し、地下水利用のあり方を基本とした地下水保全に必要な行動指針などを定めたものです。本市においてはこれからの課題かと思われます。

[コメント]辞書に出ていない言葉の定義は、報告書の中に記載すべきです。それにしても、「地下水保全総合計画」の中に「地下水利用計画」がどう位置づけられているのか、2001年度鹿沼市地下水調査概要のp1(PDFファイル82KB)を見ても分かりません。調査業務の目的が不明確なままです。ちなみに、硝酸性窒素汚染も堆肥化プラント建設事業に26億円もかけるのですから、心配がなくなります。

[問]14 2001年9月11日の自治会役員を対象とする水道事業説明会を最後に南押原地区の地下水源確保のための努力を鹿沼市がやめてしまった理由を教えてください。

[答] 14 本市の地下水は、農業を始めとした様々な事業活動や生活用水として市民生活と密接に関わっており、南押原地区についても、同様に地下水は大切な資源であります。このような中、市として努力をやめてしまったのではなく、地域の状況を考慮しながら取水については慎重に進めていかなければならないと考えています。

[コメント]「市として努力をやめてしまったのではなく」と言いますが、それならなぜ2001年以降、鹿沼市は新規地下水源確保の努力をしていないのでしょうか。表流水確保の努力は、十分すぎるほどしているのに。
「地下水源確保のための地元協議中断の謎 」でも書いたように、南押原地区住民は「絶対に地下水の取水を認めない」とは言っていません。市長は、2001年以降、新規地下水源確保の努力をやめてしまった理由をきちんと説明すべきです。
地下水源の確保について「慎重に進めていかなければならない」と言いますが、市民の利益を考えるなら、高くてまずいダム水を買うことについてこそ「慎重に進めていかなければならない」はずです。
阿部市長は、ダム水を買うことについては、2001年4月21日に早々と決めたのに、地下水源の確保については、未だに慎重に進めているのは、ご都合主義というものではないでしょうか。
新規地下水源確保の努力をやめてしまった理由を説明できないために、「市として努力をやめてしまったのではなく」というウソをついているとしか思えません。

鹿沼市地下水調査の問題点へ>このページのTopへ