ダムが水道料金を上げる?

2010-03-25

●下野に水道料金格差の記事が掲載された

私は、鹿沼市水道事業懇談会はどこまで検討するのかに掲げたワードファイルのp30に、次のように書きました。

市の水道料金の基本水量は10m3/月です。5m3使っても10m3使っても料金は同じです。これでは市民の節水意欲は湧きません。市が本気で節水してほしければ、基本水量制をなくすべきです。基本水量を少なくとも5m3に引き下げるべきです。

そうすれば、小口利用者は、真剣に節水を心がけ、水源にさらに余裕ができることになります。料金収入が減ったら、施設はどうやって維持するのか。節水しない利用者がより多く負担すべきです。料金の値上げも必要かもしれません。

しかし、みんなが節水すれば、施設の規模を大きくしないで済みますから、それほど大幅な値上げにはならないはずです。

データがなかったのでそれ以上書けませんでしたが、3月21日の下野新聞に一面トップ及び三面で水道料金の記事が載りました。トップニュースは、次のとおりです。

水道料金の格差2・1倍 県内 最高は那珂川3990円 最低は佐野1920円

 ダム事業の一時凍結で、水道事業に関心が集まる中、下野新聞社は20日までに、県内市町に対し、水道料金に関するアンケート調査を行った。1カ月当たり20立方メートル使用した場合、最も高いのは那珂川町で3990円。逆に最も安いのは佐野市の1920円で、2・1倍の差があった。前回、下野新聞社が県の調査を基に算出した1998年の3・2倍に比べると、格差は縮まった。

 「安くできるなら安くしたいが、一般会計も苦しく繰り入れできない」。那珂川町の担当者は困惑気味に語った。

 同町の水道料金が高いのは、地形的な要因が大きいという。山間部のため、水を送るポンプなどの施設費用が掛かる。さらに人口密度が低く、水道管の敷設などでコストが割高になる。担当者は「東京から引っ越して来た人からは、水道料金が高いと言われることもある」と話した。

 次いで高いのが那須烏山市と塩谷町の3759円。那須烏山市は「施設整備に多額の費用を要しているが、給水人口が少ないため、使用水量が伸びず、給水単価を引き上げている」。塩谷町は「集落が点在し、配水管の延長が長いため」と答えた。

 水道事業は原則として自治体が行うため、地域の状況によって料金設定はまちまちだ。浄水場の建設や水道管敷設などの設備投資や維持管理費に応じて料金が異なるほか、ダムなどに水利権を確保する場合、参画費用が影響する。

 一方、水道料金が安い自治体は、地下水を利用する自治体が多いが、いずれも経営は厳しいようだ。1920円と県内で最も安い佐野市の担当者は「地下水を利用し、地理的条件にも恵まれているため」と回答したが、「2008年度は赤字決算となったため、料金改定について模索している」。次いで安い足利市も「地下水(伏流水)が豊富で経費が抑えられているが、今後、老朽化した施設や配水管などの更新で建設改良費が増える。料金収入の減少も見込まれ、ますます厳しい財政状況が予想される」と答えた。  
 

 ●基本水量制を見直す自治体が増えている

栃木県内の各市町の料金表を見ると、宇都宮市と栃木市では、基本水量を5m3/月としていることが分かります。8m3/月としているのが、足利市、日光市(藤原)、小山市です。

下野市では、基本水量制を廃止しています。

鹿沼市が本気で節水に取り組むなら、基本水量制の廃止や基本水量の引き下げを実施すべきです。

芳田利雄議員も2008年12月12日の鹿沼市議会本会議一般質問で、基本水量の見直しについて質問しています。質問と答弁は、次のとおりです。

芳田利雄君
最後に、基本水量の見直しについて伺います。時間もないので、簡単に伺いたいと思います。
この見直し、第5次拡張計画の見直しが終わったらば一緒に行うということなのですが、第5次拡張計画の見直し終わりましたので、基本水量の見直し、家庭構成も家族構成も変わってまいりました。どのように検討しているのか教えてください。

水道部長(襲田利夫君)
基本水量の見直しについての質問にお答えします。
本市の水道料金は、平成13年10月改定以来据え置き、8年目を迎えております。ここのところの水道の利用状況は、核家族や高齢者世帯の増加、節水型電化製品の普及、節水意識の高揚などの理由によりまして、10立方メートルの基本水量以内の利用世帯は増加傾向にあります。
しかしながら、基本料金に含まれる経費内容につきましては、水道水を各家庭に供給するまでの取水、浄水、送水費用や施設の建設、維持管理、料金徴収等の費用、さらに企業債や、その返還利息など多くの水道の維持管理に係る費用を含みますので、十分に精査する必要があると考えております。

基本水量は10立方メートルが全国的に多く採用されている制度であり、今後全市皆水道を目指しつつ、公営企業の安定した運営を図る必要があるため、基本料金、水量はどうあるべきかにつきましても、次回料金改定の際、あわせて検討していきたいと考えております。
以上で答弁を終わります。

水道部長の答弁を読むと、 10立方メートルが全国的に多く採用されている制度であること、 今後全市皆水道を目指していること、 公営企業の安定した運営を図る必要があること、を理由に、基本水量の引き下げは結論的には無理だと考えるが、一応は、「次回料金改定の際、あわせて検討していきたい」というふうに読めます。要するに、後ろ向きの検討はするということです。

しかし、上記記事に「節水すれば効果が跳ね返るように基本水量を下げる動きは、最近では全国的な動きになっている」(栃木県生活衛生課の担当者)とあるように、基本水量の引き下げは節水促進政策なのです。

節水促進政策である基本料金の見直しをする気がないということは、節水を進めたくないということです。

基本水量を見直す動きがないということは、「新規水源を確保するために節水は進めない」というのが鹿沼市の姿勢のように思えます。「新規水源を確保しなくて済むように節水を進める」という姿勢が見られません。

●基本水量を見直さない理由は破たんしている

水道部長が挙げた、基本水量を見直さない理由は破たんしていると思います。

「10立方メートルが全国的に多く採用されている制度である」と言いますが、流れは変わりつつあります。「節水すれば効果が跳ね返るように基本水量を下げる動きは、最近では全国的な動きになっている」(栃木県生活衛生課の担当者)のが現実です。栃木県内でも、既に宇都宮市、小山市、足利市、栃木市、日光市、さくら市が基本水量制の見直しを行っているのですから、「よその市も基本水量は10トンを採用しているから」という言い訳はできない時代になっています。

月に5トン使っても10トン使っても水道料金が同じということは、節水の努力を全く無視するということです。「もったいない運動」を進める鹿沼市が節水の努力を無視してよいとは思えません。

「今後全市皆水道を目指している」も破たんしています。

鹿沼市水道ビジョン(案)p19(水道部のホームページの第4回水道事業懇談会が開催されましたからダウンロードできます)でも、「今後については「市民皆水道」計画を考慮しながら、地域の要望や整備手法等を検討する」と、今やトーンが弱まっています。

水道ビジョン(案)には、「平成21年に未普及地域で実施した水道事業アンケート調査では、水道の整備を望む声は全体の58.1%でした。」と書かれています。

2007年度の鹿沼市の給水区域内人口は82,345人で、給水人口は76,889人です。給水区域内の加入率は93.4%です。6.6%は、水道が引けるのに引いていません。

水道本管を引いても水道に加入しない市民が多いことは西部簡易水道の例からも実証済みですし、アンケートからも市民皆水道が圧倒的な民意でないことも明らかです。

「公営企業の安定した運営を図る必要がある」ことは確かです。

だから、上記のように、基本水量を引き下げたために安定した収入を得られなくなるなら、全体的な値上げをすることもやむを得ません。

しかしその値上げ幅は、5トン使っても10トン使っても同じという不公平な料金体系を維持することにより、市民の節水意識が高まらず、その結果水源不足をもたらし、新規水源の確保が必要になり、その費用を賄うための値上げ幅よりもはるかに小さいはずです。

●東荒川ダムの教訓

ちなみに、私は、上記過去記事に「塩谷町、さくら市及び茂木町は、東荒川ダムに合計で0.216m3/秒の水道用水の水利権を持っていますが、全く使っていません。」と書きました。(塩谷町はダムの水を使ったことにしているだけで、実際は尚仁沢湧水から直接取水しています。実態はダムを利用していません。)

上記下野の記事を見ると、塩谷町は県内で2番目に水道料金が高いのです。口径13ミリメートルで、1か月20m3使うという試算で3.759円になります。

その次に高いのが茂木町の3,738円です。

さくら市は、2,620円ですが、「05年3月に合併で誕生したさくら市は08年4月に、旧喜連川町の料金を旧氏家町の料金2,620円に引き下げた。」と書かれており、東荒川ダムに参画していた旧喜連川町の料金が高かったことがうかがえます。

塩谷町の担当者は、料金が高い理由について「集落が点在し、配水管の延長が長いため」と答えています。

しかし、他市町の水道企業会計の内実はつかめていないので推測になりますが、塩谷町、茂木町、旧喜連川町の水道料金が高かったのは、東荒川ダム事業に参画したことの影響を受けているように思います。おそらく、現在も建設負担金やダムの維持費を払っていると思います。

上記下野記事には、「水道事業は原則として自治体が行うため、地域の状況によって料金設定はまちまちだ。浄水場の建設や水道管敷設などの設備投資や維持管理費に応じて料金が異なるほか、ダムなどに水利権を確保する場合、参画費用が影響する。」と書かれているので、ダムの影響は大きいと思います。

東荒川ダムに参画した自治体の水道料金が高いのは、偶然とは思えません。

鹿沼市は、当面ダムの水は使わないが、保険として南摩ダムの水利権だけは確保しておくという方針ですが、ダム事業に参画するということは子孫につけを残すことになるというのが東荒川ダムの教訓だと思います。

(文責:事務局)
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