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鹿沼市地下水調査の問題点


●鹿沼市地下水調査とは

鹿沼市は、2001年度から2003年度までの3年間に市内の地下水調査を実施しました。調査費用は4,620万円でした。受託業者 は国際航業株式会社です。「平成15年度鹿沼市地下水調査業務委託報告書」(2004年3月)のうち、結論部分は2ページ(PDFファイル256KB)に集約されます。

最終報告書48ページはこちら(PDFファイル6.2MB)です。

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●結論から言います

地下水調査の結論は、「鹿沼市のある年の地下水収支はマイナスである」ということですが、長期的にはマイナスではありません。証拠は、「鹿沼市史・地理編」p103以下(PDFファイル944KB)に書かれています。地下水位の長期的な低下傾向は全く見られません。

調査の究極の目的は、報告書の最後のページに書かれています。阿部和夫鹿沼市長が今回の調査を通して言いたいことは、これです。

調査の目的JPG76KB

水不足をつくりだすための演出です。鹿沼市上水道において計画されている表流水による供給を含めて年間997万m3の水が不足しているということを結論づけるために今回の調査が実施されたと言えます。

「不足する上水道給水量」などと書かれていますが、そもそも2003年度現在、鹿沼市上水道では年間1,000万m3も給水していないのに、その7年後の2010年度に最大給水量が年間に1,843万m3にもなるという推計の妥当性が科学的に検証されていません。ここだけを見ても、今回の調査が科学的でないことは明らかです。

今回の地下水調査の問題点は多岐にわたるのですが、大きく見れば、(1)今後利用可能な地下水量を明らかにしなかったこと、(2)計算期間の設定が非科学的であること、(3)1年間のデータで傾向を結論づけていること、(4)上水道水源井戸からの適正揚水量は地下水収支とは無関係なのに関連があるかのように結論づけていること、だと思います。

後述のように有識者が共通して指摘していることですが、今回の調査で異例なことは、計算期間の区切りを雨の多い夏場に設定していることです。今回の調査で地下水収支がマイナスになったのは、計算の結果ではなく、計算期間の設定の仕方に由来します。

それにもかかわらず、最終報告書は「年間の地下水貯留量が不足気味である」(p43 )と結論づけます。「気味」とは、「名詞や動詞の連用形に付いて、そのような様子、そうした傾向にあるさまを表す。」(大辞林)とされます。「気味」という表現を用いることによって、たった1年間の地下水貯留量のマイナス(それも計算の結果ではない)を近年の傾向であるかのように読む者に印象づけるのは、非科学的かつ欺まん的です。傾向を言うならば、上述のように鹿沼市の地下水収支は不足気味ではありません。

それにしても、佐藤邦明教授(埼玉大学)や長谷部正彦教授(宇都宮大学)がこのような非科学的かつ欺まん的な地下水調査に手を染めることで自らの学者としての名声を汚すとともに、彼らの所属する大学の権威を傷つけることにならないのでしょうか。「あの大学はあの程度か」と言われかねません。

特に宇都宮大学では「地域貢献」をモットーとしており、近年、国から地域貢献特別支援事業費を獲得しています。所属の教授が非科学的な調査に加わり、無駄な公共事業に学問的な裏づけを与えることになれば、マイナスの地域貢献になってしまいます。

これも余計なお世話かもしれませんが、受託業者の国際航業株式会社も日本で有数の調査会社ですが、このような調査にかかわることが会社にとって損失とならないのでしょうか。行政には重宝がられますが、民間企業の顧客は逃げませんか。

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●調査目標が達成されていない

今回の地下水調査の最大の問題は、「今後鹿沼市はどれくらいの地下水を使えるのか」が明らかにされなかったことです。

第7回鹿沼市地下水調査専門会議(2002.11.22開催)の資料p11にも「本調査の最終目標は、鹿沼市域において持続的に利用できる地下水の量の推計である」と書かれているのに、報告書を全部読んでも「鹿沼市域において持続的に利用できる地下水の量」は見当たりません。調査の最終目標が達成されていないのです。調査の目的が「鹿沼市域における地下水の水収支の現状と水道事業における地下水利用のあり方を検討すること」(2003年度鹿沼市地下水調査報告書p1)にすり替わってしまったのです。

第1回の専門会議(2001.8.10開催)でも鹿沼市の職員は、「地下水についての正しいデータと認識のもとで地下水がどれだけ使えるのかを明らかにし、今後の施策に反映したい」と発言しています。

具体的には、「本調査項目では、(略)新たな水源開発に適した候補地の選定、取水可能量の推計、取水が実施された場合の周辺への影響検討を行う」(2001年度報告書p2-3)はずでした。しかし、最終報告書では、新たな水源開発の適地選定には言及していますが、取水可能量を推計していません。新規地下水源の取水可能量が明らかになるとまずいことでもあるのでしょうか。

また、2001年度の調査概要には「地下水利用計画」を策定することを業務目的としている、と明記されていたのに、報告書には「地下水利用計画」が書かれていません。

さらに、地下水保全システムを作成するはずだったのに、最終報告書に見当たりません。

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●南押原地区の新規地下水源から11,100m3/日を取水できるのかが調査されていない

調査目的には、「新規に地下水取水を行う場合の適地選定と取水可能量」(2001年度鹿沼市地下水調査概要p2)と確かに書かれていたのに、取水可能量について報告書には、「現時点において地下水貯留量が年間で不足気味にあることから、水道水源のための新たな地下水開発は多くを望めない」と定性的な記述があるだけです。適地選定については、「地下水を新規開発する場合には、地下水揚水による周辺地下水環境への影響度の小さい、低地部における開発が望ましい」と書くだけです。

要するに「新規開発水量は、どれぐらい望めるのか」についての定量的な分析がありません。

第9回専門会議(2003年6月18日)で提出された地下水利用可能量の評価結果(案)のp2-9では、「増設水源1.11万m3を含む」合計適正揚水量が34,095m3/日であるという数字が載っていたのに、最終報告書からその数字が消えてしまいました。

鹿沼市水道事業変更認可申請書(第5次拡張)p64には、亀和田・北赤塚地区における地下水、日量11,100m3について、「新設井の取水の確実性は検討結果より計画取水量の確保は確実である」と書かれているのですから、その確実性を明らかにしないような調査では意味がないと思います。今回の調査は、その確実性をかえってうやむやにしてしまったのですから、うやむやにした理由を説明すべきです。

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●断層破砕帯地下水が検討されていない

報告書は深層地下水について触れていません。地下水の解析範囲となった面積は、市の南部3分の1、約90km2にすぎません。板荷地区にあるとされる深層地下水は、調査対象から外されています。鹿沼市は、断層破砕帯から日量1万m3は取水できると読める1993年の地下水調査結果を無視するつもりでしょうか。断層破砕帯の深層地下水を無視して「水道水源のための新たな地下水開発は多くを望めない」という結論を出すのは早計です。ボーリング業者(株式会社北日本ボーリング)が「水が出なければ掘削料金は要らないから掘らせほしい」とまで言っているのに、敢えて無視する鹿沼市の態度は不可解です。

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●冬季の井戸枯れが調査の動機

調査の背景は「上水道水源では冬季に井戸枯れを起こしており、給水制限を余儀なくされるなどの問題が生じている」(2003年度鹿沼市地下水調査報告書p1)こととされ、鹿沼市は、上水道事業において、冬季に水源井戸の水位が下がり、給水制限をすることを最も問題視しています。本調査は、鹿沼市の一般会計予算で執行されています。上水道の問題なら水道企業会計予算から調査費を支出するのが筋です。

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●水道水源の井戸枯れによる水量不足の定量的な分析がない

調査の主たる動機が減圧配水という方法による給水制限を余儀なくされていることなのに、報告書には、「上水道水源における給水制限の実施状況」(PDFファイル120KB)という表が記載されていますが、減圧配水をした年度ごとの日数が記載されているだけで、「日量何m3不足していたのか」という定量的な分析がされていません。

そもそも減圧配水は、それほど問題とすべきことなのでしょうか。「被害」なのでしょうか。減圧配水によって市民が困ったことがあったのでしょうか。市に苦情を申し立てた市民が何人いたのでしょうか。高台地区に住む市民でさえ、減圧配水をしていることにさえ気づいていません。「減圧配水による給水制限が問題だ」としながら、「減圧配水を避けるために必要な水量はどれだけか」を調査しない調査は間違っていると思います。鹿沼市は、調査の出発点において間違いを犯しています。

第5回鹿沼市地下水調査専門会議(2002.8.8開催)では、「過去の渇水時の実績(どの規模の渇水時に警戒水位を下回ったのかどうかとどの程度か)を整理しておいたほうがいいのでは?」という指摘をした委員もいたようですが、無視されています。鹿沼市は、減圧配水の定量的な分析をしたくないようなのです。

ちなみに思川開発事業を考える流域の会では、冬季の減圧配水によって節約できた水量、言い換えれば、減圧配水を避けるために必要な水量は、1,162m3/日にすぎないという定量的な分析をしています。

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●鹿沼市地下水調査専門会議は専門家で構成されていない

鹿沼市地下水調査専門会議は、6人の委員で構成されています。

埼玉大学地圏科学研究センター教授佐藤邦明
宇都宮大学工学部建設学科教授長谷部正彦
独立行政法人土木研究所水工学研究グループ水理水文上席研究員吉谷純一
栃木県企画部水資源対策室長河野広実(旧委員高瀬忠男)
鹿沼市助役渡辺南お
国際航業株式会社国土マネジメント事業部環境部水環境担当部長平山利晶

今回の調査機関と栃木県が水資源開発公団から委託を受けて、1971年から1974年までの4年間をかけて行った地下水調査における調査機関とを比較しましょう。そのときは、学識経験者により「水理機構解析委員会」という組織をつくりました。委員は次のとおりです。


山本荘毅東京教育大学教授
鈴木陽雄宇都宮大学教授
小野寺透埼玉大学教授
竹内俊雄防衛大学教授
平山光衛宇都宮大学教授
清水邦夫宇都宮大学教授


学識経験者だけで構成され、少なくとも形の上では、科学的な調査であるという体裁をとっていました。

ところが、今回の地下水調査では、調査に関して議論する機関の委員には、専門家と言える人は1人しか入っておらず、形の上からして科学的に見えません。

市助役や県水資源対策室長が地下水調査の専門家とは思えませんし、上司である阿部和夫鹿沼市長と福田昭夫栃木県知事がダム推進の立場である以上、ダムを造る方向での意見しか言わないでしょう。要するに、県や市の職員は、自分の判断ができる立場ではなく、知事や市長の考え方を専門家に伝えるために委員になったとしか思えません。

そもそも鹿沼市が地下水調査を実施するのに、なぜ専門職でもない県職員が委員に加わるのか理解し難いところです。栃木県が何らかの形で調査費を出しているとでも言うのでしょうか?だとしたら県が調査費を出すメリットは何でしょうか?

土木研究所の研究員も土木研究所の仕事づくりのためには、ダムを造る方向での意見しか言わないでしょう。「始めにダムありき」で河川行政を進めてきた旧建設省の下部機関であった土木研究所の職員をなぜ委員に加えるのか、私たちには納得できません。

国際航業の平山部長も調査業務の受託業者ですから、発注者である鹿沼市の意向に沿った意見しか言わないでしょう。個人としての意見を言えない立場の人です。

宇都宮大学の長谷部正彦教授の専門は建設学で、栃木県のサイトに掲げられている彼のこれまでの研究テーマと現在の研究テーマは、次のとおりです。

長谷部正彦教授の専門が地下水調査であるとは思えません。

専門家と言えそうな人は、埼玉大学の佐藤邦明教授だけです。しかし、埼玉大学地圏科学研究センターのサイトを見ると、彼の主な社会的業績は、次のとおりとされています。

佐藤邦明教授は、行政、特に国土交通省から絶大な信頼を得ている学者だということが分かります。

今回の調査に関する専門機関は、「専門会議」の名に値するのか、どこまで科学性や客観性が担保されているのか大いに疑問です。したがって、今回の調査結果に対しては第三者性のある専門家による検証が必要だと思われます。

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●鹿沼市の地下水が清澄な水であることが認められた

調査報告書の結論として、「鹿沼市域の地下水は、溶存物質の量が少ない清澄な水である」と書かれています。鹿沼市域の地下水が水道水減として最高のものであることは明らかです。その地下水源を放棄して表流水からの水源に転換しようとする第5次拡張計画の方針は間違っていると思います。「地下水の汚染や枯渇が心配だから河川水を水道水源としよう」とするのではなく、「地下水の汚染や枯渇が起きないような工夫をする」のがまともな水政策ではないでしょうか。

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●前提が間違っている

この調査は、給水量が増加する、硝酸性窒素汚染が懸念される、都市化の進展に伴い地下水涵養域が減少する、だから地下水機能が低下する、という前提で始まっています(第1回鹿沼市地下水調査専門会議資料p1-5)。

しかし、給水量が増加するという予測が誤りであったことは、渡辺政夫水道部長も認めています。渡辺水道部長は、2004年3月10日の鹿沼市議会で山崎正信議員の質問に対し「平成14年度の実績を見ても、給水区域内人口、1人1日平均給水量、1人1日最大給水量、負荷率など、いずれも計画を下回っているのは認識をしております」と答弁しています(ただし負荷率は、実績が計画を上回っていますので、言い間違いです。負荷率の向上も計画給水量を減らす要因になります。)。給水量が増加するという前提が間違いであることは、水道当局も認めているのです。それなのに、「給水量の増加」(2001年度鹿沼市地下水調査概要p1-5)という誤った前提の下に調査が始められたのです。

硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びクリプトスポリジウムによる汚染についても、そういうことが起きないようにするために畜産廃棄物の堆肥化プラントの建設を鹿沼市は進めていますので、前提が成り立ちません。堆肥化プラントを建設しても畜産廃棄物が水道水源を汚染するようでは、何のために巨費を投じて堆肥化プラントを建設するのか分かりません。鹿沼市は、堆肥化プラントの建設を進めている以上、畜産廃棄物による地下水汚染の危険は減少していくことを前提に水政策を立案すべきです。

今後、人口が減少していく中で、都市化が進展するという前提も成り立ちません。

今回の調査は、そもそも誤った認識を前提に始めた調査なのですから、まともな調査結果は期待できませんでした。

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●南摩ダムで渇水に対応できないことが明らかになった

今回の調査で、1984年の渇水(年間降水量997mm) は75年に1回の確率、1996年の渇水(年間降水量1,141mm)は20年に1回の確率で生じるとされました(石原・高瀬法による。なぜ石原・高瀬法を採用するのかは不明)。それらの年に鹿沼市では断水していませんし、給水制限をした記録もありませんし、前後の年と同様の給水量となっています。

一方、「南摩ダムの利水計画は、5年に一度程度の渇水を対象としているため、計画以上の渇水では、利水計算上、ダムの利水容量がゼロになることがあり、この場合には渇水調整会議等で調整を行い、水利用を制限することになります。」(「思川開発事業 聞きたい 答えますQ&A11」p10)

鹿沼市は、地下水に全面的に依存してきたからこそ、渇水年にも安定して給水できたのです。今後、鹿沼市がダム水を確保し「地下水依存からの脱却」を達成したら、かえって安定供給はできなくなります。

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●南摩ダムは容認できないという結論になる

報告書の結論部分には、2001年9月から2002年8月までの1年間の鹿沼市全体の地下水の水収支は、966万m3の赤字であると書いてあります。そして、「年間の地下水貯留量が不足気味である」と一般化しています。これが事実なら、つまり、南摩ダムのない状態で地下水が不足しているのなら、南摩ダムが完成して黒川と大芦川からの導水が始まったら、両河川から補給を受けていた流域の浅層地下水の量は更に減ることになり、両河川の近くに掘られている鹿沼市の水源井からの取水可能量も減ることになります。

そうなれば、いくら南摩ダムからの取水をしても、南押原地区での新規地下水源の確保をあきらめている以上、給水能力を増やして給水区域を拡大するという第5次拡張計画と矛盾してきます。地下水が不足気味であるという結論が本当なら、「黒川と大芦川からの導水によって更に流域の地下水を減らす思川開発事業は容認できない」という結論になるはずです。

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●過剰取水の弊害は出ているのか

報告書には、既設水源井戸からの適正利用量は年間846万m3であり、2001年度の実績取水量は989万m3であるとします。実績は、適正利用量を16.9%も上回って取水しているというわけです。では、ほかの年度の実績と適正利用量との関係はどうなっているのでしょうか。グラフで見てみましょう。(数値は鹿沼市統計書から)

実績と適正利用量関係グラフ

過去12年間過剰取水が続いていることになります。過剰部分だけを拡大したグラフを描いてみます。

実績と適正利用量関係拡大グラフ

過去5年間を平均すると16%、2000年度には20%も過剰に取水していたことになります。 それによって、どのような弊害があったのかが問題になるはずですが、報告書には過剰取水による弊害についての記述がありません。適正利用量が年間846万m3なのに、毎年約1,000万m3も配水できるのはなぜなのでしょうか。

鹿沼市上水道水源井において12年間過剰取水を続けたならば、何らかの弊害が出るはずですが、報告書にはその点に関する記述はありません。

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●水収支は本当に赤字か

報告書の結論部分には、2001年9月から2002年8月までの1年間の鹿沼市全体の地下水の水収支は、966万m3の赤字であると書いてあります。グラフにしてみましょう。

水収支グラフ

収入の13.7%の赤字支出ということになります。地下水の正味流入量7,026万m3を966万m3も超えて流出するような年が8年も続けば、鹿沼市の地下水はなくなってしまうことになります。たった1年間の調査結果から「水収支の観点からは、年間の地下水貯留量が不足気味である」というふうに一般化できるのか疑問です。

地下水貯留量が毎年不足気味ならば、地下水は下がり続けるはずです。しかし、報告書には、地下水位が低下している証拠が示されていません。逆に地下水位曲線は、毎年ほぼ同様のパターンを描いています。2001年度の報告書のp1-13には次のようなグラフが掲載されています。

報告書から地下水位グラフ

観測場所は、OW-13が大芦川流域、KW-49が黒川流域です。

栃木県企画部水資源対策室発行の「地下水年報」(第22回)にも鹿沼市内(上石川608番地3)の地下水位グラフが載っていますが、地下水位は下がっていません。年間966万m3の赤字という計算が正しいのか疑問ですし、仮に正しいとしても赤字は累積していないと言えると思います。

グラフ地下水年報から

1970年代に水資源開発公団が行った地下水調査の報告書「水理機構解析業務報告書」をひもといてみても、鹿沼市の地下水収支が赤字であるとは書かれていません。今回の調査でなぜ赤字になったのか。確かに30年前とは状況が違うでしょうが、なぜ赤字に転落したのかの原因に関する分析があってしかるべきです。

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●鹿沼市のやろうとしていることが分かった

2003年10月に書かれた報告書(案)( PDFファイル172KB)に書かれていることが鹿沼市の本音ではないかと思われます。

鹿沼市の意図は、水質の面では地下水汚染への不安をあおり、水量の面では「水道水源のための新たな地下水開発は多くを望めない」から「鹿沼市の今後の水道事業展開においては、地下水のみならず地表水も含めた、水源の確保を検討することが望まれる」とすることにあると読めます。鹿沼市の水不足を演出するために4,620万円の調査費が使われたわけで、こんな猿芝居につきあわされた納税者はたまったものではありません。「表流水の確保」という無駄をやるために「水不足を演出するための調査」という無駄を重ねているわけです。

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●表流水の収支計算はするのか

鹿沼市の言いたいことは、「地下水収支が赤字だから表流水確保を検討する」ということです。だったら、表流水の収支が黒字になることを証明してから表流水の水源確保を検討すべきです。しかし、鹿沼市がそこからの取水を予定している南摩ダムの水収支(思川開発事業を考える流域の会のサイト参照)は成り立ちません。

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●鹿沼市は地下水利用量を減らそうとしている

最終報告書のp39に「地下水適正利用量の算出結果一覧」(PDFファイル100KB)という表があります。

この表から取水実績と適正利用量の比較をグラフ(PDFファイル44KB)にしてみました。

今回の調査で算定した適正利用量は、第1浄水場から第4浄水場までは、実績や第5次拡張計画と比べて少ない数字になっていますが、第5浄水場では適正利用量はかなり多いので、合計すると第5次拡張計画の数字とほぼ合致します。鹿沼市は、適正利用量を実績よりも小さく設定し、鹿沼市の取水能力を減らそうとしているように思えます。第5浄水場に余裕があることは隠しようがないようです。

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●どんぶり勘定と地下水流動シミュレーション結果が一致してしまった

鹿沼市は、第5次拡張計画において、上水道水源の適正取水量を日量23,200m3としました。根拠は、1995年の1月から3月までの「期間中の最大取水実績の内、下限値をもって限界取水量とし、この値の70%を適正取水量とすることとする」(「変更認可申請書」p22)というのです。「なぜ、1995年冬季3か月の実績下限値の70%が適正取水量となるのか」についての説明はありません。そして、今回の調査で、既設上水道水源の地下水適正利用量は、地下水流動シミュレーションにより23,187m3/日という結果になりました。上記のように第5次拡張計画での適正取水量と今回調査での適正利用量がほぼ一致したのです。どんぶり勘定による予言と科学的シミュレーションの結果が99.9%の確率で一致したわけです。偶然にしてはできすぎています。

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●なぜすべての水源井で適正利用量を計算しないのか

報告書では、地下水適正利用量の算定の考え方として、「なお、地下水揚水量には水源合計揚水量を、予測最低井戸水深及び警戒水位には各水源における代表水源井(各水源において最も計画給水量の多い水源井)の値を用いた」とされています。これは、科学的でしょうか。

各水源において、一つの井戸から水源合計揚水量を揚水することはありません。予測最低井戸水深及び警戒水位も井戸ごとに異なります。科学的に算定するなら、市内の21の水源井のおのおのについて科学的に合理的な揚水量、予測最低井戸水深及び警戒水位を設定してシミュレーションすべきです。大した手間ではないのですから。代表井戸だけで計算するのは科学的でないと思います。

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●水源井の警戒水位の設定の仕方で地下水適正利用量は大きく変わる

2003年10月30日に開催された第10回の「専門会議」において、委員から「水源井の警戒水位の設定根拠は」と質問されて、事務局(鹿沼市水道部)は、「施設設計上及び運用上から取水井ごとに設定されている」と答えました。報告書の適正利用量算定図(PDFファイル64KB)をみれば分かるように、警戒水位の設定の仕方によって、適正利用量は大きく変わります。

警戒水位がかなり安全側に(=高く)設定されているとすれば、適正利用量は不当に小さくなります。今回の調査で各水源井の警戒水位の設定が適正であったのか吟味された形跡はありません。

そもそも、警戒水位が厳密に科学的に設定されたものではなく、経験値でよいのだとすれば、これまでくみ上げて問題の起きなかった取水量を端的に適正利用量とすればよいと思います。これまでの実績で1日平均約27,000m3 くみ上げて問題がなかったのですから、適正利用量は少なくともその程度の数字にならなければおかしいと思います。

鹿沼市が第5次拡張計画に書いた「(1997年度における)最大取水計画38,466m3/日の取水は確実である」という記載は間違いだったのでしょうか。鹿沼市は事実に反することを書いて国に変更認可申請書を出したのでしょうか。

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●工業用水が余っている

報告書の工業用水揚水量の推移グラフ(PDFファイル)から、1987年度以降、工業団地の地下水取水量は平均7,023m3/日であることが明らかになりました。

それ以前は、日量1万m3近く使っていたこともありますから、少なくとも日量約3,000m3の地下水が余っていると思われます。

工業団地での地下水の取水可能量は、最大23,000m3/日とされていますので、16,000m3/日の地下水が余っている可能性もあります。

2001年4月21日に鹿沼市民文化センターで開催された「市民水フォーラム」で鹿沼工業団地内の株式会社JSP鹿沼工場の工場長・岩野正二さんは、「工業団地において生活・工業用水の水源は、すべて地下水です」「現状の井戸では不足が生じています。工業団地内井戸で揚水・回復試験も実施していますが、現状の揚水量が限界にきており、地下水汲上量の増量や井戸の増設は困難です」と発言し、「広報かぬま」(2001年5月10日号)にも掲載されましたが、事実に反すると思われます。

工業団地の工場の飲み水には上水道の水が使われていますから、少なくとも「工業団地において生活・工業用水の水源は、すべて地下水です」という部分は、明白に事実に反します。工業団地の地下水は余っていると思われます。

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●第5浄水場の水が余っている

第5浄水場における年平均揚水量(2001年度実績)は3,176m3/日であり、今回の調査による適正利用量は9,720m3/日です。冬季でも6,544m3/日の余裕があったのです。これまで冬季になぜ減圧配水したのか疑問です。

工業団地の工業用地下水と合わせれば、既に22,000万m3/日近くの水源(約55,000人分の水)が確保されていることになります。今回の調査では、鹿沼市上水道事業にとって新たな水源開発は不要であることが図らずも判明したという読み方もできます。

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