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識者はどう見るか(嶋津暉之氏)

鹿沼市が2001年度から2003年度にかけて実施した地下水調査の最終報告書について水源開発問題全国連絡会嶋津暉之共同代表から次のようなコメントをいただきました。

鹿沼市地下水調査の問題点


1 調査期間の設定が非科学的

調査期間を2001年9月〜2002年8月に限っているが、地下水収支を調べる場合、降水量には大きな変動があるから、調査期間は10年程度の期間をとる必要がある。わずか1年、それも2001年8月に鹿沼市で460mmという大量の降雨があったために地下水位がかなり上昇していた2001年9月初めをスタート時点とするのは、水収支の計算期間として明らかに不適切である。水位がかなり上がった時点をスタート時点とすれば、その後の1年間に水位が下がるのは当然である。2001年9月〜2002年8月の1年間に地下水位が低下したことをもって、地下水収支がマイナスになった調査結果と一致しているとするのはあまりにも非科学的である。

2 地下水位の長期的な低下傾向が見られない  

地下水収支といっても、後述するようにその計算の精度が問題であって、計算の方法によって結果はいかようにでも変わる。ただ、地下水収支に関して確かな事実がある。それは、「地下水位が長期的にどのように推移しているか」であるが、鹿沼市の地下水位に関しては長期的な低下傾向が全くみられない。これは鹿沼市の地下水収支がマイナスでないことを示す動かしがたい事実である。地下水位に長期的な上昇傾向はみられないけれども、低下傾向がないという事実は、余剰となった地下水が下流域に流出していること、収支がプラスであることを示唆している。

3 計算結果の幅を示さないのは非科学的  

地下水収支の各項目の数字は計算の仕方による変動がきわめて大きい。地下水流入量・流出量は透水係数の取り方で1桁くらい変わるのが普通である。河川への流出量にしても係数の設定の仕方によって大きく変動する。そのように変動がきわめて大きいものを、あたかも唯一解であるかのように示すのは欺まんである。計算結果にどれほど誤差の幅があるかを示すのが科学的なやり方である。

4 数字の算出根拠が不明  

34ページの水収支は数字の計算根拠が不明だし、理解しがたい数字がいくつかある。まず、この収支計算の対象とした実際の面積が示されていない。降水量(水田・水田以外の合計)15177万m3/年を年降水量1670mmで割ると、計算対象面積は90.9km2になる。これは市全域の面積の3割弱である。これで、なぜ市全体の水収支を検討したことになるのだろうか。また、この面積で蒸発散量(水田・水田以外の合計)3528万m3/年を割ると、388mmとなるが、関東地域の蒸発散量は年間で700mm程度(報告書と同じソーンスウエイト式による計算値)はあるはずである。また、水田へのかんがい水量は、降水量に匹敵する数字になっているが、その算出根拠が何も示されていないし、表流水を含めた農業用水の取水量は月ごとに変動があるものだが、そのような変動を把握したものかどうかも明らかではない。

5 タンクモデルが単純で計算の精度に疑問

34ページの水収支のうち、地下水涵養量や地下水流出量、河川への流出量などはタンクモデルで計算したものだが、タンクモデルの計算をする場合も、係数の設定によって、計算結果はいかようにでも変わる。だから、実際の計測値と計算値がどの程度一致したかを示さなければ、その計算結果の信頼性はない。しかも、今回使ったタンクモデルは1段型である。タンクモデルは3段程度のものを使わないと、精度の良い計算ができない。

6 結論は作為的

とにかく、34ページの水収支にはもっともらしく数字が羅列してあるが、その科学的な根拠は乏しく、全体としてマイナスになるように数字がつくられていると判断せざるをえない。

7 市街地の地下水涵養量はゼロではない

細かい点だが、この報告書では宅地は地下水涵養がゼロだとしているが、宅地であってもアスファルトやコンクリート等で被覆されていない部分(庭など)は、雨水が地中に浸透して地下水を涵養するから、宅地での地下水涵養も合計すれば大きな水量になる。宅地の地下水涵養がゼロだとすると、「東京や埼玉等の市街地は地下水の涵養がない」という非現実的な話になってしまう。この例でも分かるように、この報告書はレベルが低いといわざるをえない。

8 制限水位設定の妥当性が検討されていない

36ページ以降では、鹿沼市の水道水源の各井戸について適正揚水量が求められているが、これは制限水位の設定によって変わってくるのであって、まずは制限水位が妥当か否かが検討されるべきである。ところが、制限水位の妥当性については全く検討がなされていない。

大半の水源井戸は現状の揚水量で制限水位を下回っているのであるから、この報告書のようにもっともらしいシミュレーションモデルの計算を行わなくても、制限水位を前提する限り、適正揚水量が現状揚水量より小さくなるのは当たり前のことである。

制限水位を下回った場合にどのような問題があるのか、制限水位の妥当性を具体的に検討することが必要である。ただし、水源井戸の大半について現状より揚水量を減らすべきだという結果が出たとしても、それは各井戸について過剰揚水があることを示すだけであって、鹿沼市全体として過剰揚水であることを意味するものではない。2で述べたように、鹿沼の地下水位に長期的な低下傾向がみられないから、鹿沼市全体の地下水収支はマイナスではない。したがって、各水源井戸に過剰揚水の問題がもしあるならば、既設井戸から距離をおいて水源井戸を新たに設置すればよいだけの話である。

9 結論

・今回の調査報告書は非科学的なものであって、鹿沼市水道の地下水使用量を減らす必要があることを主張するためにつくられた報告書である。

・鹿沼の地下水位に長期的な低下傾向がみられないから、鹿沼市全体の地下水収支がマイナスではないことは明らかである。

・鹿沼市水道の各水源井戸に過剰揚水の問題がもしあるならば、既設井戸から距離をおいて水源井戸を新たに設置すれば済む話であり、現状程度の地下水を利用し続けることに何の問題もない。



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