小林幹夫県議の南摩ダム促進論に根拠はない

2016-11-05

●小林幹夫県議が南摩ダムの建設促進について質問した

2016年9月29日栃木県議会本会議において、鹿沼地区選出の小林幹夫議員が一般質問をしました。南摩ダムの建設促進について次のように質問と答弁がありました。

◎小林幹夫議員
先日、国の次年度の概算要求の大枠がほぼ決定をしました。
民主党政権時の事業凍結から一転して継続が決定した思川開発事業につきましては、本年度当初予算の約1.5倍となる27億6600万円が計上をされたところであります。この予算には、付替道路建設や設計調査費が盛り込まれておりますが、振り返れば、本事業は民主党政権下の平成21年の本体工事に入る直前という段階で一時凍結をされてしまった経緯があります。
もし事業が予定どおり進捗をしていれば、昨年9月の南摩川における水害は最小限にくいとめられ、県民の財産を失わずにすんだのかと、すんだのではないかと考えるとき、返す返すも残念でなりません。
政治の間違った判断がこのような悲しい出来事を引き起こすということを痛切に感じたところでもあります。
一方、ダム本体が建設される地区では、事業地域の樹木が伐採されてから、10年以上が経過をしております。
未だにダムが整備されていない現状において地域住民の方々は異常気象による想定外の大雨等により、具体的には土石流などの大規模な災害が生じるのではないかと大変大きな不安を感じています。
また、鹿沼市の水道水につきましては、100%地下水に依存していることから、県はその水道水の安定確保を目的として、東大芦川ダムの事業に着手をしました。70%以上の用地を取得しておりましたが、知事の交代により、残念ながら事業が中止になるという経過をたどりました。
その結果、鹿沼市の水道水の問題は、苦肉の策として南摩ダムに依存することになりましたが、その事業すらも民主党政権下で凍結をされてしまったのであります。あの事業仕分けは、一体何だったんだ。残念でなりません。
水道水は多くの市民の命と生活を守るものであり、そうした水道水の確固たる確保こそ、市民が安心・安全に暮らせる大きな要素であると私は考えます。
そこで住民の不安を払拭し、安定的な水道水を確保するために1日も早い着工が望まれているところでもあります。
県はこれから国とどのように連携して推進をしていくのか県土整備部長に伺います。

◎印南洋之・県土整備部長
南摩ダムの建設を主とする思川開発事業は、下流域における洪水被害の軽減や水道用水の安定的供給を図るとともに、異常渇水時には市民生活や産業活動に大きな影響を与えないよう緊急水を補給する重要な事業であります。
このようなことから、県はこれまで国のダム事業検証により凍結されていた本体工事の1日も早い再開を求めてきたところであり、このたびようやく検証が終了し、去る8月25日に国土交通省が事業継続の対応方針を決定したところでございます。
今後は、早期完成に向けて、国や水資源機構に対しより一層の事業推進を強く働き掛けるとともに、県におきましても、地元鹿沼市などとも連携をして周辺道路整備等の生活関連事業を着実に推進してまいります。

◎小林幹夫議員
部長から大変いい答弁をいただきました。
治水利水は、安心・安全な県土づくりの要でもありますし、選ばれる栃木に直結するものであると思います。
そして、鹿沼市の水道水は全国に非常にまれな事例でありますけれども、100%水道水源を地下水に依存しているわけでありまして、例えば、地盤沈下や地下水汚染が生じた場合には、この水道水の供給が断たれてしまうという非常に市民は不安を持っております。
できるだけ1日も早い南摩ダムの完成を強くお願いをして、次の質問に入りたいと思います。


●主張が変わった

小林議員は、「もし事業が予定どおり進捗をしていれば、昨年9月の南摩川における水害は最小限にくいとめられ、県民の財産を失わずにすんだのかと、すんだのではないかと考えるとき、返す返すも残念でなりません。政治の間違った判断がこのような悲しい出来事を引き起こすということを痛切に感じたところでもあります。」と言います。

この主張は、2016年1月又は2月にあった「小林幹夫後援会新春の集い」での主張と違っています。「新春の集い」では、「あの災害、本当に大きな災害だったんです。大きな災害で鹿沼市の方々は本当に大変な思いをした。でも、あの災害は未然に防げた可能性も大いにあるんです。実は南摩ダムが平成26年に完成をしていれば、黒川の上流や大芦川の上流で取水をしていれば、あのような大きな災害に私はならなかったと思います。」(過去記事「県議がデタラメを言ってはいけないと思う」参照)と言っていました。

つまり小林議員は、2016年の1月か2月には、黒川と大芦川での被害が南摩ダムで防げると言っていたのです。

ところが9月になると「南摩川における水害」が南摩ダムで防げるという話に変わったのです。黒川と大芦川における水害が防げると言わなくなったのです。

「県議がデタラメを言ってはいけないと思う」に書いたとおり、議員生活が30年にも及ぼうというベテランの地元県議が思川開発事業の目的を29年間も誤解したまま事業促進を唱えてきたのですから、南摩ダムがいかにいい加減な事業かが分かります。

過去記事の繰り返しになりますが、栃木県議会が2009年12月14日に議決した「湯西川ダム建設事業及び思川開発事業の推進を求める意見書」は、議決した議員が事実を誤認しており、錯誤により無効です(民法第95条参照)。

意見書を読み返してみたら、次のように書いてあります。

湯西川ダム建設事業及び思川開発事業は、地元と国等が積み上げてきた長い協議の歴史と、地元住民の方々の並々ならぬ御苦労と御協力をいただき現在に至っている。
また、両ダムとも洪水被害を防止する観点から本県にとって必要な施設であるとともに、下流の自治体の水道用水等を確保する観点からも必要不可欠な施設である。

この記述は、両ダムが栃木県にとっては、洪水被害の防止についてしか効果がないと言っていることになります。栃木県と県内市町が両ダムに利水参画していることを知らないで書いたとしか思えません。知っていたら、あのような書き方はしないはずです。

ダム問題を理解していないのは小林議員だけではないと思います。両ダムがどういうダムなのかを理解していない議員が意見書を議決して、国の政策に影響を与えるのですから、恐ろしい話です。

●小林議員は費用対効果を考えないのか

南摩ダムが完成した場合、確かにダムに近い箇所では洪水調節効果はあると思います。そして、2015年9月台風による洪水により、南摩川の室瀬橋の直下流右岸の護岸が崩壊するという被害がありました。

私は南摩川における水害の被害額がいくらなのか知りません。

小林議員が2015年の南摩川における水害を南摩ダムで防げるから南摩ダムが必要だと主張するなら、その被害額を明確に述べるべきです。

仮に復旧工事に数千万円かかるとしても、被害が毎年発生するものではありません。

他方、思川開発事業の総事業費は、1907億円です。南摩ダムの洪水調節容量は、有効貯水容量の10%なので、治水にかける費用は200億円程度だとしても、軽減される被害額と釣り合っているとは思えません。

小林議員は、定量的に話さないので、聞いている県民は、その主張の妥当性を判断できないと思います。議員だったら、定量的に議論してほしいと思います。

小林議員は、費用対効果を考えていないと思います。考えているなら説明すべきです。

ちなみに、南摩ダムがない場合に、上記の箇所で毎年のように護岸崩壊が起きていたとすれば、そしてそのために多額の補修費用を使っていたとしたら、特定の人の財産を守るために多額の税金を使ってきたことになり、公金の使い方として問題があったと思います。

毎年のように同じ箇所に被害が出るなら、当該箇所で川幅が狭すぎたのであり、川幅を広げる必要があったと考えることもできると思います。

特定の人の財産を守るために200億円のダム建設費用が必要だと言うなら、土地利用制度に問題があったのであり、洪水の度に敷地が削られる世帯には移転してもらって河道を拡幅するという方法も検討されるべきだと思います。

念のため書いておきますが、南摩ダムは下流部には効果がありません。昨年の豪雨で小山市内での思川の水位上昇が問題となりましたが、国土交通省の計画では、治水基準地点の乙女地点で3760m3/秒の洪水が流れた場合に南摩ダムで60m3/秒をカットし、3700m3/秒に流量削減できるということにすぎません(「思川開発事業の検証に係る検討報告書」p4−11)。

削減率は約1.6%です。流量観測をやってもこのくらいの誤差はあるそうですから、南摩ダムによる下流での洪水調節効果はないに等しいのです。そもそも南摩ダムの流域面積は、乙女地点の流域面積の約1.6%ですから、最初から効果が皆無に等しいことは分かっていることです。ダム検証における代替案の検討でも遊水地案の方がダム案より安上がりという結果になったのも、南摩ダムに効果がないことの証拠です。

また、思川の洪水は渡良瀬遊水地により利根川への影響はゼロになりますから、利根川における洪水調節効果もありません。

●護岸の崩壊が悲しい出来事なのか

小林議員は、「政治の間違った判断がこのような悲しい出来事を引き起こすということを痛切に感じたところでもあります。」と言います。

南摩川における護岸の崩壊がどうして「悲しい出来事」なのか私には理解できません。

2015年の南摩川の水害で人的被害が出た、とか、家が流されたのなら、「悲しい出来事」と言うのも分かりますが、護岸の崩壊程度の被害を「悲しい出来事」という感覚が理解できません。

それとも、護岸の崩壊ではない被害があったというのでしょうか。あったのなら、小林議員は、その事実を説明すべきです。

●不安を煽っていないか

小林議員は、「一方、ダム本体が建設される地区では、事業地域の樹木が伐採されてから、10年以上が経過をしております。

未だにダムが整備されていない現状において地域住民の方々は異常気象による想定外の大雨等により、具体的には土石流などの大規模な災害が生じるのではないかと大変大きな不安を感じています。」と言います。

水没予定地区の樹木が伐採されていることに不安を抱く人もいるでしょうが、2015年9月洪水は国土交通省により鬼怒川流域で1/110の確率と計算されているのですから、思川流域でもその程度だったはずです。それでも南摩川流域に大した被害はなかったのですから、今後、伐採跡地に広葉樹の植林をしていけばすむ話ではないでしょうか。

国土地理院の地図を見ると分かるように、南摩川は急峻ではありません。現地に行っても分かりますが、南摩川の河床勾配は大きくありません。急峻でないからこそ、高さ86.5mのダムを建設すれば、5000万m3(有効貯水容量)の水がためられるのです。当初構想の南摩ダムは、高さ約115mで有効貯水容量は1億4000万m3でした。このことは、地形が急峻でないことを意味します。急峻でない地形では土石流は起こりにくいはずです。

小林議員は、不安を煽っていると思います。

そもそも思川開発事業への公金支出を巡る訴訟まで起きているのに事業者が強引に事業を進め、水没予定地の樹木をどんどん伐採し、そのため土石流の起こる危険性があるからダムを早く建設せよ、という論法は、マッチポンプであり、あまりにも卑怯です。

小林議員は、地元の住民が土石流災害を恐れているように言いますが、本当に恐れなければならないのは、南摩ダムを建設し、相当量の水がたまった場合に、南摩ダムが地震で決壊する事態です。

2011年3月11日に福島県須賀川市の藤沼ダムは、地震で決壊して8人の死者・行方不明者が出ました。藤沼ダムは多分盛り土だけのアースダムなので、ロックフィルダムの南摩ダムとは違うので、同列には論じられませんし、ダムの決壊事故はまれにしか起きていません。

しかし、想定を超える地震が起きる可能性は誰も否定できないので、核発電所の事故を考えれば分かるように、事故が起きれば大惨事になるような施設は、できることなら最初から建設しないのがよいという原則論は成り立つはずです。

●数字でものを考えない議員がいてよいのか

小林議員は、「水道水は多くの市民の命と生活を守るものであり、そうした水道水の確固たる確保こそ、市民が安心・安全に暮らせる大きな要素であると私は考えます。そこで住民の不安を払拭し、安定的な水道水を確保するために1日も早い着工が望まれているところでもあります。」と言います。

利水問題でも定量的な議論はありません。

「水道水は多くの市民の命と生活を守るもの」という一般論から一足飛びに南摩ダムの水が必要という結論に持っていくのが小林議員の短絡的な論法です。

「水道水は多くの市民の命と生活を守るもの」だとしても、水源の量は多ければ多い方がいいということにはなりません。

「水道水は多くの市民の命と生活を守るもの」という命題は当たり前のことであり、政策の妥当性を判断する基準になりません。

水道法は、水道料金が「低廉」(第1条)であることを求めていますが、小林議員は水道法を読んだことがないとしか思えません。

小林議員は、利水でも費用対効果を度外視していると思います。数字で考えない議員が存在してよいのか疑問です。

強調しておきたいのは、水道法は水道料金が「低廉」でなければならないことを要求しているのですから、「水道水は多くの市民の命と生活を守るもの」という一般論は、ダム事業に参画する理由にはならないということです。「豊富」な水源の確保は、「低廉」とのバランスの上で考慮されなければならないということです。

●鹿沼市の表流水確保は高い買い物だ

現在、思川開発事業の総事業費は1907億円となっていますが、1850億円という、これまでの数字を前提とすると、鹿沼市が南摩ダムの水を0.2m3/秒確保すれば、54億円(国庫補助前)の費用負担が必要となります。鹿沼市の負担額は県との協定により15億8100万円とされていますが、ということは、38億円以上を県民が負担するということです。その県民には鹿沼市民も含まれています。

小林議員は県議なのですから、鹿沼市が確保する0.2m3/秒が54億円に値するかという観点から考えるべきです。

0.2m3/秒で54億円という負担額が高いかどうかは、1m3/秒当たりの水源開発単価に直して他の事例と比較しないと分かりません。

鹿沼市が確保する水量0.2m3/秒の単価は、約79億円/m3/秒ですが、県が負担する費用も含めれば約270億円/m3/秒にもなります。

栃木県が南摩ダムで確保した水量は0.403 m3/秒で、負担額は約64億円ですから、単価は約159億円となります。

八ッ場ダムの場合、東京都は5.779 m3/秒で利水参画し、708億円(国庫補助前)を負担します。(国庫補助金の額を控除すれば475億円と想定されています。)

開発単価は約123億円です。

佐藤信・鹿沼市長は、鹿沼市の利益しか考えていないでしょうから、1m3/秒当たり約79億円で表流水を確保できれば安い買い物だと考えているでしょうが、栃木県の負担分も合わせれば約270億円/m3/秒ですから、極めて割高な買い物をすることになりますから、県民全体の利益を考慮すれば、鹿沼市が思川開発事業に利水参画することは許されないと思います。

●印南部長の答弁も虚偽

印南県土整備部長は、「南摩ダムの建設を主とする思川開発事業は、下流域における洪水被害の軽減や水道用水の安定的供給を図るとともに、異常渇水時には市民生活や産業活動に大きな影響を与えないよう緊急水を補給する重要な事業であります。」と言います。

上記のとおり、思川開発事業には、下流域における洪水被害の軽減の効果はほとんどありません。

「異常渇水時には市民生活や産業活動に大きな影響を与えないよう緊急水を補給する」と言いますが、市民団体が水資源機構に「異状渇水対策容量は水道水に使えるのか」と質問しても、未定という回答しか返ってこないのですから、緊急水を水道水に使えない可能性もあり、そもそもどこの自治体でも水余りなのですから、「重要な事業」とはとても言えません。

小林議員は、よい答弁を頂いたと喜びますが、小林議員にとってよい答弁は、県民の利益に反します。小林議員が県民全体の利益を考えているとは思えません。

●地下水100%ではいけない理由を明らかにすべきだ

小林議員は、「鹿沼市の水道水は全国に非常にまれな事例でありますけれども、100%水道水源を地下水に依存しているわけでありまして、例えば、地盤沈下や地下水汚染が生じた場合には、この水道水の供給が断たれてしまうという非常に市民は不安を持っております。」と言います。

小林議員は、地下水100%の水道を目の敵にしています。

地下水は、雨を土壌が浄化してくれるので、浄化の費用がかかりません。その上、土壌や岩石からミネラル分が溶け出すので、水がうまくなります。さらに、少雨により河川の流量が減少したときにも、表流水と比較して安定的に取水することができます。

したがって、地下水は最高の水源です。涵養量以上に取水して枯渇を招いたり、地盤沈下を起こしたりしない限り、水道水源として使い続けて問題ないのです。

地下水100%の水道水源を禁止する法律も通達もありません。ダムを造りたい人たちが目の敵にしているだけです。

●地下水100%の水道はまれではない

地下水100%の水道が「全国に非常にまれ」と言いますが、栃木県内だけを見ても、鹿沼市のほかに、足利市、佐野市、栃木市、下野市、壬生町、さくら市、那須烏山市、茂木町、上三川町、高根沢町の合計11事業体が地下水100%の水道を維持しています。

鳥取県生活環境部水・大気環境課が作成した「鳥取県の水道の現況」(2014年3月末現在)の1−1、1−2によると、鳥取県には14の上水道事業体がありますが、そのうち表流水を利用しているのは、鳥取市上水道だけです。13事業体は、地下水100%です。ただし、伏流水は地下水ではないとする分類もありますが、ここは栃木県の採用する分類に従います。

鳥取県全体の水道の地下水依存率は、98.2%(2009年度)である(「水の日本地図」沖大幹監修、朝日新聞出版、2012年出版、p91)ことからも、鳥取県では地下水100%の水道が多いことが読み取れます。

70万都市の熊本市の水道が100%地下水を水源としていることは有名ですし、都内でも昭島市と羽村市では、100%地下水が提供されています。これらの都市の危機管理ができていないとは思えません。

確かに100%地下水源の水道水は少数派かもしれませんが、だからといって、殊更問題があるかのように言い立てるのは間違っています。

●鹿沼市上水道のために地盤沈下が起きたのか

小林議員は、地下水100%の水道の一体どこが問題だと言うのでしょうか。

小林議員は、「地盤沈下や地下水汚染が生じた場合には、この水道水の供給が断たれてしまう」と言います。

鹿沼市上水道は、1954年2月に一部給水を開始したそうです(「鹿沼市における水道事業の現況」p1)。

62年間の実績があるわけですが、鹿沼市上水道で地下水を採取したために、地盤沈下が起きたことがあったでしょうか。私はなかったと思います。

小林議員が地盤沈下を心配されるのなら、これまで起きたのか、今後起きると考えるなら、その時期や理由などを説明すべきです。「将来何が起きるか分からない」という程度の漠然とした理由で巨額の投資をすることが許されないのは、民間でも役所でも同じです。

データで主張の根拠を説明できないのなら、議員をやめてほしいと思います。

念のために書きますが、何でもかんでも科学的に証明されてから政策を実施すべきだという意見ではありません。

世の中には科学で解明できないことも多く、解明されてから何かをやっても遅いということもありますから、予防原則という考え方から科学的な証明が成功していなくても、特定の政策を採用しなければならないことがあると思います。

例えば、仮にネオニコチノイド系の農薬がミツバチや人体に与える影響が証明されていないとしても、とりあえず使用を禁止することも許されるということです。

地下水汚染のリスクについても確率的に考えるべきであり、汚染事故を起こさないための法整備がなされていることも考慮すべきです。万一汚染されても、除染しながら利用を継続することが可能な場合もあるので、致命的な問題になるとは思えません。

●表流水は渇水に弱いことをどう考えるのか

雨が降らなければ、真っ先にかれるのは川の水です。表流水への依存度が高ければ、供給は不安定になります。

栃木県は、地下水:表流水=4:6が水道水源のベスミックスだと言っています。6割を占める表流水系統で汚染事故や渇水があったら断水になってしまうのではないでしょうか。

渇水リスクを考慮したら、表流水確保という選択肢はあり得ません。リスクを呼び入れるようなものであり、逆効果です。

小林議員は、渇水リスクには言及しなかったので、表流水が渇水に弱いことはご存知なのかもしれません。であれば、こうした表流水の弱点も説明すべきだと思います。

●表流水は放射能汚染に弱いことをどう考えるのか

小林議員は、表流水は放射能汚染に弱いということをどう考えているのでしょうか。

2011年の大震災のときに水道水から放射性物質が検出されたのは、栃木県内では宇都宮市と野木町だけでした。どちらも表流水を使っています。

原子力規制委員会のホームページの環境放射能水準調査結果(上水(蛇口))によれば、発電所事故から5年経った2016年の1−3月分についても、宇都宮市の水道水から放射性セシウム137が0.0017 Bq/kg 検出されました。妊婦のいる家庭や粉ミルクを水道水で溶いて乳児に与えている家庭では心配だと思います。

表流水が放射能汚染に弱いことがよく分かります。また、一般に表流水汚染は回復までの期間が短いと言われていますが、表流水の汚染でも、長期に及ぶ場合があるということです。

ちなみに、0.0017 Bq/kgの放射性物質が人体に有害かどうか証明されていないのに、有害であるかのように言うのは非科学的ではないか、という意見があると思います。

こうした問題は、予防原則で考えるべきだと思います。有害であることが証明されるまでは無害として扱うのでは遅い(不幸な結果が発生してしまう)ということがあります。

宇都宮市民はこれまで、もっと放射能汚染濃度の高い水道水を飲まされてきたことも考慮すべきです。

小林議員は、安全・安心な暮らしに表流水が必要だと言いますが、地下水を表流水に切り替えたら、かえって住民の不安の種は増えると思います。

今でも東京電力福島第一原子力発電所から1日に1000万Bq/kgの放射性物質が出ています。小林議員には、表流水は放射能汚染に弱いと心配する声に答えてほしいと思います。

(文責:事務局)
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