南摩ダム地点の計画流量は220m3/秒だった

2017-05-24

●南摩ダムの治水効果はダム地点で130m3/秒が前提

国土交通省の説明によると、南摩ダムの目的のうちの一つである洪水調節とは、「南摩ダムの建設される地点における計画高水流量130m3/sのうち125m3/sの洪水調節を行う。」(思川開発事業の検証に係る検討報告書p3−1)ことです。

「ダム建設予定地地点で洪水のピーク流量の96%をカットすることが目的であり、下流でどれだけ効果があるかは知ったことではない」ということだと思います。

下流で効果がないという問題はともかくとして、ダム地点の治水効果の計算は、1/100確率の雨量が生じた場合の最大洪水流量として130m3/秒が南摩ダムに流入するという前提で行われています。

このことについて私は、前回記事水資源機構の説明は素人だましではないのかで、次のように書きました。

ちなみに、ダム地点の計画高水流量130m3/秒のうち、125m3/秒をため込むという話も机上の空論です。

国土交通省は、実測のない1991年8月20日洪水の南摩ダム予定地における流量を90m3/秒と推計した値を含めた64洪水から130m3/秒を計算しましたが、1991年8月20日洪水では乙女地点の流量が2200m3/秒程度なのに、南摩ダム予定地の流量を90m3/秒と推計するのは、他の洪水と比較すると超過大推計になるからです。

また、2015年9月洪水では、鬼怒川流域に1/110規模の降雨があったと国土交通省は計算しているので、思川流域でも同程度の規模の降雨があったと考えるべきです。

水資源機構からの開示資料によれば、2015年9月洪水におけるダム予定地の最大水位は2.15mであり、これを直近のHQ式(2014 年10月14日〜12月31日)にあてはめれば、最大流量は76m3/秒となります。

ダム予定地の1/100確率程度の降雨のときの流量が76m3/秒であるとすれば、130m3/秒はその2倍も過大な計算をしていることになります。


●流量確率法で計算すると最大でも111 m3/秒

栃木3ダム訴訟における原告準備書面(13)(2007年6月28日)によれば、原告側が、1977年から2005年までの28年間(1991年は欠測)に年最大観測流量から、流量確率法で1/100確率の降雨時の最大洪水流量を求めると、統計手法によって異なるが、最小値67m3/秒、最大値111m3/秒、平均値は89m3/秒になったといいます。

南摩ダム地点での計画高水流量130 m3/秒は大きすぎるということです。

●当初構想では220m3/秒だった

以上のとおり、南摩ダム地点における計画高水流量(南摩ダムの場合1/100確率の降雨があった場合の洪水のピーク流量)が130 m3/秒であるというのが、事業者の一貫した主張だと思っていました。

ところが、最近、「首都圏の水資源開発」(水資源開発公団、1979年)というパンフレットを見ました。

そこには、思川開発事業の概要が書かれており、南摩ダムの洪水調節効果については、ダム地点で220 m3/秒の洪水を200 m3/秒調節すると書かれていました。

この場合の降雨確率が書かれていませんでしたが、南摩ダム地点で220 m3/秒の洪水を想定することは、実績を無視した異常な想定としか言いようがありません。

上記パンフレットによれば、当初構想の南摩ダムの総貯水容量は1億4320万m3、有効貯水容量は1億4000万m3でした。

1994年の事業実施方針のときには、総貯水容量は1億100万m3、有効貯水容量は1億m3となりました。

南摩ダムの有効貯水容量1.4億m3から1億m3に減ると、ダム予定地点の洪水の最大流量が220 m3/秒から130 m3/秒に減るというのは、余りにもいい加減な話だと思います。

南摩ダムは、どこからどこまで欺瞞と虚構で満ちています。そうであるにもかかわらず、裁判官を含めて税金で食べている人たちが道理も民意も無視して粛々と事業を進めてしまう。北朝鮮の政治とどこが違うのでしょうか。

(文責:事務局)
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